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第七話

何かに追いかけられているようで、何かを追いかけているような生活だった気がします。


何かに怯えているようで、何かに守られているような生活だった気がします。


何事も過程ではなく結果。

良い学校に行かなくても稼げるのは、所謂才能とやらを持った人でした。

中途半端な変人ほど苦しいものはありません。

規則はちゃんと守るようにしました。

それでいて個性を見出そうとしたのが間違いだったのでしょうか。


結局、良い学校に行かないなら、自分なんて存在価値のない、生むべきでなかった子だと、遠回しに言われたことがあります。

全ては親戚の目、自分の自尊心のためじゃないかと曲がった考えはなかなか抜けず、自分なりにがんばってもがんばっても結果がでないことに落胆して、何もかもをやめてしまいたくなったことはありました。


鳶が鷹を生むなんてありえない。

そう、反論したくともできませんでした。

だから、やめたかったのです。


でも、誰もそれは許してくれませんでした。

伸びない学力に落胆され、塾に行ってがむしゃらに勉強しても目標のない高みに挑んでいるような気がしたのです。


高校受験は、範囲が限定されています。

でも、大学受験は全国が相手なのです。

自分よりも頭の良い人間などたくさんいますから……頂上の見えない世界に恐れをなしたのでしょうか。

勉強してもしても結果が見えないから、諦めてしまったのでしょうか。


でも、自分は帰らねばなりません。

帰らなくては今までの努力が無駄になると、費やされた金が無駄になると、怒られてしまいます。


「帰ら、な、きゃ……」


ただただ息苦しい世界に。

生きる意味が見出せない世界に。


「帰って……生きなきゃ……」


生きる意味が見出せない世界で、生きる意味を見出すために。


ー帰ってきちゃダメー


暗闇の中で、声がしました。

懐かしい、聞き慣れた声のような気がします。


ー帰ってくるなんて、許さないー


声の主を探しますが、見えません。

見えるのは暗闇だけ。


ー特別なんて、ありえないでしょう?ー


懐かしい声。

ごく最近まで聞いていた気がする声。


ー戻るんだよ、マーシュの世界にー


「マーシュの、世界……?」


ーここは君がいるべき場所じゃないんだからー

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