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女子マネ甲子園  作者: ふじふじ
7/15

ホームラン合戦

一回戦は、セイント・スプートニク学園。清楚なお嬢様学園としてかつて有名であったが、高校野球の女子マネージャー化の流れを汲んで野球部を設立。野球部専門で男子生徒を入学させ始めたのが10年前、ここのところメキメキと力をつけている学園である。


マネージャーは伝統的にわがままなお姫様タイプ。特に今年のマネージャー、綾小路彩あやのこうじ あやはスプートニクのアントワネットと呼ばれ


「バントができないならホームランを打てばいいじゃない」


という言葉が示す通り、長打、長打の打線が特徴である。すずみ、あきら率いる冥王星高校の足を使った全員野球とは相対する戦術である。


うーーーーーーー


サイレンがなると第一回戦が始まった。初回表は冥王星の攻撃である。


「バントよ、バント!わかってるわね!」


あきらは大声で一番バッターに告げると、一番、セカンドの森がバントの構えをした。対するスプートニクのピッチャーはMAX時速145キロの速球で勝負である。


綾小路がタブレットにコマンドを入力すると、直球が投げ込まれる体で地面にLEDが点灯する。すかさずバントの構えをを出すが、球は惜しくも外れワンボール。2球目、綾小路はカーブを選択。カウントを取りに行く。


こいーん


差し出したバットに投球が当たり、3塁線にボールが流れる体で、地面のLEDが点灯する。


バッターは一塁に全力疾走、する体でLEDが点灯し、一塁に向かってLEDが点灯。きわどいタイミングだがセーフになる。


「ふふふ、やはり予選と同じ、バントで何点でもいけるわね」

「私たちの思う壺ね」


すずみとあきらは勝機を感じたのか、次々とえげつなくバントを繰り出して行った。


初回で、なんと12点。ようやく走塁ミスでバッターアウトになると、攻守交代となった。


「きぃぃぃ、冥王星め!えげつなくバントを繰り返してぇ、見てなさい、私の本気を」


綾小路’アントワネット’彩は命令を出した。


「ここは、わかってるわね。5点ホームランよ!」


なんと、一振りで5点入るという新開発のホームランである。


「な、なん…」


すずみは絶句した。


「ひるまないでいくわよ、ストレート!」


あきらがそう叫ぶと、地面のLEDが点灯。しかし球はど真ん中に


「しまっ…」


こいーん!


打球はレフトスタンドへ。ソロホームランで一気に5点を入れると、ランナーはダイヤモンドを5周してスコアは12−5


「我が校の1番から4番の上位打線の強みは、この複数点ホームラン。ここ何年もそれだけ練習していた猛者ばかり。反撃よ。」


スプートニク学園は、4人の攻撃で、計15点を叩き出すと、6人で攻撃を終えた。


冥王星もその後、バント攻撃で、6回までに96点を挙げたが、追いかけるスプートニク学園も92点。一打逆転の状況である。一回に何人も走塁が必要な冥王星に対して、スプートニクは複数点ホームランで効率よく点数を重ねていた。選手の消耗度というところで、冥王星の分が悪いことは明らかであった。


「まずいわ。このままではまずいわよ、すずみさん」

「わかってるわ、選手がだんだん疲れてきている」

「ここは疲れた選手にスッキリしてもらう必要がありそうね、すずみさん」

「いやよ、それだけはいや」

「何を言うのすずみさん、もう手立てはないわ」

「あなたがやればいいじゃない。私はイヤ」

「ほら、次の打順から3人、あなたの婚約者じゃない。ちょうどいいわ」

「結婚まではプラトニックなお付き合いって決めてるのよ。ラッキースケベもなし」

「そんなこと言ってられないわ、ほかに代替案があるというの?」

「あるわ」

「どんな策が?」

「私たちも複数点ホームランで点数を稼げばいいのよ」

「今思いついたでしょう?どうやってやるのよ」

「悪かったわね、どうせ考えなしよ。でもおそらくこのタブレットのマイクに向かって…」

「向かって?」

「わかってるわね、2点ホームランよ!」


すずみはそう叫ぶとバッターボックスの婚約者のステータスが微妙に変化した。そしてピッチャーが初球をど真ん中に投げ込んだ。


こいーん!


なんとボールはライトスタンドへ一直線。そしてランナーは2周して2点獲得した。


「やっぱり、ボイスコマンドだったのね」


「なるほど、打率の高いバッターに対し、コマンドを入れると複数点打点を稼ぐホームランも可能ってことね」

「そうなるわね。こうなったらバントと併用よ!」


冥王星学園はいつも通りバントでランナーを貯め、満塁になったところで複数点打点ホームラン。走者4人×5点ホームランで一気に20点。この回だけで250点以上を叩き出した。


「なぜ、なぜなの、複数人ホームランがこんなにあっさり破られるとは!」


なすすべもなく大量得点を許すスプートニク学園。綾小路彩は、ただただ呆然とそれを見守ることしかできなかった。


「ふふふ、物事には必ず仕掛けがあるものよ、その仕掛けさえわかってしまえば模倣は造作ないこと。さらに自分たちの戦術と合わせれば、相乗効果が生まれる。あなたは自分の発明に酔ってしまってバントの練習をしなかった。それが敗因よ」


戦況を眺めていたすずみは綾小路を見下していると、9回が終了した。


試合終了!


1025対204で冥王星高校の勝利。


うーーーーーーーーーーー。


「まずは一勝!」


すずみとあきらはハイタッチをして、第一回戦を終えた。


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