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(新装)・・・俺の戦いは、今始まったばかりだ!③


『では、次に「《ギフト》の選択」に移りたいと思いますがよろしいですか?』

 懐古に夢想する俺の意識を女神(?)の声が現実に引き戻した。

「はい」

『本来なら、貴方に贈与が可能なスキルを全て与えるモノなのですが…、貴方、生前は、裏で暗殺業を請け負っていたギャンブル狂いの凄腕な殺し屋とかじゃないですよね…?』

「…はいっ? えーと、自分の記憶が正しければ、普通にサラリーマンしてましたけれど…」

 言葉の意味は分かるが、その理由が全く解らない女神(?)の質問にこっちの方が疑問を抱かずにはいられなかった。

 女神(?)から問われた言葉の理由を探る俺の脳裏に、事の始まりの際に彼女(?)が口にした『カルマ判定』という言葉が思い浮かぶ。

・・・『カルマ』とは、宗教哲学的にいう『ごう』という意味ですよね?

 それは人間が行った善悪の行為を示す言葉であり、特に『悪行』に対して使われる言葉である。

 若しそうであるとしたら、自分が悪行とは考えていない生前の行為を、彼女(?)は『そう』だと捉え見透かしているという事だった。

 目の前の存在が先刻の質問で俺に問いかけたのは、『生前の仕事』ではなく『生前の生き様』に関してだったのかも知れない。

 そう考えると一つだけ思い当たる節があったが、その報いは既に受けている以上、それを今更、とがめられたくは無かった。

『いえ、別に深い意味はないので気にしないでください。で、話を戻して、貴方の場合、先刻も言った通り、ちょーと間違っちゃてる所が多いので、こちらでそこをちょこっと修正させてもらいますね』

「……『ちょこっと』ですか」

『も、勿論、貴方に損はさせないわよ。「あり得ない」レベルのスキルを消去させてもらう代わりに、新世界で必ず役に立つ反則レベルのスキルをサービスするし、「ふざけた数」レベルで存在するスキルを統合する代わりに、最高品質なモノに昇華するから大丈夫よ。今なら、更に貴方だけのお得で特別なスキルも付けてあげるわ』

・・・なんか後半、何処かの『通販番組』みたいになってます。あれって商品が届いてから暫くすると、少し冷静になって微妙に反省するのですよね。今回の場合、流石に後日のクーリングオフとかは存在しませんよね?

『因みにこれが最大限の譲歩という誠意の結果になります。尚、先刻と同じ要領でスキルの簡単な説明を確認できます』


スキル

・天賦の武才 Lv1+s(初期・ユニーク)

・至高の万能導く縁 (初期・ユニーク)

・邂逅の良縁 (初期・ユニーク)

・晩成の大器 +s(初期・レア)

・異世界言語習得 Lv3+s(初期・レア)

・神明の鑑定眼 Lv3+s(初期・レア)


「なるほど、では早速(ポチッとな!)」


『《天賦の武才》、対象となる各ステータス(筋力・体力・素早さ・器用さ)にスキルレベルに応じたボーナスを追加補正。スキル所持者が使用する武器の熟練度によって、攻撃力・命中率等を補正。スキルレベルが向上すると、常人にとって「道具」である物を「武器」として用いる事を可能とする』


『《至高の万能導く縁》、スキル所持者が生命に影響する窮地に立たされた際、スキル所持者と深い縁に結ばれた者より必要とする技能が付与される。付与可能な存在は過去・現在・未来の縁に影響され、未来に至ってはその未知なるが故に、未確認及び新生技能が発現する可能性あり』


『《邂逅の良縁》、スキル所持者と直接・間接的に縁を結んだ存在と邂逅し易くなる。結んだ縁が深い程に邂逅し易く、その絆が深ければ良き縁となってスキル所持者に多大な助けを与える』


『《晩成の大器》、スキル所有者が成長した際に身体能力が大きく向上するようになる。又、成長時に伸長させる能力値を任意で選択できるようになる。但し、成長に必要となる魂の経験値量が増加する為、その成長速度は常人に比べ遅くなる』


『《異世界言語習得》、スキル所持者にとっての未知なる言語を完璧に理解する事が出来る。スキルレベルによって理解できる言語の幅が変わり、低レベルでは一般会話程度に止まるが、最高レベルに至れば「失われた言語」や「神の言語」も理解できるようになる』


『《神明の鑑定眼》、スキル所持者が認知する世界にある万物の真価を見極める事ができる。通常の《鑑定眼》が物品のみ鑑定できるのに対し、このスキルは有体物に限らない数多のモノの価値を見極める事ができる。スキルレベルが最高に至れば、「神明の理」に連なる森羅万象すらも見極められるようになる』


 厳密にいえば全てのスキルの存在を認識していない以上、提示されたモノが『最大限の譲歩と誠意』に値するかは不明であるが、『ユニーク』と『レア』というランク付けが為されていることから、俺は女神(?)の言葉を素直に信じる事にした。

「確かに良い内容ですね」

『満足してもらえれば結構です。では、次に職業の選択と属性及び性格の判定を行います。先ず職業ですが、貴方の場合、ステータスによる制限が完全に解除されているので適正職業というモノが存在しません。ブッチャけると一般職なら何にでもなれる状態ですね』

「一般職?」

『ええ、王侯貴族・高位信徒・種族限定職等の一定条件を必要とする職業以外の、所謂、一般職ならステータス面で全部解放されてますね。あ、そうそう、「種族限定職」との絡みが在りますが、種族を「真人族」から別のモノへと変更しますか?』

「種族ですか……。そのメリットとデメリットは?」

『主に成長後に上昇する能力値の種類の変化と、取得できるスキルの限定及び身に着けられる装備品の限定等、加えて各種族間にある感情ですね』

「『上昇する能力値の変化』に関しては、《晩成の大器》で相殺されるので影響がないとして……、『スキル及び装備の限定』ですか……」

『まあ、限定等といっても、主に有効度とか相性の問題で、ある一定の場面でそれなりに意味を持つ程度の差なので、死活レベルという差異は生じません』

「因みにお勧めの種族って在りますか?」

『全体的な長短で言えば、過不足がなく融通が効く真人族ですが、種族相性的な面で八方美人を嫌うなら、精霊人族・地人族・獣人族のような同族意識が高い存在や、どの種族にも自然と好かれる妖精人族、或いは逆に強大な能力を持つが故に他種族から畏れられる竜人族・魔人族、希少的な存在として一部種族から神聖視される天人族を選んでみるのも良いかもしれません。因みに、紹介した順番が新世界に於ける各種族の人口分布の比率になります』

・・・一言でいえば、どの種族でも一定のメリットとデメリットが存在するので、特別な損得は存在しないという訳か……。

「では、今のままの『真人族』でお願いします」

『了解です。では、話を戻して、何か希望の職業とか在りますか?』

「それなら、『侍』でお願いします」

 『侍』、それは俺にとって特別な存在である祖父と父であり兄であった『彼』に最も縁深きモノであり、その二人にとっての生き様を示したモノあった。

 俺は彼らと同じように、その職業を自らの生き様とすることを選んだ。

『「侍」ですか……。了解しました。そう設定します。しかし、それは貴方が赴く新世界には本来存在しない職業ですから、貴方がそこで示す行為の全てがその職業、否、「侍」という存在の全てを定める事となります。どうか嘗てその名を背負った人々の誇りを損なわない、高潔なる存在で在る事を心掛けてください』

 その言葉の陰に隠された女神(?)の想いを汲み取り、俺は真摯な想いを頷きそれに応えた。




『では、最後に、貴方という存在が持つ人間としての属性と性格の判定ですね。これは言葉通り、貴方のこれまでの行いに対し自然と判定されるモノであり、ワタシが特別に変更する事などはできません』

「はい、そこは理解できるのですが、既に『性格』の部分が『未定(判定不可能)』になっているのですが……」

「ええ、まぁ、珍しいことですが、貴方の場合は十分に納得できる現象ですね(にっこり)』

「……?」

 微妙に嫌なモノを感じさせる女神(?)の微笑みに、色々と複雑なモノを抱いて困惑する俺。

『全知全能に近しき《神》の叡智を以ってしても、貴方という存在が持つ性格の本質を見極めきれないという事ですね』

「えーと、それは俺が理解不能の変人という解釈で良いのでしょうか?(しょんぼり)」

 何か切ないモノを感じながら俺は自虐的に嗤うしかなかった。

『否、正確に言うならば「理解不能」ではなく、「神智も及ばぬ稀有な器を持つ」という事でしょう。その証に貴方の魂に対する《裁きの神定》の結果は「真善」を示しているのですから』

「真善……?」

『ええ、そうです。ワタシの知る限り、新世界に於いて「善」の属性を持つ者は多数いますが、未だ貴方と同じ「真善」を有する人族を確認した事はありません。貴方が持つ「真善」と他者が持つ「善」との詳しい違いはワタシにも分かりませんが、決して悪いモノではない事は分かります』

 そこまで語って女神(?)は一呼吸すると、少し意地悪な笑みを浮かべて更に言葉を紡いだ。

『そんな稀有なる魂を持つ貴方を讃え、ここに《神すらも持て余す奇才》の称号を与えましょう!』

・・・貴女(?)は、いじめっ子ですか!

 嬉々として言い放つ女神(?)の姿に、俺は心の中で率直な感想を叫んだ。

『という訳で、これが貴方の最終的な判定を終えた完全ステータスとなります』


名前  サカキ エン(改名)

年齢  19才 (真人族 前世年齢 39才)

性別  男性

属性  真善 (徳性値 50 称号持ち)

性格  未定 (判定不可能)

職業  侍 (刀・槍・弓・暗器等多くの武器に精通)

Lv  1 (0%)

HP 55

MP 24

ステータス値

・筋力  26 (スキル +3)

・知力  24

・精神力 20

・体力  20 (スキル +3)

・素早さ 24 (スキル +3)

・器用さ 22 (スキル +3)

・運   16

スキル

・天賦の武才 Lv1+s(初期・ユニーク)

・至高の万能導く縁 (初期・ユニーク)

・邂逅の良縁 (初期・ユニーク)

・晩成の大器 +s(初期・レア)

・異世界言語習得 Lv3+s(初期・レア)

・神明の鑑定眼 Lv3+s(初期・レア)

称号

《神すらも持て余す奇才》(初期)


『うっ……、見れば視るほど凄いわね。最早、「稀有レア」を通り越して「アレ」な能力ね』

「ありがとうございます!(半ヤケ)」

『最後に本当の意味で《ギフト》を与えましょう。貴方が生前に大切にしていた思い出の品等で、新世界に持って行っても問題が生じないモノに限り、二つだけ所持したまま転生する事を許可します。新世界でも役に立ちそうなモノを選ぶ事をお勧めするわ』

「『問題が生じないモノ』ですか?」

『ええ、この場合の問題とは、例えば新世界の文明や文化に対し危険すぎる影響を与えるモノね。まさか持ってないとは思うけれど、重火器などのオーバーテクノロジーの産物、新世界に於けるオーパーツに類するモノとでも言えば良いのかしら。因みに新世界の文明や文化のレベルは貴方の世界でいう中世の程度だから、物体としては勿論、知識としてのオーバーテクノロジーもこの場合の範疇に含まれるわよ』

「異世界で核兵器とか作られても困るという事ですね」

『ええ、概ねそういう解釈で良いわ。まあ、転生の際に危険な知識ごとその辺の所は消去されるから、作りたくても作れないけれどね』

「知識の消去!?」

『あくまで危険な知識のみの消去だから安心して。消される対象は学者とか研究者とかのレベルでの科学的知識だから、一般人として普通に知っているモノなら消去されないし、仮に君が片手間で核兵器とか作れる天才科学者だったとしても、その製作に関する正確な知識を消去されるだけで、その知識を得るまでの思い出や核反応というモノが存在するという知識はちゃんと残るわよ』

「そうか、それは良かった」

 その『危険』という範囲が分からない以上、完全には安心できないが、それでも大切な思い出の一部はちゃんと残ると言われて俺は安堵する。

 それなら俺にとって選ぶべき二つのモノを決めるのは簡単な事だった。

「では、祖父から贈られた模造藤原正國と、ライシンさんから貰った古文書の巻物二巻をお願いします」

 『藤原正國』、銘を『九州肥後同田貫藤原正國』、質実剛健という言葉が相応しい剛刀であり、銘である『正國』の由来である戦国武将の加藤清正公が示した虎を退治する武勇、城を攻められる危急の時に備えその壁や畳を糧食で作った智略、領民の事を思い治山治水や新田開発に励んだ仁徳、その三つの徳を慕った祖父が武芸の師匠という立場から、年若かった俺の為に現代の鍛冶師に求めて造ってくれた模造居合刀である。

 俺の身長に合わせてある為、本物に比べると刀身が一寸ほど長くなっているが、その造りは、居合刀ながら真剣に劣らぬ確かな出来であった。

 もう一つの品である古文書は、俺にとって憧れるべき英雄であった『ライシンさん』こと、粟生頼信の形見となる思い出の深き物である。

 『彼』の亡き場所である彼の国にある古い遺跡から見つかった古代遺物らしいが、発見後に鑑定した考古学者によって、「全世界に存在するどの言語にも類を見ない異様な文字(?)で記されており、その木簡としての朽ち具合から、何者かの悪戯によって生み出された偽物の可能性が高い」と評価された一品である。

 ライシンさんは、その遺跡に関する神話にも近い伝説的な英雄の逸話を好んでいたが故に、『御守り』として俺に送ってくれたそうだ。

 それらが実際に異世界(?)への転生後に役に立つかは微妙だが、少なくとも俺の心が挫けそうになった時、亡き二人に代わって叱咤してくれるだろう。

 俺の選択を聴いた女神(?)の表情が一瞬だけ哀しい程に優しい色で彩られる。

『貴方らしいと謂えば貴方らしい選択ね。良いわ、貴方の願いを認め、それらの所持を許可します。そして、これは新たなる世界に旅立つ貴方へのワタシからの餞別よ』

 そう告げて女神(?)は静かにその瞳を閉じると、続いて祈るように何かの言葉を紡ぐ。

 その言葉は鎮魂歌のように、どこか寂しく穏やかに俺の心の中に響いた。

『貴方がその手に握る刃に貴方が理想とする強さを想い描き、以って真実の言葉を紡ぎなさい』

「折れず、曲がらず、そして鈍らず」

・・・そう、思い描くは誰よりも真っ直ぐに生き、最後まで高潔な魂を抱いたまま去り逝きし二人の『侍』の姿。

 嘗て人生の師として敬った二人の好漢への想いを胸に抱く俺。

 ふと気が付けば、俺の右手には三巻の書、左手には一振りの打刀が存在していた。

「そうか、貴女は……、ありがとう」

 本来であれば三巻であった古文書の存在と、その欠けたる理由を知る俺は、最後の最後で女神(?)の正体に気付く。

 なぜ『彼女』がここに居るのかは分からなかったが、それをここで問うことに意味がないことを悟った俺は、唯、素直に感謝の言葉だけを告げる。

『行ってらっしゃい。新たなる世界での良い人生を』

 『彼女』が告げた送別の言葉が合図で在ったかのように、次の瞬間、俺の意識はこの場所に来る前に感じたのと同じように、ふわふわとした熱に浮かされるようにゆっくりと薄れて行く。

・・・今度こそ必ず、貴方達と交わした約束を果たして見せます。

 夢か現かとまどろむような気分の中で、俺は最後の意識を集めて自らに誓った。


         ・・・俺の戦いは、今始まったばかりだ!


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