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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第1章  慎吾とリナ
8/45

第7話  スピリチュアル・カウンセラー

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TV局へと向かった2人だが・・・


アイドルのバッグ盗難事件に遭遇。リナの持つ特殊能力により、犯人を捕まえるに至った。そしてアイドルの松浦から、2人は特別番組の観客としての招待を受けた。


TV局から出ようとした慎吾に、何者かが声をかける。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第7話  スピリチュアル・カウンセラー


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

慎吾「・・・ ・・・」


その男は・・・


Yシャツネクタイ、黒いスーツをびしっと決め、銀縁メガネはその知性をにじみ出している。右手はポケットの中、左手は黒い大きなバッグを持っていた。


年の頃は40歳前後といったところか、メガネの向こうの優しそうな目は慎吾を冷静に見つめている。


慎吾「あ・・・ あなたは?」


男「驚かせて失礼。私の名は江浜。

   スピリチュアル・カウンセラーをしている」


そう言うと、眼鏡を外し胸ポケットにしまった。


江浜「この眼鏡は・・・ まぁ、フィルターのようなもんでね・・・」


ズボンのポケットから名刺入れを取り出すと・・・1枚の名刺を慎吾に渡す。


慎吾「・・・ ・・・」


無言で受け取る慎吾を見て、江浜は静かに話し始めた。


江浜「仕事がら、いろいろな霊を見てきたが・・・

    日本をべた人物を守護霊を持つ者は少ない」


慎吾「!?」


慎吾の表情が急に険しくなる。


江浜「安心しろ。私は敵ではない。1つ警告したいだけだ」


直立不動のままピクリとも動かず、江浜は慎吾の目を見続けている。


江浜「TV局は特異な所。芸能人やその関係者だけでなく・・・

    政界や財界、各界の人間、はては暴力団や犯罪者なども訪れる事がある。


    君がこんな所に来るのは危険だ。悪意を持った者に狙われかねないからな」


慎吾「・・・」


緊張した表情の慎吾。江浜への視線を切らすことはない。


江浜「ふ・・・。それぐらい警戒してくれた方がちょうどいい。

    とにかく、こういう所はなるべく避けろという警告さ」


優しいながらも厳しい眼差しを慎吾に向け、小さく笑った。


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾は、どんな言葉を返していいのかわからない。


ふと化粧直しを終えたリナが戻ってきた。


慎吾に「お待たせ」と声をかけようとしたが・・・にらみ合う2人の男にただならぬ雰囲気を感じ、足を止める。


江浜「万が一何かトラブルに巻き込まれるようであれば・・・

    いつでも連絡を。名刺は無くすなよ。お守りにもなっている」


慎吾「・・・ ・・・」


名刺を見つめる慎吾。


江浜「もっとも君には・・・

    その程度のお守りなど、必要無いが・・・」


そう言うとリナの横を通り過ぎ、TV局の奥へと向かって行った。


江浜が横を通り過ぎた後、リナが慎吾の元へよってくる。

慎吾の目線は、江浜の後ろ姿を追ったままだ。その視界をリナがさえぎる。


リナ「あんたさぁ・・・ 江浜氏と何話してたの?」


リナの声で我に戻る慎吾。


慎吾「え? あぁ・・・ えっと? 何でしたっけ?」


軽く慎吾の頭をはたくリナ。


リナ「何、寝ぼけてんのよ。

    何であんたが、江浜氏とにらみ合っていたかって話」


慎吾「え? リナ先輩・・・今の人、知ってるんですか?」


慎吾の目を見て、リナは大きく口を開ける。


リナ「マジ!? あんたマジ江浜氏、知らないの!?」


リナの大きな声に気圧けおされる慎吾。


慎吾「え? ひょっとして超有名なタレント・・・?」


リナ「違うわよ! 日本一有名なスピリチュアル・カウンセラーよ!

    あんたさぁ、あの有名な番組【ホラーの湖】見た事ないの?」


慎吾は迫ってくるリナに、両手でストップのジェスチャーをした。


慎吾「あ・・・ ない・・・です」


リナ「霊に関する仕事してる人よ」


慎吾「霊・・・関係?」


リナ「行方不明になった亡骸をさがすとか、悪霊が憑いた人のお祓いするとか・・・

    他には、殺人事件の霊視による犯罪捜査とかもやってたわね。


    すっごい霊能力の持ち主で、色んな事件を解決してるのよ」


慎吾「そ、そうなんだ・・・」


リナ「日本一の霊能力者として、超有名よ。マジ、知らなかったわけ?」


慎吾「は、はい・・・」


リナ「で?」


慎吾「?」


リナ「その江浜氏と何話してたのよ?

    彼も私のイケメンランキングベスト10に入ってるのよ。


    とても50歳には見えない、若々し・・・」


慎吾「え!? あの人50歳なんですか!? 全然見えない・・・」


リナの言葉を遮って、慎吾は驚きの言葉をあげる。


リナ「噂じゃ、高校生ぐらいの娘がいるらしいわよ。

    まぁ今日は私・・・ 松順さまでお腹いっぱいだから・・・」


そう言うと、出口に向かって歩き出した。


リナ「さ! 帰るわよ!」


慎吾「え・・えぇ・・・」


2人はTVSの出入り口で、入局許可証を返却して帰路につく。



・・・ ・・・。


帰りの新幹線の中。


窓際に座るリナは、ずっと外の景色を見ている。


慎吾「あれ? リナ先輩、麻雀しないんですか?」


隣に座る慎吾が声をかけた。


リナ「あんたさぁ。私が年中麻雀してると思ってるわけ?」


振り返ったリナは、怪訝な表情を浮かべる。


慎吾「い、いえ・・・ただ、麻雀で勝つのがすごかったから・・・

    また見られるかなーって」


リナ「ったく・・・。

    まぁ、あんたのおかげでサバンナ症候群とやらもわかったし」


慎吾「わざと間違ってますよね? サヴァン症候群です!」


リナ「そうだっけ?」


慎吾「でも、リナ先輩・・・1つ聞いていいですか?」


リナ「何?」


慎吾「いや、レンタカー店のページにハッキングしたじゃないですか」


リナ「もう少し小さな声で話してよ。それに絶対それ、他言しちゃだめよ!」


慎吾「わかってます。ただ、例えば金融関係とかにですね・・・」


声を小さくしながら話す慎吾。


慎吾「ハッキングして、お金とか引き出せるのかなーって・・・」


リナ「そういう所のファイアーウォールは、さすがに高度だから。

    私でも、そう簡単には破れないわよ。


    でも、まぁ・・・本気出せば出来ると思うけど・・・」


慎吾は専門用語の意味を理解していないが、とりあえず頷く。

ふとリナが何かを思い出したように熱く語り始めた。


リナ「お金はね! お金はハッキングして稼いでも意味ないの!!

    ウデよ、ウデ! 自分のウデで稼いでこそのお金よ!」


そう言うと右腕の上腕二頭筋を、左手でパチンと叩いた。


慎吾「そうですか・・・」


と言いつつも


(慎吾「賭け麻雀も、違法サイトなのに・・・」)


心の中ではそう思っている。


リナ「お金は・・・大好きだけどね・・・」


どうやらリナには・・・リナなりのお金に対するポリシーがあるらしい。


慎吾は同じセリフを、ちょうど7ヶ月後にも聞かされる事になる。

その時には・・・まだ知る事のない、リナの重大な秘密を知る事になるのだが・・・



慎吾「あともう1つ。お巡りさんがリナ先輩に声かけた時・・・

    リナ先輩、すっごい緊張してたじゃないですか。


    過去逮捕された事でもあるんですか?」


リナ「はぁ~!? なんで私が逮捕されんのよ!!

    ばっかじゃないの、あんた!!」


反射的に大声で言い返す。


リナ「賭け麻雀のサイトで荒稼ぎしてるのがあるからさ・・・

    ちょっとドキッとしただけよ!


    まぁ・・・アメリカのサーバ経由してるから・・・

    簡単には足つかないはずだけど・・・」


慎吾「なるほど。てっきり逮捕歴があるのかと思いましたよ」


そうでない事が、ガッカリしたようなという表情で小さく笑う慎吾。


リナ「笑うトコじゃないっつーの!!

    私はあれで学費・生活費、その他全てまかなってるんだから!


    あんたみたいな親の仕送りは一切ないんだからね!」


慎吾「わ・・・そうなんですか!? やっぱりリナ先輩はすごいな~。

    自分で生きていく力を持っている!」


少しずつリナに関する知識が増えていく慎吾。なんだか嬉しくなり、さらに笑顔がこぼれた。


リナ「あー・・・でも、せっかく松順様に会えたんだから・・・

    握手だけでなく、サインももらっておけばよかったー」


リナはお祈りのポーズをして、新幹線の天井を見つめる。

その言葉を聞いて慎吾が、思い出したように声をあげた。


慎吾「あ! 忘れてた! リナ先輩!

    事情聴取が終わった後ですね・・・


    僕、松浦さんにサインもらっておきましたよ」


リナ「え!? マジ!!」


慎吾「なんかリナ先輩、松浦さんの事すごい好きそうだったし。ほら!」


慎吾はリュックの中からタオルを取り出す。

それには日本のTOPアイドルの1人、松浦順のサインが書かれていた。


慎吾「このタオル、買ったばかりでまだ未使用ですから。

    ホントは色紙があればよかったんですが・・・

 

    あの時は事情聴取だったし、手元にはこれぐらいしかなくて・・・

    これでよろしければ、差し上げます」


リナ「わー!! タオルでも全然OK!! マジ嬉しい! 

    てかあんた気が利くじゃない! やりぃ!!」


リナは松浦のサインが書かれたタオルのにおいをかぎ始めた。


(慎吾「はは・・・気を遣われるの、嫌いって言ってたのに・・・」)


タオルを顔にくるみ、妄想モードに陥るリナ。しばらくそれを見ていた慎吾が、その妄想を打ち破る。


慎吾「あ・・・リナ先輩?」


ニヤけた顔が一瞬にして不機嫌な顔になる。


リナ「なに!?」


慎吾「あ、いや・・・ ほら、明後日の収録見学・・・

    行きます・・・よね?」


リナ「当たり前じゃない!

    今度は【山嵐】メンバー全員のサインゲットするわよ!」


(慎吾「・・・ レポートの事、全く頭に入ってない・・・」)


すでにリナは本来の目的を忘れていると確信した。


慎吾はガッツポーズしてるリナに聞いてみる。


慎吾「明後日の収録なんですけど・・・ 

    僕も行った方がいいですかね?」


(江浜「君がこんな所に来るのは危険だ」)


江浜に言われた言葉を、少し気にしていた。


リナ「はぁ? 当たり前でしょ。あんたは私のレポ・・・」


リナは「あっ」という顔をする。そのリナの表情を見て、慎吾は笑顔でこたえた。


慎吾「はは。大丈夫ですよ。リナ先輩のレポートも、僕、書きますから」


リナ「あ、あら・・・ 気が利くわね、今日は」


ばつの悪そうな表情を見せるリナ。


江浜に言われた事も気になったが・・・ 慎吾は、再びリナとTV局に行く事を決意した。



・・・ ・・・。


箱根湯本駅・駅前、午後9時過ぎ。


慎吾「なんだか・・・ 色々あった1日でしたね」


リナ「そうね・・・う~ん・・・」


思いっきり背伸びする。


リナ「今日は変な事件あったけど、スピード解決できたし。

    松順様と握手も出来たし・・・サインももらったし!!!


    レポート書いてくれる約束も取り付けたし!!」


そういうとリナは慎吾の顔を見た。慎吾は一瞬ドキッとする。


リナ「ありがと!」


リナは笑顔で、素直に感謝の言葉を言った。


慎吾「こ・・・こちらこそ、ありがとうです!

    あんなに遠くまで、案内して貰って・・・」


小さな笑顔で慎吾もこたえる。


慎吾「僕、女の人と2人で出かけたの・・・初めてです! 楽しかったです!」


その言葉を聞いたリナが冷ややかな顔になった。


リナ「あんたさぁ・・いい1日だったと締めくくりたい時にそれ?

    何、この場でチェリーを宣言してんのよ・・・」


慎吾「え? 何ですか、チェリーって?」


慎吾は笑顔のままリナに聞き返す。リナは小さく溜息をつき・・・


リナ「今度ネットで調べてみなさい。じゃ、ここでお別れね!」


そう言い放つと、片手でさよならのそぶりを見せ、スタスタと歩き出した。


慎吾「あ、待ってください」


慎吾がリナの後を追いかけてくる。


リナ「ちょっと・・なんでついてくるのよ? 今日はもうバイバイっしょ?」


慎吾「あ、僕もこっちなんです、帰り道」


慎吾は、リナが歩き出そうとした方向を指さす。


リナ「えー・・・」


リナは露骨にイヤそうな顔をした。



・・・ ・・・。


しばらく同じ道を歩いていた2人。


慎吾「でも今日のリナ先輩、カッコよかったです!」


リナ「あ、そ」


どうでもいいといった感じで、素っ気なく返事をするリナ。


慎吾「絶対リナ先輩以外、犯人捕まえられる人いませんでしたよ!」


慎吾は、少し興奮気味に話していた。


リナ「あんたさぁ。まさか私に惚れたりしてないわよね?」


慎吾は笑顔のまま、リナを見つめる。


リナ「・・・ ・・・」


一瞬ドキッとするリナ。


慎吾「惚れたりなんて絶対ないですよ!」


慎吾は元気よく素直こたえた。この日何度目だろうか・・・リナの冷ややかな視線が慎吾を突き刺す。


リナ「あんたさぁ・・・ホント、マジで空気よめないっつーか・・

    天然で人に殺意与えるプロよね、プロ」


慎吾「え? 今、僕、何か失礼な事言いましたっけ!?

    だってリナ先輩が好きなのは松浦さんでしょ!


    次のTVS訪問であいさつしに行くし・・・楽しみですね♪」


リナは軽く頭をかく。


慎吾「今度、2SHOTの写真撮ってあげますよ!」


嬉しそうに話す慎吾。


リナ「・・・ ・・・」


慎吾と出会って何度目となるだろうか・・・リナは小さく溜息をついた。


リナ「まぁ・・・いっか・・・」



・・・ ・・・。


数分後。


大通りから小道に入り、しばらく歩く2人。


リナ「結局あんた・・ 私んちの前までついてきたわね・・・」


2人は、とあるマンションの前で立ち止まった。


リナ「あたしはこのマンションだから。あんたんちは?

    まだ先? それとも・・・


    実は私を送ろうとか、変な気を利かせたわけ?」


慎吾「あー・・・」


慎吾はマンションを見つめ、こたえづらそうな顔をする。


リナ「あ、やっぱり私を送ったのね! 気を遣わなくていいってば!」


不機嫌そうに語るリナに、慎吾が口を開いた。


慎吾「あ・・・ 僕・・・ 僕もこのマンションなんですけど・・・」


慎吾は目の前のマンションを、申し訳なさそうに指さす。


リナ「えぇ!?  マジ!?」


閑散とした小道に、リナの大声が響き渡った。






              (第8話へ続く)

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次回予告


2度目のTV局見学前日。パソコン室で調べ物をしていた慎吾は、リナと鉢合わせる。徳川埋蔵金は眉唾ものだと主張するリナに対し、慎吾は豊富な知識で反論。


慎吾は実際に発掘された埋蔵金の話を始めた。その価値10億円という話に驚くリナ。


次回 「 第8話 埋蔵金伝説 」

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