プロローグ
二作目となります。一作目とは大きく系統を変えて、気分転換も兼ねています。
更新は今のところ続けるつもりですので、よろしければ読んでいってください。
1999年。
この年は世紀末と呼ばれ、人々は大いに狂乱した。
ある者は古くからある世界滅亡の予言を信じ自暴自棄に。
ある者はそんな奴らを馬鹿にしながら酒を煽った。
結果から言おう、世界は崩壊などしなかった。
2000年の初めの日。
人々は変わらない一日に、なんだ、やっぱりこんなもんかと、落胆と少しの安堵を含ませたため息をつき、次第に日常に戻っていった。
記念すべき新しい年を祝う声も、この時ばかりはすこし寂しさを感じる者だっていたかもしれない。
だが。
人々は後に痛感する。
世紀末は、やはり世紀末だったのだと。
人々は思い知る。
変化というものは、遅効性の毒のように遅れてやってくるものだということを。
後に、混乱の渦中にて必死にもがくこととなる若き命たちが息吹を上げていく1999年。
そしてその年の12月31日11時59分59秒。
世紀末の摩訶不思議な力を浴び続けた、世紀末BABYと呼ばれることになるもの達は、静かに自ら目を開いた。
まるで、これから起こる動乱の世界を、見定めるかの如く。
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「ふわぁぁ、今日も眠たいですなぁ。」
「眠たいですなじゃねーのよ。おら、37ページ、どこまで読んでたか、わかるよなぁ?」
「先生、今日の空はとても澄んでいて、まるで今の私の頭の中を表しているようです。」
「雲一つない、空っぽの頭だってか?」
「ふふ、正解。よくわかったな、さては貴様、心を読む能力が!」
『ガンッ!』
「ぐはああああ!角!教科書の角インザヘッズ!!」
「俺は一般人だ、さっさと読めこのあほう。」
「あぁ、先生ぇ、それー差別っていうんだよぉ?」
クラス一の美少女。ぶりっ子マンが先生の揚げ足を取る。
「誰がぶりっ子マンだって、あん?」
「勝手に人の心を覗かないでくださーい、プライベート法違反でーす。」
「はぁ、お前たちの担任になった唯一の利点は、退屈はしないってところだろうな。」
私たちの担任、海道総一郎先生は、筆記用具が浮かんだり、局所的な熱帯が形成されたりしている教室を見渡して、長い長いため息を吐いたのだった。
そして私―――御堂 桜は、提出するはずだった課題を忘れた理由を必死に探しているのだった。