――マリアフォード――
Q.いつ戦闘回始まるんじゃおらぁ!
A.まだ始まりません。
Q.フィアは金髪ですか!?
A.違います。赤い髪です。
まだ日も暮れていなかったが、マリアフォードの正門の前では、
エリアレイドにむけての警戒なのか、衛兵が二人門の左右に立っていた。
衛兵はグリードとフィアのここらでは見ない服装に目を付けたのか、
俺たちを呼び止めてきた。
俺は衛兵に呼び止められるのは子供の時以来だったので、
内心とてもビクビクしていた。
「そこの3人、止まれ。」
右側の衛兵が3人の行く手をふさぐように立ちはだかった。
「タウンの者じゃないな」
「まぁ、旅するパーティ一行ですよ。」
「ここは通行料がいるんだよ。通りたきゃ金を払え。」
は? このくそ守衛、狡いことしてやがる。
「いくらだ?」
グリードは仕方なく尋ねる。
グリードが小銭入れを取り出すと、衛兵はニヤりと笑った。
「1人あたり銀貨3枚」
グリードは無言のまま小銭を差し出した。
衛兵は腰に下げた袋に金をしまった。
「ま、暑い中ご苦労様。」
といいつつグリードが肩をたたいた。
「争いごとを起こすなよ。」
と衛兵に声をかけられながら3人は街の中へ入っていく。
「グリード、なんで黙って払ったんだ? 全部守衛のはったりだ。」
「あぁそうだろうな、街に入るのに金がかかるなんて聞いたこともねぇ」
「じゃあなんで・・・」
「こういうことさ」
グリードがフィアを指さす。
フィアはニンマリしながら革袋をじゃらじゃらさせながら俺に見せる。
「やつらは金をとる相手をもうちょっと考えるべきだったな。」
「ご飯だー!」
フィアが叫ぶ。
「まぁまて、まずは宿を探すぞ。」
「あ、宿ならうちに泊まっていってください。」
街のはずれのほうにある家に2人を案内した。
「おいおいリアム、お前金持ちかよ!」
いや、金持ちってほどじゃあ・・・
俺は貿易商だった父親を海賊に殺され、
ずっと兄とこの屋敷で過ごしてきた。
兄は騎士になり2年前、この街を出ていった。
以来ずっとひとりきりだ。
まぁ、なんとかパーティもくめたし・・・
荷物をおろし、ベッドに腰掛けながら思いを巡らせる。
特訓・・・かぁ
魔術の上達には何が必要なんだろうか・・・
フィアは自分とグリードの荷物に魔術をかけている、盗難防止だろうか。
よし、酒場にでも行こう。
そういってグリードが立ち上がる。
もうすっかり日の落ちた街の中を歩いていくと
明りのともされた木造の建物から、
ガヤガヤとしゃべる声が聞こえてくる。
俺たち三人は店に入ると、テーブルに座り、
酒と食べ物を注文した。
アウトサイド
外 では普段フル装備の戦士たちも、店では軽装で酒を酌み交わしている。
グリードは酒をひたすら飲み、すでに周りの戦士たちと絡んでいる。
「リアム、もっと食べないと。」
フィアは小柄なくせにバクバク食べている。
特訓、ねぇ・・・
俺はあまり進まない料理に手を付け、食べ進めた。
周りの客はエリアレイドでどこが一番の狩場になるかで大盛り上がりだ。
毎年、どこの酒場でも時期になるとこの話題が出る。
いい狩場を見つけたパーティは、
かなりの戦果が期待できるからだ。
客はそれぞれ口うるさく意見をぶつけている。
やはり最上位が出現するダウスの迷宮が一番だろう。
あそこのダンジョンはボスさえ倒せばかなりの戦果だからな。
いやいや、あそこはナイトホークスが毎年真っ先にクリアしちまう。
やはりサーダ平原が一番だ。
一部の客はどこのパーティが優勝するかの賭け事をしている。
グリードが立ち上がり、カウンターのほうへ行くと、
金を払い、俺とフィアのほうへ来た。
「は~ 食った食った、帰るぜ。」
三人は家へ戻り、寝床についた。
グリードは帰るなりベットに突っ伏して寝てしまった。
フィアはロッドをいじりながら、しきりに何かつぶやいている。
初めて外に出たにしては、上出来だろう。
俺はそう自分に言い聞かせ、眠りについた。