転落人生
坂の傾斜に身をまかせ
転がり落ちる
我が人生
ごろんごろんごろんごろん
見下ろす小さな丸は
点となり
やがて消失する
けれど中には
その流れに抗う者も
体を開き
無数の足を蠢かせ
必死にアスファルトにしがみつく
また1つ、小さな丸をぽとりと落とす
ごろんごろんごろんごろん
また1つ
ごろんごろんごろんごろん
また1つ
ごろんごろん……
わしゃわしゃ……よじよじ
また1つ
ごろんごろんごろんごろん
また1つ
ごろんごろんごろんごろん
片手いっぱいに乗せた小さな丸がとうとう尽きた
ごろんごろん転がり落ちる無数の丸の
僅かな抵抗に心震わせ、思い出す
背中を押された男
体をねじり
驚愕の表情をちらりと見せて
一瞬で姿を消した
かと思いきや、崖に手指をかけて踏ん張って
重力に引きずられるように
手指はぷるぷると
その手指を1本
剥がし、持ち上げ、浮かせ
また1本
剥がし、持ち上げ、浮かせ
深い深い海の底へと突き落とす
団子虫さながら、けれども体は丸めず、真っ直ぐ伸びたまま落ちて行く
わたしに手を伸ばして
わたしの目を見て
落ちて逝く
手の平の上でわしゃわしゃ動く団子虫
掌の上のちっぽけな命を
指でつんと転がして
小さな丸が
落ちて行く
死んだのはあいつ
なのに
転がり落ちるわたし
殺がり堕ちる
我が人生
ごろんごろんごろんごろん
アスファルトにしがみつく
必死で
死が身憑く