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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第1章  慎吾とリナ
6/45

第5話  初めての事件

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾。


大学の講義で知り合った1つ上の先輩リナ。講義の課題のため、2人でTV局へと向かった。


そこで慎吾は、リナの驚くべき数字の感覚を見せつけられる。リナは【数字依存症】とよんでいたが、慎吾はそれが【サヴァン症候群】だと突きとめた。


不意にリナは・・・警察官に声をかけられ、固まってしまう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第5話  初めての事件


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リナ「あ・・・」


声をかけてきた警官と視線が合い、固まるリナ。


警官「ちょっと聞きたい事があるのですが・・・

    よろしいですか?」


恰幅のよい白髪交じりの中年警官が、リナの顔を覗き込んだ。


リナ「あ・・・はい? えっと・・ 何で・・・しょう?」


緊張しているリナの様子を見た慎吾が、助け船を出す。


慎吾「あ、お巡りさん。お疲れ様です。何かあったんですか?」


笑顔のままいつもと変わらぬ口調で、警官に声をかけた。警官はリナから慎吾に視線を移す。


警官「あぁ。実はさっき、局内で盗難事件があったもので。

    君たちは・・・ ずっとここにいたかな?」


慎吾「はい。今日、局内見学で・・・」


首に提げていた、入局許可証を見せる。


慎吾「僕たちは15分ぐらい、ここでおしゃべりしてました。

    えっと・・・その盗難事件って、いつ頃ですか?」


リナに落ち着く時間を与えようと、間髪入れず警官に質問をぶつけた。


警官「うむ。通報が入ったのは今から10分前だが・・・

    盗難が発覚したのは、今から30分ほど前。


    タレントのバッグが楽屋から消えたらしくてね・・・」


慎吾「タレント・・・?」


警官「あぁ、何でも【松浦順】君というタレントのバッ・・・」


突然リナが反応する。


リナ「松順!? 【山嵐】の松順様のバッグが、盗まれたんですか!?」


急に大声を出したリナに警官は驚いた。


警官「あ、あぁ。財布や携帯、その他私物が入ったバッグが・・・

    30分程前に盗まれたらしいと通報があってね」


リナ「マ・・・ マジ・・・?」


警官「彼の楽屋から、バッグを持ち出す女性の姿も目撃されていてね・・・」


胸ポケットから、手帳を取りだしペラペラとめくる。


警官「長髪で、帽子を着けた女性が・・・バッグを持ち出したらしい。

    そこで今、局内の若い女性を中心に聞き込みをしてるところなんだ。


    知り合いにそういう人がいないか。

    あるいは、そういう人を見てないか・・・」


リナ「・・・ ・・・」


思いっきり眉間に眉をひそめたリナ。


リナ「あの・・・どんなバッグですか!?」


警官「真っ白なヤツで、肩にかける大きなスポーツバッグだ」


リナ「白の・・・ スポーツバッグ・・・」


ここまで、そのようなバッグを見た記憶はない。


警官「【長髪に帽子】【スポーツバッグ】を身につけた女性だが・・・

    警備員からは、そういう人物を見たという情報がなくてね。


    まだ局内にいる可能性が高いとみて、聞き込みをしてるところだ」


リナ「まだ局内に!? わかりました! 見つけたら捕まえますから!」


迫力のある声を出しながら、リナが身を乗り出した。


警官「いやいや。怪しい人物見たら・・・

    局の人に迅速に伝えるか、すぐ110番してくれ。


    協力ありがとう。私は行く事にしよう」


慎吾「あ・・・はい・・・」


途中からリナの態度が一変したため、横でチョコンとしていた慎吾がお辞儀をする。警官が立ち去っていく姿を見守った後、リナに視線を移した。


リナは腕組みをしながら、その場で小さな円を描くように歩いている。


リナ「全く・・・松順様のバッグを盗むバカ女がいるなんて・・・

    ファンとして最低だわ・・・。何とか捕まえてボコボコに・・・」


不機嫌な顔で独り言をつぶやいているリナに、慎吾がおそるおそる声をかけた。


慎吾「あの・・・リナ先輩。ほら、もうすぐ3時。

    第16スタジオで、時代劇の撮影風景見学ですけ・・・」


言い切る前に、リナに睨まれる。


リナ「はぁ? 松順様のバッグが盗まれたのよ!

    それどころじゃないでしょ!!」


目を丸くする慎吾。


慎吾「え・・・? 僕たちには・・・関係ない・・・かと?」


リナが慎吾の所へ歩み寄り、さらに睨み付ける。


リナ「あんたさぁ・・・

    あんたなら、どうやってバッグ持ち出したあと逃げる?」


慎吾「え?」


意外な質問を受けた慎吾は、額から汗を流した。


(慎吾「リナ先輩・・・マジで犯人捕まえる気だ・・・」)


慎吾「え、えーっと・・・普通に、玄関か非常口から逃げますけど」


リナ「あんたさぁ。本気で考えてないでしょ?

    どの入り口も警備員がチェック入れてるのよ!


    泥棒がそんなトコ堂々と通る?」


慎吾「あー、ほら。あえて堂々と通り抜けて、裏をかくって作戦で?」


リナは大きなため息をつく。直後、慎吾に顔を近づけ言い放つ。


リナ「いい? お巡りさんの話じゃ、でっかいバッグ持った人物が・・・

    TV局を出たという、警備員の目撃証言はないのよ?


    トイレの窓とか、警備員がチェックしてないところとか・・・

    もっとこう・・・犯罪者の気持ちになって・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


必死なリナの姿を見て、慎吾はちょっと真剣に考える。 ふとその場を離れ、TV局内の見取り図がある所へ向かった。何も言わずリナはついてくる。


局内の見取り図を真剣に見つめる慎吾。


慎吾「あの・・・地下駐車場はどうでしょう?」


リナ「はぁ? 私たちがさっき行った時、2カ所もゲートチェックあったじゃない」


慎吾「えぇ。でも確か駐車場の入り口横に・・・

    【STAFF ONLY】のエレベーターがあったじゃないですか。


    見取り図で言うとココですよ」


地下駐車場の出入り口横にある、エレベーターの位置をさす。


慎吾「ここならタレントさんの楽屋から、チェック無しで駐車場へ行けます。

    多分これ、タレントさんがすぐに移動できるようにっていう・・・


    関係者専用というか、芸能人専用エレベーターじゃないかなと・・・」


リナも見取り図を確認する。確かにこのエレベーターを使えば・・・中に入る際も、チェック無しで局内に入ることが出来る。


リナ「ふ~ん・・・やっと真剣に考えたわね。でも残念。

    駐車場は許可車しか止められないのよ。


    駐車場から外へ出る際も、警備員がチェックするし」


慎吾「う~ん・・・」


右手の手のひらを額にあてた慎吾。


慎吾「いや・・・出来ます。まず僕たちみたいに・・・

    局内見学の手続きをして、この入局許可証を手に入れる」


首にぶら下げた入局許可証を握りしめながら説明を続ける。


慎吾「その許可証を持って一度外を出て・・・

    今度は車で地下駐車場から入る」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「そしてこのエレベーターを使い、目的の楽屋に入り・・・バッグを盗む。

    その後も同じエレベーターを使い、駐車場へ行き・・・


    駐車場を出る時にチェックは入りますが・・・

    バッグはトランクの中だから目撃されない・・・どうです?」


腕組みをしたまま、リナは真剣に聞き入った。


リナ「ふ~む・・・ アリね、その推理。

    なるほど・・・駐車場のエレベーター。う~ん・・・


    待ってよ・・・そういえば・・・」


何かを思い出したような表情を浮かべる。


リナ「そういえば・・・さっき駐車場を見た時・・・

    1台だけ変な車・・・あったのよね」


慎吾「変な車?」


リナ「【わ】ナンバーよ。関係者が停める駐車場に【わ】ナンバーは場違いだわ。

    それにエンジンかかってたのに、誰も乗ってなかった・・・超怪しい!」


慎吾「えっと・・・確か、【わ】ナンバーって、レンタカーでしたよね?」


リナ「そう。おそらく・・・犯人の車じゃない?」


目を大きく開いた慎吾。


慎吾「ありえますね。偽名で借りた車を使って逃走し・・・

    そのままレンタカーを返して逃げれば、足はつかない。


    エンジンかかっていたのは、すぐに逃走できるよう・・・」


リナ「うん。あの車ね・・・怪しいのは。よし!!」


そういうとリナは、ノートパソコンを取り出し起動する。


慎吾「・・・ ?」


慎吾が黙ってその様子を見ていると、リナはキーボードをカタカタと打ち始めた。


リナ「さて・・・」


慎吾「あの・・・パソコンで・・・何かわかるんですか?」


リナ「わかるわよ・・・。この近辺で、レンタカー扱ってる店探すのよ」


慎吾「え? でも、それで犯人を捕まえられるんですか?」


リナはキーボードを打ちながら慎吾を見る。


リナ「あんたさぁ・・・なんか秘密ある? 人に言えないような」


意表をついたリナの質問に、慎吾は一瞬身をひいた。


慎吾「え? 何でまた急に・・・?」


リナ「いいから! これは人に言えない!!ってな秘密はあんの?」


慎吾は困惑した表情を浮かべる。


慎吾「えっと・・・・ あの・・・」


意を決したように慎吾は口を開く。


慎吾「僕・・・霊が見えます!!」


直後、リナは非常に残念そうな顔をした。


リナ「あんたさぁ・・・嘘つくならもうちょっと・・・

    まぁいいわ。あんた、巧妙な嘘とかつけそうにないし。


    いい? 今から私がする事は・・・絶対人に言っちゃダメよ!」


リナは慎吾を睨み付ける。


慎吾「え・・・? は、はい。わかりました・・・

    何を・・・ するんです?」


リナ「ほら、これ見て。近くのレンタカーの店のページ。

    ここから社員専用のページに潜り込むの。


    つまりパスワードが必要なリンク先ね」


パソコンの画面を見せながら説明する。


慎吾「えぇ? ちょっと待ってくださいよ。

    まず1つ、どうやって潜り込めるんですか!?


    そういうとこって・・・

    IDとかパスワードとか必要じゃないんですか?」


リナ「ふん。本格的なセキュリティは導入してないわよ、こんな所。

    まずIPアドレスからFTPサイトを特定・・・」


喋りながらも高速でキーボードを打ち続ける。


リナ「私の組んだアルゴリズムのプログラムで・・・

    ちょっとサーバにお邪魔して・・・パスワード保護を回避・・・


    って言ってもあんたには理解できないわね」


慎吾「えぇ!? ハッキングですか!? それ?」


リナは首を横に振る。


リナ「私から言わせれば・・・

    簡単にハックできるセキュリティシステムの方が悪いわ。


    私は・・・なんだっけ? サバンナ症候群なのよ!」


慎吾「サヴァン症候群ですよ」


リナ「そう、それ!

    サイト1つ1つのページが、数字の情報で頭に入ってくるもの。

     

    高度なセキュリティでない限り、どこにだって侵入できるわ」


慎吾「すごいけど・・・ でも・・・」


リナ「だから、絶対誰にも言わないでよ! あんただから言ったのよ!」


慎吾「え・・・? 僕だから・・・?」


リナ「そう!」


慎吾「・・・ ・・・」


首をかしげる慎吾。


リナ「別に深く考えなくていいから。あんたを信用してるって事よ」


慎吾「わ・・・わかりました。

    でも・・・レンタルした人の情報を、ネット上に残すでしょうか?」


リナ「当たり前じゃない! あんたさぁ、何も知らないでしょ! 」


慎吾「は、はい・・・」


正直に頷く慎吾。


リナ「レンタカーってのは、同じ系列店舗なら・・・

    借りた所と返す場所が違っても大丈夫なのよ!


    長崎でレンタルした車は、熊本でも返せるの!」


慎吾「え? そ、そんなんですか!?」


リナ「だからレンタルした客の情報は・・・

    ネット上でやりとりするのが常識!」


慎吾「知らなかった・・・。でもどうやって・・・

    その車を探すんですか? 登録名も偽名だろうし」


リナ「だーかーらー! 一度見た車のナンバーは忘れないのよ私は!

    あの【わ】ナンバーの車もちゃんと覚えてるってば・・・


    ほら、あった!!!」


ハッキングしたレンタカーのとある店舗。その顧客情報ページを、慎吾に見せた。


リナ「あれ? でもおかしいわね・・借りたのは一人で・・・

    男だわ・・・ ひろしって名前の」


慎吾「・・・ ・・・」


リナと共に、その車を借りた人物の情報を凝視する。


リナ「名前は偽名だとしても・・・

    車レンタルする時、女装するとは思えないなー。


    犯人は女性だから・・・ シロ・・・?」


慎吾はそのページ情報を睨み付けたまま・・・


慎吾「いえ・・・ 間違いないと思います。彼が犯人ですよ」


口を開いた。


リナ「え? 何故?」


慎吾「帽子と長髪の女性が犯人って聞いた時、違和感ありました。

    犯人が疑われないようにする、典型的なパターンにあるんですよ。


    性別を偽るってのが・・・」


リナ「そうか・・・犯人の方を女性と思わせれば・・・男は疑われない」


慎吾「リナ先輩、駐車場に行ってみましょう。その車があるかどうか確認しに」


リナは慎吾を見て軽く笑う。


リナ「必要ないわ。その車、今からおよそ5分後に・・・

    赤坂にあるレンタカーの店に到着する」


慎吾「え? 何故・・・」


リナ「レンタカーにGPSがついてるのは常識。

    逆に貸した側も、貸した車の位置がわかるようにしているのも常識よ。ほら」


リナが示したページには、地図上を走る光の点滅があり・・・それが例の車だと言う。


その点滅は、あと数分で赤坂のレンタカー店に到着しようとしていた。


慎吾「で、でも、どうするんです?

    どうやってその人を・・・捕まえるんですか?」


リナ「はぁ? そんなの簡単よ」


慎吾の目の前で、手のひらを上にして見せる。


リナ「携帯」


慎吾「え?」


リナ「あんたの携帯貸して」


慎吾「あ・・・はい」


慎吾はジーンズの左ポケットから携帯を取り出しリナに渡した。

リナは即座に「1」「1」「0」とプッシュし、慎吾に返す。


慎吾「え!? ちょ・・・110番!? どうするんですか?」


リナ「赤坂のレンタカー店に、お巡りさんを向かわせて」


慎吾「え!? どんな風にお巡りさんに言えば・・・

    あ! はい! もしもし! えっと・・・


    僕は慎吾って言いますが・・・

    あの・・・赤坂のレンタカーの店にですね・・・」


リナは自分の携帯電話を使い、赤坂のレンタカー店へ電話をかけた。


リナ「あ! こちら赤坂警察署です。ちょっと情報が入りましてね。

    「23-○◎」ナンバーの車をレンタルしてる客がですね・・・


    盗難事件関与の疑いがありまして・・・はい・・・そうです」


慎吾「そ、そうです。犯人がそのレンタカー店に・・・」


リナ「えぇ、もしその客がそちらに現れましたら・・・

    しばらくの間、足止めしてください。


    えぇ・・・そうです。5分でそちらに向かいますので」




こうして・・・



ジャネーズの人気アイドルグループ【山嵐】のメンバー松浦順・・・


彼のバッグを盗難した犯人は、犯行からわずか90分で捕まる事になる。





しかしこの事件解決がきっかけで・・


2人はさらに大きな事件に巻き込まれる事など・・・


まだ知る事はない。




             (第6話へ続く)

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次回予告


リナの活躍で、アイドルバッグ盗難事件の犯人を逮捕。

思わず警察に名前をもらした慎吾は、事情聴取を受ける事になってしまった。


そこで日本のトップアイドル【松浦順】と出会う事になる。

その彼と初対面したリナは・・・?



次回 「 第6話  運命の出会い 」

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