決勝戦その4
「ぐぬぬ、あんな破廉恥なマネージャーが二人も居たら…」
吉原ナオミは、野球の内容や作戦のまずさよりも、ピッチャーの一ノ瀬のスケベ心の心配をしていた。とにかく、相手側にステータスを吸われるのをなんとかしなければいけない。
’脱ぐのよ’
「えっ?」
どこからともなくそんな声が聞こえた。
’あなたも同じ穴の狢’
「な、なにをいうの!そんなことできるわけ!」
「って、名取さん、あんた、なにしに来てるのよ」
見ると目の前には、野球っぽい感じのタンクトップコスプレのすずみが立っていた。
’スポーツ大好き、元気印のピチピチガール’風である。
「ふふふふふ」
「ふふふふじゃないわよ、ここは私たちのベンチよ」
「大丈夫、タイムは取ってあるわ」
「タイムとって相手のベンチに行くマネージャーがどこにいるっていうのよ」
「なにいってるの?マネージャーは監督じゃないのよ。この程度の裁量、認められなくてどうするの?」
「そ、そうなの。で、なにをしに来たの?」
「いや、無条件降伏を受け入れないかの交渉よ」
「な、何をいうの?」
「見た所、あなたの学校はもはや腑抜けの抜け殻。私たちの魅力にメロメロのスケベピッチャーを除いては、普通の高校生ばかりのようじゃない」
「そ、それが何よ。あなたたちがその汚いやり口で私の怪物を誘惑してるからでしょう?」
「それも作戦のうち。もうこの試合の主導権はすでに我々にある」
「くっ」
「今降伏すれば、あなたの経歴に傷がつくことはない。これはこの戦術の先輩の私からの忠告よ」
「いやよ」
「な、なんですって」
「私は甲子園での優勝を義務付けられているの」
「そんな義務、なんとでもなるわ。世の中には負けるチームは必ずあるんですもの」
「だめよ、許されないわ」
「じゃあ、あなたも…」
「ええ、そうするわ」
「いいこと?私は忠告したわよ」
「所詮血塗られた道よ」
「次会うときは戦場でなないと願いたいわね」
「ふふふふ、ありがとう、と言っておくわ」
ナオミはそう言って、すずみの背中を見送ると、意を決したようにユニフォームのボタンに手をかけた。
バッ!!
「なんなのよアレは!?、すずみさん、あいつに何言ったの?」
「降伏の説得に行ったんだけど…。まさかあそこまで覚悟があるとは思ってなかったのよ」
そう、相手ベンチには下着姿のマネージャーが指揮をとっていたのである。
当然のごとく審判団に抗議するすずみとアキラ。
しかし、大会規定にランジェリー禁止の要項はなく、容認するしかない。と、主審はヘラヘラ笑いながら言った。
「いちおう審議してみますかァ?無駄だと思いますけどォ?ウヒャヒャヒャ」
ダメだこいつら。
ナオミの下着姿はすずみとアキラの想定を超えている。こちらは布面積が少ないとはいえ、ソレ系の’ユニフォーム’である。ナオミの下着と比べると見劣りしてしまう。
これ以上行くとなると、もはやこの先の未来をも捨てる行為となってしまう。
しかし相手マネージャーのナオミはそれをやってのけている。
「ぐぬぬ。これはどちらかが…」
あきらはチラチラとすずみを見る。すずみは白々しく難しいマネージメントの本を読み始めた。
「すずみさん」
「イヤよ」
「まだ何も言ってないわ」
「イヤと言ったらイヤなの」
「そこをなんとか曲げられないの?」
「ダメよ、わたしはこの試合が終わったら、学校経営に乗り出すの。下着姿学園長なんて一生揶揄されるのはイヤなの」
「いいじゃない、下着姿学園長www。生徒に愛されそうで」
「イヤよ。指さされて笑われながら一生を過ごすなんて」
「でも、相手はそれをやったわ」
「うっ…、それは」
「あの女はやったわよ」
「で、でででもそ、それをやるには問題もあるのよ…あたし、このスポーツブラの下は何も…」
「なっ、なん…」
だめだ、ランジェリーに規定はなくても、ポロリはまずい。色仕掛けは具なしがあくまで前提である。
「あなたはどうなの、ランジェリー、できるの?」
できなくはない。できなくはないが、あきらにも悩みがあった。それを言うのか、言わずにやってしまうのか……。
「す、スタイルが…彼女ほど。」
ダメだった。
そう、体型がすずみやナオミほど悩殺系でないあきらは言葉や行動でなんとかするタイプである。しかしランジェリーとなるとやはりその体型が話題になるわけであって。
極限の状態で自らのコンプレックスを晒してしまったあきら。彼女にそっち方面でこれ以上何かをしてもらうのはもはや無理かもしれない。
しかし今はそんなこと言ってられるのであろうか。具や体型など二の次では?
主導権は…。主導権は?
すずみは決断した。
「野球で勝てばいいのよね」
うーーーーーーーーーーーーー
試合終了!冥王星高校 対 私立・帝国学園は1ー0で冥王星高校の勝利。
抱き合う仲間、仲間、仲間。
そして整列。
下着で涙を流しながらその姿を全国にさらす相手マネージャー。
「だから言ったのに…。あそこで負けていれば」
すずみは激しく同情したのであった。




