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孤独の魔女が拾ったモノ

作者: 櫛田こころ

※Twitterでタグにある#魔女の集会で会いましょう

に乗っかりましたノ

 西の西のそのまた西の森。

 聞くところによると、最果ての森とも言われているらしいが私にはどうでもいい。



 樹々と共に、水と風と共に生きて、ほんのたまに人里へ降りて食料を買いに行くだけの侘しい生活。



 そんなある日の事、姿は小さいが私と同じようなモノが森の中に落ちていた。



「……子ども」



 本当に、小さな子どもだった。

 地に顔を伏せてるのでどんな容姿かはわからないが、薄茶の長い髪に生成り色のローブ。髪より濃い茶色の靴。

 女か男かは分かりにくい。

 顔を見ねば、性別など知ることが出来ない。



「……お前、起き上がれるか?」



 地に膝をついて声をかければ、子どもの身体がわずかに動いた。

 動いたと言うことは、生きてる証拠だ。



「……見捨てることは、いくら私でも出来ないな。小屋へ連れて帰るか」



 ただ手には買い出しに行った食料があるので、風の精霊に頼んで運ぶのをお願いした。

 抱えられた時に顔を見ても、土で汚れている箇所を除いても性別がわかりにくい。

 ただ、美しい容姿ではあると思った。



「……何故こんな森に?」



 私と言う、孤独の魔女と呼ばれる存在がいると知ってか?

 完全に無人でないからこそ、親は捨てたのだろうか?

 追求したくとも、子どもは意識を失ってしまったので問いかけは出来ない。

 とりあえず、起きたら腹を空かすだろうから、何を作ってやろうか考えながら帰ることにした。



「……起き抜けにピザは重いだろう」



 私の好物だし、今日はその材料を買いに行くために人里へ降りたが、この子どもがいきなり食べるにしては胃に負担がかかる。

 ならば、まだ残っていた米と買ったチーズなどを使ったリゾットがいい。

 あれなら私も好きだ。



 故あって孤独となった私だが、食には結構貪欲なのは認める。



「すまないが、中のベッドまでいいだろうか?」

『お安いご用さ』



 風の精霊は人間や魔女が食べる食事では、活力の元にならない。

 代わりに、魔法で清浄な空気を与えれば喜ぶので、子どもを寝かせてから外でいつものように魔法を使った。



『ありがと! けど、あの子どももあんたと似た力を感じるね?』

「ほう?」



 直接触れてないせいか、気づかないでいた。



 まあ、私は数少ない魔女の中でもぬけてるところがあるからかもしれないが。



 けど、敵意は向けられてないからいいか。



 知人の魔女には楽観的と言われてしまうだろうが、この場合気にしない。

 私もお腹が空いたからだ。



「まずは、米をといでコンソメスープを作って」



 今回は時短だ。

 自分のならもっと時間をかけて作るが、今回は急いだ方がいいのでストックのコンソメキューブと湯で割るくらいに。



 米を入れて、普通のリゾットは固めにするが、私の場合は日本のおじやくらい柔らかめに。

 子どもの胃にも優しそうだからこれをたくさん作るでいいだろう。



「米が炊けたら、チェダーとゴーダのチーズを山ほど入れて混ぜて……軽く粗挽きの胡椒も」



 リゾットじゃないと言われてもいい。

 私が好きだから作るだけだ。



「……ん?」



 奥のベッドから、子どもが起きる声がして振り返った。

 ベッドでは、私の後ろ姿を見てぽかんと口を開けてる子どもが起き上がっていた。



「目が覚めて良かった。私は、この家の主だ」

「ま……じょ?」

「まあ、見て分かるだろうな?」



 全体的に黒と暗色全般の服を着ているし。

 これは魔女のイメージもあるが涼し過ぎるこの森では最適なので使ってるだけだ。



「それより、見たところ胃に何もないのだろう? 簡単な米粥のようなのを作ったが一緒にどうだ?」

「い、いい……の?」

「私も昼ご飯にしたかったところだ。一人増えたところで同じだ」



 それに、知人の魔女達以外で食事を共にするのは久しぶりだ。

 同じ、人の姿をしてる者とは。



 まさか、それがきっかけで『孤独』の称号を剥がされるとは思いもしなかった。




 〜20年後〜




「木苺をもらってきたぞ!」

「あら、多いね? あそこの精霊達の機嫌が良かったのかい?」

「ああ、それはもう」



 拾った子どもは男で、しかも魔術師の仮の姿とは知らなかった。

 リゾットを食べてから出て行くことはなく、子どもの姿を解いて美しい青年になってからずっと私の側にいたいと言い張ったのだ。



 ただ拾って、食事を与えただけなのに随分な気に入られようだったが、私は何故か拒絶をしなかった。



 まあ、無理もない。



 美の結晶と思えるような青年にそう言われてしまえば、落ちてしまうと言うものだ。



 孤独を好んでたはずの私が、随分あっさり受け入れてしまったのだ。



 彼も不老の魔術師だから遠慮する必要もないのもあっただろうが。



「今日はこれで得意のピザを作ろうじゃないか?」

「あら、じゃあ生クリームとクリームチーズどっちで?」

「どっちも」

「言うと思った」



 だが、受け入れて正解だったと今も思う。



 彼の笑顔を見られるのならなんだっていい。



 それほど、私はこの男に絆されてしまったのだ。














【おまけ?】




 俺はズルい男だ。



 ただ、彼女を……孤独の魔女と言われていたあの女性を手に入れるために、かなり無茶な事をした。



 極限まで衰弱し(主に身辺整理と食事を摂らずに水のみ)、魔力の消費を抑える状態の幼児化にまでなった時は両手を広げて歓喜に震えた。



 一点残念な事は、身なりを気にせずに泥だらけで彼女のいる森に訪れた事だ。



 いくら男でも身綺麗にせねば印象は悪い。



 だが、彼女は見つけてくれた時に気にせず風の精霊に頼んで、居住地まで運んでくれた。



 本当は柔らかそうな彼女の腕の中が良かったが、その時は食料を抱えてたので仕方がなかった。



 風の精霊には俺の正体がほぼバレていても、彼女に危害を加えない事をわかってくれたのか似た存在であることを彼女には告げていた。



 返されてしまっては、俺の計画がパーになるからだ。



 彼女を孤独にしてしまった原因は、俺の祖父にあたる人が与えた呪いの所為。



 彼女と言うより、彼女の母にあたる人がとても美しい黒髪と白磁の肌を持つ美貌の存在で、祖父は妻や子どもがいるにも関わらず夢中になってしまったとか。



 けれど、その人は祖父を見向きもせず、ただ一人の男を愛し彼女を産み……男は祖父の嫉妬による呪いで殺され、その人にも未来永劫誰とも寄り添えず孤独を味わう呪いをかけた。



 不幸なことに、娘の彼女も一緒にかかってしまい、母に似た美しい容姿にも関わらず誰からも愛されなかった。



 ただ唯一、呪いをかけた者の身内でなら、時間をかけて解けなくはないと言う事を、俺は父が生前の頃に聞けた。



 初めは償いのつもりで、側に置けばいいと思っていた。



 本当に、その為だけに必死になって魔女となった彼女の対となるべく、俺も魔術師として不老の術を身につけた。



 行動に移す前に、彼女の知人である魔女と出会うまでは。



『そうまでして呪いを解きたいのは、もはや愛だね?』

『あ、愛、なのか?』

『あんたの爺さんは憎しみになったけど、それも形を変えた愛さ。歪みまくってるけどねぇ?』



 そう指摘されてもすぐにはわからなかったが、彼女の家に運ばれ、ベッドで寝たフリをしてる時に見た横顔で確信出来た。



 なんて、優しい顔をするんだろうかと。




 たったそれだけで、俺の中の義務感はかき消えた。



 心の底から、この女性の側にいてやりたいと。



 我ながら単純ではあったが、要は一目惚れだ。



 それから、わざと料理が出来上がってから起き上がり、美味しいチーズリゾットをいただいてから呪いの事は伏せて自分の正体を告げて元に戻った。



 その時の彼女の顔は、数十年経った今でも忘れられない。



 自分の容姿には多少自信はあったが、どうやら彼女はお気に召したらしく、まるで少女のように頬を薔薇色に染め上げて俺を見てきたのだ。



 だから、ほんの少しだけじいさんには感謝している。



 天国どころか地獄に堕ちてるだろうが、今はほとんど薄れかけてる呪いがなければ、孤独の魔女の側にはいられなかっただろう。



「ねーぇ、もう焼けるけど味変えはスパイス? ピッカンテ?」

「あ、ああ。そうだね、今日の気分はスパイスかな?」

「りょーかい」



 孤独だった魔女は、今日も共に生活する俺のために彼女が好きな料理を振舞ってくれる。



 嬉しいことに、彼女と俺の食事の好みも似てたからだ。



 今日もたっぷり食べて、森のために働くからだ。

勢いに任せて、書いちゃいました(`・∀・´)エッヘン!!



本当は魔術師ヤンデレ風味にするとかー



もうちょっと短く書くとかー



してみたかったんですがー




櫛田には無理でした_(:3」∠)_




では、短編はこれまでノ

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