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星くず英雄伝  作者: 新木伸
EP3「宇宙樹の少女」 第二章「未来」
92/333

密猟者

 聞こえてきたのは、建物が崩れるような轟音と、人の悲鳴――。

 それもひとりやふたりのものではない。何十人もの人間が、命がけで逃げまどう叫喚だった。


 階段を駆け降り、長い廊下を駆け抜けたジークは、その勢いのまま表に飛びだした。


「うわっ――!」


 空を切るうなりとともに、前方から何かが飛んでくる。


 それが人間だと気づいたジークは、避けるかわりに全身で受け止めた。


 自分より体重のある男の体を抱きとめて、一緒になって地面を転がる。

 手から離れたモップが、からからと音を立てて跳ね回った。


「つっ……。――ビル? ビルかっ!?」


 昨日ジークが世話になった、あの男だった。


「ビル――おいビル!」


 男はうめき声をあげながら目を開いた。

 下になっているジークを、その目がとらえる。


「ジ……、ジークか……」

「おい! しっかりしろよ! なにがあったんだ!」

「や、やつらだ……《ストーカー》のやつだ……」

「《ストーカー》だって!?」


 新たな悲鳴があがる。

 反射的に顔を向けたジークは、そこに異様な物体を見て体を硬直させた。


 それは巨大な肉のボールだった。

 紫がかった肉色の表面は、粘液で覆われてぬらぬらと光り輝いている。それが内臓を思わせる動きで、絶えず打ち震えている。


 しかもそいつは、なんの支えもなしで空中に浮かんでいた。

 小さな家ほどもある肉塊が空中を滑るように漂ってゆくのだ。


 ビルを抱き起こした姿勢のまま、ジークは長いこと硬直していた。


 怪物は宙に浮きながら、ゆっくりと遠ざかっていこうとしていた。

 通りをまっすぐに進んでゆく。


 助けを呼ぶ悲鳴が、いくつも聞こえてくる。

 何人もの人間が怪物に捕まっているのだ。

 男と女の区別なく、ぬらつく表面から伸びた細長い触手に搦め捕られている。


 一本の触手に捕らえられた男が、手足を振り回しながら、切れ切れの絶叫を喉から絞り出していた。

 肉の表面に細かいさざ波が走り、肉襞がぱっくりと割れるように裂ける。


 ぎょろりと、眼球が出現した。

 人の頭よりも大きな眼球が、触手につかんだ男をしげしげと眺める。


「なっ、なにをしてるんだ……。あいつは?」

「し…、品定めしてやがるのさ……。獲物の出来を……」


 肘をついて身を起こしたビルが、ジークに言う。


「やつらは密猟者だ。E公どもに希少種保護を受けてる俺たちを、ああして……どこからか〝穴〟をあけて、密猟しにきやがる」


 通りの一角に、その〝穴〟は存在していた。

 空間をぽっかりと切り抜いたように、どこへ通じるとも知れない淵が開いている。


 悲鳴があがった。

 怪物の触手が、つかんでいた男をぽいと投げ捨てたのだ。

 男はかなりの高さから路面に投げだされた。

 苦痛のうめきをあげながら、地面を這って少しでも怪物から遠ざかろうとする。


「へっ……お気に召さねぇとよ! 俺たちみてぇな絞りカスじゃ、ファックの相手にならねぇとよ!」


 ビルの声には、屈辱の響きがこめられていた。

 怪物は捕らえた人間をひとりひとり検分しては投げ捨てていた。

 そうしながら大通りを遠ざかってゆく。

 逃げ遅れた人々を次々と捕まえては、犠牲者を増やしてゆく。


「ちくしょう! E公どもめ、なにしてやがるんだ! とっととやってきて、あのクソ虫を連れていきやがれ!」

「E公……? エイリアンが来るのか? 連中がどうにかしてくれるのか?」


「ああ! 前のときもそうだったさ! だが連中が来るまでに、何十人も大怪我をした。死んだやつもいる。こんどは何百人になるか……」

「そうか……」


 ジークはビルをその場に横たえると、すっくと立ち上がった。

 近くに落ちていたモップを拾いあげる。


「おい、なにをするつもりだ?」


 ジークはモップを地面に打ちつけて、先端の部分をへし折った。

 槍のように右手に持って、バランスをはかってみる。


「よせ! そんなもんでかなうわけないだろ! やつらが来るまで放っておけ!」


 ビルがそう叫んだ時――。


「待てよイーニャ! 外に出たら危ねぇ!」

「離して! ジークが! ジークが外に――」


 建物のほうから言い争う声が聞こえてきた。

 イーニャとジムのふたりの姿が見える。外に出ようとするイーニャを、ジムが懸命になって引きとめている。


「ジークっ!」


 長い髪を振り乱して、イーニャが叫ぶ。


 彼女は何を思ったか、手にしたバッグをジークに向けて投げつけてきた。

 バッグはジークまで届かず、途中で地面に落下した。

 転がったバッグから、レイガンが滑り出してくる。


 スチールブルーの鈍い輝きを放つ銃は、ジークの足元まで滑ってきて、そこで止まった。


「これは、オレの……?」


 ジークはレイガンを拾いあげた。ずしりとした重みが手に伝わってくる。

 モップを捨て、かわりにレイガンを握りしめる。

 怪物に顔を向けたまま、ジークは背中ごしに言った。


「ジム、ふたりを頼む――」

「ああ、任せろ……。信じてるぜ、おめえならきっと――」

「待ってジーク! 行っちゃだめ! 待って、まだ――」


 ジークは走りだした。


 通りを下っている怪物を、レイガンを片手に追いかける。

 怪物の後ろから充分に近付いて、立ちどまる。怪物の背中――と呼べるのだろうか――に向けて、レイガンを構える。


「おい! こっちだ!」


 引き金を引いた。

 鮮やかなブルーのレーザーが、怪物の体に命中――する寸前で、跳ねかえった。反射したレーザーが、空に向けて真っすぐ伸びてゆく。


「ちっ――!」


 ジークは舌打ちした。

 予想した通りのことが起きてしまった。

 かりにも相手が《ヒーロー》の力を持っているなら、起きて当然のことなのだが――。


 ジークはトリガーを何度も引いた。

 銃身が加熱し、陽炎が昇りはじめる。


 物理法則をねじ曲げる《力》は、レイガンのビームなどまるで寄せつけなかった。

 戦艦の主砲を持ってきたとしても同じことだったろう。《ヒーロー》の《力》とは、そういうものだ。


 かちり――と、トリガーがむなしく音をたてた。

 弾丸カートリッジ切れだ。

 シリンダー・ブロックに装填されている弾丸カートリッジは八つだけだった。

 予備スペアはない。時の彼方に忘れてきてしまった。


 だがそれでもジークの目的は果たせたようだった。

 怪物の動きが止まる。空中に静止したまま、背中でもかくように触手をうごめかせている。うごめく肉襞の表面に、一本の亀裂がはいった。眼球が出現する。


 その眼が、ジークを捉えた。


《――お前を知っている》


 思念が直接、ジークの頭の中に響いてきた。


 外部から無理矢理に入力される異質な思考が、ジークの脳髄を鷲づかみにした。

 人間とは比較にならないほど強靭な精神――それが放つ思念に、完全に捉えられてしまった。


 注意を引きつけて逃げまわろうという小賢しい作戦など、瞬時に消し飛んでしまう。ヘビに睨まれたカエルの気分がどんなものか、ジークは思い知らされることになった。


《我は、お前を知っているぞ》


 怪物の体が、振動をはじめた。

 触手の先端からはじまった震えは、やがて怪物の全身に広がってゆく。

 青黒い粘液を振りまきながら、肉塊はぶるぶると大きく震えた。

 もしもこの怪物が人間と同じ感情を持っているとしたら、それは喜びの表現に違いない。


 触手に捕らえられていた人間が、ぼとぼとと地上に落下する。

 縮みはじめた触手は、肉塊の表面に吸いこまれてゆく。

 眼も消えて、触手もなくなった怪物は、完全な肉のボールと化していた。


 震えはさらに大きくなった。

 振動のひとつひとつが、ボールとなった怪物の形を歪ませるほどだ。

 表面の一部が角のように突き出したかと思うと、そのままの形で固定した。

 左側に一本、そして右側にも一本――。


 下のほうでも、おなじようにして二本の角が伸びだした。

 ボールから角に向けて、肉が――ずずっと移動してゆく。

 適度な肉が移動を終わると、粘膜に覆われた表面が硬化をはじめた。


 そこにあったのは、硬い表皮におおわれた手足だった。


 いちばん最後に、頭が生じる。

 山羊のように曲がった二本の角が、頭頂の甲皮を突き破ってぐんぐんと伸びだしてくる。


 どういうわけか、片側の一本は根元からぽっきりと折れていた。

 さらには顔に生まれた二つの眼のうち、片方も無残に潰れていた。


《この傷を与えたお前を、我は知っている。この痛み――お前の血肉で癒してくれよう》


 怪物の思念に捕らえられて、ジークは立ちすくんでいた。

 その時、イーニャの声が聞こえてくる。


「ジーク! これを――」


 何かが投げつけられた。

 それはだらりと下がったジークの腕に絡みついた。


 目は動かせなくとも、視界の隅で見ることはできた。

 手首に巻きついた鎖の先で、小さなインゴットが揺れている。

 それは銃とともに時の彼方に失くしたと思っていた、あのペンダントだった。


 ジークの心を占めていた恐怖と絶望に、ひと筋の希望がさしこむ。

 ――光ってくれ!


 ジークは祈った。恐怖に駆られて、強く願う。


 だがペンダントには何の変化も現れない。


 怪物が突進した。

 壁のような巨体が目の前に迫り、次の瞬間、ジークは跳ね飛ばされていた。

 空中にいるあいだに、怪物の腕がジークの体を鷲づかみにしてくる。


 怪物の手に掴まれて、ジークは高く持ちあげられていた。

 喉元にこみあげてきた血の塊を、怪物の指に勢いよく吐きだす。

 太く節くれだった怪物の指が、何度も吐きだされる鮮血で赤く染まってゆく。


 トラックに撥ねられたような衝撃だった。

 体の感覚が消えうせていた。あるのはただ、苦痛ばかりだ。


 ジークを掴んだ怪物の手に、ぎりっと力がこめられる。

 ジークはまた血を吐いた。骨の砕ける音が、体のどこかから聞こえてくる。


 怪物の手に掴まれたまま、ジークはさらに高く持ちあげられた。怪物の巨大な頭部が目の前にくる。


《我の血肉となれ――》


 うつろな眼窩が迫ってくる。

 潰れた眼球が流れ落ち、ぽっかりと穴がひらいている。


 ジークは怪物のしようとしていることを理解し――そして恐怖にかられた。

 その場所に、ジークの体を押しこもうというのだ。怪物の言った〝痛みを癒す〟というのは、そういう意味だったのだ。


「待ちなよ! さあっ! こっちよ!」


 イーニャの声がした。怪物の足元に走りつつ、彼女は声を張りあげた。


「そんな坊やより、あたしのほうがおいしいわよ! ほらっ! あたし見なさいよ! 心を覗いてみなさいよ!」


 怪物の手が止まった。


 ひとつだけ残った無傷の眼球で、怪物はイーニャを見ていた。


 やめろ――と、ジークは言おうとした。

 だが口から出たのは、気泡のまじった鮮血だけだった。

 怪物はジークを無造作に投げ捨てた。

 二階ほどの高さから投げだされて、ジークの動かない体は路面に激突する。


 イーニャは顔を歪め――それでもジークに駆け寄ることなく、その場に立ち通していた。

 怪物の手が伸びてきても、胸を張って立っていた。


 四本指の巨大な手が、彼女の身体を掴みあげる。怪物の思念は歓喜に染まった。


《おお――これは》


 彼女のわずかな衣服を引きむしり、怪物は自分の胸元に押しあてた。

 甲皮を貫いて何本もの触手が伸びだしてくる。

 無数の触手は、怪物が手を離しても彼女の体を支えていた。

 彼女の白い身体は、うごめく触手にみるみる覆いつくされていった。


 ゆっくりと引きこまれ、怪物の胸郭に埋没してゆく。


 ジークは地面に倒れたまま、一部始終を見ていた。

 かすかに残った意識の中で、目を閉じた彼女の顔が、怪物の肉の合間に埋まってゆくようすが見える。


 怪物の体が震えた。


 山のような巨体が収縮をはじめる。

 建物の四、五階まで届いていたほどの巨人は、みるみるうちにパワード・スーツほどに縮まり、最後には人の大きさとなる。


 裸の女体――それはイーニャと同じ姿をしていた。

 やつは両の手のひらをじっと見つめていた。手を握っては開き、身体の弾力を試すかのように、薄い乳房をぎりっと握り潰す。


「じつに、いい――」


 感想を述べる声は、歓喜に震えていた。

 彼女の姿と、彼女の声で――そいつは言った。


「じつに未熟だ! 取るに足らぬことで、なんと揺れ動く情念か。後悔と苦渋に満ちていて、じつに味わい深い! この形態と経験マトリクス――我ら|《無貌なる者》のかおのひとつとして加えよう」


 料理でも味わうかのように、そいつは至福の表情を浮かべていた。

 その神々しいまでに穏やかな表情に、ふと、深い苦悩の翳りが現れる。


「……あたしが……あたしがいけないの。悪いのはみんなあたしなの……意地張っちゃって………、ごめんね、ごめんね……」


 ぽろぽろと涙がこぼれた。

 だがそれもつかの間――スイッチを切り替えでもしたかのように、表情はふたたび変化した。


 彼女の全身から噴きだすように、怒気が燃えひろがる。


「殺してやる……殺してやる殺してやる。よくもあたしから、奪って……殺してやる!」


 炎のような怒りが、ふっとかき消える。

 微笑が浮かび、笑い声が口から流れだした。


「うふふっ――馬鹿ね、なに言ってんのよ」


 そしてこんどは、魂の底からこみあげる歓喜――。


「やっと……、やっと戻ってきたのね……。こんな、こんなことって……」


 喜怒哀楽のすべてが、目まぐるしく上演(、、)されていった。

 ひと通りの感情を試し終えると、そいつは本来の冷たく卑しい表情にもどった。


「いい! じつにいい――」


 にやりと、口元が歪む。


 その薄笑いを目にしたとき、ジークの中でなにかが変化した。

 どこからか噴きだした激しい情動が、ジークの中で激しく渦を巻く。

 怒りではない。憎しみとも違う。


 ジークはいま、この場に立たなければいけなかった。


「かっ……、 かの……彼女を……」


 意志の求めに応じるように、体が力を取りもどしはじめる。


「彼女を……」


 粉々に砕けていた骨が、ぱきぱきと音を立てて復元してゆく。

 骨のつながった手足を踏んばり、ジークは血の海から身を起こしていった。

 地面にこびりついた肉の一部が、べりべりと剥離して削ぎ落ちてゆく。


 だが痛みなどで、ジークの意志は止まりはしない。

 肉はふさがり、傷口を皮膚が覆いつくした。自分の体だ。自分の思い通りにならないはずがない。


「彼女をっ……」


 ジークの手の中で、《ヒロニウム》が光り輝いていた。

 そのまばゆいばかりの輝きに、イーニャの姿をした相手は慌てた。彼女の姿を崩して、もとの巨大な怪物へと戻ろうとする。


 ジークは拳を握りしめた。

 いまや全身を覆うようになった輝きを、拳の一点に集約させる。


「彼女を――汚すなぁっ!」


 変形しつつある肉塊に、輝く拳が叩きこまれる。

 衝撃が空気を揺るがす。

 通りに面した建物で、窓ガラスがつぎつぎと吹き飛んでいった。


 平たく潰れた肉塊は、その勢いのまま地面に激突した。

 何十メートルにもわたってアスファルトをえぐりながら、ようやく停止する。


 ジークは近くの地面から、レイガンを拾いあげた。

 《ヒロニウム》の白い輝きが、腕を伝ってレイガンを覆ってゆく。


 銃口を肉塊に向け、トリガーを引きしぼる。


 青い光条がほとばしった。

 弾丸の入っていないはずのレイガンは、持ち主の意志に応じて高エネルギーのレーザーを撃ちだした。

 何度も何度も――肉塊を穴だらけにするまで、ジークは手を緩めなかった。


 地面にできあがったクレーターの中から、紫色の蒸気が立ちのぼる。

 無気味な色をした原形質が熱く煮えたぎり、穴の中でぐつぐつと沸き返っていた。


 ジークはレイガンをズボンのポケットに収めると、歩きはじめた。

 沸騰する肉だまり(、、)に向かって、ゆっくりと歩いてゆく。


 融解した肉の一部が、柱のように持ちあがった。

 形は変化をつづけ、目鼻が生まれる。汚れた粘液が、さらりと流れる髪に変わり、盛りあがった肉が薄い乳房を作りだす。


 祈るように手を前で組みあわせて、イーニャの姿をした物体(、、)は訴えかけた。


「おねがい……やめて、ジーク」


 ジークは前進をやめなかった。

 そいつは涙を流して訴えつづける。


「おねがい、あたしを殺さないで。おねがい……」

「彼女を――」


 拳を振りあげ――涙を流しつづける顔面に、叩きこんだ。


 イーニャの擬態をとっていた薄皮一枚ほどの細胞が、激しく痙攣する。


 肉のなかに腕を突っこんだジークは、あるものを探していた。

 おぞましい感触の中で腕を動かし――そして探りあてた。


 間違えるはずもない。

 手に伝わる暖かな感触を頼りにして、ジークはぐっとたぐりよせた。

 腕を引き抜く。細胞の塊がひとつ――その手に握られていた。掴んだ部分をとっかかりにして、あとにつづく全体を引き抜く。


 人間ひとり分に相当する肉を引き抜いたジークは、その勢いのまま、後ろ向きに倒れた。

 赤く染まった大量の肉が、べちゃりとジークの上にかぶさってくる。


 ジークは肉に向かって、優しく語りかけた。


「もうだいじょうぶだよ、イーニャ……」


 その言葉に、肉は安心したように身を震わせ――本来の形を取りもどしはじめる。

 わずかな時間のあと、それは白い女性の肉体となって、ジークとしっかり抱き合っていた。


「ジーク、ジークぅ……」


 彼女の体をしっかりと抱きながら、ジークは身を起こした。

 身の一部を強引に引き抜かれた肉塊は、穴の中で悶え狂っていた。

 あらゆる生物の形態が、一瞬だけ現れては、すぐ別のものに取ってかわられる。


 イーニャの細胞を引き抜くとき、ついでにやつの神経――とでも呼ぶべきもの――を引きちぎっておいたのだ。


 苦しみもがく怪物に、ジークは言った。


「どうだ? それが痛みってやつだ――うまいだろ?」

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