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セブンスナイト ―少年は最強の騎士へと成り上がる―  作者: 清弥
2章 ―救済探す治癒の藍―
22/79

悪夢

2章、開幕です。

 草木が生い茂る、町の外れにある小さな森の中に二人の人影があった。


「ぐっ……ぅう……」

「…………っ」


 腹部に巨大な穴を開けて大量の血を流し続ける男性に、黄金に輝く髪を汗で湿らせながら女性……いや十代後半ほどの少女が必死に治療している。


「これで、大量出血は抑えられた……はず」


 幼い頃から医療技術を学んでいた彼女にとって、彼の延命治療は簡単とは言えなくても無理な作業ではなかった。

 多量に出血している腹部の傷を簡易消毒し布で強く縛り付けたことで傷口を圧迫した彼女は、これで一先ずは安心だと息を吐く。


「後は父のところに……」


 安心させるように穏やかな笑みを浮かべようとした少女だったが、自分で言いかけた言葉を止めてしまう。


「…………」

「どうし、たんだ? 嬢ちゃん」


 止血したことで意識をかろうじて取り戻したのか、脂汗を全身にかいている男性はうつろな目で悩む少女へと声をかけた。


「……いえ、なんでもありません」


 数瞬の間、悩んでいた少女はあることを決意する。

 ようやく止血を終えたはずの布を取り去り、彼女は自前のメスを持ち運んでいる簡易手術セットから取り出した。


「お嬢ちゃん、な、にを……」

「もし”アレ”らの力が身体に侵食していたら大変です。それだけでも取り出さないと……!」


 彼女自身にもそれがただの戯言なのだと理解できないほど馬鹿ではない。

 ならば、何故こんな危険なことをしてしまったのか。


(父なんかに、頼るもんか)


 不甲斐なくミスをしてしまい患者を殺してしまうような父に、手術を任せる訳にはいかないのだ。

 だから自分が、あの人の失敗を目前で目にしている自分自身が患者の命を救う。


 それだけではない。


(成功したらきっと、私も治療の席に立たせてくれるはず……!)


 きっと自分が悪かったと言って、自らの力不足を痛感して、自身に全て任せくてるはずだ。

 ――認めてくれるはずだ。


「ぐぅっ……!」


 故に彼女は気づかない。

 意識を取り戻していたはずの患者が意識を失っていることに。

 気分の高揚から繊細なコントロールが必要な手術が、少しだけだとしても大雑把になっていることに。


 患者が死へと更に近づいたことに、気づかない。


「――――」

「……ぁ」


 結果として、彼女がソレに気づいたのは全てが終わったあとだった。

 私利私欲の結果がコレだ、酷いモノである。


 ならばこそ――


「――つぐ、な……え」

「ぁあ……!」


 先程まで死に絶え、生暖かさが残っていたはずの彼の死体が急激に冷たくなり白骨化する。

 ガタガタと寒さからか震える骨の手が、幼い少女の頬を伝った。


「償え」

「ひっ!」


 どす黒い負の感情を撒き散らしながら彼は生の暖かさを求めるように両手を伸ばし、真っ白な歯を大きく開けて……


「死んで償え」





「いやぁあッ!」


 そして彼女は目が覚める。

 周りを慌てて見渡せばそこには見慣れた私室が視界に入ってきた。

 汗でびっしょりのシーツの上であることを気にせず、彼女は震える身体を暖めるように身体を掻き抱く。


「ごめんなさい、ごめんなさい……」


 呆然とうわ言をつぶやき続ける彼女。

 吐く言葉の意味は、恐怖か、罪悪感か、それとも――


 ――己への恨みか。

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