5 Triangle Love
目覚ましが鳴る。昨夜は心臓が高鳴ったまま収まらず、よく眠れなかった。重い瞼を開けて、腕を天井に突き上げ体を伸ばした。昨夜、俺は幼馴染の糸織に告白された。夢ではないと確認して始業式へ向かうの準備を始めた。
準備を済ませ、糸織と一緒に登校していた時間に合わせて家を出た。昨日の今日で、時間を合わせる事は出来なかったが、糸織もこの時間に合わせて家を出る確信があった。
でも、糸織は出てこず、少しふてくされて俺は学校へ足を運んだ。
糸織とは教室が違うため、式の間も糸織の姿を見る事が出来なかった。
式が終わって、教室に帰り、先生の話を上の空で聞き流した。
糸織のことを考えていると、あっという間に終わってしまった。そして、糸織と一日会えなかった事を残念に思った。その瞬間、また待ってることに気がついた。
思い切って糸織の教室に行くと、もう終礼が終わって、皆帰っているところだった。開いた扉から少し離れて教室を見回すが、糸織の姿は見えない。もう帰ってしまったのかと思い、今来た廊下の方を見ても糸織の後ろ姿はなかった。
「なあ」
振り返ると、実咲薫が俺を見ていた。俺より少し背が高くて、近くで見ると尚更かっこいい奴だ。それに、俺と違って既に声変わりも終わり、落ち着いた大人のような声だった。でも、以前のような劣等感は感じなかった。
「今日、駒場来てないんだけど。聞いてない?」
実咲は心配そうな顔で俺に問いかけた。しかし、俺は糸織が来ていない事を今知って、驚いた。糸織はよっぽどの事がないと学校は休まないし、小学校の頃の親を騙してまで学校へ風邪なのに来た事もあった。
「聞いてないけど」
やっと返事をした俺に実咲は呆れた顔をした。
「ちょっといいか」
そう言って、俺は実咲に校舎裏まで連れられた。
普段は、テニス部がボールやらネットを運んで騒がしい場所だが、今日は全ての部活動は休みのため、生き残ったセミの声以外は何も聞こえなかった。
「お前、なんで駒場のこと避けてたわけ?」
実咲の声は、少し震えているように感じた。
俺はその問いに、お前が原因だ、なんて答えられるはずもなく、なんで?と質問で返した。
「お前さ、駒場が俺のことを好きだっていう噂、信じたんだろ」
図星だ。俺は黙ってしまう。
「あれ、全くの嘘だからな。……180度違うから」
「180度?」
昨夜、糸織が言ったこと信じていないわけじゃなかったが、ホッとした。しかし、180度という言葉が何を意味しているのかわからなかった。
駒場は少し考えるような表情をした後、口を開いた。
「俺が、駒場のこと好きなんだよ」