第一話
燃えるように暑い。
いや、実際に燃えているのかもしれない。
わたしが燃える音がする。
肉が、髪が、骨が、燃える音がする。
突き刺さるように冷たい。
腹のそこから凍りついているようだ。
わたしがひび割れる音がする。
割れて、溶けて、砕けて、死ぬ音がする。
二つの感覚が混ざり合って新しいわたしを作り出す。
腐り切った灰色の世界から抜け出すことなんて、諦めていた。
汚れ切った大人の世界から逃げ出すことなんか、諦めていた。
ああ、わたしは誰になってしまったのだろう。
女?男?犬?鳥?それとも石や草木?
雨が降る。
焼け焦げ凍りついた体に雨が降る。
リン、リン
かすかに鈴の音がする。
それは誰かが歩くリズムで、かすかに鳴り響く。
リン、リン……チリン
立ち止まった。
わたしは動けない。
痛みも何も感じないけど、死ぬのだけは嫌だ。
人は死んだら何処に行くんだろう。
わたしの存在は何処に消えるんだろう。
ああ、どうか……神様。
わたしはわたしの世界で何のために生まれて来たのか、教えてください。
運が支配する世界で、自尊心のために利用される世界で、わたし如きが生きていても仕方ないのではないですか?