1話目 メリーさんの電話
よろしくお願いします。
第1話
ここは逢魔が刻、逢魔が通りご相談所「魔都の家」。誰もが入れる場所ではない。
おやおや、今日も一人のカモ…ゲフゲフッ…ゴホンッ、お客様がきたようです。
「どうしよう。」
ある日一人の少年が店を訪れた。少年は、ひどく怯えている。
「いらっしゃいませ。」
「あ、あの。ここで助けてくれるかもって…。…あれ?誰に聞いたんだろう…。」
「ああ、皆さんそう言いますね。では、何かお困りなんでしょう?」
「はい、実は…。」
その少年が言うには、今時のネット犯罪…。架空請求詐欺に引っかかってしまったらしい。
「ですが、未成年でしょ?無視しなさいよ。」
「でも…電話しちゃったんです。うち、親が怖くて…。そんなの言えなくて。そしたら毎日電話きて…怖くて。」
話を聞くと実はワンクリック詐欺らしい。それも自分がやったのではなくて…友達がやったらしい。
アダルトサイトにアクセスしたなど
親には言えず…金額が膨れ上がりどうしていいかわからないと…。
どうもこの少年、落ち込むと自分を責めてしまうたちらしい。
まあ、魔がさす方に来たわけだ…。
逢魔時に魔がさす…本当のことだ。
クスクス…今日はクリスマス。
異国の神を敬う気はないが…お子様にはクリスマスプレゼントが必須だ。
俺様の機嫌も良い。
特別にサービスしてやろう。
「では、お客様は大変お困りと?」
「はい。」
「そうですね…たぶん、相手は電話だけ。電話番号をかえたりはできませんか?」
「無理です。親に理由を聞かれます。」
ピルルル…
「また、ど、どうしよう。」
スマホを握りしめて震える。
「ふむふむ。電話を貸していただいても?」
恨み指数はいかがなもんか?楽しみだねえ。
「はい。」
『私、△○会社サポートの山田と申しますが…。佐藤様ですよね?』
「はい。」
『未だにですね?入金が確認できないんですよ?どうなってるんでしょうか?…このままですとねえ、ご両親にご連絡させていただきませんと…。』
「待ってください。」
「…!」
シッと唇に指を立てる。少年が驚くのはわかる。声真似で少年そっくりなのだから。
『これ以上は、ねえ。待てないんですよ?もう、年末なんですよ?わかりますか!決済時なんです。…まあ、学生じゃおこまりでしょ。…仕方ありません、56万まで上がりましたがね、半分の28万でいいから入れてください。半分は、サポートしている私が支払いますから。これ以上は無理ですよ?今日中に払い込んでくださいよ!』
「そ、そんな無理です。…そんなの。」
『無理無理言われても困るんですよ。』
「わかりました。なら、そちらに持っていきます…住所を教えでください。」
『…は?振込先送ったでしょ?』
「消えちゃったんです。」
『…もう一度送りますよ。』
「でも、28万も払ってくださるんですよね?なら、顔を見せてもらわないと。」
『いや…いいですから。今日中ですよ!…ツーツー…』
切りやがったか…。どら?ハッハッハッ。すげーな!おい。恨み指数95パーか。かなり、成功してるってことか?だが、いる場所がわからないって。たかをくくってるよね?
ふふ、俺には通用しないんだけどね?
いや?この世のものではないものか?
「あ、あの…。声。」
「ああ、そっくりだったでしょう?」
「この恨み買いますよ?」
「え?あの助けてくれるってことですか?」
「はい。」
「でも、どうやって?電話しかわからないのに?」
「ふふ、これで。」
出したのはガラケー。
「今時、ガラケー?」
「はい。仕方ないんですよねー。この子の最盛期がガラケーだったから。これは都市伝説にもなってますよね?[メリーさんの電話]です。」
「メリーさんって…。」
「そう、メリーさん。電話が鳴るたびに近づいてくるメリーさん。」
「この電話の相手の方は、恨みをかなり買ってますので…いいメリーさんに仕上がりますよ?」
「ぼく、お金これしかないんです。」
「お金はいりません。欲しいのはあなたの一年分。」
「…寿命ですか?」
「ええ。一年分を。あと[メリーさんの電話]は、レンタルです…。この山田さんという△○会社の件が片付いたら必ず返していただきたい。この電話は怖いのですよ?もしも、恨み指数が低い人間に使ったら…ふふ。人を呪わば、穴二つというでしょう?ですから必ず返してくださいね?」
「は、はい。わかりました。」
「使い方は簡単。その人に電話するだけ。大丈夫。あなたの番号になりますから出ますよ。相手は…必ずね。そのあとはどの番号だろうと…ふふ。」
「あの、使います。」
「では、手をこのかみにおいてください。契約です。」
「は、はい。」
素直に手を置いた。赤い光が手を包み、契約完了。
手の甲の上に赤い逆星。
「この星が消えたら、貴方にはもう電話は来なくなりますよ。大丈夫。二度とありません。」
「あ、ありがとうございます。必ず返しに来ます!」
「はい、お待ちしています。」
少年は店を後にする。
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トルルル、トルルル…カチ
『はい、○会社サポートの山田でございます。』
「ふふ、私メリーさん。今、東京にいるの」
『は?佐藤ふざけてんのか!ゴラァ!』
「すぐ行くわ」
ーーーーーーーー
「は?佐藤ふざけてんのか!ゴラァ!」
『すぐ行くわ』
カチっと切れた。チッ。怖くなりやがって、こわれやがったか?
たく。早く振り込みやがれ、馬鹿が。
電話がなる。
おっ、今度は島田か。こいつはすでに半分ずつ振り込んで来てるからな。
次で回収だな。
ピッと通話をオンにする。
「はい、△○会社サポートの山田。」
『私、メリーさん。今、大宮にいるの。すぐ行くわ。』
ツーツーツー…
なんだ?なんで大宮だって知ってる。横浜の架空の住所を載せているのに。そもそも、島田さんからの電話の筈だ。なんでだ?
また電話がなる。
「はい、△○会社サポートの山田です。」
『私、メリーさん。今△○○町にいるの。すぐ行くわ。』
ピッ。なんだってんだよ?
すぐにまた電話がなる。
…電話には出ないでおく。
だが、電話が勝手に通話になる。
『私、メリーさん。今△○○公園にいいるの。すぐ行くわ。』
ひっ。そこの公園?なんでだ?いったいなんだよ。本当にあの恐怖だと?はは、まさかだ。
また電話が鳴る。
ピッと通話に変わる。
『私、メリーさん。今、部屋の前にいるの。来たわ。』
一度切れて、またすぐに電話が鳴る。
そして…
ピッ
『私、メリーさん。今、貴方の後ろにいるの。」
後ろ…なんかの気配を感じる。うなじに感じる生臭い息は、誰だ?
怖い…俺はただ、少し金を儲けようとしただけじゃないか…。
ギギギと音がするように後ろを振り向く。
「私、メリーさん。貴方を連れ来たわ。」
「ぎゃーーーーーーーーーー!」
ーーーーーーーーーーー
電話をしてから三時間…手の上から印が消えた。つまりは?もう。電話がない。
明日、返しに行こう。学校の帰りに。
よかった。
朝のテレビで埼玉でネット詐欺をしていた男が死んでいるのが発見されたらしい。恐ろしいものでも見たような顔で心臓発作を起こしたらしいのだ。
△○会社サポート…あの会社だ。
つまりは…すごい。メリーさんの電話だ。すごいな。
でも、返さないと。怖いことが起こるって。
学校が終わり、急ぐ僕の前に従兄弟の茂が現れた。こいつのせいで、あの地獄を知ったのだ。
「よう、お金は出したのか?」
「もう、大丈夫になったよ。」
「なんでだよ。金を払わなかったのかよ。」
「払わなくてよくなったんだよ!」
「どういうことだよ。」
突き飛ばされて、鞄からスマホとガラケーが落ちてしまう。
「なんだよ、このガラケーは?」
「返せよ。借り物なんだからっ。」
「やーだね。なんで、こんなの持ってんだよ。」
「返せよ、メリーさんの電話返せ!」
「メリーさん?なあ、朝さあ、ニュースで言ってた△○会社サポートって、お前に電話して来たやつだろ?」
「お前のせいじゃないか!」
「この電話で呪えるのか?」
「返せよ!借り物なんだからっ!」
「借りとくよ。俺もしたい電話先があんだよ。じゃあな!」
「おい!」
どーしよう。僕はすぐに店に行った、
「あの、す、すいません。電話を取られちゃって。」
「ああ、そうみたいだね。」
「え?」
「ふふふふ。まあ、いいや。返ってくるようなら…返して。」
「あの。」
「ふふ、大丈夫だよ。じゃ、またね?もう電話はないでしょう?」
そう言って笑顔で送り出してくれた店主の笑顔が…ものすごく怖かった。
従兄弟が次の日にお礼を言ってきたが、電話を返してはくれなかった。
そして5日が過ぎた頃…従兄弟の茂が死んだらしい。
恐ろしいものを見たような死に顔で…。彼は…誰を呪ったのか。
葬式に行くとガラケーがあった。これの持ち主に返すと言って、取り返すことができた。
帰りに店に返しに行った。
「ありがとうございました。」
少年は、そう言って返してきた。
黒い制服は葬式の帰りと言って。
「ご利用ありがとうございました。」
従兄弟が死んだというのに笑顔で帰っていった。
「魔都、わざと?」
「クスクス、黒。ずいぶんだね?」
「ふふ。大丈夫だよ。だって…あの子が招いたのだから。せっかく、教えたのにね?」
ーーーーーーーーー
よかった。これでやっと茂がいなくなった。ふふ、あいつならメリーさんの電話を知れば使うってわかっていた。
だから、あえて言葉にした。ずっと比較され続けた上に、嫌がらせばっかだ。人を馬鹿にしやがって…でももうおしまい。
トルルルトルルル…
「電話?…茂の番号。なんで?」
ピッといきなり通話にかわる。
『『わたし、茂。今、家の前にいるの』』
トルルルトルルル…
ピッ
『『わたし、茂。今、部屋の前にいるの。』』
トルルルトルルル…
ピッ
『『わたし、茂。今貴方の後ろにいるの。」」
「ぎゃーーーーーーー!」
ツーツーツー。
「いつも…いっしょ…。」
「あーあ。だから言ったのになあ。人を呪わば、穴二つだと。…メリーさん帰ろうかね?」
「ヤダヤダ、わかっていたんでしょう?魔都。」
「まっね?だって…恨み辛みがたまってさあ、顔がわからないくらい真っ黒で…寿命も一年なかったじゃないか。」
「今回、いくつ回収したの?」
「すごいぞ?7つだ。」
「へー。恨まれてるやつって、恨んでるやつも多いんだね?」
「そうだなあ。」
「帰る?」
「ああ、帰ろうぜ。」
また、魔がさした方が来店するのを逢魔時の逢魔が通りご相談所「魔都の家」でお待ち申し上げています。
人に恨み嫉みのある方も、殺意を抱くほどお困りの貴方も是非是非、ご来店のほどをお待ちしております。
ネット詐欺やなんかを見ていたら書いてみたくなりました。
なかなか捕まらないという相手にこんなことがあったらどうよ?的な感じの話を書いていきたいと思ってます。
読んでいただきありがとうございました
:;(∩´﹏`∩);: