表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

#02プロローグ02

「さてと、続き続き〜」

 凛はよっこらせと、立ち上がると、刺しているスコップに手を伸ばした。

 その時だった。

 はじめはそよ風のような柔らかい風であった。砂漠の砂がさらさらと流れて、小さな波模様を描いている。

 地表を撫でる程度の弱い風だ。地下5メートルの位置で穴掘りに夢中になっている凛が当然気づくわけもない。

 頭の中がお金で一杯の彼女は、100メートル先で落ちた小銭の音は分かるのだが、今回はあいにくながらお金ではない。

 鼻歌まじりで砂地にスコップを立てる。目線は常に地下のことだ。

 だからだろう。彼女が異変に気づいたのは、さらに2メートル近く掘り進めた辺りだった。

「ん?」

 凛は怪訝な目で上を見つめる。風はさらに勢いを増しごうごうと音を鳴らしている。

「ちょ〜っと風が強いけど……」

 少し考える。

「まっ、大丈夫でしょ」

 凛はふぅ〜と息をはくと、再び掘り始めようと右手をスコップの柄に手をかけようとした、そのときだった。

 それは爆発のようであった。

 巻き起こった風は竜巻などではなく、爆発であった。それ以外に形容しようがないものであった。

 大丈夫だろう。と高を括っていた凛もさすがに驚いた。再び上空へと目を向ける。

「一体でったい……うわっ!?」

 凛の掘り進んでいた穴の縁に風がぶつかった。切り崩すように砂が舞い上がり、凛の顔めがけ襲って来た。不意の出来事に対応できなかった凛は、口に入った砂を吐き出す。

「ぺっぺっ。これはヤバいんじゃ……」

 さすがの凛でもこれ以上留まるのは危険と感じたのか、慌てながら荷物をまとめ始める。とりあえず、地上に上がって、テントに入ってやり過ごそうと考えたのだ。

 幸いにも、凛の周りに置いてある荷物はリュックと水筒と食料と大荷物ではなかったので、すぐにまとまった。

 あとは地上に戻るだけ。

 凛ははしごに手を掛け上ろうとした。

 それは突然だった。急に音が消えたのだ。その現象を不思議に思った瞬間には凛の身体は宙に浮いていた。

 勢いが尋常ならざぬ風は地面を抉り取り、砂を巻き上げ、空を砂で覆う。太陽の光が隠れ、薄暗くなる。凛は上か下か自分がどうなっているのか分からない状況だ。

 予想だにしていない出来事のせいで、ポイントを作ってもいなかった。戻すことができない。

 息がつまり、呼吸が苦しくなる。なんと口を開けたが砂が入るばかり。我慢して口を閉じ、首に掛けていたゴーグルに手をかけ、もがくように目にかける。どうにか視界がはっきりする。はしごや、スコップが落ちてあるのが上から見えるということは、自分の身体は舞い上がっているということか。

 どうにかして、無事だけは確保しなければならない。

 ここ自然地帯はならず者が多い。先述した平和条約の外の場所だからだ。ここで殺されても誰にも文句が言えないのだ。

 もちろん、凛自身、トレジャーハンターとして活動している以上そのような危険は分かっている。だから、どの状態で着地しても受け身がとれるよう集中しておく。

 覚悟を決めていたら、突然風が収まった。凛は叩き付けられるように自身が掘った穴の中に倒れた。自分で言うのもなんだが、結構丈夫に掘ったものだ。

「な、なんなのよいきなり……」

 ふらふらとなる足を叱咤し、平衡感覚を失った頭を抑えながらとにかく風が止んだこの瞬間にここから脱出しなければと、リュックを背負い、はしごに手をかける。

 すると今度は逆からの風が吹いて来た。

 先ほどのようにそよ風ではなく、暴風だった。

 ついに凛が掘った穴に吹きすさび、穴の中をしっちゃかめっちゃかにしていく。

 左右の穴の壁に叩き付けられ、意識をはっきりさせるので精一杯だ。

 そしてついに穴の耐久力が負けたのか、一斉に崩れさり、巻き上がった砂が雨のように、穴へ入り込む。

 いくらなんでもこのままでは生き埋めになってしまう。

 巻き上がった身体が一瞬穴の外に出た瞬間、凛は右腕を大きく伸ばし何かを掴むように手を開く。

「プ、プレ……」

 何かを言おうとした瞬間、凛は再び穴の底へと砂と一緒に飛ばされ、大量の砂に埋められていく。なんとか自由に動かせる右腕を引き寄せた。


 −−危機一髪であった。

「ぷはっ!」

 凛は水中から上がったように砂の中から飛び上がってきた。なんとか、スキルのお陰で助かった。

 しかし、結構上の所で使ったらしく凛の意思とは無関係に地上から2メートルほど飛んでから、地面に落ちた。

「あいたたた」

 凛は尻餅をついてしまい、尻をさすりながら立ち上がる。どうやら風は収まったらしく、空も太陽が見えていた。

 どうやら無事だった。どこも怪我をしていなかった。命あっての金稼ぎだ。

 凛はゴーグルを外し首にかける。そして、周囲を観察し……開いた口が塞がらなくなった。

 まずテントがなくなっていた。おそらく風で舞い上がり破壊されどこかへ吹き飛んでいったのだろう。

 そして、当然ながら掘っていた穴が奇麗に埋められていた。

 いわゆる何もなくなったのだ。なんというか骨折り損のくたびれ儲けとなってしまった。

 これはつまり、凛のネルジー採掘が振り出しに戻ってしまったのだ。

 先ほども言ったが、凛はただ働きとかそこらへんが大っ嫌いだ。

 さらに、あのテントは槍ノ峰の冒険者関連のショップで購入した特注品だ。まあ、その特注品のテントが壊れてしまうというのは……一体どうしたらいいのか……。

 いや、それ以上に凛は怒りに震えていた。

 そう、ありとあらゆるものを壊された。つまり、凛の財産を破壊されたのだ。

 そして、ただ働きをされたのだ。時は金なりという。つまり、時間を取られたのだ。

 もうこれはこれは許せないのだ。

 凛は握りこぶしを作り、わなわなと震える。そして、キッとそこを睨みつけた。

 こんなことを起こすのはいつどんな時でも連中しかいないのだ。

 槍ノ峰に住まう連中。怪人だ。

 風が吹き終わり視界が晴れた所に見えるのは結構距離があるというのに、はっきりと分かる大きな大きな風車であった。

「あれね……」

 確信は無い。

 こうなったら猪突猛進である。

「ぜーーーーったい犯人をとっちめてやるわ!」

 凛は帽子の砂を払い落とすと、水筒を取り出し流し込むように水を含んだ。

というわけで、プロローグ終わりです。

次回からいよいよ凛ちゃんの冒険? が始まります。

誰か感想ください。(切実

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ