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女子マネ甲子園  作者: ふじふじ
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女子マネージャー上位時代

20XX年、高度に女性上位になった世界。かつて男子中心だったの政事にも、ことあるごとに女性が干渉、または女性の仕切りなしには執り行うことが難しくなった時代。


スポーツ界もまた例外ではなかった。


特に夏の甲子園は高校生女子のヒエラルキーの頂点とされ、各校の野球部は毎年女性生徒会長またはそれに匹敵する実力者によるマネージメントで独裁される時代となっていた。


かつての名監督のように実力のある女子マネは君臨し、甲子園は事実上女子マネの実力を競う祭典となっていた。ルールブックは改定され、マネージメントゲームの体になったかつて高校野球と言われていたスポーツ。


これはその新しいスポーツに携わる者たちの話である。



私立冥王星高校、3年名取すずみ。彼女は甲子園を目指す、高校女子マネ候補生である。


今日は始業式で、この後行われる女子マネ選挙。2年ぶり2度目の当選を狙っているのだ。


女子マネージャー選挙は毎年始業式の1ヶ月後に行われる。一年生にも応募資格があり、その場合は受験の時に、女子マネ資格試験も行う。すずみは2年前の高校一年生でその試験をパスし、その後の選挙で見事その座を射止めた。


’ポニーテールのよくできた妹’。そしてその実、中身はまだまだ未熟なひよっこマネージャーという斬新なキャラ作りは、それまでの冥王の厳粛な女子マネのイメージを一新した。


妹キャラでありながら、スクールカーストの頂点に達したすずみと野球部はその年見事母校を甲子園出場を果たしたのである。


本線では残念ながら一回戦負けをしてしまったものの、翌年の選挙で他のマネージャーになった時は予選3回戦で敗退となったことから、すずみの再選を望む声は大きく、3年となった今では確かな手応えを感じている。


思えば2年前は野球のルールを全く知らなかったため、バントで打者を3塁に進塁する指示を出してしまったことで、ホームインの際にマイナス一点になったことが仇となって敗戦を喫したのだ。しかし、あれから2年。昭和のルールブックで猛勉強した野球知識で、もはやすずみに隙はない。


キャラ作りも2年前の妹キャラから、成長した体を武器に「強引でちょっとエッチなおねぇさん」を考えており、実力的にも性的にも頂点を目指す事を心がける事にした。


「野球部は私のものであるのと同時に、私自身はみんなのものでもあるの」


2年生終業式のこの有名な演説で、男子部員の興奮は頂点に達した。


「すずみねぇさんとヤれるなら」

「ああ、僕らの妹も、ついにこんな大人ビッチに」


と今では秘密裏に野球部員から強力な推薦ぼうりょくと、根回きょうかつが行われている。


「ふふふ、哀れな童貞ども。せいぜいなつのために働くのね」


決め台詞を言うと、男子部員おとこどもはさざ波のようにすずみの後を追った。


しかし、そんなことをしていて、肝心の野球はだいじょうぶなのか。


現在の高校野球に残っているのは’ルールブックのみ’である。ヒットもホームランも、アウトも全て’強いコマンドを発行した’マネージャーの思うがままである。そのコマンド強さはコンピュータ、ソーシャルにより決定され、それによって発生したイベントでマネージャは任意に男子部員キャラを動かすことができる。


男子部員に裁量の余地は残されておらず、ホームラン時のガッツポーズですら、女子マネージャに出すタイミングを管理されている。テレビカメラに映っていないところでポーズを出したりしたものなら、次の回には代打、次の試合ではベンチである。


マネージャには野球盤のような携帯端末が渡され、SNSや、スパコン、人工知能などの提案の中から有効なコマンドを選択し、それを元にマネージャがコマンドを発行するのである。コマンドはチームの実力にマッチすることが大事で、事前に登録、設定された男子部員キャラにそぐわない、例えばホームランの連打、などは帰ってコマンド力を下げる結果となるのである。


このようなことだから男子部員の行うことといえば


「キャラらしいセリフの練習」

「ガッツポーズのタイミングとカメラ位置の把握」

「マネージャを崇める」


ということが中心となるのである。いや、むしろそれ以外を野球ということなど、とっくに無くなってしまったのだ。


すずみは校内を大量の男子生徒を取り巻きながら練り歩き、選挙まで自分の実力をアピールして、満足していた。


「まさに私はいま、冥王星このがっこうの頂点。誰も止めるものはないわ」


そう、すずみはまさかこの後、あのようなことになるとは思ってもいなかったのである。


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