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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第4章  最後の戦い
42/45

第41話  決着の時

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらに誘拐された江浜の娘・あんずも救出した。江浜はリナ達を逃がすため、身代わりに捕まってしまう。


敵とコンタクトをとった慎吾は、江浜とひき替えに徳川埋蔵金を差し出すと交渉。埋蔵金を見つけられぬまま、慎吾達は糸見の息子・小太郎を赤城山へと案内する。


糸見の体に乗りうつった風魔小太郎の霊は・・・埋蔵金を見つけられぬ慎吾達を襲い始めた。攻撃を受けた慎吾は、山の火口・・・30m下へ落ちて行く。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第41話  決着の時


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リナ「慎吾ぉお!!!」


大声をあげるリナの視線の先には、小太郎の大きな背中がある。その隙間から、慎吾が穴の奥へ落ちていくのが見えた。


江浜「・・・ ・・・」


気絶したあんずを抱きしめながら、慎吾が穴の奥へと消えるのを見ていた江浜。


江浜「何故・・・・?」


慎吾が自ら飛び降りるよう仕向けたのを・・・江浜は気づいていた。



・・・ ・・・。


小太郎「ふぅ・・・」


慎吾が背中から落ちていくのを確認した小太郎は・・・


小太郎「なかなか手こずったが・・・ようやく1人片付いた。

     霊力を使い果たし、使い物にならない親子・・・」


江浜を睨み付ける。


小太郎「そして霊力すら持ち得ない女」


そしてその視線をリナへと移した。


小太郎「誰から片付けよう・・・」


言葉とは裏腹に標的を定めていた小太郎は、その歩みをリナへと進めていく。その右手には、霊力で復元させた妖刀・村正が妖しい光を揺らめかせていた。


リナ「・・・ ・・・」


リナの眼前で歩みを止めた小太郎は、ゆっくりと村正を振りかぶる。


小太郎「何度も危機を凌いだ・・・その運の強さは認めよう。

     だが、お前を守る人間はもういない」


しかし・・・ またしてもその【声】は、小太郎の動きを止めた。


男「風魔小太郎! そこまでだ!」


小太郎「!?」


背後から聞こえるはずのない声を聞いた小太郎は、即座に振り返る。


小太郎「・・・ な・・・」


信じられない光景が、小太郎の目に映った。



・・・ ・・・。


慎吾にとって確信はあったものの、イチかバチかのかけだった。


10個のアーチ型の穴のうちの1つだけ・・・石を落としても、岩盤にぶつかる音が返ってこなかった。それを確認した慎吾は、その穴が何かに通じているとはずだと直感。その何かとはもちろん・・・


慎吾「・・・ ・・・」


小太郎に吹っ飛ばされ、30m下へ向かい重力に従って落ちていったが・・・徐々にその体は落ちて行くスピードが減少。とうとう体は・・・ピタリと空中で止まった。


(慎吾「・・・ う・・・ 浮いてる?」)


それどころか・・・今度は重力に反して、体がゆっくりと上昇してゆく。同時に、ものすごいパワーが体に送り込まれていくのを感じた。


(慎吾「・・・ こ、これは・・・?」)


周りを見ると・・・小さな小石や岩も、ゆっくりと上へ向かっている。


(慎吾「す、すごい・・・何だろう、この感覚・・・」)


慎吾は自分の両手を見つめながら、体の中をかけめぐるパワーに満ちた不思議な感覚を味わっていた。ゆっくりと上昇する体は、やがて落ちた時の高さにたどりつく。


慎吾「っと・・・ とと・・・」


両手を水平に伸ばしてバランスをとる慎吾。


慎吾「お・・・唵!!」


気合いを入れると、体は止まって欲しい位置で止まった。足場に何も状態・・・無重力の宇宙にいるかのように、慎吾の身は浮いていた。


慎吾「よ、よし・・・」


自分が落ちた穴の先に視線を移すと、小太郎の巨体が背中を向けているのが見える。そしてリナめがけて刀を振り上げていた。


慎吾「唵!!」


すぐに右手のパワーストーンに力を送り込み、光の円盤を出す。すると今までのそれよりもさらに大きな円盤が出た。


(慎吾「霊力が・・・戻ってる。

     いや・・・ 増幅されている・・・」)


あんずとの訓練では、ちょっと霊力を使っただけで息切れしていた。だが今は、無尽蔵とも思えるエネルギーを感じる事ができる。


(慎吾「いける・・・」)


小太郎の背中に向けて大きな声をかけた。


慎吾「風魔小太郎! そこまでだ!」


背後から聞こえるはずのない声を聞いた小太郎は、即座に振り返る。


小太郎「・・・ な・・・」


視線の先・・・倒したはずの慎吾が、空中に浮いているという信じがたい光景があった。


慎吾「はぁ!!!」


右手のパワーストーンから大きな光の円盤を放つ慎吾。今までの戦闘で見せたその速さとは比にならないスピードで、光の円盤は小太郎を襲う。


小太郎はすぐに身を反転させ村正でその円盤を受け止めた。


ガキィイイイイイイン!!!


瞬間、大きな衝撃が襲った。


小太郎「ぐふぅ!」


吹っ飛ばされまいと耐える小太郎の巨体は、数m後方に下がる。何とか衝撃を耐えきったあと・・・


小太郎「・・・ ・・・」


宙に浮いている慎吾を睨み付けた。


リナ「な・・ なんであいつ、浮いてるの?」


小太郎に殺されそうになった事よりも、慎吾が宙に浮いている方に心を奪われるリナ。


江浜「な・・・ 何故・・・・」


気絶したあんずを抱きながら、宙に浮く慎吾を見て呆然とする江浜。


江浜「潜在的な霊力が強いとは言え・・・

    宙に浮く事など・・・」


今、目の前にいる慎吾に・・・何が起こっているか理解できなかった。



・・・ ・・・。


慎吾「・・・ ・・・」


無表情で、小太郎を睨み付ける慎吾。


慎吾「400年前と同じ・・・ 風魔一族はまた滅せられる・・・」


普段控えめな慎吾が、あえて小太郎を挑発する言葉を選んで声をかけた。


小太郎「・・・ ・・・」


その言葉は小太郎の怒りを最高潮にさせる。


小太郎「おのれ・・・」


小太郎は慎吾、そしてその背後にいる強力な守護霊を見据えた。


慎吾「・・・ ・・・」


強烈な視線の火花を散らす2人の男。


小太郎「ふん!!!」


怒りに身を任せた小太郎は、猛スピードでアーチ型の穴へと走り・・・


小太郎「はぁあああ!!!」


迷わず慎吾の元へとジャンプした。自分が30m下に落ちるかもしれないという事など頭にない。大ジャンプを見せた小太郎は、慎吾の元へひとっ飛び。そして村正を力の限り慎吾へと振り下ろした。


慎吾「唵!!」


宙に浮く慎吾もよける事はしない。パワーストーンから光の剣を出すと、振り落とされた村正を受け止める。その光の剣も今までの戦闘では見られない大きな刀身となっていた。


ガアキィィン!!


村正と光の剣は激しい音をたて、火花を散らす。2人の男は信じられない事に、宙に浮いたままだった。


小太郎「ふぅうううう!!!」


慎吾「はぁあああ!!」


2mをゆうに超す小太郎の力に、力で返す慎吾。


小太郎「ぬ、ぬぅぅ・・・ どこに、そんな力が・・・・」


あらん限りの力を村正に込め、力で慎吾を抑えつけようとするが・・・村正は徐々に押し返されつつある。それどころか慎吾には、まだ余裕があるように見えた。


慎吾「風魔小太郎・・・ 決着の時だ!」


そう言うと慎吾は目の前の小太郎から、穴の向こうのリナに声をかける。


慎吾「リナ先輩! 今です!

    天井にある村正のさや! それを破壊してください!」


小太郎「な!?」


急に小太郎の表情がくもった。慎吾の元を離れようとするが、慎吾は小太郎の村正を握っている腕を掴み、力で押さえつける。さらに小太郎の背後から羽交い締めをし、動きを封じた。


小太郎「ぐぅは・・・」


2mを超す巨体を、160cmにも満たない慎吾が力で抑えつけている。


小太郎「貴様・・・ どこから・・・ そんな力・・・」



・・・ ・・・。


慎吾の言葉を受け取ったリナ。


リナ「そうか!! もう1つの霊核って・・・」


小太郎が村正の刀身を抜いた時、その鞘を天井に突き刺している。リナはその鞘を見つめた。


リナ「あれだったのね!!」


しかしその鞘は、5mも高い天井に突き刺さっている。江浜もその鞘を見上げるが、そこに到達するなど、忍者以外ありえないように思えた。


江浜「っく・・・ ヤツの霊核を見つけたというのに・・・

    あんな高い場所・・・ どうやって・・・」



・・・ ・・・。


力で押さえつけられている小太郎は慎吾に口を開いた。


小太郎「な、なるほど・・・

     私をここにおびきよせたというわけか・・・


     しかし、あの高さ・・・ 常人では・・・」


慎吾は羽交い締めしている力をさらに強めながら口を開く。


慎吾「リナ先輩は、あなたが知将と読んだ人物。

    甘く見てはいけない・・・」


リナならば・・・ 慎吾はそう確信していた。リナがあの鞘を破壊することを。


小太郎「ふ・・・ 絆か。

     しかし、私が黙ってそれを見ていると思うなよ!」


そう言うと、小太郎は村正の剣先を自分の左肩に当てた。


慎吾「!?」


小太郎「ふん!!!」


小太郎は迷わず自分の左肩を村正で貫く。と、同時に背後にいる慎吾の左肩をも突き刺した。


慎吾「くぅあ!!」


慎吾の表情が苦痛でゆがむ。そして・・・慎吾の力が抜けたその一瞬を小太郎は見逃さない。持てる力を振り絞って、羽交い締めを振り切った。


慎吾「し、しまった!」


小太郎は迷わずリナの所へ向けて大きなジャンプを見せる。遅れて小太郎の後ろを追う慎吾。



・・・ ・・・。


リナ「・・・ ・・・」


リナは両手に2丁のワイヤー型スタンガンを握っていた。そして5m上の、村正の鞘に2丁とも狙いをつける。


リナ「ワイヤーの有効範囲は5m。

    私の身長が1m65cm・・・ いける!」


鞘に集中しすぎて、眼前に小太郎が迫っているのに気づかない。


小太郎「女ぁああ!! させんぞ!!」


気がついた時には、小太郎が村正を真っ直ぐにリナに突き刺そうとしている時だった。


リナ「・・・ !?」


小太郎の姿が目に映った瞬間・・・


グサァアアア!


リナ「・・・ ・・・」


リナは恐怖のあまり、目を閉じる。刀が肉を切り裂く鈍い音が響いた。


江浜「ぐうううう!!」


リナ「・・・ ・・・?」


おそるおそる目を開くと・・・リナの正面に、江浜が立っていた。小太郎の刀は、江浜の右腕を貫通している。


リナ「江浜さん!」


江浜「今だ! 撃て!」


小太郎はすぐに江浜の右腕から刀身を抜き出そうとするが、江浜は左手で村正の刃を直接握りそれをさせない。


小太郎「貴様・・・ お前も死ぬぞ!」


江浜は大量の出血をしながらも、村正を力で握りしめる。


江浜「ふ・・・ 肉を切らせて骨を断つ。

    戦国時代の言葉だ・・・ 覚えておけ・・・」


最後の気力を振り絞り・・・リナのアシストをした。


リナ「・・・ いっけーー!!!」


江浜を気にしながらも・・・リナは、2丁のワイヤー型スタンガンの引き金を同時にひく。そのワイヤーは2つとも村正の鞘を捉え、複雑に絡み合い・・・


リナ「よ、よし!!」


高圧電流を流し込んだ。


瞬間


小太郎「ぐぁあああああ!!!」


小太郎の悲鳴が聞こえた。


リナ「や・・・ やった!!」


江浜「ハァ・・・ ハァ・・・」


慎吾「リナ先輩・・・」


その場にいた皆は、間違いなく小太郎の霊核を攻撃していると確信する。


小太郎「ぐ、ぐぅ・・・」


激しい苦痛に耐えつつ・・・小太郎はゆっくりと天井の鞘を見つめた。江浜を突き刺している村正を手放し、全身の力が抜けていくなか・・・鞘に向け、ジャンプした。


小太郎「風魔は・・・負けぬ!

     貴様らを皆殺しにするまでは!!」


左手を目一杯のばし、鞘を掴まんと大きく手のひらを広げる。鞘を掴もうとしたその瞬間・・・


パキィイイン!!!


小太郎の目の前で、鞘が木っ端微塵に壊れた。


小太郎「な・・・?」


呆然とする小太郎。ふと後ろを見ると、慎吾がいた。


慎吾「・・・ ・・・」


パワーストーンから放たれた光の円盤が・・・村正の鞘を木っ端微塵にしたのだ。


小太郎「・・・ ・・・」


万事休す。手が空を切った小太郎は、地面に着地する。


小太郎「・・・ ・・・」


もはや声を出す力もない。両の手を見ると、少しずつ自分の体が細かい粒のようになっているのがわかった。


村正にやられた左肩を押さえながら、慎吾が声を出す。


慎吾「天に・・・ 召されるんだ・・・」


小太郎は鬼の形相を慎吾に向けるが、もう動く事すらままならない。


小太郎「く・・・ くそぉぉおおお!!!

     おのれ!!徳川家!!


     この恨み・・・ この恨みぃぃぃいいいい!!!」


そう叫んでいるが・・・ その声を耳にする者はいなかった。


小太郎の体は粒子の粒が無数に散らばるよう、細かく粉塵状になっていき・・・竜巻が空へ昇るようにと、その粒子は上へと旋回しながら昇っていく。やがてその粒子は・・・天井の鍾乳石を突き抜け、小太郎の体は完全に消失した。


慎吾「・・・ ・・・」


リナ「・・・ ・・・」


江浜「・・・ ・・・」


慎吾、リナ、江浜はその様子を静かに見守っていた。


リナ「や・・・ やった・・・ わよね?」


天井を見ながらリナが言う。


慎吾「はい。間違いなく・・・」


視線を天井からリナに移した慎吾。


江浜は出血のひどい右腕を左手で押さえながら息を乱していた。それに気づいた慎吾がすぐに駆け寄る。


慎吾「江浜さん! わ、出血がひどい!」


何度命を救われたかわからないリナも江浜の元に駆け寄ってきた。あまりの出血の多さに首を横に振る。


リナ「ちょ・・・ これ、マジやばいじゃん・・・」


慎吾もリナも小太郎の事はすぐに忘れ、目の前の江浜の容態を気にかけた。呼吸を乱しながら江浜は慎吾に口を開く。


江浜「はぁ、はぁ・・ 私は・・・大丈夫。

    あんずを・・・」


慎吾「いえ。まずは江浜さん・・・あなたです」


そう言うと慎吾は、江浜をおんぶした。


江浜「な、何を・・・?」


慎吾はニコッと笑って応える。


慎吾「きっと・・・ すぐに治るはずです」


そう言うと慎吾は、一度自分が落ちたはずの穴へと・・・江浜をおぶったまま歩いて行った。


リナ「な、何を・・・?」


心配そうにリナが2人の男を見つめる。


慎吾「江浜さんを救う唯一の方法・・・ そして・・・」


慎吾は一度リナの方へ顔を向けた。


リナ「 ? 」


慎吾「そして、埋蔵金に通じる道でもあります」


江浜をおぶった慎吾。


慎吾「・・・ ・・・」


チラリと穴の先をみると・・・


リナ「ちょっ・・・」


そのまま30m先の岩盤に向け、飛び込んだ。



               (第42へ続く)

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次回予告


慎吾が見つけたルート・・・

それは徳川の御用金を隠した場所につながっていた。


風魔小太郎との戦いの最中、徳川埋蔵金の謎を解いた慎吾。江浜とリナを連れて、その先へ進む。


そして・・・

リナ、江浜、慎吾の3人は・・・


とうとう、山積みされた金の山へとたどり着く・・・。



次回 「 第42話  パワースポット 」

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