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ドリームドール  作者: ゆうゆう遥か
2/2

ドリームワールド

夢の中は楽しいだけじゃない‼︎

そこは、もはや部屋の中ではなく、例えるならオモチャ箱。

オモチャや人形やメリーゴーランド、その他色々な遊具が空間に浮いている。

耳をすませると、オモチャ箱をひっくり返したような賑やかな音楽が聞こえる。

私とワンこうは、オモチャ達のように、プカプカと浮かんでいる。

そして一番驚いたのは、私の姿。

「なっ‥‥何これは」

私はクマのぬいぐるみ姿になっていたのだ。

「ふふん、背中を見てごらん」

ワンこうに言われ、背中を見ようとするも首があまり動かない‥‥。

なんとか腕を伸ばし背中に触れると、小さな羽根がある事が分かった。

「我がデザインしたのだぞ、喜べ」

私が頼んだ訳でもないのに、何故か得意げな犬。

アイツは放って置いて、浮いている手鏡で、自身を見てみる。

つぶらな瞳。モコモコな体は赤色。小さな鼻先。手足は肉球がプニプニ。

至って普通のクマのぬいぐるみだ。

喋れるが、とても動きにくい‥‥。

「‥‥この羽根の意味は?」

「飛べるに決まっているだろう」

全くいちいち鼻につく言い方の犬だ。

飛び方が分からないから、飛べるわけない。

ワンこうがスイ〜ッと空間を移動する。

私も真似しながら空間を移動してみる。

周りに浮かんでいる遊具は、移動する私達を避けてくれる。

「ねぇ、ワンこう此処は一体なんなの?」

「ワンこう⁉︎何だその名は。グゥ〜〜」

不満そうに喉を唸らせるが、私は無視。

「‥‥まぁ良い。此処は夢の中である」

夢の中ならば、現実の私は眠っているのだろうか。

そんな事を考えていると、賑やかな空間にサイレンの音が聞こえる。

「警報だ!君、隠れろ」

突然ワンこうが私に命令する。

そう言われても、慣れない体ですぐに動ける筈がない。

ワンこうは舌打ちして、私を勢い良く押す。

私の体はスーパーボールのように、弾んで遠くへ飛ばされる。

なんて強引な犬っころだ。

文句を言おうとした瞬間、爆発音と共に目の前にあった人形が燃える。

火は数秒で消えたが、人形は燃え尽きた。

焦げ臭い匂いが鼻をかすめ、嫌な記憶が蘇りそう。

「うっ‥‥」

私が頭を抱えていると、ワンこうの悲鳴が聞こえた。

見ると、ワンこうの片足が吹き飛んでいた。

彼の目の前で銃口を向けるのは、猫のぬいぐるみ。

切れ長で感情の無い冷たい瞳をしている。

よろつきながら、ワンこうは左腕の手袋を外し、

例のバズーカを猫に向かって突きつける。

私は息を飲んで、対峙する2匹の様子を見つめる。

ふと猫の視線が、遠くから見ている私を捉えた。

躊躇なく銃口を向け直し、銃弾が私に飛んでくる。

思わず目をつぶる。

「願え、飛ぶんだ‼︎」

私に向かってワンこうが叫ぶ。

〝飛びたい〟

そう心で願った瞬間、背中の羽根が巨大化し羽ばたく。

銃弾は当たる寸前で回避する事が出来た。

猫は驚いた様子で目を見開いている。

「よそ見するなよ」

そう言いワンこうのバズーカが火を噴いた。

目の前の猫は避けきれず火の犠牲に。

メラメラと体が燃えているにも関わらず、猫は私の方を向き話す。

「救いの時は近い。この命尽きようと代わりは無限に生まれる」

最後まで表情を変えずに、燃え尽きた。

「うるせーやい。とっとと消えろ」

ワンこうは消えた猫の残像に向かってパンチをしている。

片足が無いというのに、元気な犬だ。

いつの間にか背中の羽根は、元の大きさに戻っていた。

「どうよ、我の強さ思い知ったか?」

私に向かってドヤ顔をする。

「あの猫のぬいぐるみは何なの?」

「いやー、我にもよく分からん」

即答する犬。

さっき戦ってたのに何言ってんだ。

「あんたの敵なんだよね。何で私も狙ってきたの」

「それは、君がこの夢の支配者だからだ」

支配者?この夢は彼が作り出したんじゃなくて、私が作ったのか。

「警報は奴らの襲来を知らせてくれる。鳴ったら逃げるか隠れろ」

私に右手の肉球で肩に触れる。

き、気持ちいい。

「ほれほれ」

次第に態度が気に食わなくなり

「もう、いいです」

ずいっと肉球を押し返す。

「‥‥そろそろ目が覚めないかなぁ」

ポツリと呟くと、ワンこうが近付く。

「我を抱き締め目をつぶれ。すると現実に戻れる」

私は言われた通りに彼に腕を回す。

同じ身長の彼に違和感を感じながら、目をつぶる。



朝日が眩しくて、目を開けると自分の部屋に戻っていた。

時計を見ると午前6時半。

手元には、犬のぬいぐるみ。

私は人間の姿に戻っていてホッと安堵する。

「ねぇ、ワンこう」

試しに呼んでみるが、ぬいぐるみに反応は無い。

夢の中では怒り出すくせに。

ぬいぐるみを持ったまま部屋を出て、階段を降りる。

母はもう出勤したので家には私1人。

いつものように朝ご飯は、トーストを焼いて食べる。

時計を確認しながら身支度をし、ランドセルを担いで家を出ようとすると

忘れ物に気付いた。

ぬいぐるみをランドセルにねじ込んで再び担ぎ、家を出る。

数分後、学校に到着。

保健室では、先生がパイプ椅子に座りながら本を読んでいた。

本に夢中で、入室した私に気付いていない。

「面白い?」

突然話しかけた私に、驚く様子もなく

「ああ、まぁまぁだな」

と本を読んだまま答える。

動じない所に、大人の余裕を感じて少し苛立つ。

先生の膝に座って、わざと邪魔をしてやった。

「なんだ、今日は眠くないのか?」

ゴツゴツと筋肉質な先生の足。

座りながら、踵で先生の足を軽く蹴りながら話す。

「先生が話した噂話。あれ本当だった」

「‥‥ぬいぐるみのか?」

「そうだよ。これ見て」

ぬいぐるみをランドセルから取り出し見せる。

先生にぬいぐるみを渡すと、しげしげ眺めた後プッと吹き出す。

「これ抱いて寝てるとこ想像しちまってよ‥‥いや可愛いなって」

可愛いって誰が?

遊那ゆうなさんがね」

私の心の声を聞いていたかのように、そう付け足す。

何故か私の顔は、みるみる赤くなってしまう。

「じゃ、何で笑うんですか」

誤魔化す為、ムッとしながら言う。

尚も笑いを堪えられない様子の先生。

彼に昨夜の出来事を話そうと思ったが、まだ迷う。

信じてもらえないかもしれないが、きっと真剣に話を聞いてはくれるだろう。

でも、妄想だとか頭の病気だとか心配されたくない。

心配されると、私も辛いから‥‥。

「昨日は良い夢見れて、よく眠れたの」

「そうか‥‥‼︎良かったな」

やわらかく微笑む先生。

私はぬいぐるみを返してもらい、ランドセルにしまう。

すると、クラスメイトが保健室に入って来た。

女子生徒2人で、1人は片膝を怪我している。

私は彼女の怪我を見て、夢の中でワンこうが片足を失ったのを思い出す。

現実では、傷一つ付いてはいない。

先生が、彼女の怪我の処置をしているのを、離れた所で見る。

「どうしたんだい、この怪我は」

「実は‥‥授業中に居眠りしてて。夢を見たんです。その夢に、よく覚えてないけど

ぬいぐるみが出てきて、足を切りつけられたんです。起きたら、足がこんな事に‥‥」

青ざめた顔で先生に話す彼女。

「この子、嘘はつきません。信じて下さい」

もう1人が必死にそう言う。

先生はというと、真剣な顔つきで

「授業中に居眠りとは、感心しないねぇ」

「‥‥すいません」

しょんぼりする彼女。

彼女の話と、私の昨夜の出来事が関係あるとすれば、

あの猫のような敵が、彼女を襲ったのかもしれない。

そう思った時、ランドセルから

「厄介になりやがったなぁ」

とボソボソ声が聞こえてきた。


























ここまで読んで下さりありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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