プロローグ
短い。
何故。
何故僕はここに…
もうとっくに『滅んだ故郷』へ戻ってきたんだ。
「…」
くそっ、出来る事なら見たくない。
魔物に襲われ何もかもを失ってしまったこの地域は、作物を作ろうにも生命が大地に吸われて行き、食べられる状態になる前に枯れていく。
生命が削られていく汚染された地面は、人間も例外ではない。
誰も彼もがここへ来る事を恐れ遠くへと逃げていったせいで襲われたそのままの状態が今も続いていた。
すでに逃げ遅れた大勢は白骨化し、この場一帯の雰囲気をいっそう重く、苦しくしている。
僕は『逃げてしまった』人。苦しむ事を選んだ人である。
…名を、『ライト』。
俺はその名の様にこの地に光を与えようとしている。
誰も寄り付かない死の大地に。
確か、僕が来る切欠はある一言だった。
(村を作ろう)
奴はそう言い出し、僕に故郷の『掃除』を任せた。
奴の言葉は単なる思いつきであるが、とてもではないが逆らえない程の権力を持っている。
しかし、奴の言葉が単なる思いつきでも、僕はこの地にはいつか行くべきだった。僕のちっぽけな『復讐心』のために。
「すぅぅ………―――――ゲホッ!!」
深呼吸しようにも空気は僕の体を蝕む。
息は最小限にすると決め、淡々と『掃除』に取り組んだ。
骨を回収。
まだ使える素材を選別。
しかし、数時間すれば体が徐々に弱っていくことを感じた。
「く…はぁ…」
体も徐々にだが、疲労感が増していく。
体力は本当に気がつけばギリギリだった。
もし気がつかなければ・・・どうなっていたか言うまでもない。
まだ陽は高く昇ったままだが、逃げるようにしてこの地を離れる。
そのような作業とは程遠い、大地と命の削り合いをして、やっと三分の一が終わろうとしていた。
休みを入れていたが、時間がかかるたびに休む間隔は増えていく。
僕は今回の収穫を鉱山用のカートに入れ、本部へと持ち帰った。
読んでくれてありがとうございました。