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女子マネ甲子園  作者: ふじふじ
6/15

マネージャー借金

難なく予選をこなしたすずみとあきらは甲子園のベンチに立っていた。


「案外すんなり終わってしまったわね、予選、すずみさん」

「そうねあきら。私達ほど覚悟ができているマネージャーはそうそうにいないと見ていいわね」


ここまでの戦いで、すずみが婚約5人、あきらがお泊りデート3人というところで予選を突破した。


他校のマネージャーからは「野球部員を私物化している」と揶揄されながらも、そんな声も結果で吹き飛ばし、文句を言った他校のマネージャーはタイムラインの下の方に沈んでいった。


ずずみとあきら率いる冥王星高校の戦術は基本「バント」である。延々バントを繰り返し、相手がしびれを切らして凡玉を投げた時に長打するといういやらしい戦術である。

これはあきらが小さい頃におばぁちゃんちでやった叔父さんのレトロ野球ゲームからヒントを得たものである。


叔父さんのゲームメモによると、バントで延々と点が取れるということだ。


これはリアルな女子マネージャー野球でも通じるに違いないと踏んだあきらは、どの高校に対してもこの戦法で挑んだ。戦術は見事にはまり、冥王星高校はバントで他校に大差をつけ、圧倒的な強さで次々と試合に勝って行った。


そうはいっても相手も同じ戦術をとってくる時もある、そんな時には部員に対する色仕掛けが効く。特にあきらより育ったエッチな体つきをしているすずみは格好の材料となった。やる気MAXの部員は長打が出やすい。いかに絶好調に持っていくか、が勝敗のカギなのだ。技術や体力はもう関係ない世界なのだ。


「こんどだけ!、こんどだけだからね!」


と、リアクション芸人のように次々とフラグを立てては深い仲になり、どんどん部員と婚約していくすずみ。おかげであきらの被害はここまではたった3日のデートで済んだ。


すずみは恋愛体質でどんどん深みにはまっていくタイプだな、とあきらは思った。


ああいう女にはなりたくないものだ。きっと自分の朝までデートも無理に彼女に交代を申し出たら、断らずに相手してくれるに違いない。なんだ、高校最後の思い出作りにいいではないか。

あきらはそう考えると、自分に失うバージンなどないと思い始め、強気の戦術で行こうと心に決めるのであった。


「いよいよ、甲子園、第一回戦よ、すずみさん。相手はセイント・スプートニク学園、清楚なお嬢様で押し通しているマネージャーが相手ね」

「え?ああそうなの、どんな戦術で行くの?」

「あなた、全く分析していないのね、何をやっているの?」

「デートの約束が三つも重なっていて、メールを間違えちゃったらセカンドのコータ君が怒っちゃって、どうすればいいの?」

「もう、これだから恋愛偏差値の低い女は困るわね、コータ君には素直に謝って、試合後すぐ、’バスで隣’よ、そして、間違えた方の相手はその後にケアーすることにして」

「わ、わかったわ、隣に座った時に手を握った方がいい?」

「ふともも、ふとももにくっつけてあげて」

「そ、それ、本当に必要なの?」

「無論よ、男なんてアホなんだから、それで一晩大丈夫よ」


そんなはずはない、そんなはずはない、とすずみは感じていた。なにせ5人とも婚約しているのだ。日に日に男子生徒どもの鼻息が荒くなっていることを感じているすずみは気が気ではなかった。


しかし今はとにかく…幼馴染キャラで。


「ごめーんコータぁ、コータのことが大事。だから一緒にバスで帰ろうよ」


すずみはメッセンジャーを使ってパーソナルな雰囲気を出してその場をおさめ、短パンに履き替えた。


「こんなことが、甲子園の間じゅう…」


おそらくこの男ともいずれ婚約することになるだろう。あと何人と婚約するのか。しかし公約では優勝したら全員と結婚すると言ってしまったし…。負けても婚約者と結婚しなければいけない。既に崖っぷち、退路は断たれているのだ。


「このまま突き進むしか、ないわ」


すずみのこのギャンブル体質がこの後の甲子園本戦で、大変なことを起こすことになるとは、あきらも、部員も知る由もなかった。


ちなみにだが、監督は現在の高校野球ではベンチ内に入れず、外野席で応援の取りまとめをすることになっている。

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