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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第1章  慎吾とリナ
7/45

第6話  運命の出会い

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TV局へと向かった2人だが・・・


アイドルのバッグ盗難事件に遭遇。リナの持つ特殊能力により、犯人を捕まえるに至った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第6話  運命の出会い


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リナ「ったく・・・。あんたさぁ・・・

    ホント間抜けよねー」


腕組みをしたリナが、大きなため息をつく。


慎吾「し、仕方ないじゃないですか・・・。

    リ、リナ先輩が急に110番するから・・・」


2人はTVSのとある一室で、ある人物を待っていた。


リナ「は~・・・」


タレントの【松浦順】バッグ盗難事件を解決した2人。慎吾は110番で犯人情報を提供した際、自分の氏名と電話番号まで警官に伝えてしまった。


リナ「あんたさぁ・・・あーいうのは、匿名でいいのよ、匿名で。

    最悪、電話番号は教える必要ないっつーの!」


警官側から折り返し電話を受けた慎吾は、TVSのとある一室で待つように指示される。今回の盗難事件に関し、事情聴取を受けるためだ。


慎吾「あー・・・僕、お巡りさんに何て言えば・・・?」


右手の拳をトントンと軽く頭に叩きながら、悩むそぶりを見せる。


リナ「知らない。アドリブで何とかしてよ。

    ヘタな事言って、帰るの長引くのはゴメンだからね!


    てか、マジ長引いたら・・・あんた置いて帰るから」


冷たく言い放つリナは、今回の事件解決の中心人物であったが・・・警官側には一切自分の身元情報を伝えてない。


リナ「さて・・・あたしは局内ブラブラして・・・

    イケメン芸能人と【運命的な出会い】でもしてこようかしら」


そう言うと部屋の出口へと向かった。


慎吾「ちょ・・・ リナ先輩・・・」


泣き顔でリナの後を追おうとする。後ろを振り返ったリナは・・・


リナ「はい! これも勉強の1つ! 頑張って事情聴取されてね!」


満面の笑みを浮かべた。瞬間、思いっきり怖い表情になる。


リナ「いい? あたしは今回の事件、一切関わってないから。 

    絶対、あたしの名前出さないでよ!!」


慎吾「は・・・はい・・・」


慎吾の困惑した顔を確認したリナは、再び笑顔になる。


リナ「じゃ、私はこれで。

    運命の出会いの旅に・・・いざ出発~」


言いながらドアノブに手をかけようとした。


ガチャッ。


ドアノブに触れる直前、部屋の外側から扉が開けられる。そして一人の警官が、部屋の中に入ってきた。


リナ「あら・・・ お巡りさん。

    意外と早かっ・・・ た・・・ わ?」


警官と目があった瞬間、言葉に詰まるリナ。そして口を【わ】の形に開けたまま固まった。


慎吾は、入ってきた警官を見て緊張する。


慎吾「あ! お、お巡りさん!! ぼ、僕は慎吾って言いまして・・・」


1つの乱れもない警官服をビシッと着こなし・・・少し外側に跳ねたクセっ毛、日本人離れした端整な顔立ちはヨーロッパ系のハーフかと思わせる。


その警官は慎吾と目を合わせ口を開く。


男「はは。お巡りさんに見える? だとしたら嬉しいなぁ」


リナの視線は・・・透き通るような声のその男に、釘付けのままだ。


男「初めまして。俺は松浦順。お巡りさんでなくてタレントなんだ。

   ドラマの撮影でこんな格好してるだけさ」


一瞬「え?」という顔をした慎吾。


慎吾「あー!! バッグ盗まれたタレントさんですね! 初めまして!」


慎吾は深々とお辞儀をした。


松浦「はは・・・ そう、バッグ盗まれた間抜けなヤツさ」


慎吾「あ、いえ! そんなつもりでは・・・」


軽く頭をかいた松浦は、慎吾の目を見て笑顔を見せる。


松浦「お巡りさんから聞いてるよ。本物のね。

    犯人捕まえたの・・・君だって?」


慎吾「え、あ・・・」


松浦「心から礼を言うよ・・・」


そういうと松浦は右手を慎吾の前にさしだし、握手を要求した。


慎吾「・・・ ・・・」


握手に応じた慎吾は、困った表情を見せる。


慎吾「あー、いえ。はい・・・」


事件解決の一番の功労者は・・・リナ。彼女がいなければ、間違いなく犯人は逃走していた。


でもリナは、今回の事件に関わっていない事になっている。慎吾はリナに視線を向けたが、口を開けたまま松浦を見つめ・・・固まり続けていた。


慎吾「・・・ ・・・」


そんなリナを見て、慎吾は意を決する。


慎吾「えぇ。でも僕は・・・

    犯人を見つけた後、どうしたらいいかわからなくて・・・」


リナの方に視線を合わせたまま・・・


慎吾「リナ先輩が、警察や警備員に連絡するように言ってくれたんです。

    リナ先輩がいなかったら・・・パニクって犯人逃がしてました」


笑顔で説明する。


松浦「・・・ ・・・」


松浦の視線は・・・慎吾から、赤いメガネの女性へと移る。そして呆然としたままのリナへと、ゆっくりと歩み寄っていった。


松浦「・・・ ・・・」


リナの真正面に立った松浦は、さわやかな笑顔をふりまく。


リナ「あ・・・ ・・・」


目の前に、あこがれのアイドルがいる。


さわやな笑顔の松浦は、リナから視線をそらさず・・・



優しくハグした。


松浦「ありがとう。君がいなければ・・・ ホントに感謝してるよ」


ハグしたまま、リナの耳元で囁く。


その後リナの両肩に手を置き、真正面から目を見つめる。


松浦「ありがとう」


2度目の感謝の言葉を囁いた。ステキな笑顔を見せた後、慎吾の所へと戻っていく。


リナ「・・・ ・・・」


リナの心臓はバクバクと激しく動悸し、全身の鳥肌が立った。松浦に声をかけようと脳が命令するのに、体がそれを拒否する。


リナ「・・・ ・・・」


ただ・・・ その場で固まる事しかできなかった。



松浦「バッグには携帯も入ってたから、焦ってたんだ。

    アイドルとか芸能人の情報が、1000以上も入っててさ。


    あれが一般人に出回ったらと思うと・・・

    バッグが戻ってきて、ホントよかったよ」


慎吾「・・・ ・・・」


感謝の言葉をさらっと言える松浦を見て、慎吾は好感を持った。


ガチャッ。


直後、部屋には・・・本物の警官が入ってきた。



その後・・・無関係者のリナは、部屋の外に出され・・・


松浦や松浦のマネージャ、それに慎吾と2人の警官による事情聴取が行われた。


慎吾は・・・


たまたま駐車場で見かけた男が白いバッグを持って、急ぎ足でレンタカーに乗り込む姿を見た・・・


そこで慌てて110番したというシナリオを、しどろもどろで警官に説明した。



・・・ ・・・。


約1時間・・・事情聴取は終了した。


警官らが部屋から出た後・・・松浦と慎吾が出てきたのはその30分後。


慎吾「とにかく大事おおごとにならなくって何よりです」


松浦「あぁ。またどこかで会うことがあれば絶対声かけて」


慎吾「はい!」


笑顔のまま元気よく応えた慎吾は、数m離れた所にリナがいるのに気づいた。


カベを背に立っていたリナ。2人が出てきたのを見て近寄ってくる。


慎吾「あ! リナ先輩! え? まさかずっといたんですか!?」


リナは慎吾を無視して松浦の正面に立った。そして深く頭を下げ・・・


リナ「握手してください!」


両手を松浦の前に出した。


一瞬驚いた表情を見せた松浦だが、


松浦「OK」


優しい声で返し、リナの両手を握り返す。


リナ「は・・・ ・・・」


手を握られたリナは、顔を松浦に向けた。


松浦「リナ。ありがとう」


待ってましたとばかりに、さわやかな笑顔を作り・・・リナの瞳を直視する。


リナは無意識に口が開き、


リナ「ふぁ~・・・」


気の抜けた声を出す。


松浦は握手を解こうとするが、リナがそれを許さない。しかしそこは、日本を代表するアイドル松浦。


強引に・・リナの手をふりほどき、今度は慎吾と握手をした。リナの手を無理矢理ほどいたそぶりを全く見せない、握手から握手への自然な流れ。


リナ「・・・ ・・・」


慎吾はリナに睨み付けられているのに気づかない。松浦は握手を解いた後、慎吾に質問した。


松浦「そういえば・・・

    大学のレポート課題のため、TV局に来たと言ってたね。


    何か面白いものは見たかい?」


慎吾「あ、いえ・・・。実はまだどこも見て無くて・・・」


ふと廊下の向こうのロビー・・・柱にかかっている時計が目に入った。


慎吾「あ・・・もう6時回ってるや・・・」


ニュースの生放送を見学する予定だったが・・・間に合う時間ではない。


松浦「えー、ひょっとして・・・俺のせいで、何も見られなかった!?」


慎吾「ま、まさか・・・違いますよ」


慎吾は不自然な笑顔で返事する。


松浦「そうか・・・悪いことしたね・・・」


慎吾の下手な笑顔は、松浦に通じない。自分のせいで、慎吾達の予定を台無しにしたと確信した松浦は・・・


松浦「よし!!」


思い立った声をあげると、側に立っていたマネージャとヒソヒソ話を始めた。

時折、慎吾とリナに視線を向けながら・・・。


話が終わった後、慎吾に声をかける。


松浦「君達さえよければだけど・・・

    あさっての5月5日。TVSの特別番組の収録があってさ。


    俺ら【山嵐】がスペシャルゲストなんだけど・・・

    観客席に、君たちを招待するよ」


慎吾「え!? ホントですか!?」


驚いた声をあげる慎吾。


松浦「俺のドジで・・・君たちは何も見学出来なかったし・・・

    それじゃぁ、レポート書けないだろうしさ」


リナ「行きます! 行きます! 絶対行きます! お願いします!!」


松浦と慎吾の間にリナが割って入ってきた。


リナは松浦の手を握ろうとしたが、松浦はさりげなくポケットに両手を入れてそれを拒否する。


松浦「じゃぁ決まりだな。マネージャが今から招待状渡すからさ」


言いながら目線で、マネージャに合図をする。


松浦「それと、1つ約束してくれないか?

    必ず収録前に・・・俺にあいさつしに来て欲しい。


    それだけ。いいね?」


リナ「はい! はい!!!」


慎吾「わかりました」


2人はマネージャから招待状を受け取った。そして松浦は、右手で「グッバイ」の合図をしてマネージャと共に去っていく。

     

リナは去りゆく松浦に、いつまでも大げさに手を振っていた。


満面の笑みを浮かべるリナに、慎吾が声をかける。


慎吾「でもよかったですね。憧れの松浦さんにハグされて」


リナは眉をひそめて、慎吾を見た。


リナ「え? 何言ってんの? 握手しかしてないわよ、私」


慎吾「いやいや・・・最初ハグされてたじゃないですか・・・」


リナ「嘘! なんでそんな嘘つくの!?」


慎吾「え? いや・・・だって・・・ 

    ひょっとして、記憶ないんですか? ハグされた時の?」


リナは両手で頭を抑え、思い出そうとするそぶりを見せる。


慎吾「あの・・・どこまで記憶があります?」


リナ「えっと・・・

    運命の出会いを探しに、部屋を出ようとして・・・


    気がついたら、部屋から出てきた松順様と握手した・・・」


慎吾「うわ! その松順様がリナ先輩ハグしたんですよ!

    あんなに記憶力すごいのに・・・

 

    一番いい想い出だけ、欠損してるんですか!?」


リナは両手で頭を抑えて叫んだ。


リナ「うそー! 絶対うそー!! でもあんた嘘つかないし・・・

    日本で唯一松順様のハグを受けたのに、何で記憶ないのー!!」


慎吾「いや・・・唯一じゃないと思いますけど・・・」



この調子で2人は・・・


TV局の出口へと向かっていった。


リナ「あ、ちょっと待って。化粧直し行ってくるから」


若干冷静さを取り戻したリナが化粧室を探す。


慎吾「あ、あっちにあるみたいです」


トイレ表示を見つけた慎吾が、その方向を指さす。


慎吾「じゃぁ僕、この辺で待ってますね」


リナを見送った後、慎吾は先ほどもらった招待状を見た。


慎吾「・・・ ・・・」


見た瞬間、慎吾の表情が一瞬固まる。


招待状には、松浦のマネージャのサインと・・・

特別番組の番組名と収録時間が書かれているだけだった。


その番組名は・・・・


【10年ぶりに復活! 徳川埋蔵金を追え! ついに発見!?】


慎吾「・・・ ・・・」


招待状から目が離せない。


慎吾「徳川・・・埋蔵金か・・・」


軽くため息をついき、天井に視線を移した。


慎吾「・・・ ・・・」


じっと蛍光灯の光を見つめる。


「驚いたな」


ふと慎吾に声をかける者がいた。


慎吾「え?」


視線を正面に戻すと・・・男が立っている。


慎吾「・・・ ・・・」


この男こそ・・・後の慎吾の運命を大きく変える人物。


慎吾にとってはまさに・・・運命的な出会だった。




             (第7話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


次回予告


招待状を見つめながら、考え事をする慎吾に声をかけた男。

その男は慎吾に意味ありげな言葉をかけてくる。


後に慎吾の運命を大きく揺るがす事になる、彼の正体は・・・?



次回 「 第7話  スピリチュアル・カウンセラー 」


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