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女子マネ甲子園  作者: ふじふじ
12/15

決勝戦その2

コイントスで帝国エンペラー学園が先攻、冥王星高校が後攻となった。


冥王星のピッチャーは先日デッドボールを食らった加賀が戻ってきて先発となった。といっても、電子でボールが出てくるので、おおよそ誰がピッチャーをやっても同じである。投手は大抵


「炎天下に立ち尽くす」

「何でもマネージャーの言うとおりにする」

「タイミングよくガッツポーズ」


ぐらいしか能がない。


投手とは、一番野球能力の低い者がマネージャー幹部として中間管理職のようにポジションするようになって久しい。

あとは元気度合いによって、球のキレが出たり出なかったりするのみである。1日休んだ加賀はエンペラー相手に、初回1安打と好投をしていた。電子的に。


おそらく、勝負は体力がなくなってきた後半になるだろう。


あきらはそんなふうに考えていた。


すずみはあいかわらず、野球のことがちんぷんかんぷんである。なんだか難しいマネージメントの本を読んだりしている。


’試合中だぞ!’


あきらはすずみを睨みつけた。


「え?誰か元気ない?ここに’やる気のない社員をその気にさせる5つの方法’とかあるわよ?」

「へぇ(怒)、どんなことが書いてあるの?」

「まずは、’ビジョンの共有’。組織がなにを目指して活動しているかを共有するの。私たちの場合、甲子園優勝ね!」

「いや、本当にそうかしら。ただ終わったらエッチなことをしたいとかそんなことじゃ…」

「なにを言うのあきら、単なるエッチだったら、甲子園でしなくてもいいじゃない!、ここは甲子園なのよ。’優勝した暁には、エッチなご褒美が!’というのと、単にエッチしたいは違うものよ!」

「はいはい、あなたは部員やつらに何もさせてないのだから、そんなこと言うわよね」

「あなたはちらつかせるだけでよかったものを、本当に与えてしまった。ここにあるわよ、労働の本当の喜びは報酬インセンティヴではないって」

「まったく余計な頭ばかり良くなって、試合しなさいよ試合」

「だって優勝したら私は学校経営に乗り出すのよ、甲子園をそれの前哨戦として考えておくのがベターだわ。あ、いつかこれ本になるかもしれないわね」

「結婚詐欺まがいのご褒美チラつかせて、言うこと聞かせてる人がよくも経営だとか出版だとかそんなこと言えたもんね」

「まぁ、今日は決勝戦。そんなことも織り交ぜつつ、試合を楽しみましょう。ほらスリーアウトみたいよ、良くわからないけれど」


帝国学園の吉原ナオミは古き伝統を守るマネージャーである。いや、マネージャーとしてヤカンもって走ってくる伝統ではなく、野球の伝統を守るという意味である。


高校野球とは本来投手戦。


怪物ピッチャーが圧倒し、試合の行方を決定づける。そんな世界。ゆえに最もステータスの高い他校を圧倒する野球センスを持った、それこそプロ野球にでもいるような怪物選手を甲子園投手に添えている。今ではそういった選手は高校野球には不要な人材であるのだが、今回、敢えてあり得ない怪物を持ってくることで圧倒的なステータスで電子ボールを開発した。


「アニメとかなんとか全部ボール」(ANZENB)


である。なんだか安全日みたいな愛称だが、ナオミは最高だと思っている。どのようなボールか。それは冥王星に対する第1球で知らしめることになった。


「ふふふ、最初の投球、目にもの見せてやる」


帝国学園怪物投手の一ノ瀬が振りかぶり、投球すると


あり得ないところから突然電子ボールが現れて、いくつにも分かれ、消えたかと思うとバットを避けてミットに収まった。


「な、なん!?」

「え?いまのストライク?いまのストライク?」


あきらとすずみは目を疑った。


ボールは電子データ。しかし消えたり分身したりとまったく予測不可能な軌道を描いていた。あんな球、ゲームでも打てるわけがない。全部あれでなくても、決め球でやられたら、ほとんど点が取れない。そもそも冥王星の攻撃の核であるバントでは、バットをかすりもしないだろう。


「ふふふふ、投手にこだわり、試合を制す。これが我が軍必勝の戦術よ、あなたたちのバント攻撃など、かすりもしないわ。永遠にゼロ行進」


第二球


異様にゆるいボールが突然消え、そして加速、ミットに収まる。逆チェンジアップ。当然ストライク。


「ふははははは!見たか。言っておくが、今日は終始こんな調子だぞ!まともなボールはホームベースを通過しないと思え!絶望絶望!」


ナオミはつぎつぎと魔球を繰り出し、冥王星学園はなす術もなく三者凡退に終わった。


「何よあのチート。あんなのズルよ。アニメの見過ぎよ」


あきらは声を荒ぶると口汚ない罵声をナオミに浴びせた。


「あら、早くも遠吠え?我が軍の攻撃、行きますわよ〜」


しかし今年の帝国学園はステータスは全て投手に極振りしたため、他のメンバーは平凡な少年で構成されていた。やる気も体力も普通の高校生。冥王星学園は、エース加賀の使い方を心得たここまで百戦錬磨のあきらの指示。そうそう相手にも点が入らない。


試合は中盤、6回まで動きがなかったのである。

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