第三話
まずは、部屋を見渡しました。
先ほどまで眠っていたベッドは少し大きいサイズです。
部屋は壁紙というより木の板でできていますがさほど寒くはありませんね。
「……あ!」
ストーブがありました。
だるま式ストーブです。
薪をくべるタイプですから、中が見えるようにガラスが張られている場所から赤い光と燃える薪が確認できました。
ストーブの上には赤いヤカンが、湯気をチュンチュンと吐き出しています。
空焚きはしていないようなので一安心ですね。
床も木の板でできていて、少し古いのか軋みます。
そして、胸をときめかせるようなものが!
「わぁ……っ!」
大きな本棚と書物卓です!
本棚にはぎっしりと本が詰まっていて、それがとても古いことは背表紙を見ればわかりました。
何の本なんだろう。
あの机に向かって読んでみたいな……。
成人向けの本で無いことを願いましょう。
窓は……部屋が暖かいのか結露が張り付いていました。
外が見えないので手で払いのけて覗きます。
古い部屋のようですから、窓を開けてうっかり外しちゃったなんて冗談にはなりません。
白い……雪……?
結露を吹いても、外はあまり窺えませんでしたが……やたらに白いことはわかりました。
冬なのでしょうか。
……冬だったらやばい。
受験がもうすぐじゃないですか!
この状態で受験という言葉が出て来るなんて、いろんな意味で大丈夫でしょうか。
少し焦りを感じて部屋の中をウロウロします。
ここはどこなんだろう。
どうしてここにいるんだろう。
刹那。
視界の端に人影が映りました。
「誰ですか!」
慌ててそちらを見ますが……この感じは鏡でしょうか?
部屋も映り込んだ姿見鏡です。
「鏡……?」
恐る恐る近づいて見ます。
そこには栗色の髪の女の子が映っていました。
彼女は自分の動きに合わせて動きます。
……嘘。
こんなことが、あっていいのでしょうか。
自分は栗色の髪じゃなくて赤茶けた髪だったはずです。
こんなに長くて癖毛ながらも纏まりのある髪ではなかったはず。
瞳も、見たことがない色……アメジストのような紫色でした。
いったい、どういうことなのでしょうか……。
頬にある少ないソバカスを撫でて、愕然としてしまいます。
「失礼します」