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好きだなんて、言わない。

 良子と恋人になった。浮かれて浮かれてしょうがない。母ちゃんに気持ち悪い顔とか言われても全くむかつかない。

 恋人だ。恋人なんだ。明日からどうしよう。そうだ、まずはお昼を一緒に食べよう。中学生になってからはそれぞれ同性と食べるのが当たり前になってたしな。

 で、帰りは当然一緒に帰るとして、て、手なんか繋いだりしてな! 昔は結構つないでたけど、良子が意識してくれてからはお互い恥ずかしくて繋げなかったし。


「ふへへへへへへ」

「ちょっと剛、まじであんた大丈夫かい? まさかまた悪いもんでも拾い食いしたんじゃないだろうね?」

「うっせーなぁ、かぁちゃんは。そんな昔のこといつまでも引きずるなよ」

「昔昔ってすぐあんたは言うけどね、ほんの五年前なんだからね」


 五年とかちょー昔だろ。なにいってんだ。


 わくわくしながら翌日を迎えた。お昼に誘うと、良子はなんと! お弁当をつくってきてくれた。


「うめえぇぇぇ!」

「声が大きいよ」


 クールぶって注意してくるが、顔は赤くて笑顔なので喜んでるのは明白だ。


「良子、大好きだぞ」

「うん」


 恋人になった以上怖いものなしだ。良子に拒否られる心配がないのではばかることなく好きだと言える。


「大好きだー!」

「うるさいよ。もう、恥ずかしいなぁ」

「なんだよ、テンション低いなぁ。お前も俺のこと好きなんだろ?」

「……うん」


 可愛い!

 テンションあげろよとか、もっと好きってお前もアピールしてくれとか言おうと思ったけど、真っ赤になってうつむきがちに頷く良子が可愛すぎる。たまらん。


「よ、良子」

「うん?」

「きょ、今日、今日の放課後、デートしようぜ!」


 良子は目を大きくして驚いて、火がついたみたいに真っ赤になってから、首をすくめて無意味にきょろきょろしてから、そっと俺を上目遣いで見てくる。


「………うん」


 くぁぁぁ、可愛いなぁ! この可愛いのが俺の恋人だぜ!? ちょー自慢してぇぇ!


「良子は俺の恋人だーーー!!」

「つ、剛君! うるさい!」








「好きだ」

「好きだ!」

「大好きだ!」


 剛君は赤裸々に私に気持ちを伝えてくる。すごくすごく嬉しすぎて、体があつくてたまらない。まだ私が照れてるのはばれてないだろうか。

 好きだ。私も好きだって言いたいし、私からも手を繋ぎたい。大好き。もっと一緒にいたい。でも恥ずかしいし、何より剛君に好かれたままでいるために私のキャラを崩すわけにはいかない。


 そんなわけで、微妙にもんもんうずうずしながらも、剛君と恋人になり一週間。周りにからかわれたりもしたけど、冷やかされるのも減ってきたし順調なお付き合いと言えると思う。

 でもまだ、私は剛君への態度をはかりかねていた。大人っぽくかつ恋人への態度ってどうすればいいのかわかんないし、赤くなるのをおさえてそんな演技できるかなぁ。


「良子、一緒にかえろうぜ」

「うん、いいよ」

「やったね」


 剛君と手を繋ぎたいな。ドキドキ。一応、好きって伝えてるし、恋人だし、私から少しくらいアプローチしてもいいよね?


「つ、剛君、あのさ」

「どうした?」

「えっと、その、て……テスト、どうだった? 英語の小テスト」


 言えずに話題変更する私。へたれすぎる。うう。だってやっぱり緊張するし、緊張すること隠さなきゃとおもうとますます意識するんだもん。

 剛君はてきとうにふった話題に嫌そうな顔をする。


「わざわざやなこと思い出させるなよ。3点だよ」

「えー、せめて半分はとろうよ。昨日の授業でならった単語ばっかりだったじゃない」

「そういうお前は何点?」

「8点」

「さすが俺の良子」

「剛君のは関係ないし。それなら剛君こそ、私の剛君らしく勉強してよ」

「俺は運動、良子は勉強。バランスとれてるだろ?」

「私別に運痴じゃないんだけど」

「十分運痴だろ」


 むぅ。確かに剛君に比べたら足の早さも握力もてんでかなわないけど。でも、運動音痴は言い過ぎ。


「だったら剛君、体を動かす勝負をしようよ。私が勝ったら、今日はうちでテストの見直しして、全体的に復習ね」

「いいぜ。どうせ負けるわけないしな」

「種目は私が決めてもいい?」

「もちろん。ハンデだ」

「じゃあ指相撲」

「……体動かす勝負?」

「指も体の一部でしょ」


 指相撲は得意中の得意だ。捕まったら握力のせいで逃げれないけど、指が大きいから剛君の指は捕まえやすいし、私は早口は得意なのだ。


「12345678910っ!」


 勝利。








「私の勝ちだね」


 にこにことご機嫌になる良子。この笑顔が見れるからと、俺は昔にできた指相撲のハンデを黙認してきたが、せっかくこれからデートしようと思ったのに勉強とか。


「なぁ良子、そろそろ俺の有効範囲が良子の爪で、良子は俺の親指全体OKってルールはやめないか?」

「なんで。だめだよ。剛君は指が大きいんだから」

「でもなぁ」


 さすがに不公平な気がする。ただでさえ良子は俺の半分くらいの時間で数を数えてしまうのに。


「なにさ、剛君。男に二言があるって言うの?」

「…ねーよ」


 まぁいい。物は考えようだ。よく考えたら、つき合いだして初めての良子の部屋だ。二人きりだ。

 おっ、これはなかなかいいんじゃないか? 良子といれば教室でも道端でも二人きりには違いないが、他人の視線を気にしなくていいなら、手も繋ぎやすい。

 よし! 付き合って今日で一週間だし、手を繋ぐか!













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