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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第1章  慎吾とリナ
4/45

第3話  リナの特殊能力

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾。


初めての大学の講義・・・隣に座った1つ上の先輩リナに「死ねばいいのに」と言われてしまう。


そのリナと・・・課せられたレポートのため、TV局へ行く事になった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第3話  リナの特殊能力


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2012年5月3日(木)。



慎吾「遅いな~・・・ リナ先輩・・・」


携帯の時計を確認しながらつぶやく慎吾。


箱根湯本駅・駅前。午前10時にリナと待ち合わせていた。


現在の時刻は、午前11時30分。

時間にきっちりしている慎吾、すでに2時間も駅前で待ち続けている。


何度もリナの携帯に「いつ着くんですか?」とメールしたが、そのたびに「あと5分」という4文字が戻ってくる。



・・・ ・・・。


リナが慎吾の前に現れたのは・・・12時前。

待ちくたびれた表情の慎吾が、リナに声をかける。


慎吾「リナ先輩・・・ 2時間遅刻ですよ・・・」


特に慌てて来た様子もないリナ。


リナ「あー、ちょっと準備に時間がかかってね。女はそういうものなの」


慎吾「でも2時間は・・・厳しいです・・・」


小さなため息をつく慎吾。


リナ「は? 男が女を待つのは当たり前だっつーの。

    それにあんた沖縄出身でしょ?


    沖縄の人って、時間にルーズって聞くわよ?」


慎吾「いやいや・・・みんながみんな、そうってわけでは・・・

    てか今日のリナ先輩、なんかおめかししてません?」


赤いワンピースに、赤いヒール。セレブっぽい白い帽子とブランドものの白いバッグ。

赤と白を意識したコーディネート・・・大人びたリナの姿がそこにはあった。


大学での私服とは違った雰囲気のリナを目の当たりにした慎吾。


慎吾「都会の女性って感じですね・・・」


思った事を口にする。


リナ「は? それ、褒めてんの?」


駅構内に向かいながら、リナが眉をひそめた。


慎吾「もちろんですよ! いつもよりお化粧も濃いし!」


リナ「・・・ ・・・」


さらに眉をひそめるリナ。


リナ「あんたさぁ。天然で人に殺意与えるタイプよね・・・」


慎吾「いや、ホントに綺麗だなって思ってますから!」


リナ「はいはい。どーも。まぁあんたのために、おめかししたんじゃないし。

    てか、あんた。リュック背負ってモロ田舎者丸出しって感じだわね」


慎吾に負けじと、リナも思った事を素直に口にする。

白のTシャツにジーンズ。リュックを背負った非常にラフな格好の慎吾。


慎吾「いいんですよ。田舎者は田舎者らしくてね」


屈託のない笑顔を見せる慎吾は、リュックを背負い直した。


リナ「・・・。はいはい。じゃぁ行くわよ。TVSなら1時間半ぐらいで着くから」



沖縄の人間が都会に出てきて、最初に戸惑うのが・・・

電車や地下鉄の乗り方である。


路線図の見方、切符の買い方、乗り換えの仕方、改札口の通り方・・・

これら全てが不安の対象となる。


リナ「小田原って駅で、新幹線に乗り換えるから。まぁ私についてきなさい」


慎吾「はい!」


ナビゲート役がいてくれると、路線に関する全ての不安が払拭される。箱根に来て、初めて不安無しで電車や新幹線に乗る慎吾。リナの遅刻の事はすぐに忘れ去った。



・・・ ・・・。


2人は小田原駅で、新幹線に乗り変え・・・JR新幹線、こだま638号の自由席に座っていた。


リナ「2駅だけど、30分ぐらいかかるから。寝るなり本読むなり、好きにして」


そう言うとリナは、バッグの中から小さなノートパソコンを取りだし起動する。


慎吾「あれ? こんなところでパソコンですか?」


リナ「あー、うん。ちょっと仕事あるの。

    30分あれば半荘ハンチャン2回はいけるし」


慎吾「え? 麻雀やるんですか? 新幹線の中で?」


リナ「だからこれ、仕事だって。あんたさぁ・・・

    私が、ただの麻雀好きと思ってない?」


慎吾「思ってますよ?」


正直に返す慎吾。


リナ「あのね、このネット麻雀は電子マネー賭けてやるサイトなの。

    場代を払って、後は打ってる連中でリアルマネーのやりとりするのよ」


慎吾「えぇ!? オンラインカジノ・・みたいなヤツですか?」


リナ「ま・・・合法じゃないサイトだけどね。アングラサイトの1つよ。」


慎吾「アングラ?」


リナ「・・・。アンダーグラウンド。つまり表には出ないサイトの事よ。

    紹介制度で登録して・・・あー、説明めんどくさい!」


リナはパソコンのキーボードをカタカタ打ちながら慎吾への説明を中断した。


慎吾「で、でもそれ・・・ギャンブルでしょ!? 

    よく大学生がパチンコや競馬にハマって借金!とか聞きます。


    ヤメましょうよ、リナ先輩!!」


リナ「あー、はいはい。全然大丈夫だから。私、死ぬほど麻雀強いし。

    このサイト、名前はおおやけにされてないけど・・・


    プロも多い有名なサイトなの。その中で、超勝ってるから。

    はい、ちょっと集中するからダマっててね」


そういうとリナは、キーボードをさらに高速で操作し始める。


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾は口から出そうな言葉を飲み込み、パソコン画面を静かに覗きこんだ。



・・・ ・・・。


30分後、2人の乗った新幹線は品川駅に到着。ここで東海道本線に乗り換える事になる。


慎吾「リナ先輩すごい! 連続で1位を取ってましたよね?」


少し興奮気味の慎吾がリナに声をかけてきた。


リナ「言ったでしょ。麻雀は死ぬほど強いって」


慎吾「あ、あの・・・今の30分で、どれだけ勝ったんですか? お金」


リナ「・・・。ふん、まぁいいわ。

    場代さしひいて、純利益は1万円ちょっとってトコね」


慎吾「リナ先輩すごい!! 30分で1万円!?

    何で勝てるんですか? 秘密があるんですか!?」


慎吾はさらに興奮した様子で語り続ける。


リナ「うっさいなー・・・

    あんたはさ・・・ギャンブルしちゃいけないタイプだから」


慎吾の肩をポンと叩く。


リナ「これ以上その話題は禁止。

    今度は新橋ってとこまで行くから、切符買って来て」


そういうと慎吾を押し出した。会話を続けたかった慎吾だが、しぶしぶ切符を買いに行く。


(リナ「まぁ・・・ 

     レポート書いて貰うから、ここは我慢我慢」)


券売機の前に立つ慎吾を見て、リナは小さく溜息をついた。



・・・ ・・・。


予定では正午についてるはずだったTVS。2人が到着したのは午後2時過ぎだ。


リナ「はい、私の役目はここまで。後はあんた」


TVSの玄関前・・・右手を腰に当てたリナがアゴで玄関をさす。


慎吾「了解です。ここまでの案内、ありがとうございます!

    僕だと、こんなスムーズには来られなかったです」


苦笑いをしながらリナにお辞儀した慎吾。TV局に入り、事務で受付をする。

事務員にこの日の局内見学の旨を伝え、首からぶら下げるタイプの入局許可証を2つ受け取った。


そのうちの1つをリナに渡す。


慎吾「はい。この入局許可証を首にかけてください。

    僕たちは今日、局内見学の許可を得てる証明になりますので。


    この中にチップが入っていて、各所に設けられているゲートを通れます」


リナ「OK」


リナはすぐに許可証を首にかけた。


慎吾「この許可証を持たずにゲート通ると・・・

    警告音がなって、すぐに警備員が飛んでくるそうです」


リナ「は~、なるほど。ま、TV局だしセキュリティも厳重ってわけね。

    で? 次の予定は?」


慎吾「えーっと。1時からの局内見学に間に合わなかったので・・・」


リュックからTVS局内見学の案内を取り出す。


慎吾「次は午後3時に・・・第16スタジオで時代劇の撮影風景見学。

    4時には、第2スタジオでクイズ番組の撮影見学。


    6時には、ニュースの生放送の現場を見学という日程です」


リナ「えぇ・・・。歌番組とかないの? 男性アイドルとか見られるヤツ」


慎吾は今一度案内を見渡す。


慎吾「えっと・・・クイズ番組で、有名なお笑い芸人が出るみたいですよ」


リナ「超ー興味ない! うわー、イケメンの芸能人見たかったのに・・・」


慎吾「あ、すいません・・・」


申し訳なさそうな表情をする。


リナ「別にいいわよ。じゃあ次の見学までは・・・1時間ぐらいあるわね」


慎吾「お昼ご飯にします? まだ食べてないですし」


リナ「あんたさぁ。TV局に来て、昼ご飯なんて食べてる場合じゃないでしょ。

    私、行きたい所あるの」


そういうとリナはスタスタと歩き出した。その後を慎吾が追う。

リナは局内の見取り図版のところで立ち止まり、指でなぞりながらどこかを探すしぐさをする。


リナ「えっと・・・・あった! ここね!」


何かの場所を確認したリナは、慎吾の事を気にせずまたスタスタと歩き出した。


慎吾「ちょっとリナ先輩・・、どこに行くんですか?」


リナは無言で目的地に向かって歩いて行く。やがて階段を下り、2ヶ所のゲートを通って薄暗い地下へとたどり着いた。


慎吾「・・・。ここ、駐車場ですか?」


リナ「そう」


TVS地下2階にある広い駐車場。


慎吾「何でこんな所へ?」


リナ「ちょっとね・・・」


そういうとリナは、駐車場の中をランダムに歩き始めた。そして車の前を通り過ぎては、何かを確認する。


約10分。広い駐車場内を歩き回ったリナと、ただ後ろからついてきただけの慎吾。


慎吾「あの・・・リナ先輩?」


リナは慎吾の方を向いてこたえる。


リナ「うん! 今ね・・・ジャネーズアイドルの【山嵐】がこの局にいるわよ」


慎吾「な・・・ 何でわかるんですか?」


リナ「車があった」


慎吾「えぇ!?」


大きな声を出して驚く慎吾。


慎吾「って事は、リナ先輩・・・

    【山嵐】のメンバーの車とかわかるんですか?」


リナ「まぁね」


(慎吾「うわ・・・絶対アイドルのおっかけとかするタイプだ・・・」)


リナ「あー、あのね。ひょっとして私がアイドルオタクとか思ってない?」


慎吾「思ってますけど・・・」


素直に返す慎吾。


リナ「アイドルとか興味ないの、私は。興味あるのはイケメン!

    私はイケメンをおかずにして、ご飯を食べる女子なの!」


赤いメガネをキュッとかけ直し、鼻高々に言い放つ。


慎吾「・・・ ・・・」


アイドルオタクと、何が違うのか理解出来ない慎吾。


慎吾「だからって、芸能人の車をチェックするのは・・・

    ストーカーの領域ではないかと・・・」


リナ「あんたさぁ。どこまでバカ正直なの? アイドルってのはね・・・

    こういう事されるの、許容範囲と思ってるから大丈夫だって」


慎吾「・・・・」


リナ「ホントは駐車場でウロウロしてる方が・・・

    イケメン芸能人との遭遇率高いけど・・・


    ここは警備員が、定期的にチェックしてるからなー」


慎吾「出待ちってヤツです?」

   

リナ「違う! 偶然の出会いってヤツ!」


慎吾「・・・ ・・・」


リナ「とりあえずここは出ますか。少なくとも【山嵐】がいる事はわかったし。

    時間まで、局内ウロウロして・・・


    偶然曲がり角で【山嵐】のメンバーとぶつかり・・・

    運命の恋、始まり始まり~」


陶酔した表情で語るリナ。


慎吾「・・・・」


冷めた目で見る慎吾。


リナ「運命の恋に・・・いざ、しゅっぱーつ!!」


こうしてリナは一人でスタスタと歩き出し・・・慎吾はまた、その後ろをついていく。


リナ「・・・ ・・・」


一瞬リナは駐車場から局内へ入る入り口で止まり、今一度駐車場を見た。


慎吾「なにか?」


リナ「うん・・・。いや、何でもない。さ、行こう! 

    今日のおめかしの成果を発揮しないとね!」


リナは右手で拳を握り、気合いを入れる。


慎吾「・・・ あれ・・・?」


ふと何かに気づいた表情を浮かべる慎吾。


慎吾「ちょっと待てよ・・・」


最近ネットで見た【山嵐】のニュースの事を思い出した。


慎吾「確か【山嵐】のメンバーが立て続けに交通事故起こして・・・

    今、メンバーは運転禁止だってニュースで言ってましたよ? 


    メンバーの車があるっておかしくないですか?」


キョロキョロしながら局内を歩くリナは、慎吾の方を振り返る事なくこたえる。


リナ「あら・・・芸能関係弱そうなのによく知ってるわね。

    そう。確認した車は【山嵐】のマネージャさんの車よ」


慎吾「マ、マネージャ?」


リナ「そう。超売れっ子の【山嵐】は・・・

    メンバー1人1人、個別にマネージャがついてるからね。


    そのメンバー全員の・・・マネージャの車あったの。

    だから絶対【山嵐】は、TVSで何かの撮影のはず!」


それを聞いた慎吾は、さらに驚く。


慎吾「リ、リナ先輩・・・

    なんでマネージャさんの車までわかるんですか?」


リナ「あるのよ。そういう芸能人のプライバシーに関する事を・・・

    公表してるアングラサイトがね。


    ストーカーレベルのファンが、裏で情報交換してるの」


慎吾「・・・ ・・・」


リナ「私はイケメンと・・・

    そのマネージャーの車のナンバー、全て覚えているの」


1年前。芸能人の自宅の住所や電話番号を載せた本の出版が、プライバシーの侵害に当たるとして発売禁止になるというニュースがあった。


慎吾「・・・ ・・・」


その記事を思い出す慎吾。


(慎吾「そんなサイトが・・・ あるんだ・・・」)


リナ「そのサイトには、抱かれたい男1位の福山雅秋の車のナンバーや・・・

    携帯番号、自宅の場所まで載ってるのよ。すごいでしょ?


    今日、福山さんは・・・TVS来てないみたい。残念」


慎吾「てか・・・なんでリナ先輩・・・ナンバーとか全て暗記してるんすか?」


リナはイヤらしい笑いを浮かべてこたえる。


リナ「しっしっし。そゆの得意なのよ、私」


その顔は得意満面だ。


慎吾「・・・ ・・・」


驚きの表情を浮かべたままの慎吾。いくらイケメン芸能人が好きとはいえ・・・


(慎吾「本人の車やマネージャの車のナンバーを・・・

     全て暗記できるものだろうか?」)


思い切ってリナに聞いてみた。


慎吾「リナ先輩」


慎吾の前を歩くリナは振り返る事無く返事する。


リナ「なに?」


慎吾「ひょっとしてリナ先輩・・・すごい暗記の天才ですか?

    歴史のテストとか全て100点満点だったとか?」


リナは立ち止まって慎吾の方を振り返った。


リナ「あのさー・・・。私、歴史って大っ嫌いなの!

    テスト、いつも赤点よ!」


慎吾「でも・・・でも、あんなにたくさんの車のナンバー覚えるって・・・

    普通の人には無理ですよ! 絶対暗記の天才ですって!」


リナは慎吾の目を見て、一瞬無表情になる。


リナ「・・・」


慎吾もリナの目を見つめる。


(慎吾「あ、あれ? 何か変な事言ったかな?」)


リナは軽い溜め息をついたあと慎吾に告げる。


リナ「ま、いっか。いいわ、教えてあげる。

    でも誰にも言わないって約束できる?」


慎吾は目を丸くする。


(慎吾「え? 何かそんな深刻な秘密があるの?」)


慎吾は作り笑いを浮かべた。


慎吾「え、ええ。もちろんです・・・よ?」


リナは軽く目を閉じた後、真剣な表情で少し重そうな口を開いた。


リナ「私はね・・・ 


    【数字依存症】なのよ・・・」



慎吾「え?」



             (第4話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


リナが称する「数字依存症」。

慎吾の目の前で、驚異的な能力を見せる。


しかしリナはずっとこの症状に悩まされ続けていた。


話を聞いていくうちに、慎吾はその症状の正体を突き止める。



次回 「 第4話  数字依存症 」

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