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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

まじかるみこみこ神楽ちゃん 

作者: 神楽 弓楽

 怪異。妖怪。化け物……様々な言葉で言い表されるそれは禍を齎す悪しき化生であった。

 時代の流れと共に名を変えるそれは、その本質は変わることなく人々の繁栄の影に常に存在した。

 脅かす存在がいれば、人々の中からそれに対抗する者たちがいつも現れた。


 それは、現代となった今も変わることなく続いていた。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「うわああああ! 」


 茹だるような蒸し暑い夏の夜、俺は暑さに負けて夜のコンビニへとアイスを買いに行った。冷蔵庫のようにキンキンに冷えたコンビニの中はまるでオアシスのようで、ついつい長居をしてしまった。俺は買ったばかりの棒アイスを口に咥えて家への帰路についた。


「こっち来るな! この化け物! 」


 その帰り道、俺は化け物に襲われた。


 ふと視線が向いた住宅の塀と塀の僅かな隙間の中にその化け物はいた。真っ暗な闇の中に赤い瞳を輝かせてそこにいた。


 そこから闇が吹き出したかのように化け物が路地へと飛び出してきた。


 化け物はその隙間には決して入りきらないだろう何メートルもあろう毛むくじゃらだった。大学で見たホッキョクグマの標本よりもそれはデカく、腐臭のような何とも言えない悪臭を放っていた。



「ハァハァ、こんのっ……! これでも食っとけ! 」


 その化け物は2つの赤い瞳を俺に向けて暗闇の中でニタリと笑ったように見えた。口が裂けてズラリと並んだ鋭い牙がそこから見えた。

 身の危険を感じて飛び退いた直後に俺がさっきまでいた場所が化け物に喰われた。身に迫る死の気配に俺はみっともなく悲鳴を上げてその場から逃げ出した。


 そこから俺と化け物との命がけの鬼ごっこが始まった。


 化け物は、俺が必死に走る後ろをぴったりと追ってきた。菓子の入ったビニール袋を投げつけても、道端のゴミ箱を放り投げても、意にも返さなかった。


 今にして思えば遊ばれていたのだと思う。




 ペース配分もあったもんじゃない全力疾走で10分も逃げ続ければ、俺の息は上がっていた。全身からは嫌な汗が噴き出しているというのに口の中はカラカラに乾いていた。


 とにかく逃げなければ。


 あの化け物に喰われてしまう。


「だ、誰か……助けて……だれか……っ! 」


 住宅街を抜けて大きな道路へと飛び出す。そこは夜だろうと車が走っている場所だった。周囲は飲食店が立ち並び、酔っ払いがふらふらと歩いているような場所だった。


 そこになら自分以外の人がいるだろうと思っていた。



 だが、こんな時に限ってそこには走っている車どころか人っ子一人いなかった。いつもならまだ開いている飲食店の明かりは落ちて、閑散としていた。



「な、なんで……! 」


 もう限界だった。


 路上に出て渡ろうとした俺は中央分離帯の段差に足を取られた。

 

 受け身も取れずに路上を惨めに転がった。

 体のあちこちを硬いアスファルトで擦りむき焼けたように痛かった。


 俺が立ち上がれないでいると化け物が中央分離帯の丸く刈られた低木を踏みつぶしながら現れ、路上に転がる俺を見下ろした。


 化け物の口から滴った涎が路上に垂れる。アスファルトが悲鳴のような音を上げて溶けていた。


 

 改めて間近で目にしても、やはり化け物はこの世ならざるものにしか見えなかった。化け物は獲物を見定めるかのように顔を近づけて臭いを嗅いでくる。


 化け物から漂う悪臭と濃密な死の気配に息が止まる。


 嫌だ。死にたくない。死ぬにしてもこんな死に方はしたくない。


 誰か、誰か助けて……!


 少しばかり距離を取った化け物の口が開かれる。ずらりと並んだ牙の奥には無数の棘が生えた舌が見えた。それが迫ってくる。


 その動きは瞬きのように一瞬の出来事だったが、自分の死に直面した俺にはその何十倍にもゆっくりに感じれた。


 あれに噛み付かれれば、俺の体は上と下で泣き別れていただろう。


 その時だった。


 横から眩い光が差したかと思うとドウンという鈍い炸裂音を響かせて化け物の体が吹き飛んだ。突風が巻き起こり間近にいた俺にも襲った。


 咄嗟に腕を上げて俺は巻き起こった突風から顔を守った。



「そこまでです! 」


 この場にそぐわない舌足らずなまだ幼さの残る少女の声が響いた。


 突風が治まり、薄っすらと目を開けた俺の目にその声の主の姿が映った。



 路上の蛍光灯に照らされた少女は、なんというかちんまりとしていた。


 路上に座り込んでいる俺と目線の高さがほとんど変わらない。幼い声に違わない小柄な黒髪の少女だった。巫女装束のような白と赤のコスプレ衣装に身を包み、手には錫杖のようなステッキを持っていた。先端には鈴がいくつもつけられて細長い白い紙が垂れている。


 こんな状況でなければ、日曜の朝にやっている魔法少女のようなコスプレでもしているのだろうと思って疑わない格好だった。


 何でこんなところにコスプレ少女がいるのか。さっきの光はなんだったのか。


 立て続けに起きる理解不能な出来事に俺は軽く混乱していた。しかし、混乱する俺を余所に事態は進んでいく。






 吹き飛んだ化け物は依然とピンピンしていた。化け物は標的を俺から少女へと変えて、牙を剥いて少女に襲い掛かった。


護身結界(ごしんけっかい)! 」



 しかし、化け物は少女の手前でまるで見えない壁にぶつかったかのようにそこから先に行けなくなっていた。化け物が虚空を爪で叩くと空気が振動し、陽炎のように透明な壁が一瞬見えた。





 少女の口から歌うように古めかしい言葉が詠われる。



――シャラン


 詠いながら少女は舞う。

 少女を食らおうと不可視の壁に噛りつく化け物がまるで見えていないかのような落ち着きようで少女はその場で舞い踊る。



――シャラン


 少女が持つ杖についた鈴が少女が舞う度に合いの手を入れるように音を奏でる。



 少女の動きは段々と激しくなり、それに合わせて鈴の音も早くなる。



――シャンシャンシャン


 俺の見間違えでないのなら、詠い舞い踊る少女は気づけば淡く光っていた。


 淡く光る少女を基点に地面に幾何学模様の方陣が浮かび上る。それは白く発光し明滅する。



――シャンシャンシャン



「 かみのみわざでもって


      あしきけしょうをはらいたまえ! 」



――シャン!

             

 瞬間、地面の方陣がより一層強く光り輝いた。ごおっ、と音を立てて強風が方陣の中心にいた少女の黒髪を真上へと吹き上げた。



破魔の閃光(はまのせんこう)! 」



 少女が化け物に向けて杖の先端を差し向ける。そこから眩い閃光が迸った。杖から極太の光線が放たれ、それに寄り添うかのように螺旋を描いた紙吹雪が巻き起こった。


 少女が放った極太の光線は、あっさりと化け物を呑み込んだ。



 化け物は断末魔の声さえ許されずに消し飛ばされ、閃光が治まった後に化け物の痕跡はどこにも残っていなかった。



 紙吹雪が風に煽られながらひらひらと辺りに散らばる。


 

 雪のように舞い落ちる紙片が綺麗だな、と思いながら俺の意識はそこでぷっつりと途切れた。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 次に目が覚めた時、俺は見知らぬ場所で眠っていた。


「ここは……」


 薄暗い部屋には、電灯といった照明器具はないようで障子越しに漏れる光を頼りに部屋を見回す。襖で仕切られ、床に畳が敷き詰められた和室だった。


 しかし、実家とも下宿のアパートとも違う見覚えのない部屋だった。


「一体どこだ? 」


 体を起こすとぽとりと額から何かが落ちた。それを目で追うと、額から落ちたのは白い濡れタオルだった。


 何故? と疑問に思ったところで、俺は自分が昨夜、気を失ったことを思い出した。


 ということは、気を失った俺を誰かがここに運んで看病してくれたのか?


 よく見ると、体のあちこちに包帯が巻かれて治療した跡があった。


 でも誰が? どうやって?



「あ、気がついたんですね」


 俺が考え込んでいると襖が静かに開けられて、そこからひょこんと黒髪の少女が顔を覗かせた。



「気分はどうですか? 」


 そう問いかけてくる少女に俺は見覚えがあった。


 昨夜、俺を化け物から助けてくれた少女だった。

 しかし、昨夜とは違って着ている巫女装束は、コスプレのような格好ではなく初詣で見かけるようなきっちりとしたものだった。



「えと、君は……? 」


「あ、わたしは神楽(かぐら) 弓美(ゆみ)って言います。ここで巫女のようなことをしています。

 お兄さんのお名前を教えてもらえますか? 」


 お兄さん? それより今、神楽って言わなかったか?


「俺は神楽(かぐら) 楽斗(らくと)だ」


「えっ、お兄さんも神楽って言うのですか? すごい偶然ですね」


 俺が名前を告げると弓美は、目を見開いて驚いた。


「もしかしたら遠い親戚なのかもな」


 子供の頃に祖父からご先祖様は神職だったという話を聞いたことがあるから本当にそうなのかもしれない。滅多に聞く名前でもないしな。


「ところで、化け物から俺を助けてくれたのは君で合ってるか? あの時は本当に助かった」


「間に合って良かったです。傷の方は大丈夫ですか? それに体が怠かったり、吐き気があったりはしませんか? 」


「今のところはなんともない。ところで、ここはどこなんだ? 」


「ここは私のお家です。気を失ったお兄さんを放っておくことは出来なかったので、連れてきました。

 ……あの、もしかして怒ってますか? 」


「何でだ? 助けてくれた上に治療までして面倒見てくれて感謝することはあっても怒る理由はない。ありがとう」


 何故か不安そうに尋ねてきた少女の頭を俺は撫でた。くしゃくしゃとしてやる。少女の黒髪は全く引っかかりがないくらいサラサラだった。それにミルクのような甘い匂いがした。


「わ、わたし、お兄さんのご飯貰ってきますね! 」


 ひとしきり撫でて手を頭から離すと少女は、ぴゅーっと部屋から逃げ出してしまった。


 

 つい撫でてしまったけど、これはやってしまったかな。初対面の子の頭を撫でるのは嫌がられたかもしれない。



 俺はそう思いつつ布団から起き上がる。少し体が怠い気がするが、問題はない。



 光が差す障子に手をかけ開ける。


 障子の向こう側には青々とした自然が広がっていた。どうやらここは小高い山にでも立っているらしい。斜面に形成された森が目に映った。目につく木々は、どれも樹齢何百年もありそうな幹の太い大樹だった。


 廊下はひんやりとした風が頬を撫でる風通しのいい場所だった。

 正面の絶景から目を離して左右に顔を向ける。廊下は何メートルにも渡って続いていた。


 ここは家というよりも屋敷というのが正しいのかもしれない。



 俺がそう思い始めながら気の向くままに足を進めた。


 廊下を左へと進むと、ドドドドドという高い場所から水が落ちていく音がだんだんと大きくなって聞こえてくる。お風呂を入れ始めた時の音を何倍にもしたような音だ。


 そのまま突き当りを曲がるとそこには滝があった。


 屋敷の目と鼻の先に断崖絶壁の岩壁があり、その天辺から水が流れ落ちて滝を形成していた。

 滝の水飛沫が風に乗ってここまで届いていた。天然のドライミストになっているようで、クーラーの効いた部屋の中にいるように涼しかった。


 崖の下は滝壺になっていて森の方へと水が流れていた。あそこの水は夏でも冷たそうだ。一度泳いで見たくなる程に澄んでいるように見えた。


 来た道を引き返して今度は右へと進んだ。しばらく進むと、真向かいに神社が立っていた。このような秘境にひっそりと建っている様は神秘的な印象を抱かせた。


 ふと、その境内で動く影があった。


 目を向けると、巫女装束を着た女性が竹箒を持って掃除をしていた。


 





 その姿に目を奪われた。



 そこに



 天使がいた。



 絹のような光沢の赤みを帯びた金髪。

 腰まで伸ばされた髪は、風に吹かれてサラサラと流れていた。


 身長は俺よりも低いだろうか。しかし、ゆったりとした巫女装束の上からでもはっきりとわかる膨らみは、発育の良さを窺える。


 頭には光輪ではなく三角形の狐耳が生えていた。天使の後ろには翼の代わりに髪色と同じ尻尾が生えていた。




 綺麗だった。




 ぽけーっと見惚れていたら天使と目が合った。琥珀色の瞳は遠くからでもはっきりと見えて綺麗だった。

 

 竹箒を胸に抱いて頭を下げてきたので、俺もつられて頭を下げた。



「あ、お兄さん! 」


 横合いから声がした。声の方に振り替えると小振りの土鍋を乗せたお盆を持った少女が頬を膨らませていた。  


「布団から出たらダメじゃないですか。まだ安静にしてないとめっ! ですよ」


 


 俺は少女にせっつかれるようにして最初の部屋に押し込められた。


 少女が作ってくれたという七草粥のようなお粥(ちょっと苦い)をチビチビと食べながら、じーっと監視してくる少女に先程見かけた女性のことを聞いてみた。


「ふぇ? 凪さんのことですか? 」


 凪っていうのか……よし、覚えた。


「凪さんは、うちの神社で奉っている神様に仕えている神使(しんし)なんです。わたしにとったら親代わりのような人です」


「しんし? 」


「神使というのは、神のお使いという意味です。神様のお言葉を代行する立場のことです。とは言っても凪さんは、神様に気に入られて神使の座についたそうなので本来の神使とは成り立ちが少し違いますが大体同じです」


「はぁ……」


 神のお使いと言えば、動物の話を聞いたことがあるけど、凪さんの体から獣耳や尻尾が生えていたのはつまりそういうことなのか?



「そう言えば、ここはどこなんだ? 見た所どこかの神社のようだが……」


「はい、そうです。ここは神社ですよ。ちょっと立地が特殊なんですけど、石段を降りて行けばお兄さんの街に出れると思います」



 どうやってここまで意識を失った俺を少女が運んだのか、見当もつかないが外の景色からして下手をすれば、どこか人里離れた山奥にまで連れてこられた可能性もあった。少女の言い回しが少々気にはなったが街が近いと聞いて俺はほっとした。

 


「昨夜のあの化け物は何だったんだ? まともな生き物には見えなかったが」


「あれは、生物の負の感情で育ち、魂を蝕む悪しき化生です。

 わたしたちの間では、穢れと呼んでます。お兄さんには妖怪や怪異と言った方が分かりやすいですかね」


「妖怪……そんなのが本当に現実にいるのか?

 いや、疑っているわけじゃなくて、そんな恐ろしい奴がいるのにどうして世間じゃ、妖怪は現実にはいないということになっているんだ? 」




「見えないからです」




 ……え?


「穢れは、普通の人の目に映ることはありません。それに穢れは、幽世(かくりよ)にいて現世(うつしよ)に出てくることはほとんどないからです」


 かくりよ? うつしよ?


「いや、でも俺ははっきりと……」


「お兄さんは、見える人だからですよ。だって、凪さんのことが見えたんですよね? 見えない人には凪さんのことも見えませんよ」






 どうやら、俺は見える側だったようだ。ってか、その理屈だと幽霊も見えちゃうんじゃないだろうか。


「もしかして、幽霊とかもいるのか? 」


「はい、いますよ。

 穢れと違って幽霊は、現世(うつしよ)にいることも多いので、お兄さんも見たことあると思いますよ。けど、幽霊は生前と変わらない容姿をしているのでお兄さんくらいはっきり見えていると慣れてなければ見分けがつかないかもしれないですね」



「そうなのか……。ところで、『うつしよ』と『かくりよ』って何だ? 」


「うーん、現世は、お兄さんが普段住んでいる人が生きている世界のことです。幽世は、その逆で人のいない世界。代わりに神様や幽霊や穢れなんかがいっぱいいる世界です。2つの世界は、表と裏のように密接に接しています。本来交わることがない2つなのですが時折2つを繋ぐ大きな穴が生まれて、そこから現世から幽世に人が迷い込んだり、逆に幽世から現世に穢れが出てしまうことがあるんです」



「もしかして俺が出会ったその穢れっていうのは、幽世から出てきた奴なのか? 」


 俺の問いかけに少女は、神妙に頷いた。


「はい、恐らくは。お兄さんのような見える人は、穢れにとって見えない人よりもおいしいご飯に見えちゃうそうなので、お兄さんが狙われたのはそのせいだと思います」




 おいしそうなご飯って……



 化け物に喰われかけたあの時を思い出して、ゴクリと息を呑んだ。


 あんな思いはもう嫌だった。






 

「何から何まで世話になったな。ありがとう」


「いえいえ、気にしないでください。このまままっすぐ石段を降りていけば、お兄さんの住む街に出ると思います」



 茜色に染まった空の下、石段の前で俺は少女と別れの言葉を交わしていた。

 半日も布団で安静していたら体調は、すっかり回復している。見ず知らずの俺を化け物から救って、面倒も見てくれた少女には感謝していた。



 あの天使……ゴホン、あの綺麗な人に最後に一目見たかったのだけど、その姿はない。他に用事でもあるのだろうか? いや、そもそも挨拶を交わしてすらいないのだから、見送りに来ないのも仕方ないか……と、俺は肩を落とす。


 俺のそんな様子から少女は、俺の内心を見抜いたのか苦笑いを浮かべた。


「凪さんはちょっと対人恐怖症というか、人見知りなので……あ、でも近くにいますよ。ほら、あそこに隠れてます」


 少女が指さした方を俺は、バッと顔を上げて視線を向けた。


 ……いた!


 神社の正面、僅かに開いた襖の隙間の奥から金色の瞳がこちらを覗いていた。目があうと、動揺した気配がしてパタンと音を立てて襖が閉められた。



 姿を見せてくれなかったのは、残念だったが見送りに顔を出すくらいには興味を持っていてくれていたと思うと、悪い気分ではなかった。



 いい気分のまま俺は、少女に見送られながら石段を降りて行った。



 ……ところで、この気が遠くなるほど長い石段って、一体何段あるんだ?




◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ヒーヒー言いながら汗だくで石段を降りてから数日が経った。


 あの日、一時間近くかけて石段を降り切ると路上に出た。時計を見ると、とっくに8時を過ぎていて辺りは薄暗く周囲に人気はなかった。スマホで現在地を確認すると、少女の言う通り、自分の住んでいる街の中だった。しかし、不思議なことに山から下りてきたというのに現在地は住宅街を示していた。


 そして、後ろを振り返ると先程まで存在した石段と赤い鳥居が影も形もなくなっていた。


 その時の俺は、狐に抓まれたような顔をしていたに違いない。


 分けがわからないことだらけだったが、不思議なことが立て続けに起きていたあの日はもうそれをおかしいとは思わず、ワープみたいなものか、と妙な納得をして受け入れてしまった。


 その後、俺は適当なスーパーで売れ残りの弁当を買って一日ぶりに家に帰宅した。


 風呂に入る時に、包帯を取ったら肌にベタベタと呪文のようなものが書かれた札が張り付けられてて思わず情けない悲鳴を上げたが、その札のおかげなのか体のあちこちにあった擦り傷が綺麗さっぱり治っていた。



 それから数日、俺は今までと変わらない怠惰な夏休みを過ごしていた。まだ夜道を出歩くのは怖いところがあるが、あれから化け物と出会うこともないし、幽霊なんていうオカルト的な存在とも出会わない。至って今までの生活をしていた。


 ひょっとして、あれは俺の夢だったのだろうかと思う時もあるが、記念に取っている札とかを見ると現実に起きたことなんだよなぁ……



 しかし、よく考えてみれば、俺は化け物に偶然、出会ってしまった不幸な一般人でしかないのだから、ヒーローである少女に助けてもらった後は今まで通りの生活が待っているに決まっている。




 物語の主人公じゃないんだから、そこからどっぷりと非日常に浸かってしまうなんてことあるはずがなかった。







 …………なんて思っていた時期が、俺にもありました。






「おい、ふざけんな! くっそっ! 真昼間だぞ! デパートだぞ! オカルトは真夜中だと相場で決まってるだろ! 」



 その日は、昼間から近場のデパートに涼みに来ていた。エアコンのないサウナのような部屋よりも冷房の効いたここで過ごす方が何倍も居心地が良かったからだ。今のご時世にエアコンがないとか、ふざけているとしか言えない。まぁ、夏の暑さを舐めて家賃の安さに目が眩んだ俺の自業自得な面もあるのだが……。


「他の人間には見えないってマジかよ。しかも、あいつ俺だけを狙ってきてやがる……! 俺はお前の餌じゃねぇってのに! 」


 いや、今はそんな話をしている場合ではなかった。

 デパートでしばらく涼んでいた俺は、尿意を覚えてトイレに行った。


 そこで、俺は人生で二度目となる化け物と出会った。

 あまりにも早い再遭遇に涙を流さずにいられない。


 個室トイレの便器から噴出するように出てきた化け物は、以前の狼のような見た目とは全く違った。

 てらてらと光沢のある体表にギョロギョロと動く気味の悪い大きな赤目のカメレオンのような化け物だった。


 呆気に取られていた俺が化け物の初撃を回避できたのは運が良かったとしか言えなかった。咄嗟に横に転がった俺のすぐ横を化け物の口から飛び出してきた舌が通り抜けた。背後の便器が砕ける音がして水道管が弾けたのか水が噴き出してトイレに雨が降った。



 化け物が噴き出した水に気を取られた隙に俺はトイレから逃げ出した。


 当然の如く化け物は天井を這って追ってきた。


 周りの人間には化け物は見えていないのか、必死の形相で走る俺をすれ違う人たちは奇異の目で見てくる。しかし、見えないからと言って、すり抜けたりするわけではないから見えない化け物に体を押しのけられたり、物が突然壊れたように見えて、その薄気味悪さから見えない客たちも俄かに騒がしくなってくる。


 そんな人たちに化け物は目もくれずに俺を追ってくる。


 そんなにおいしそうに見えるのかよ。チクショウ!


「ハァハァ……こんなことだったらあの子に化け物のお手軽な退治の仕方とか教わっとけばよかった」


 デパートの三階にいた俺は、エスカレーターを駆け下りる。律儀に階段を降りずに半ばほどでエスカレーターから身を乗り出して飛び降りる。周囲の客からギョッとした目で見られるが、こちとら化け物に命を狙われているのでそんなものに構ってなどいられなかった。むしろ、商品を化け物にぶつけない程度の理性が残っていることに褒めて欲しいくらいだった。


 あの時助けてくれた少女と違って、化け物を倒す術を持たない俺にできることはただひたすら化け物から逃げることだけだった。


 幸い、あれは舌の攻撃こそ厄介だが動きは全然早くない。十分に振り解ける速度だった。



 逃げ続けていれば、あの時のように少女のような存在が再び現れるのではないかと希望を抱いて、俺は形振り構わず逃げていた。




「そこまでです! 」


 待ちわびていたその声が聞こえた時、俺は年甲斐もなく涙が出そうだった。



 振り向いた先にいたのは、コスプレのような巫女装束の黒髪の少女、神楽(カグラ) 弓美(ユミ)であった。



「ああ、もうどうしてこんな場所に出ちゃうんですか! 」



 少女がぷりぷりと怒った様子で杖を振るうと、あたりに清らかな光が降り注ぐ。光が降り注いだ場所が淡く輝いて少女と化け物を周囲から隔離する透明な壁を形成する。


 触れると硬質な透明な壁があるのがわかる。


 その隔離結界から俺は辛うじて外れていた。



「助かったぁ……! 」


 床にへたりこんだ俺は息も切れ切れに深い深い安堵のため息をついた。

 透明な壁を隔てた向こう側では、少女とカメレオンの化け物が一進一退の攻防を繰り広げられていた。あのカメレオンはもしかしたら以前出会った毛むくじゃらの化け物より手強いのかもしれない。少女は攻めあぐねているようだった。

 

 遮音性も高いのか内部の音は一切聞こえてこない。

 そして、周囲の人間もデパートの一階の中央ホールが透明な壁で隔離されている状況だと言うのに気にならないし気づかないのか、誰も気にした様子もなくショッピングを楽しんでいた。壁の近くにいる俺もその効果範囲に入っているのか、息も絶え絶えに床に座り込んでいる俺に視線を向ける客は一人もいなかった。



 しばらくすると、内部の戦いも佳境を迎える。少女がばら撒いた呪符が紫電を発して化け物の動きをその場に縫い留めた。そして、少女は前に化け物を倒す間際に見せたように舞い始めた。


 これで決着か。と俺は悪夢が去ることに胸を撫で下ろす。


「ん? 」


しかし、結界の中で何かが動いたのが目に入り、俺は思わず叫んだ。


「何で結界の中に子供がいんだ!? 」


 そう。結界の中には少女と化け物の他に明らかに部外者だと思える3歳ほどの男の子がいた。中央ホールで大安売りの衣服が積まれた陳列ワゴンの下にでも隠れていたのか、横転したワゴンの赤い敷布の中からもぞもぞと這い出てきた。子供は、状況が理解できていないのかしきりに辺りをキョロキョロとしていた。


 そして、化け物と目があった。


 不幸なことに子供は俺と同じ見える側だった。壁に阻まれて子供の声は聞こえなかったが、子供は口を大きく開けてボロボロと泣き出した。


 それに反応したのは化け物だった。身動きが取れない状況で口を開けたかと思うと、あの伸縮自在の舌が子供めがけて伸ばされた。


 まずい……!


 そう思っても壁で阻まれて俺ができることはなかった。代わりに少女が動いた。


 舞いを中断した少女は、射線へと飛び出して子供を庇った。


 そして、少女は代わりに吹き飛ばされてた。


「え……? 」


 少女の眼前に壁が生じて防げると思っていた俺は、その結果を脳が理解するのに数秒を要した。



 バリバリと無数の紫電を生じさせながら化け物が呪符の拘束を破り始める。子供には目もくれず、視線は少女へと向いている。先程の攻撃は、はじめから子供を狙ったものではなかったのだ。


 化け物は床に蹲る少女へと近づくと、舌でまた弾いた。少女は蹴られたボールのような気やすさで跳ねる。


 明らかに少女を弄んでいた。抵抗できない少女をすぐに死なない程度に甚振っていた。


 ギリィ……!


 噛み締めた奥歯から異音が鳴った。化け物の癖にふざけた真似をする。


 ガンッ


「おい化け物!! お前の目当ては俺だろ! こっちにこいよ! 俺の方にこい! 」


 壁を殴るが透明な壁はびくともしない。逆に殴った拳が痛くなる。

 壁があるせいで、俺は少女が弄ばれるのをただただ見ていることしかできなかった。


 自分の無力さが腹立たしかった。



「くそっ……」

 

 壁に両手をついて俺は俯く。

 心のどこかで壁の外にいることにほっとしている自分がいることにむかつく。


 

 子供の甲高い泣き声が煩わしかった。



 ……子供の泣き声?


 顔を上げると、壁が消えかかっていた。おそらく少女が結界の維持をできなくなったのだ。


 俺は立ち上がった。



 膝はガクガクと震えている。恐くないわけがない。


 でもだからって自分より年下見捨てて逃げるなんて恰好悪い真似は出来なかった。


 ああ、わかってる。馬鹿なことだと思う。少女は化け物退治のエキスパートで片や俺は、ただの化け物の餌になるだけの一般人。俺なんかが出て行ったっていいように食べられるのが落ちだ。


 だからといって、命の恩人でもある少女を見捨てていい理由にはない。化け物退治のエキスパートなんだ。俺が少しでも化け物の気を引ければきっと起死回生の一手を出してくれるに違いない。



 俺は破損したワゴンの部品の一部なのか転がっていた手頃な金属パイプを拾って化け物へと突貫した。


「うおおおおおおおおお!! 」


 恐怖を紛らわすために大声をあげて突貫する。俺の声に化け物がぎょろ目を動かして俺と目があった。


「ぐふっ」


 無造作に降られた化け物の尻尾で俺は吹き飛んだ。星が散ったように視界が瞬き世界が揺れる。直撃した脇腹を中心に痛みが弾けた。



 痛い痛い痛い痛い痛い!


 思考が真っ白になる。冷や汗なのか脂汗なのかよくわからない気持ちの悪い汗が全身から出てくる。極度の緊張からか触覚の感覚も朧気になってくる。


 それでも俺は、パイプを再度握りしめて四肢に力を入れる。


「うおおおおおお!! 」


 喉が張り裂けんばかりに声を張り上げて走る。


 足がもつれる。体勢が崩れてこけそうになったことで、幸運にも化け物の尻尾を躱すことができた。


 足に力を入れて走る。ポタポタと頭から垂れた熱い汗が顎を伝って滴り落ちる。

 どんどん感覚が消えて行っている気がする。それでも落として堪るかとパイプを握る力を強める。

 止まって堪るかと足に力を籠める。意識を失って堪るかと奥歯をかみしめる。



 化け物が顔をこちらへと向ける。口が開かれる。まずいと思って横へと走ろうとするが、感覚の鈍った俺の体に急な方向転換は無理だった。ピンク色の何かが見えたと思ったらそれは化け物よりも大きくなって俺の腹部へとぶち当たった。


「お˝っ」


 腹の奥から熱いものが口へと競りあがってくる重い一撃だった。痛いというより最早苦しかった。口が呼吸を忘れたように息ができない。腹部の痛みも最早痛いと認識できない。手に握っていた筈の金属パイプがなくなっていた。


「おにいさん……にげて、にげてください……! 」


 横から囁くような声が聞こえた。揺らぐ視線を向ければ、ボロボロの少女が床に倒れていた。自分も相当だというのに俺に逃げるようにいってくる。馬鹿な奴だ。


 何か言おうと思ったが声がでない。ひゅーひゅーという呼吸だけが辛うじてできる。


 仕方ないので、少女の頭にぽんと手を置いた。ぐしゃぐしゃと乱暴に撫でてやった。


 お、近くに落ちてたか。


 床に転がったパイプが見つかった。拾うが、もうほとんど手の感覚を感じない。

 大丈夫。つかめてると思う。ぼやける視界の中で俺は、棒を握れているのを確かめる。



 視線を感じた。


 顔を上げると目の前に化け物がいた。


 立とうとすると体が揺れる。しかし、気合で立って化け物を睨む。


「ゴホッ……食うなら俺だけにしろ。あの子はやらせねぇ」


 言ってやる。言ってやった。言い切った。



 そして、俺は暗い闇に呑み込まれた。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆



――シャラン


 ……なんの音だ?



――シャラン



 暗闇の中で、どこから鈴の音が聞こえる。



――シャラン


『力が欲しいか』


 

 纏まらない思考の中で、その声だけがはっきりと聞こえた。



――シャラン


『力が欲しいか』



 鈴の音と共に同じ問いかけが繰り返される。



 力……力か……。貰えるものなら欲しいな。



――シャラン


『力が欲しいか』



 欲しい。化け物に食われる人生なんて真っ平ごめんだ。



――シャラン


『力が欲しいか』


 ああ、欲しい。小さな子供に守られる側じゃなくて誰かを守る側に立ちたい。



――シャラン


『力が欲しいか』


 欲しい!

 それで少女を守れて化け物を倒せるなら俺は欲しい!




――シャン!


『よかろう。ならば、汝に魔を祓う力を授けよう』




 光のない暗闇がその鈴の音によって引き裂かれ、閃光が迸った。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 


 青年に続いて少女を呑み込んだ化け物は、次の標的として未だに泣き続けることしかできていない男の子へと定めた。青年と違ってはっきりと自身を認識することができているわけではない様子ではあったが、少しでも認識することができるなら他の有象無象の人間よりもおいしい餌であった。



「ひっ、ひっ、ひっ」


 姿がはっきりと見えなくとも、悍ましい存在が自分を見てきていることがわかる男の子は、引き攣りを起こしたようにしゃっくりを繰り返し、ガタガタと体を震わせる。


 恐怖。


 それは化け物にとって最高のスパイスであった。おいしい餌に恐怖といった負の感情を抱かせるのは、おいしく食べるコツである。その点、先程の2人は素材は極上であったが、不十分であった。


 化け物は、魔の本能に従ってどう甚振ろうかと模索する。すぐに食べてしまってもよいが、すでに腹には極上の2人を納めている。それほど欲しているわけではない。


 取り憑き、常に恐怖を煽り、熟成させるのもありかもしれない。



 そう考えもする化け物。


 見逃すなんて選択はなかった。



 と、化け物が次の行動を取らないでいると、自身の中で異変が起きた。


 ドクンと何かが鼓動する。化け物のギョロ目は忙しなく動き出し、尻尾がびたんびたんと落ち着きなく床をたたき始める。何やら脂汗のようなものが全身から吹き出す。



 ドクンと鼓動する。それに合わせて化け物の腹部が風船のように一瞬膨れ上がった。


 それからドクンと何かが鼓動する度に、化け物の腹部は収縮を繰り返した。


 化け物は何が起きているのかわからないとばかりにギョロ目をギョロギョロと動かすことしかできなかった。男の子が逃げ出しても動けなかった。


 ドクンと一際強く鼓動すると、化け物の口内から光が放たれた。ギョロ目が赤く輝く。ビクンと化け物の体が震えて、腹部から喉へとかけて何かが込み上げてきて吐き出された。



 吐き出されたのは青年でも幼い少女でもなく、高校生くらいの美少女であった。赤と白の巫女装束に身を包む彼女の手には少女の持っていた鈴のついた杖が握られていた。



「光よ」


 凛とした鈴を鳴らしたような声で発せられた彼女の言葉で杖が振られるとシャランと鈴が鳴り、鈴から光の玉が幾つも生み出されて化け物へと殺到した。


 化け物に触れた光の玉は小爆破を繰り返し、化け物が堪らず悲鳴を上げる。


 そんな化け物の前で彼女は舞う。彼女の瞳は閉じられていたが、彼女は物が散乱した床の上で見えているかのように危なげなく舞う。淡い光を纏って舞う彼女は、この世の者とは思えぬ儚さを纏っていた。


――シャラララン


 彼女が回るのに合わせて鈴がなった。


「神の御業でもって


       悪しき化生を祓いましょう」



――シャン


 化け物を中心に方陣が床に現れ、光の鎖が方陣から飛び出して化け物を床に縫い付けた。そして、彼女の手に白い光でできた和弓が握られる。和弓に白く輝く光の矢を番えて、引き絞る。矢が向けられた先には当然、鎖で身動きを封じられた化け物に向けられていた。閉じられていた瞳を開いた彼女の黒い瞳は赤く輝き、化け物を何の感情もなく見据える。


「破魔の光矢 」


 彼女の指から矢が放たれた。


 放たれた光の矢は化け物の眉間へと突き刺さり、突き抜ける。光の矢から剥落した光の粒子が紙吹雪の如く舞った。

 化け物はビクンと体を大きく震わせると力を失ってその場に崩れ落ちた。そして、眉間を起点にさらさらと塵へと変わっていった。最後に降り積もった塵は淡い光へと変わり虚空へと解けて消えた。




 化け物が消え去ると共に彼女の手に握られた光の弓も形を崩して端から解けて消えていった。光が立ち上って消えていく様子を彼女は上を見上げて追っていた。


 それを化け物に襲われかけていた男の子は呆けた顔で見ていた。



 すると、上を見上げていた彼女と目があった。



 目があった男の子はビクッと体を震わせるが、彼女は男の子に対して優しく微笑み返した。男の子へと歩み寄り、座り込んだ男の子の前でしゃがんで男の子の頭をグシャグシャと撫でた。



 ひとしきり男の子を撫でて彼女は満足したのか、呆けた男の子を残して彼女は杖を振るうと虚空に現れた赤い鳥居の門を潜ってデパートから姿を消したのだった。









「あ、弓美さん。おかりなさ――ってどうしたんですかその姿!? えっ、えっ!? ぇぇええええ!? 」


「『おお、凪か。ちょうど良いところにいた』」


「かかか神様!? 一体何があったんですか!? 」


「『うむ。もう時間がない。後は任せた』」


「後は任せたって神様……ってああ! 弓美さん大丈夫ですか!? 弓美さん! 」





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 目が覚めたら何故か隣に天使がいた。



「あ、目が覚めたんですね」


 俺が目が覚めたことに気づいた天使が顔を近づけてきた。

 瑞々しい桜色の唇に目を奪われる。


 あ、なんかいい匂いもする。


 そうか……ここが天国か。


「調子はどうですか? どこか痛むところや頭痛や吐き気といった気分が悪いところはありませんか」


 ひんやりとした手を額に当てられて火照った思考が冷める。

 どこかぼんやりとしていた思考がクリアになった。


 天使もとい凪さんから視線を外して、仰向けのまま顔を動かして周囲を確認する。


 見慣れない和室。

 自分の部屋ではない。あの不思議な神社の屋敷の一室か?


 ってことは、少女はあのカメレオンみたいな化け物に勝ってくれたのか。

 化け物の前に立ったところで記憶がないからな。


 よく生きてたな俺。


 あんなに無茶したのに不思議と体に痛みはない。あ、でもなんか胸が重いというか、ちょっと息苦しい。



 というところまで思考を巡らせて、凪さんが心配そうな目で見てきていることに気づいた。



「大丈夫、ですか? 」


「え……あ、大丈夫です」


「よかったぁ……」


 俺がそう答えると凪さんは豊かな胸を手で押しつぶして深い深い安堵のため息を吐いた。



「私、本当に心配したんですよ。帰ってきたと思ったら姿が変わってますし、神様がその身に降ろしてますし……。いいですか。いくら親和性が高いからと言って神様を体に直接降ろすなんてまだ早いですよ。弓美(・・)さんの幼い体に負担が強すぎます。まぁ、今回は一時的に体が急成長するだけで済みましたが、いつもこう上手くいかないですよ。弓美(・・)さん、降神術を使うのはもっと大きくなってからです。いいですね? 」



…………???? 一体何のことだ?


「弓美さん、聞いてますか? 」


「え……あ、うん」


「なら返事は? 」


「いや、何か勘違いを……」


「へーんーじーはー? 」



 まってまってまって!! そんなに上から体重かけてきたら凪さんの体温というか感触が伝わってきて……


「ふぇ!? 顔が真っ赤ですよ。だだ大丈夫ですか弓美さん!? 」


「大丈夫……大丈夫だから一回離れて」


 心臓がバクバクいってるのがわかる。ああ、もう顔が火照る。熱い


 というか、さっきから凪さんは俺のことを誰かと勘違いしてないか? ユミって誰だ?


 ユミ……あ、そうだ。俺を助けてくれた少女の下の名前じゃないか。

 いやいや、小学校くらいの女の子と大学生の俺を勘違いするか? 性別もそうだけど、何より身長が違うだろ。


 そんなありえない勘違いをするところも可愛い……いやいや、今はそんなことを考えている場合じゃないな。


『んー? もう騒がしいですね。一体何事です? 』



 唐突に、凪さんの行動に思考を乱されていた俺の脳内に少女の声が響いた。今、目覚めたとばかりの眠たげな声だった。


 なんだ? と思っていると、右手が勝手に上がって目元をこしこしと擦り始めた。


「うわっ!? 」


 その突然の動きに俺は驚き、右手を持ち上げた。俺の突然の行動に凪さんは目を白黒させていたけど、俺はそれどころじゃなかった。さっきとは違う意味で鼓動が早くなっていた。


『ふぇ? 』


 まぬけな声が脳内に響くが、首を傾げたいのは俺の方だった。また右手が勝手にグーパーし始める。右手に集中するとすぐにそれは止んだ。脳内に響く声が『んん??』と不思議そうな声を上げる。


『あの、誰か私の体の中に入ってますか? 』


 それはこっちのセリフである。


『お前は誰だ』


『私は神楽 弓美です。あなたは誰ですか? 』


 頭の中でそう呟いたら、反応があった。というか、神楽弓美ってあの子じゃないか。


『俺だ。神楽 楽斗だ。なんだって俺の中にいるんだ? 』


『お兄さん? どうして……? 』


 脳内に響く声から戸惑いの感情が伝わってくる。少女もこの事態に困惑しているようだった。


 化け物から生き延びたっていうのに一体俺の身に何が起きてるんだ?


『ちょっと状況が読めないので、体の主導権を一旦借りますね』


 そう言われた瞬間、意識が遠のいていく感覚を覚える。コントローラーから手を離したように体の主導権が俺の手から失われたのを本能的に感じた。



 俺から主導権を奪った少女によって、体が飛び起きた。かけ布団を引っぺがして体をまさぐっていく。


『は? 』


 視界に映る自分の体に俺は目を瞬いた。


 胸がある。というか、腕が細い。肌白い。ってか髪が長い。


 明らかにその体の性別は女の子であった。

 しかし、小学校くらいの少女よりもその発育は進んでいる。なんとなくだが、高校生くらいといったところか?


 体の主導権を奪われているのでまるで夢を見ているような感覚だった。



「これは……」



「ゆ、弓美さん? 急に飛び起きてどうしましたか? 」


「あ、凪さん。おはようございます。えっと、この体は一体どういうことでしょうか? 」

 










「なるほど……」


 テンパった凪さんからの要領の得ない話を一通り聞いた少女は、そう零した。


 俺? さっぱりわからん。


 わかったのは俺と少女が化け物に呑み込まれた後、なんやかんやあって俺と少女の体が合体しちゃって、なんやかんやあってその体に神社の神様が降りてきて、なんやかんやあって神様がその体で化け物を蹴散らして、なんやかんやでその副作用で現在、俺と少女は精神と肉体を共有し合う関係になってしまったということだけだった。


 な? さっぱりわからないだろ。


 少女と俺の体が混ざった結果、高校生くらいの女の子になったとかちょっと意味が分からない。

 


『で、結局元に戻れんの? 』


 その辺が気になった俺は、意識の中で少女に尋ねた。


『……分からないです。私もこんなことになったのは初めてで。1つの肉体に複数の魂が存在する事例は聞いたことがありますが、2つの肉体が1つの肉体に作り変えられるなんてことは聞いたことがないです。多分、化け物の体内という特殊な状況下であったことと神様を体に降ろしたことが原因だと考えられます。直接、神様に聞いてみないことにははっきりとは……』


 神様か……。


『その神様ってのにすぐに直接話をすることは出来ないのか? 』



『出来ます。すぐに準備をします』


 出来ちゃうんだ。



 神様との対話ってそんな簡単に出来るもんなんだな。と俺が思っている間に、未だに体の主導権を握っている少女は凪さんに矢継ぎ早に指示を出して自身も布団から出て、その神様と話をするための準備を始めた。


 って


『この体、寝てなくて大丈夫なのか? 』


「大丈夫ですよ。合体したときに体の負傷は回復しているようですし、神力の方もじゅーじつしてますから」


 少女は寝間着から白衣へと着替えながら独り言という形で答えてくれる。


 おおっ、我ながらなかなか……


「あ、見ちゃダメですよ」


 邪な思念が読まれたのか、主導権を握る少女から視覚をシャットアウトされてしまった。残念。


「お兄さん。結構余裕ありますね」


『余計な事考えてなければ、参っちまうからな』


 こんな普通に生きていれば、まず経験しないだろう異常事態。先の事なんて考えてたら精神病んでしまいそうだ。


 いや、本当に家族になんて説明すればいいんだよ……。息子が妹くらいの女の子になって帰ってきたら大事件だ。大学とかもどうしよう。友人となんてこんな体じゃ会えないぞ。


「ごめんなさい……。お兄さんを巻き込んでしまって」


 いくらか思考が漏れてしまったのか、涙声の少女に謝られた。


『あー、君が悪いわけじゃないよ。助けに来てくれたんだから感謝こそすれ怒ったりなんかしてない。むしろ、俺の方が足手纏いで悪かった』


「そんなことないです。……ウッ……だってお兄さんは私のこと……ヒック……助けようとしてくれたんですから……グスッ」


『あー泣くな。泣くな。君が俺を助けてくれたんだから、俺も体張らないとかっこ悪いだろ。ほら、涙拭いて拭いて』


 少女の感情に引きずられてポロポロと両目から涙を零し始める自分の体を俺は、少女の主導権が緩んでいたので左手を持ち上げて涙を拭ってやる。


「ありがとうございます……グスッ」


 ……傍から見たらただ自分の手で涙を拭ってるだけだな、これ。









 着替えを終えると、少女の主導によって廊下に出た。長い廊下を歩いていると遠くから聞こえていた滝の音が段々と大きくなってきている。滝の方角へと向かっているようだ。



『どこに向かってるんだ? 』


「滝です。神様と交信する為には一度体を清めなければいけないですから」


『へー…………マジで? 』


「まじ? 本当ですよ? 」



 あそこ夏でも絶対冷たいだろ。いや、前に泳いでみたいとは言ったけどさ。言ったけどさ!


 頭の中で俺が愚図っている間も少女が動かす体は立ち止まることなく滝へと続く飛び石の上を歩いていき、滝へとついた。


 少女は何の躊躇いもなくその身を滝壺へと足を進めた。


 冷たっっっっ!



 瞬間、太ももから肌を刺すような強烈な冷たさが全身を駆け巡った。主導権は少女が握っていても少女が防がない限り、五感はしっかりと共有されている。故に、俺もその冷たさをダイレクトに感じていた。


 冷たいというか、痛い。全身に無数の針を刺されてるかのようにすごく痛い。


『冷たい冷たい冷たい! いや、これダメだからダメな奴だから! 無理無理無理……』


 あまりの冷たさに俺は一刻も早くここから出ようと少女から体の主導権を取ろうと躍起になった。


「あっ、お兄さん。落ち着いて、すぐにすみますから大人しく……きゃっ!? 」


 俺が少女から体の主導権を奪って水から出ようとして、それを少女が止めようとした結果、体の命令系統がぐちゃぐちゃになり、体はその場でもつれて盛大にこけてしまった。


 バシャ―ンと水柱が上がった。


「もー、お兄さんの馬鹿」


『ごめんなさい……』


 体の主導権は少女の手にしっかりと握り直された。文字通り冷水を頭にぶっかけられて冷静になった俺は誠心誠意謝った。







 禊を終えた俺たちは滝の裏にある祠へと訪れる。奥には祭壇があり、数本の蝋燭で照らされているだけの薄暗い場所だった。そこには既に凪さんの姿があった。


 おぉ……


 凪さんも禊を受けているのかお揃いの白衣を着ていて、濡れてしっとりと肌に密着しているせいで凪さんの悩ましい体のラインが如実に現れていた。


 もっとじっくり見ていたかったのに少女によって視線はすぐに凪さんから外されてしまった。無念。


「弓美さん、準備はもう出来てますよ」


「凪さん、ありがとうございます」


 祭壇から少し距離を取って俺たちはその正面に座った。少女は慣れた所作で正座をする。



 凪さんが俺たちよりも手前に座ると祈祷が始まった。


 こういったことは、俺にはさっぱりわからないけど多分、神と話をするために必要な儀式なのだろう。


 それにしても蝋燭に照らされた凪さんの濡れた背中はとても艶めかしい。腰から生えた狐の尻尾が可愛い。

 


『お兄さん、集中してください』


 すみません。


 余計なことを考えていたら、頭の中で少女に怒られてしまった。気を引き締めて俺も集中することにした。俺が元の体に戻れるか、大事なことを聞かなければいけないからな。



 そうこうしていると儀式は終盤へと差し掛かってきたのか、祝詞を唱える凪さんの声にも熱が篭もり始めた。



 そして、儀式が始まって30分くらいが経って、突然凪さんの体がビクッと跳ねた。凪さんの顔が仰け反り、そして全身から力が抜けてくたっと床に崩れそうになる。


 まるで電源がオフになった機械のような反応だった。

そして、再起動したかのように凪さんは床に倒れ伏す前に体を立て直した。



 くるりと凪さんがこちらへと振り返った。しかし、その雰囲気は先程までと一変していた。



 おい、誰だこいつ?


 赤く輝く目を一目見て俺はそう思った。

 天使の中に入った異物を感じて、俺は自分の思考が冷めていくのを感じた。逆に心は怒りで煮え滾りそうだった。



 衝動に任せて緩んでいた体の主導権を取って凪さんではない誰かに掴みかかろうとして、寸でのところで少女に体の主導権を奪い取られた。


『落ち着いてくださいお兄さん! 今、凪さんの中に降りたのは神様です! 馬鹿なことはしないでください! 』


『……なに? 神様? 』


『そうです! 願いに応えて降りてきてくださった神様に対して掴みかかろうなんて何考えてるんですか馬鹿ぁ! 』


『むぅ……。あれか、凪さんは神様と体をシャアしているってことなのか』


『はい。肉体を持たない精神体の神様と交信する為に己の肉体に神様を降ろす術。それが降神術です』


 なるほど。凪さんが急な変化の理由が分かり、俺は気持ちを落ち着かせた。改めて凪さん、いや凪さんに憑いた神様を見ると、神様はこちらを面白そうに見てきていた。



「『()きかな。()きかな。お互い仲良くやれているようだ。青年よ。驚かせてしまったな。凪には我が神使として少しばかり体を間借りさせてもらっている』」



神様(――――様)、私の身に起きている事態を収束するにはどうしたらよいのでしょうか? 」



「『時代の黄昏、逢魔時が始まろうとしている。今代の巫女よ。その日に備えよ。100の魔を祓え。汝の力を幽世に示せ。さすれば、事態は収束を迎えよう』」



 時代の黄昏?

 

「神様! 力を幽世に示せとは一体!? 」


「『もう時間だな。此度の我はよく働いた。さらばだ、今代の巫女よ』」


 自由か。


 少女の問いに答えることなくそう言い終えると、凪さんはガクッと全身から力を失った。恐らく神様が出て行ったのだろう。



 ……ところで


『なぁ、さっきの言葉の意味はわかったか? 』

 

「はっきりとは……。ですが、大体のことはわかりました。私達が元に戻る為には穢れをたくさん倒して、幽世で有名になる必要があるみたいです」


『はぁ!? あんな化け物と戦えってか!? ってか幽世で有名ってなんだ!? あそこって化け物とか幽霊しかいないんじゃなかったのか』


「穢れとの戦闘は私に任せてください。お兄さんは見ているだけで大丈夫です。それに幽世には穢れや幽霊だけでなく数多の神様も住まわれています。力を示す相手は、その神々なのだと私は思います」



 なるほどね……。


『それで、時代の黄昏ってのは何なんだ? 』


「私にもそれはよくわかりません……。でも、黄昏や逢魔時は穢れが現世に現れやすい時を示しています。それは、現世と幽世を繋ぐ穴が空きやすい時ということですので、そこから推測するに時代の黄昏とは現世と幽世を繋ぐ穴が空きやすい時期なのだと考えられます。……お兄さんが遭遇した穢れ達もそう考えると辻褄が合います」


『そうなのか? 』


「はい。日中の人出の多いデパートに穢れが現れることは普段ありません。最初にお兄さんが遭遇した穢れも時間的に出やすい時を少しずれていたのです」


 二回連続で出にくい時間帯に化け物と遭遇するなんて俺どんだけついていないんだよ。


 少女の話を聞いて俺はげんなりとした。



「さてと。取り合えず、一度ここを出ましょうか。凪さんをいつまでも放っておくのも悪いですから。これからのことは落ち着いて話せる場所で話しましょう」



 はっ!?


 俺は少女に言われて、視線の先に意識を失ったまま倒れている凪さんが映っていることに気づく。肌寒くてごつごつとした洞窟の地面の上に凪さんを放っていたことに俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


『そうだな。すぐに凪さんを連れてここを出よう』


「はい。うんしょっと」


『おい待て』


 凪さんの両手を手に取ってそのまま引きずろうとした少女を俺は引き留めた。


「ふぇ? 」


 おい、きょとんとするな。さらっと恐ろしいことをしようとするな。


『そんなことしたら凪さんの背中が大変なことになるだろ。抱っこするなり背負うなり他の運び方があるだろ』


「あ、そうですね。前の私では小さかったので、そんな運び方思いつきませんでした。お兄さんやりますね。……ところで、どうやっておぶったらいいんですか? 」


『わかった。俺がやる。体の主導権を俺に渡してくれ』


 しっかりしているように見えた少女の意外な一面に呆れながら俺は、少女から体の主導権を譲ってもらって凪さんを背中に背負った。


 意識のない人間を背負うのは、大学での飲み会で慣れている。酔って吐いたりただを捏ねない分背負うのは遥かに楽だ。


「よっと。うわっおもっ……くない! 」


 この体は元の体よりも女らしく筋力がないのか、軽い(に違いない)凪さんを運ぶのも苦慮するほどの非力さだった。


『いけそうですか、お兄さん? 』


「問題、ないっ! 」


 大丈夫。しっかりと密着させて背負って重心にさえ気を遣えば、そこまで筋力は必要ない。


 重心を前に移動させて一歩……



――むにゅう


「!? 」


『どうしましたお兄さん? 』


「ナンデモナイデス」


 胸が、胸が背中に! えっ、こんなに柔らかいの胸って。なんか低反発クッションよりも柔らかいしあったかい。


 はっ! いかんいかん。こんな思考が少女に読まれたらまた体の主導権を奪われてしまう。

 無心。無心になるんだ俺。




 俺は自分の邪心(スケベ心)を必死に抑えながら無事に凪さんを屋敷にまで運ぶことができた。



 俺、頑張った。うん。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「これからお世話になることになりました神楽 楽斗と申します。改めましてよろしくお願いします」


「は、はい。よろしくお願いします。えっと、凪と申します」



 屋敷に戻った後、凪さんが目を覚ますまで俺と少女は今後のことについて話し合った。


 幸いなことに大学が夏休みに入っていて一人暮らしなので、夏休みが開ける約一か月とちょっとの間は、この屋敷に厄介になることになった。


 可能ならば大学が始まる前に解決したいところではあるけど、少女の話からすると長い目で見た方がよさそうだった。


 少女の持つ不思議な技の中には別人に化ける技もあるそうなので、最悪それで誤魔化そうという話になっている。



 そして、ここで世話になる間は少女が今まで行っていた巫女の仕事を行うことになっている。まぁ、基本的に仕事の間は少女が体の主導権を握ることになるので、それほど問題はないかと思う。


 問題なのは、化け物退治だろう。


 少女の仕事の一つとして、現世に現れた穢れの討伐もある。そして、この状況を打開するためにも穢れの討伐は避けては通れない道である。


 正直、恐い。死ぬ思い、というかほとんど死んだような経験をして化け物とまた対峙したいとは思えなかった。戦うのは主に少女になるだろうとは言え、化け物と対峙してパニックにならない自信はなかった。



 まぁ、その辺はおいおい覚悟を決めなければならないだろう。




 今はともかく、この状況に慣れることが先だろうな。



『弓美、これからよろしくな』


『はい。楽兄さん、よろしくお願いしますね』




 こうして、俺と少女の奇妙な二人三脚の化け物退治が幕を上げたのだった。

最後までお読みいただきありがとうございました。


この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


ですので、私は私です。


この物語は、ツイッターで出されたお題『まじかるみこみこ神楽ちゃん』に答えた短編になります。

続きに関しては未定です。


続編を望む声が大きいようであれば、連載も視野に入れて頑張ろうとは思ってます。


面白かった、と一言だけでも感想をもらえれば幸いです。

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[良い点] 続き希望 [気になる点] 肉体をシャアする…? シェアじゃなく? わざとか誤字か不明ですが仮面のあの方が浮かんですこしくすりとしてしまいました
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