それは武器を嫌ってる。
駄文
少女 海月 姫は体育館で自分の名前が呼ばれるのを今か今かと待っていた。
面倒な学生生活など早く終わらせて家で眠りたいと考えているが入学式の変わりとも言えるクラスの振分けは「強制出席」という規則らしい
通わないクラスの振分けを聞くというのは何とも退屈だ…
「海月 姫。」と業務的な声が響く
「…はい…」
「マスターウェポン 銃。クラスは1の3だ。入学おめでとう!」
体育館の中がどよめく
(…だから嫌なんだ…)
使いたくない武器の名前を呼ばれ憂鬱な気分の少女 海月姫は二度と通わないであろう教室に向かって歩みを進めた。
少女 木之下 くらげは振り分けらを聞きながらうきうきと学生生活の始まりを楽しみにしていた
「マスターウェポン 銃。」
(銃!?)
この世界では中学生になると自らの体から武器を生成する事が認められる
その初めの武器の種類はランダムでありそれぞれ定められたメリット、デメリットが存在しそれを扱い戦う事で得られるポイントによって学業の成績が決まるシステムになっている
(すごい…銃なんだ…)
その中でも銃は最上位のデメリットを持つが高い汎用性能を持ち
(はじめて見た…)
そして極めて稀少である事でも知られる。
名前を呼ばれた少女をちらりと見ると少し機嫌の悪そうな顔をしながら肩口で切り揃えられた黒い髪を揺らし早足で教室の方に歩いて行った
(美人さんだなぁあの娘 友達になれないかな?)
自分の長く伸ばされた癖っ毛気味な茶色の髪先を指でくるくると巻きながらくらげは考えていると…
「木之下!木之下くらげは居ないのか!」と少し苛立ったような声が体育館に響く
「あっ!はい!私!私です!私くらげです!
えへへ…すんませんちょっと考え事してて…」
苦笑いをしながら新たな生活の始まりに考えを切り替え…
「わかったわかった…クラスは1の3マスターウェポンは爪!合ってるな?」
「…はい!」
自分の武器に少しの嫌気を抱え くらげは教室に向かう
(あの娘と一緒だ!友達になれるかな?)
体育館の窓から漏れる木漏れ日が彼女の道を照らしていた。
「っと…以上で入学に関する事は終わりだ。じゃあ諸君勉学、試合共に頑張ってくれ!」
(やっっっっと終わったか…まぁこれで終わりだし良いか…)
やたらと熱血な教師の話が終わりに教室を出て帰路につくと他のクラスだろうか 同級生がこちらに向かってくるのが見える
「ねぇ海月さん!私達とグループ組まない?」
「嫌々こっちのグループの方が楽しいよ!ねっ?」
(はぁ…)
溜め息を心の内にしまい込み断ろうと口を開きかけると
「うっみつっきさーーーん!!!!」
廊下中に響くような声がそれを遮った
「うみつっ…姫ちゃんは私と用事があるから!ねっ?行こう行こう!レッツラゴーゴー!スイーツバイキング!」
指をくるくると回しながら湯水の用に口から出任せを言うこれは確かくらげと言ったろうか…
と考えていると自分の手首をぐいと掴んでその少女は玄関まで駆け出し
思ったより強い力に引っ張られた海月は転びそうになりながらも付いていくのだった。
「いや~大変だったねぇ」
校門まで逃げるとくらげという名前の少女はそう切り出した
満面の笑みとはこういう顔の事を言うのだろうかニコニコと笑う自分より少し背の高いその少女の顔を見上げる
「それよりさ!お友だちにならない?私姫さんとなりたいの!」
未だにつかんだ手首をブンブンと降りながら少女は話す
「…あそこから抜け出させて貰った事は感謝するけど…私はグループを組む気はない。」
反射的に答えた返事には溜まりに溜まった鬱憤を吐き出しているのだろう トゲがあるのが分かる
「いやあの…聞いて姫さん。グループじゃなくt「後…姫と呼ぶな 自分の名前は好きじゃないから」
反射的に言葉を紡ぎ校門から歩き出す
最後に何かを言っていたが聞き直す気は無かった。
「怒らせちゃったかな…」
すたすたと歩いて行く少女の背中を見つめ小声でぽつりと呟くと誰かに肩を叩かれる
振り替えるとそこには怒気を孕んだ青い瞳を持つ少女が立っていた
「ちょっとあんたさぁ何邪魔してんの?」
「え?」
「アイツ三年分のポイントもう払ってんの もう来ないだろうから今勧誘してたのに邪魔されたからキレてんの!…ったく腹立つヤツだな…」
(ポイント払ってるんだ…)
学校では三年間で払うべきポイントという物が指定されている
それは出席やバトルによって勝つと手に入れ、また譲渡して貰う事が出来る。
それを払っているという事は彼女はもう来ない可能性が高いのだろう
「人の話聞いてんの?」
「あっ…うん…ごめんなさい」
嫌がっていたとはいえ勧誘を邪魔したのは私だ 謝らねば
「こっちは千載一遇のチャンスを逃したの!アンタの勝手な親切だか知らないけど!アレとグループになってれば少しはサボれたのに!」
グループという五人までの組織を組むと個人がバトルで手に入れたポイントは各々に分配する事が出来る
彼女はそれが目当てだったのだろう
しかしその物言いを聞いて
「…そんな!そんな言い方無いでしょ!」
「はあ?」
「ひめち…海月さんをモノみたいに言うのはやめてよ!」
私の怒りも爆発してしまった
「…私は貴方には悪いことをしたよ!それは謝る…だけど!海月さんへの言い方は…っ…謝って…!」
こちらの剣幕に少し引いた青い目の少女は友達らしき娘から耳打ちをされてから少しの間を明けてニヤリと笑うとこう口を開く
「じゃあさ…ポイント全賭けのアンティでタイマンしようじゃん…」
「え?」
「負けたら謝ってやるって言ってんの それとも何?ビビってんの?」
ニヤニヤと笑いながら挑発してくる少女に自分の腕をちらりと見る
(…爪…)
自分の弱さを知っている少女は目を見据え凛と言い放つ
「必ず謝ってよね!」
バトルそれは一言で言うと殺し合いのような物だ。
武器を展開する事で開かれる特殊なフィールドでの戦いは一方の戦意が消失、及び命を消失する場合に敗北を言い放つ。
そのフィールド内では武器毎に設定されたデメリットが発動する代わりに「現実では起こり得ない事象」を引き起こす事が出来る。中継されるバトルを見るのもこの街での楽しみの一つだ。
「んじゃよろしくぅ?自己紹介しとくから 私茂木遥だから」
「私は木之下くらげ よろしく」
お互いの準備が終わり、武器を展開する
「来い…私の槍!」茂木は豪奢な槍を
「…おいで!鼠の爪!!」くらげは小さな爪を
戦いが 始まる。
勝負など始めから決まっているような物だ。
槍を振るう茂木はそう考える
現実ならばあちらは体格が良く負ける可能性が高いがここでは違う。
槍はリーチが長く、爪はリーチが短い
(単純なその差は埋まらない…)
槍を持つ事で茂木に課されるデメリットは聴覚の鈍化
(目で追える相手なら関係は無い!)
180センチ強の槍を振り回し自分の勝利を確信する。
(防ぐのが精一杯……ッ…)
突き、横凪ぎの一撃を爪で弾きながらくらげは思う
くらげの武器である爪にはデメリットが無い
籠手に直接取って付けたような指先から伸びるその爪は小振りのペーパーナイフ程度の長さしか持たなず長い槍を振り回す相手には相性がひたすらに悪い
くらげの爪にはデメリットが無い
その理由は単純に「弱い」為だ
特殊な機構を一つ持つ。それだけがこの爪の強さである。
(…やるッ…!)
突かれる刃に拳を打ち付け強く弾くその衝撃を利用して大きく後退すると腕を上に突き上げ叫ぶ
「おいで!虎の爪!」
貧弱な爪はたちまち姿を変え、虎の爪を模した物になる。
(これで火力は上がる…一撃を入れられれば…懐に飛び込めれば…!)
十二の姿に変わる爪はそれだけ変われても「弱い」その不安がくらげ心を締め付けていた。
(やっぱり変形か…)
珍しい事では無い 高校生にもなれば変化する二種類の武器を扱う事が出来る これが常識だ
しかし変形ではなく 変化
(私のもう一つは短剣…変える必要は無いな)
そう普通ならば別の武器に変わる だがくらげは
「アイツ有名な変わらない不良品だしカモっちゃいなよ」
耳打ちされた事を思いだし不適に笑う
爪で攻撃を弾かれそこから凪ぎを放つ
(重くなった爪でそう同じように出来るかよッ!)
鈍い音が響く くらげの横腹に豪奢な飾りが施された槍の柄が直撃しくらげの動きが鈍る
目眩ましとばかりに右腕を振るい 大きく砂埃が舞う
茂木は勝利を確信し 叫ぶ
「終わりィ!」
首を狙う槍の刃がくらげを襲う
(…槍は…長い…)
くらげは考えていた
(近いなら…勝てる…飛び込む方法…)
勝利を導く方法を
(さっきの要領で打ち付ける…ダメだ…後ろに弾いて懐に入っても凪がれれば一撃を喰らう…)
一つの道筋を思い付く
(ーーーこれしか無い)
横腹に槍の柄が直撃する
右腕を大きく振るうと砂埃が舞う
揺らめくくらげに刃が迫る
不機嫌を治す為に菓子パンを買い、コンビニエンスストアから出た海月に真剣に携帯を見ている同じクラスの少年達の声が聞こえてきた
「そりゃ負けるよなぁ…」
「無茶だよなぁ木之下…リーチ違いすぎるしよぉ」
(木之下…アイツそんな名字だったな…)
自分を引っ張り出した少女の笑顔を思い出す
「なんでもよぉ同じクラスのさ…銃の…えーっと海月だっけ?を誘ってんの止めたとか何とかで絡まれたんだってよ」
「うっへぇー…こえぇな…」
「しかもこれグルーp「ちょっと良いかな」
思わぬ登場をした自分の名前に思わず声をかけてしまう
「どわぁ!?」「うううう…海月!?」
驚くクラスメイトに長く構う気は無かった
「どういう事か簡単に説明して欲しいんだけど…良いかな」
そして、海月はいつの間にか駆け出していた
右太ももの銃を収めたホルスターを触る彼女の目には冷たい怒りが満ちている。
「終わりィ!」茂木の声が 肉に刃が突き刺さる音が響く
(狙いが逸れたっ…?)首はなく肩に深く刺さった刃を見て茂木は考え
次の瞬間槍を持つ自分の両腕に来る衝撃によろめき、槍を放してしまう
(何!?)
そして茂木の眼前に映ったのは槍が刺さったまま距離を詰めるくらげと、目の前に迫る爪だった
(痛くないの!?アイツ…!)
慌てて槍を掴もうとしたその時
「謝って貰うから…絶対に!!!」
爪が、拳が顔を捉える強い衝撃が顔面に走りーーーー
「第一試合終了です。」機械音声が響き茂木の槍が消え、傷も消えていく。
(勝った…のに…?)だがフィールドが解けずくらげの傷は消えていない。
装備が解除され嫌らしい笑みを浮かべた茂木が口を開く
「私を倒した所でアンタは終わり…それなら…こっちの勝ちだから」
耳打ちをしていた少女が叫ぶ
「来い!私のウィップ!」少女の腕に刺々しい鞭が現れる。
「終わりでしょ…タイマンって…そういう事じゃ…」
「はぁ?ちゃんとルール読まないアンタが悪いんじゃないの?」
ゲラゲラと笑う茂木を睨み付けルールを見るそこには
「グループ戦…?」
勝てる筈が無い もはや片腕は使えず息も絶え絶えなのだから
耳打ち少女は冷ややかに笑いながら呟く
「ま、ポイントくれれば終わりだから、良いでしょ?」
「対戦前はちゃんとシングルになってた……おかしい…」
呆然とするくらげに耳打ち少女はケラケラと言う
「負けるかもしんないしー?半分以上賛成すれば書き換えられるんだから当たり前じゃん?」
じんじんと頭が 左肩が 痛む
それ以上にくらげは(悔しい……!)
自分の弱さに心を痛めた
その光景を目の当たりにした海月は黒いホルスターを見やる
「…やるか」
「んじゃ始めよー?私の名前は覚えなくって良いからく・ら・げ・ちゃん!」
「…わかったやるよ」「くらげ」
声が響く
「え?」
自分の名前を呼ばれたくらげは後ろを振り向く
そこに立っていたのは「海月…さん?」
「姫で良い」初めて見る優しい笑顔を向け名前を呼べと言う少女の意図が掴めず混乱してしまう
「姫ちゃん…?どうしたの?迷子?」思い付く事をとりあえず聞くと頭に手を置き海月は決して大きくないが通る声で宣言する
「私は海月姫 木之下くらげと今を持ってグループを組む!」
そこにいる全員が困惑する中で海月は言う
「これで私が戦っても良いという訳だ 交代するから見ててくれ」
口の端を吊り上げる海月にくらげは何も言う事が出来なかった。
「は…はぁ?」少しして茂木がようやく口を開く
「それと?グループを?」耳打ち少女も困惑している
「そうだ 私はポイント目当ての乞食と組む気は無いし、これと組んだ方が楽しそうだし…」次から次へと出てくる言葉を不機嫌そうに吐き出して笑うと「受け入れてくれそうだしな くらげは」
何をと聞こうとした次の瞬間 くらげはその意味を理解した。
ホルスターから銃を引き抜いた瞬間
海月の身体が光る
そしてその光が消えた先に立っていたのは
ピンクのゴスロリに大きなピンクのリボンに極彩色の靴という奇抜な魔法少女モドキだった
そして海月は普段より何オクターブか高い甘い声で叫ぶ
「ロリポップガール☆参上!」
当たりが静寂に包まれる中くらげがぽつりと呟いた
「かわいい…」
その声を合図にするかのようにバトルが始まった。
「ふ…ふざけてんの…?」鞭を振るう少女は思わず口を開く
慣れた動きでそれを避けると海月は引き金を引く
「…ッ!」銃口から逃げるように身体を曲げるが銃声は響かない。
(しまった…ブラフ!?)
「終わりだ」何時もの声で呟くと海月は左足を上げ銃を握っていない左手を目の前で横ピースにすると甘ったるい声で叫ぶ
「☆ロリポップ☆シュート☆」
ふざけたようなその声を引き金に銃口から光の弾丸が飛び出
少女の身体を貫いた
「戦闘終了です。」機械音声が響き、海月は学生服に戻り深いため息をつき
「謝罪は要らないが…失せろ…」
疲れたような低い声で言うのだった。
戦闘が終わった後ポイントが譲渡されると茂木達はせず寮に半べそで戻っていった
二人きりになるとくらげが口を開いた
「…ねぇ…さっきのって趣味?」
「デメリットだ!…私のこの…ロリポップガンは技名を叫んで…その…あの…格好じゃないと光の弾が出ないんだ!」
顔を真っ赤にして即答する海月にくらげはケラケラと笑う
「ふふふ…変なのぉ!」
「お互い様だ…」
変な武器と変なデメリットを背負った少女達は顔を見合せ笑い合う
海月の家に泊まる事にしたくらげは元気良く口を開く
「それでさそれでさ?グループ名が必要な訳ですよ!グループ名が!」
「…うん」
「さぁ選んでよ!」
「マジカルガール…†魔法の爪†…クラゲデレラ…マトモな名前は無いのか…?」狼狽して聞く海月にくらげは髪先をくるくる弄りながら不思議そうに返す
「イカしてると思うけどなぁわたしは」
「わ…私が決める…!」
「おっ!いいね!いいね!よっ!姫ちゃん!」
十分程度悩んだ後に自信無さげに呟いた
「海月とくらげで…ち…チームくらげ…とか…どうだ…」
「だっさ……」
「お互い様だろ!」
そうして夜は更けていく
雲一つ無い黒い空に浮かぶ月は二人を優しく照らし 明日の訪れを待っている。
堅苦しいんじゃ文章が