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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第1章  慎吾とリナ
9/45

第8話  埋蔵金伝説

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TV局へと向かった2人だが・・・


アイドルのバッグ盗難事件に遭遇。リナの持つ特殊能力により、犯人を捕まえるに至った。バッグを盗まれたアイドル・松浦から、2人は特別番組の観客としての招待を受ける。


慎吾はTV局で、スピリチュアル・カウンセラーの江浜に声をかけられた。


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   第8話  埋蔵金伝説


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TV局での見学を終えた翌日。

(実際は盗難事件の犯人を捕まえ、タレントにサインをもらっただけで、見学はしていないが・・・)


2012年5月4日、正午過ぎ。

GWで大学は休講であったが、慎吾は大学のパソコン室にいた。


自宅にパソコンを持たない慎吾。課題や調べ物をする時、いつもここを利用している。


大学が休みとはいえ、構内にはまばらに学生や教授の姿が見えた。仕事に励む教授、サークル活動にいそしむ学生や図書館で勉強する学生、ただたむろしているだけの学生・・・


約50台のパソコンが設置されたこの部屋にも、5,6名ほどの学生の姿が見える。


慎吾は一番後ろ、一番奥のパソコンを利用していた。


【スピリチュアル・カウンセラー】【江浜】【霊】などを検索ワードにし、たどりついたページを熱心に読んでいる。


そしてTVS・週一レギュラー【ホラーの湖】という番組に、彼が出演していることを知った。


番組中で彼は、行方不明になった家族の亡骸を見つけ出したり・・・


悪霊のようなものに憑かれた人を除霊したり・・・


悪夢にうなされる者へ、的確な助言を与えたり・・・


季節の変わり目などの特番では・・・殺人事件における死体を霊視し、犯人逮捕に貢献したりもしている。YOUTUBEでは、彼が除霊した回の放送分を見る事も出来た。


「あら・・・?」


パソコンから目が離せない慎吾に、何者かが声をかける。


「なんであんたがここいるの?」


慎吾が振り向くと、眠そうな目をしたリナが横に立っていた。


慎吾「あ・・・リナ先輩。あれ? 今日大学休みですよ?」


反射的に出た慎吾の言葉は、リナを不愉快にさせる。


リナ「あんたさぁ・・・大学休みでも来ちゃいけないってルールある!?

    むしろ休みの日にパソコン室で仕事しようってんだから・・・


    褒めてもらいたいぐらいだわ!」


慎吾「え? 仕事って・・ 麻雀ですか?」


リナ「そそ。ホントはいつもその席でやってるんだけどね」


アゴで慎吾の操作しているパソコンをさす。


慎吾「あ・・変わりましょうか?」


リナ「いい。気を遣われるのイヤだって言ってるでしょ。

    ここでいいわよ」


そういうとリナは慎吾の隣に座り、パソコンを起動させた。


リナ「ノートより・・・ デスクトップの方が、大きくて見やすいのよね~」


パソコンが起ちあがる間、リナは慎吾のパソコンを覗き込む。


リナ「あら、江浜氏ね。ホントTV映りいいわよね~。50歳に見えない!

    でも最近、この【ホラーの湖】も視聴率悪いらしくてさ・・・


    打ち切りの話出てるんだって」


この番組では、よく「スピリチュアル・カウンセラー江浜氏は・・・」というナレーションが流れるため、リナも彼の事を【江浜氏】とよんでいた。


慎吾「リナ先輩は・・・この番組、よく見てるんですか?」


リナ「昔はよく見てたんだけどね~、最近は全然。

    でもこの番組さ・・・ モロやらせでしょ?」


慎吾「え・・・?」


目を丸くする慎吾。


リナ「だって霊なんているわけないじゃん! やらせってわかってても・・・

    江浜氏のイケメンさと、番組構成の巧みさ!


    リアリティあって面白いのよねー。

    まぁでも最近は・・・マンネリだから、見なくなったけどさ」


(慎吾「そっかぁ・・・リナ先輩は、霊の存在を信じてないんだ・・・」)


慎吾は・・・


子供の頃から霊が見え、霊と会話して育ってきた。


幼い頃の慎吾は、人間も霊も同じ世界に住んでると思っていた。日常で人と会話もすれば、霊とも会話する。


霊は必ずしも人の形をしてるわけではない。


時には、火の玉が話しかけてきたり・・・ 時には、体長5cm程度の小さなおじさんが群れをなして話しかけたり・・・


時には、全く喋らない緑色の人や黄色の半漁人みたいな人も見かける事があった。


霊の世界には・・・ いろいろな形を有したものが存在するのである。


また霊の世界にも・・・ 人間界同様、悪い霊も良い霊も、普通の霊もいる・・・。


霊と話す慎吾は・・・周りから見れば、宙に向け独り言を言う不気味な子供だった。


母親が慎吾を気味悪がった事をきっかけに・・・

「霊なんて見えない方がいい」と強く思うようになる。


そして幼い慎吾は、無意識に「チャンネル」と呼ばれるものを操作出来るようになった。いわゆる「霊の周波数」とよばれるもので、意識して霊を見えないように自分で調整できるのだ。


普段、慎吾は霊が見えないように「チャンネル」を操作している。


しかし・・・それでも、霊が慎吾の前に現れる時がある。

そういう時は、どんなにチャンネルを操作しようとしても・・・霊は視界に入り、霊の言葉は頭に入り込んでくる。


そしてそういう時は・・・決まって、何らかの危険が迫っている時だった。


リナ「ちょっと! あんた聞いてる?」


心ここにあらずといった表情を見せる慎吾に、リナは大きな声をかけた。


慎吾「え? あ、もちろん!」


リナ「だからこの夏で、【ホラーの湖】も打ち切りか?って話なのよね~」


リナはすでにネット麻雀を始めている。


慎吾「そうですか・・・」


慎吾が見る限り、江浜の霊能力は本物だ。ディスプレイ越しでも十分にわかる。彼が霊に語りかける口調や視線は、自分が霊に語りかける時のしぐさと全く同じだった。


ただ慎吾は・・・除霊の仕方や、霊視の方法などは知らない。霊が見え、会話が出来るだけの能力に過ぎない。江浜の霊能力とは比べようもない程、未熟なものだ。


慎吾は江浜について約2時間調べ上げた後、今度は【徳川埋蔵金の謎を追え】をキーワードに検索を始めた。


リナ「よし! 国士無双!!!」


隣でリナがガッツポーズをしている。


リナ「あら? 今度は徳川埋蔵金?」


キリよく半荘ハンチャンを終えたリナが、ちらっと慎吾のパソコンを覗いた。


リナ「埋蔵金なんて絶対見つからないって。

    見つけたって聞いた事ないし!


    賭け麻雀の方がよっぽど生産的!」


そう言うリナに、慎吾は反論する。


慎吾「そんな事ないですよ。埋蔵金は十分存在する可能性あります」


リナが眠そうな目を慎吾に向ける。


リナ「冗談・・・だって見つかった事、無いじゃん・・・」


慎吾「いえ! あります!

    戦後、おおやけになっているだけでも・・・


    50件以上、埋蔵金発見の事例があります」


リナ「嘘ー、絶対嘘!!

    てかあんたさ・・・そゆのくわしいの?」


慎吾「はい。僕、史学部ですから。

    歴史や古代遺跡とか大好きですし、オーパーツなんかも大好きです。


    失われた古代大陸や文明なんて、想像するだけでワクワクします!

    もちろん財宝伝説とか、埋蔵金なんかも興味津々です!」


リナ「あー・・・オタクってヤツね・・・はいはい。

    一応、聞くけど埋蔵金見つかった例って?


    小判数枚で5万円ぐらいとか? よくて15万円ぐらい?」


慎吾はニヤッと笑う。


慎吾「まさか・・・埋蔵金ですよ!

    歴史的価値を含めると、100万はくだらないものばかりですから!」


リナ「100万? う~ん・・・微妙・・・ 

    それにそんな話、聞いた事ないしな~」


慎吾「戦後最大の発見といえば、1963年の【鹿島清兵衛の埋蔵金】でしょう!

    当時、時価で6000万円!!」


それを聞いて、リナが目を大きく見開いた。


リナ「6000万円!? マジ!?」


慎吾「それが当時の価値ですから、今だと・・・

    10億円ぐらいですねかね?」


リナ「じゅ、じゅ・・・10億円!? 嘘よ・・・絶対嘘よ!!」


リナは麻雀の手を止め、慎吾に言い寄る。


慎吾「ホントですって・・・ネットで【鹿島清兵衛の埋蔵金】って検索したら

    多分、一発で出てくると思いますよ」


慎吾が言うが早いか、リナは高速でキーボードを打ち始めた。マウスをクリックした後・・・


リナ「ほ・・・ホントだ・・・ 今の価値で10億円・・・」


ディスプレイを見つめながら、目を丸くする。


慎吾「日本には、埋蔵金や宝物伝説が200以上もあるんです。

    そのいずれも億単位の価値がありますよ」


リナ「は~・・・」


溜息しか出てこないリナ。


慎吾「未だに発見されてない宝の総額は・・・

    300兆円とも500兆円とも言われてますから」


リナ「あ、ごめん・・数字に強い私でも500兆円とか想像できない・・・」


慎吾「北は北海道、南は沖縄まで・・・

    どの土地にもお宝伝説はありますからね」


リナ「北海道や沖縄にもあんの!? 初めて聞くわ・・・」


慎吾「えぇ。沖縄には【キャプテンキッドの宝物】伝説がありますよ!」


嬉しそうに慎吾は、自分の出身地の話をする。


リナが【待て!】と右手でジェスチャーをする。


リナ「ちょ、ちょ、ちょ・・・ちょっと待って!

    今、あんた・・・嘘ついたでしょ! 」


慎吾「嘘?」


リナ「キャプテンキッドって、あたし・・・

    確か、子供の頃漫画で読んだわよ!


    キッドって漫画のキャラでしょ! それに外人なのに沖縄!?

    いくらあたしが歴史に疎いからって、嘘はヤメてよ!」


慎吾「いやいやいや!! キャプテンキッドは実在の人物です!

    ウィリアム・キッドが本名で、海賊船討伐に出たハズなのに・・・


    自ら海賊になったっていう、ミイラ取りがミイラみたいな人ですから」


リナは慎吾の話を聞きつつ、【ウィリアム・キッド】を検索して調べている。


リナ「・・・・。ホントだ・・・ 漫画の世界の海賊だと思ってた」


慎吾「彼は結局ロンドンで処刑されるんですが、処刑される直前・・・

    『私は財宝を隠している』と叫ぶんです。


    でも場所を告げる前に絞首刑・・・」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「キッドは強奪した宝物を、近辺の島に隠すクセがあったんです。

    だから彼の最期の言葉は、信憑性が高いと世界中に広まった。


    こうして7つの海をまたにかけた・・・

    【キャプテンキッドの財宝】伝説が世界中に生まれたんです」


リナ「いやいや・・・それはアリとしてもさ・・・

    沖縄はないっしょ・・・いくら何でも」


慎吾がさらにニヤッと笑う。


慎吾「ところが・・・今から70年以上前。

    キッドの残した地図が日本のある島と酷似していると・・・


    調査した人がいたんです!これがまた非常に興味深くて・・・」


リナ「あー・・・なんかあんたの話、長くなりそう。わかった! 信じるから!」


慎吾「え!? 聞かないんですか?

    新潟県のとある教師がですね・・・伯父からもらった遺品の中に・・・

 

    何とキャプテンキッドの地図と同じものを見つけたんですよ!

    漫画みたいですがホントの話で・・・教え子の夫のアメリカ人が・・・・」


リナ「うわー、すっげー信じられないけど、なんか信じたい自分もいる・・・」


リナは両手で頭を抑え、苦悩するしぐさを見せた。


慎吾「全て本当です!!」


リナ「わかったわかった・・・じゃあ徳川埋蔵金ってのは・・・

    ズバリ聞くけど・・・マジあんの!?」


慎吾「過去の文献や記録、また調査した範囲での出土品から・・・

    間違いなく存在すると言われています」


リナ「ある・・・ のね・・・」


慎吾「えぇ。2年前の鳩川政権では、それをアテにした財源確保をうたってましたね。

    政府関係だけでなく、組織ぐるみで発見に着手してる団体もいるとか・・・


    暴力団なんか・・・よく探しているって話を聞きますね」


リナ「でも未だに見つかったって聞かないし・・・」


慎吾「実はすでに見つかっていて・・・公表してないという噂も・・・」


リナ「ふ~ん・・・。 で? もし見つけたとして、その・・・

    お金の価値は・・・ いかほどなの? 徳川埋蔵金は?」


リナにとって、最も興味があるのはそこだ。


慎吾「もし伝説通りなら・・・

    現在の価値で、100億以上はあると言われています」


リナ「ひゃ・・・100億円以上!?」


慎吾「そんな簡単に見つけられる場所には隠さないですよ。

    徳川埋蔵金を見つけるには・・・


    いくつかの謎に挑戦しなければならないんです」


リナ「うわー・・・お金は大好きだけど・・・

    やっぱり簡単じゃないのね・・・


    数字がらみの謎なら、自信あるんだけどなー」


慎吾「過去、こういった埋蔵金のありかを示す方法として・・・

    数字が使われた例もたくさんあります。


    あとは地図とか暗号とか・・・

    徳川埋蔵金だと・・・有名なのは【かごめかごめ】なんてのもあります」


リナ「え? かーごーめーかーごーめ ってヤツ?」


慎吾「えぇ・・・ 後ろの正面・・・だあれ? ってヤツです」


リナ「それが・・・ 徳川埋蔵金の謎を解く鍵?」


慎吾「そうです!」


慎吾はニヤッと笑った。




              (第9話へ続く)

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次回予告


誰もが知っている「かごめかごめ」。

この歌詞に「徳川埋蔵金」のありかを示す手がかりがあるという・・・


ただの都市伝説か・・・それとも事実なのか・・・・?


次回 「 第9話 かごめかごめ 」

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