――運命――
「まぁ二刀流といっても小さなダガーを2本操るだけだがな。
大剣を操るのが俺は苦手でね。
素早い動きができるほうがいいのさ。」
「でもそれじゃあ、さっきの風魔法は・・・?」
「ふっふっふ~ フィア様特製の魔術水晶~!」
おいおい、こいつ魔術水晶まで作れるのかよ・・・
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魔術水晶
高難易度魔法の一つ 魔力を別のものに込める魔法により、魔力を蓄積した宝石 術者が所持状態で水晶に込められた魔力内ならば詠唱をすれば術の発動が可能。
高位魔法職にしかつくれず、粗品が大量に出回っている。近接職でも
詠唱さえ覚えれば魔術がつかえるため、込められた魔力の量によっては高値で取引される。
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「フィアのはねーそこらへんのものとは違って・・・」
「で、リアム。」
自慢を遮るようにし、俺に向き直ったグリードがしゃべりだす。
「さっきの大会なんだが、主催はどこだ?」
「どこ、と言われても・・・ 運営はマリアフォードの王下直系のギルドが開いてると聞いたけど。」
「パーティを組むのか?」
「3人から5人で出場、1日中に狩ったモンスターのランクと数に合わせたポイントで競われるんです。」
「グリードさんたち、出場するんですか?」
「まぁ、お祭りだってんならするしかないよな。
よければなんだが、リアム、一緒に出てくれないか?」
「リアムも一緒のパーティ!?やったー!」
いやいやいや、考えるまでもない、パスだパス。
「な、なんで僕なんかが?」
「そりゃ、2人じゃ出れないんだからもう1人いれるだろ。」
いやそうかもしれないけど・・・
「騎士とか盾持ちの強い人を選んだほうが・・・」
グリードは親指を立て、困った顔をしながら後ろのフィアを指さした。
頬を膨らませたフィアは
「あのガシャンガシャンって音無理!」
いや、そりゃ重装備なんだから仕方ないだろ・・・
壁役がいないパーティとか聞いたこともないぞ・・・
「そういうわけでメイジのお前が一番手っ取り早いんだ、頼む!」
「じゃあ、パーティ入らせてもらいますけど、・・・弱いですよ?」
俺は一度落とした顔を上げ、グリードを見ながら答えた。
俺の目に映ったのはニンマリとほほ笑むグリード。
その不気味な笑みにたじろぎ、助けを求めるような目でフィアを見る
「特訓の始まりだね、リアム♪」
ニコニコしながらそう言った。
俺はグリードのほうを向き直り、どんな手合せなんだろうと考えをめぐらした。
そもそも、メイジと剣士が1対1など戦闘にもならないじゃないか。
「特訓って・・・」
「飯」
「は?」
「飯だ飯、食べに行くぞ。」
「やったー」
はしゃぎつつフィアが立ち上がり、グリードについていく。
俺はため息をついて立ち上がり、2人の後を追った。
パーティを始めて組めた嬉しさで、心の中がいっぱいだった。