第39話 絶体絶命
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慎吾のスピリチュアル事件簿 First season
「徳川埋蔵金の謎」
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前回までのあらすじ
2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。
収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。
リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらに誘拐された江浜の娘・あんずも救出した。江浜はリナ達を逃がすため、身代わりに捕まってしまう。
敵とコンタクトをとった慎吾は、江浜とひき替えに徳川埋蔵金を差し出すと交渉。埋蔵金を見つけられぬまま、慎吾達は糸見の息子・小太郎を赤城山へと案内する。
糸見の体に乗りうつった風魔小太郎の霊は・・・埋蔵金を見つけられぬ慎吾達を襲い始めた。
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第39話 絶体絶命
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小太郎「・・・ ・・・」
糸見の体から出た、風魔小太郎の霊は・・・3人を静かに見つめた。
小太郎「ふ・・・ 元々、この体では・・・
力の半分も出せなかった・・・」
妖しい光沢を放つ、妖刀村正を肩にポンと置く。
慎吾「!?」
刹那、小太郎は3mを越す大ジャンプを見せた。向かった先は・・・リナ。
リナ「・・・ ・・・」
冷静に両手でワイヤー型スタンガンの銃口を・・・飛んでくる小太郎に定める。しかし小太郎の体は、空中で物理に反する動きを見せた。
突如リナの手前で、彼の体は右へと方向転換。着地するとリナの左側から、向かって走っていく。
リナ「同じ手は・・・」
先ほどと同じ動きをする小太郎に対し・・・
リナ「通用しないっつーの!」
リナはすぐに銃口を向け直し、引き金を弾く。
小太郎の顔面に、ワイヤーの先が命中した・・・
リナ「よし!」
と思った瞬間、そのワイヤーは彼の体を通り抜けていった。
小太郎「ふ・・・」
リナ「な!?」
小太郎「一人目!」
小太郎が言葉を発する直前
あんず「・・・ ・・・」
リナと小太郎の間に、あんずが立ちはだかる。その手には力強くパワーストーンが握りしめられ、小太郎に向けてその拳を差し出していた。
あんず「唵!」
握りしめたパワーストーンから、父親譲りの光の剣が現れる。そして迷わず、小太郎に振り抜いた。
小太郎「む!?」
その太刀を、村正で受け止める小太郎。
小太郎「ふ・・・父ほどではないな。非力なり!」
あんず「っく・・・」
小太郎は、あんずの太刀筋を力で押し込んだ。
慎吾「・・・ ・・・」
小太郎の背後をとった慎吾は、光の円盤で攻撃する。
慎吾「お・・・ おん!!」
小太郎は慎吾に背中を向けたまま、村正を左手1本で握り直し・・・右手の平を慎吾に向けた。
小太郎「むぅんん!!」
気合いの声と共に、慎吾とあんず、そしてあんずの後ろにいたリナも一斉に3mほど飛ばされた。
慎吾「うわ!!」
あんず「っく・・・」
リナ「きゃー!!」
背中から着地した慎吾は、痛みをこらえてすぐに態勢を整える。
慎吾「ハァ・・・ ハァ・・・」
そして、小太郎を睨んだ。
慎吾「はぁ、はぁ・・・ 霊力が・・・ 強すぎる・・・」
小太郎「ふ・・・ 死への恐怖を感じるか?」
吹っ飛ばされたあんずは、綺麗に足下から着地。背後で倒れているリナの無事を確認する。
リナ「いった・・・ なんで、私はあいつへの攻撃出来ないのよ!?」
リナは強打したお尻をさすりながら、大きな声を吐き捨てた。
あんず「霊は光のようなものだと、父が・・・。
霊エネルギーならば攻撃できるのですが・・・」
リナ「じゃぁ・・・ 私、無力じゃん! やっべーな・・・
それにしてもあいつ・・・
人の体にいた時より、戦闘力上がってるじゃない」
あんず「えぇ・・・霊そのものの方が・・・
本来持ってる能力を引き出せますから」
・・・ ・・・。
慎吾「おん!!」
持てるエネルギーを振り絞り、慎吾はさらに大きな光の円盤をパワーストーンから出現させた。
慎吾「はぁ、はぁ・・・」
小太郎は女2人に一瞬視線をやるも、すぐに慎吾と向き合う。
小太郎「いいだろう・・・長年の恨み・・・ 今、はらさん!!」
再び大ジャンプを見せると、今度は慎吾の方に襲いかかった。
慎吾「はぁああ!!!」
慎吾は気合いと共に、持てる霊力をパワーストーンに送り込む。すると、円盤状の青白い発光体が5枚出現。
慎吾「おん! おん!! おん!!!」
それを小太郎に向けて1枚ずつ放っていった。
小太郎「ふん! 霊力だけは一流だが・・・
力の使い方は修行されておらんな!」
小太郎は1枚1枚円盤をよけ、確実に慎吾との間合いを詰めていく。
・・・ ・・・。
リナ「じゃぁ、何故今まで人の体に憑いてたのよ!
霊の方が楽でいいじゃん!」
あんず「人の体に憑いてる時は、その霊核が人体に潜り込みます。
でも、今なら・・・霊核がむき出しになっているはず。
万が一、霊能力を持った者に襲われた場合・・・
それは危険な状況となります」
リナ「でも、あれだけ攻撃力あったら・・・ 霊でも十分。
ちょっと待って!」
何かに気づいたリナ。
リナ「霊核って・・・破壊したら霊自体も消え去るっていうヤツっしょ?
ど、どこよ!? その霊核って場所は?」
あんず「普通の霊は心臓の位置ですが・・・」
リナ「心臓ね!」
あんずは、慎吾と戦っている小太郎の方を見た。
あんず「いえ・・・ 彼は場所を変えているようです・・・」
リナ「じゃ、じゃぁ・・・ その場所、どうやって見抜くの!?」
あんず「よく見ればわかると父は言ってました。
霊核は他の部分と違って、塊のようだからと。
でも・・・ 私にもどこだか・・・」
リナ「と、とにかく・・・
霊核の位置さえわかれば・・・
あいつをぶっ倒せる事は確かなのね・・・」
リナもまた、小太郎の霊核を探ろうと・・・じっと男達の方を見つめた。
・・・ ・・・。
小太郎が振り下ろした妖刀村正の刀身を、慎吾は光の円盤で受け止めた。
ガキィン!!
慎吾「ぐぅ!!」
小太郎「どうした? 汗をかいてるぞ?」
涼しげな表情の小太郎は、力で慎吾を押しつけていく。
慎吾「ぐぐ・・」
歯を食いしばって耐える慎吾に、あんずが助太刀に入った。小太郎の背後から忍び寄り、光の剣を横から一閃。
あんず「唵!!」
小太郎「ふん・・・」
目で見ずともあんずの気配を察知した小太郎。コマのように高速で1回転しつつ、村正を振り回した。
ガキィン!!
あんず「っく・・・」
あんずもまた、攻撃を受け止めるのがやっと。またしても数m吹っ飛ばされた。
・・・ ・・・。
リナ「あの霊が・・・素粒子の波のような物だとして・・・
打撃を与えられるわけがない・・・
波にパンチしても無駄なように・・・」
小太郎と間合いをとって、打開策を見つけようと必死になるリナ。
リナ「霊核が固体のような物だというなら、振動が少なく・・・
ならば他の部分より・・・
物理的な動きが遅れて見えるかも・・・」
自らの仮説を立て、目を凝らして小太郎の動きを見た。
リナ「・・・ ・・・」
赤いメガネの奥から、鋭い視線を小太郎に突き刺す。
リナ「み・・・ 見えた!!」
そして、霊核と思われる場所を見つけた。
リナ「た、多分・・・ あそこね。
で、でも・・・ どうやって、あんな化け物相手に?」
・・・ ・・・。
尻餅をついた慎吾とあんずに、小太郎は笑みを浮かべる。
小太郎「ふふふ。霊能力があると言っても、まだまだ子供。
こうも力に差があっては・・・話にならないな」
村正をポンと肩に置く小太郎。
リナ「・・・ ・・・」
その動作をリナは見逃さなかった。
小太郎「そろそろ・・・ 死ぬ時間だ・・・」
小太郎の言葉を、リナが遮る。
リナ「慎吾!」
慎吾「!?」
リナの方を見る慎吾。リナは真上を指さし、合図を送った。
リナ「鍾乳石よ! あんたの円盤で・・・
私の真上の鍾乳石を切り落として!!」
小太郎「・・・ ?」
小太郎はリナの方へ視線を移した。
リナ「早く!! 鍾乳石に円盤を!!」
小太郎「・・・ ・・・」
最初不覚をとった相手に、少しばかり嫌な予感を感じた小太郎。
小太郎「・・・ ・・・」
攻撃の方向をリナへとチェンジした。
小太郎「貴様は・・・なかなかやっかいな相手だった!」
小太郎は、リナに猛然とダッシュしていく。
リナ「早く!!」
慎吾「は、はい・・・ おん!!!」
慎吾は気合いを込めて、パワーストーンから出した光の円盤を・・・ブーメランのように、リナの真上の天井めがけて投げつけた。
スパパパパ・・・・
円盤はリナの真上にある7本の鍾乳石を切り落とした。そしてそれらはリナに向かって落ちていく。
あんず「リナさん! よけて!」
リナ「・・・ ・・・」
リナは迫り来る鍾乳石に目もくれず、じっと小太郎の動きを見ていた。そして再度ワイヤー型スタンガンの銃口を小太郎に向ける。
小太郎が村正を振りかぶるより早く、鍾乳石がリナを襲ってきた。
リナ「・・・ ・・・」
リナは微動だにせず、銃口を狙いに定めている。7本の鍾乳石は、はかったようにリナの体・・・前後左右スレスレを通り過ぎ、地面に突き刺さった。
慎吾「!?」
一瞬動きを止めた小太郎だが、鍾乳石ごと切り裂かんと再度村正を振りかぶる。
リナ「そう動くと思ったわ!!」
目の前で振りかぶった小太郎の右肩目指して・・・ 引き金を弾いた。
小太郎「む!?」
リナの放ったワイヤーの先は、狙った所に突き刺さる。
小太郎「ぐ!?」
リナ「やった!!」
先ほどのように通り過ぎず・・・ワイヤーの先端は小太郎の肩に刺さったまま。リナは霊核を直撃したと確信する。
ワイヤーを通って、高圧電流が・・・
小太郎「ぐ・・・ ぐぁああああ!!!!」
小太郎の右肩に流れていった。
リナ「よ・・・ よし!」
攻撃が効いてることで、勝利も確信したリナ。しかし・・・
小太郎「ぐぐぐ・・・ ・・・」
大粒の汗を数滴垂らした小太郎は、左手でワイヤーの先を抜き取り・・・
小太郎「・・・ ・・・」
リナを凝視する。
リナ「あ、あれ・・・?
強制的に天に召されるんでしょ・・・?」
小太郎「ハァ・・・ ハァ・・・」
呼吸を乱した小太郎は静かに口を開いた。
小太郎「敵ながら見事よ・・・ だが・・・
私の勝ちだ!!」
そういうと大きく村正を振りかぶった。
小太郎「貴様のような知将・・・
戦国時代でも数えるほどしかいなかった。
その見事な戦術に免じ・・・
苦痛無く一瞬にて切り捨ててやろう!!」
リナ「ちょ・・・」
小太郎の背後から声がとぶ。
あんず「危ない! リナさん!」
慎吾「リナ先輩、よけて!」
慎吾もあんずも、小太郎を中心にリナとは反対側にいる。
リナ「う・・・ 動けな・・・」
地面に突き刺さった鍾乳石は、リナの動きを封じていた。
リナ「ま・・・ まさかでしょ・・・」
リナはただ、小太郎の村正の動きを見守るしかなかった。
小太郎「さらば!」
小太郎は力の限り・・・
村正を振り落とした。
(第40話へ続く)
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次回予告
絶体絶命のリナ・・・激しい風魔小太郎とのバトルは、夜明けと共にその終結の時を迎えつつあった。
慎吾は洞窟内の異変に気づく。
そして小太郎を倒す作戦を思いつくのだが・・・?
次回 「 第40話 もう1つの霊核 」
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