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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第4章  最後の戦い
39/45

第38話  ラストバトル

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらに誘拐された江浜の娘・あんずも救出した。江浜はリナ達を逃がすため、身代わりに捕まってしまう。


敵とコンタクトをとった慎吾は、江浜とひき替えに徳川埋蔵金を差し出すと交渉。リナは埋蔵金のありかを示した銅板の謎を解き明かし、3人は銅板の示す場所へ向かった。


リナは大学の授業にいた大男・糸見小太郎が黒幕と突きとめる。埋蔵金を見つけられぬまま、慎吾達は、大男を赤城山へと案内したが・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第38話  ラストバトル


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


慎吾「・・・ ・・・」


あんず「・・・ ・・・」


慎吾とあんずは、静かにパワーストーンを握りしめる。


小太郎「覚悟はいいかな?」


リナを睨み付ける小太郎。不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと日本刀を振り上げた。


リナ「そっちこそ!」


瞬間・・・リナは背中に隠しもっていたワイヤー型スタンガンを左手で握り、その銃口を小太郎に向ける。


慎吾「スゥ・・・」


あんず「ハァ・・・」


同時に深呼吸した慎吾とあんずは、パワーストーンに霊力を注ぎ込んだ。


小太郎「ふっ。いくさを知らぬ若人わこうどよ・・・

     果たして、何分もつやら・・・ いや、何秒か?」


そういうと、小太郎は思いっきり刀のさやを真上に投げ上げる。


ガキィ!!


その鞘は、5m真上の天井に・・・鍾乳洞がごとく垂直につきささった。


リナ「ふん!!」


リナは迷わずワイヤー型スタンガンの引き金をひき・・・


小太郎「ふ・・・」


小太郎は音も立てず、真上に飛び上がる。高圧電流がほとばしるワイヤーの先は、むなしく空を切った。


リナ「っち・・・」


およそ人間業とは思えない5mもの大ジャンプを見せた小太郎。天井に突き刺さったさやを左手一本で握りしめ、天井にぶら下がる蝙蝠こうもりのように3人を見下ろした。


慎吾「な・・・」


尋常でないジャンプ力を見て驚く慎吾。すでに彼と一戦交えているリナとあんずは、落ち着いて小太郎に視線を突き刺している。


小太郎「が名は・・・

     風魔5代目頭領、風魔小太郎! 


     いざ尋常に!!」


小太郎の鞘を握る左手が青白く光ったと思った瞬間、ぶらさがった状態から・・・勢いをつけてリナの方向へ飛び込んでいった。


あんず「唵!!」


あんずはリナの前に立ち、パワーストーンから大きな円の形をした光のたてを出す。


小太郎「ふん!」


あんずとリナ・・・目を疑う事が起こった。


リナ「な・・・」


あんず「!?」


一直線にリナへ向かってた小太郎は、空中で突如右へ2mも方向転換をした。


物理に反する動きで右に回りこんだ小太郎は、音も立てず地面に着地する。


あんず「しま・・・」


対応の遅れたあんずを横目に、小太郎は日本刀を振りかざしながらリナへと向かっていった。


リナ「っく・・・」


反応したリナは、左手に持っていたスタンガンを捨て、右手に2つめのワイヤー型スタンガンを握り、向かってきた小太郎に対し、引き金を弾く。


小太郎「む!?」


ガキィン!!


剣先で高圧電流の流れるワイヤーの先をはじいた小太郎。


小太郎「ふん。こざかしい・・・」


一瞬動きの止まった小太郎に、今度は慎吾が応戦。小太郎の背後・・・リナと小太郎の一直線上に回った慎吾は、右手に握りしめたパワーストーンに意識を集中して霊力を込める。


慎吾「おん!!」


気合いの声と共に、パワーストーンからフリスビー状の青白い発光体が現れた。


慎吾「い・・・ いけー!!」


右手を大きく振りかぶり・・・小太郎へ向け、ピッチャーのように腕を振り回す。


シュー・・・


青白い発光体は小太郎の背中に向け、一直線に飛んでいった。


小太郎「笑止!」


小太郎は背後を振り返る事無く、真上へジャンプ。そして、天井に突き刺さった鞘を握りしめる。


リナ「ちょ・・・」


青白い発光体がリナを襲う。


慎吾「あ! よけ・・・」


あんず「・・・ ・・・」


ガキィン!!


慎吾のセリフよりも早く、リナの前に立ったあんずがパワーストーンの盾で防いだ。


あんず「くっ・・・」


予想よりも強い衝撃が体を伝わってくるが、それを全て吸収する。


(あんず「・・・ こんなに・・・ 力があるなんて・・・」)


慎吾「た、助かった・・・」


リナ「ふ~・・・」


慎吾とリナが同時に安堵のため息をついた。


小太郎「・・・ ・・・」


片手一本で天井にぶら下がる小太郎は、リナを睨み付ける。


小太郎「驚いたな・・・

     霊力を持たぬ小娘が・・・


     あのような動きを見せるとは・・・」


リナ「・・・ ・・・」


小太郎「江浜の娘を助けたのも運ではないというわけか。

     まさか、いくさの経験がるとはな・・・」


慎吾「え?」


思わずリナの方に視線を移した慎吾。


(慎吾「いくさの経験が・・・?」)


慎吾の視線を受け取ったリナは声をかける。


リナ「その話はまた次。今は目の前の敵を倒すのに集中して・・・」


リナは、先ほど発射したワイヤー型スタンガンのカートリッジを捨て・・・


ガチャッ


ポケットから取り出した、新しいそれをセットした。


リナ「・・・ ・・・」


そして小太郎を睨み付け、声をかける。


リナ「教えてあげるわ・・・」


小太郎「・・・ ・・・」


にらみ返す小太郎。


リナ「カルシウムも・・・立派な電解質の代表なのよ!」


そう言うとリナは、ワイヤー型スタンガンの銃口を真上に向け


リナ「・・・ ・・・」


無言で引き金を弾いた。ワイヤーの先は天井の鍾乳洞に突き刺さり、高圧電流を流し込む。その電流は炭酸カルシウムで形成された鍾乳石を通じ・・・瞬く間に天井全体に広がる。そして鉄で出来た刀の鞘を通し・・・小太郎にも電流を流し込んだ。


小太郎「ぐぅ!!」


一瞬にして小太郎の握力は消え、その身は重力に従って5m真下へと落ちていく。


小太郎「ふん!」


岩盤へ激突寸前、くるりと身をひるがえしスッと着地した。


小太郎「・・・ ・・・」


しかしその体はしびれて、思うように動かせない。


リナ「今よ!!」


慎吾に合図を出すリナ。あんずと慎吾はパワーストーンに気を送りつつ、立つ事もままならない様子の小太郎へ向かって走っていった。


小太郎「くっ・・・ 不覚・・・」


あんず「唵!!」


あんずは父譲りの光の剣をパワーストーンから出し・・・


慎吾「おん!!」


慎吾は光の円盤をパワーストーンから出す。そしてほぼ同時に小太郎へと攻撃をかけようとした、その時!


小太郎「死ぬぞ!!」


あんず「・・・ ・・・」


慎吾「!?」


2人の動きが一瞬止まる。


小太郎「この身をてば・・・死ぬのは糸見の息子だけだ」


あんずは後ろにいる慎吾の前に手を差しだし、動きを制した。


小太郎「元々私は、糸見の息子に憑いた霊。

     糸見の息子とは・・・別の意志を持つ者」


あんず「・・・ ・・・」


小太郎「この体を攻撃したら・・・糸見の息子が死ぬだけ。

     霊の私は、滅せられる事はないがな・・・」


小太郎の体は、痙攣けいれんして震えている。


あんず「・・・ ・・・」


小さく唇を噛んだあんずは、慎吾に向け口を開いた。


あんず「確かに・・・ 糸見さんの息子は無関係。

     彼に憑いている風魔小太郎の霊を・・・


     彼の体から追い出さないと・・・

     無実の人間を傷つけてしまう事になります」


背後にいたリナが声をかける。


リナ「ちょ、ちょっと!

    糸見小太郎と・・・今、攻撃してる相手は別人だっての!?」


あんずの言う事を理解した慎吾。


慎吾「そうです。目の前にいる男を倒しても・・・

    霊の風魔小太郎を倒した事にはならない・・・」


リナ「じゃ、じゃぁ、どうすればいいのよ!!

    今が千載一遇のチャンスなのに!」


あんず「父なら・・・

     人間の体から、霊を引き離す除霊をできるのに・・・


     私はまだ・・・」


強く唇をかみしめるあんず。


小太郎「ふ・・・残念だったな。」


慎吾「ど、どうすれば・・・」


一番後ろにいたリナが声を出す。


リナ「簡単よ」


ガチャッ


ワイヤー型スタンガンに、新しいカートリッジを差し込んだリナ。今一度その銃口を小太郎に向けると・・・躊躇ちゅうちょ無く、引き金を弾いた。


慎吾「な・・・?」


ワイヤーの先は小太郎の腹部に直撃し、高圧電流を流し込む。


小太郎「ぐああああああ!!!」


激しい痙攣と共に・・・


小太郎「ぐ・・・ く・・・ ぐぐ・・・」


白目をむいて倒れた。倒れた瞬間、小太郎の体から・・・大男の霊が抜け出ていく。


あんず「幽体離脱・・・」


糸見小太郎の体から抜け出たのは、身長2mをゆうに越える大男。深い彫りの顔で、目つきは鋭く、その身は白装束で覆われている。


小太郎「・・・ ・・・」


慎吾「風魔・・・ 小太郎だ・・・」


リナ「ほら。使える体が動かなければ・・・出るしかないでしょ?」


慎吾「・・・ ・・・」


あんず「・・・ ・・・」


リナのやり方に度肝を抜かれたが・・・結果オーライだと認識する慎吾とあんず。


小太郎「・・・ ・・・」


霊体の風魔小太郎は、殺気だった視線でリナを睨み付けた。


小太郎「ここまで不覚をとるとは・・・ 女! 許さんぞ!!」


小太郎の霊は、糸見の体の横に落ちていた日本刀・・・妖刀村正を拾う。それを見ていたリナの表情が凍り付いた。


リナ「あら・・・ 霊のくせに物を握れるなんて・・・」


リナの予想では・・・体を抜け出た霊は、こちらの世界の物に接触が出来ないはずだった。そのリナの様子を察した慎吾が声をかける。


慎吾「例え霊でも・・・

    こちらの物を動かす事は可能ですし、攻撃も可能です。


    強い念があればですが・・・」


あんず「霊がこちらの世界の物を動かす・・・

     【ポルターガイスト】とよばれる霊現象の1つです」


リナ「ふん・・・レクチャーありがと。

    ま・・・


    ヤバい状況はかわらないけど」


風魔小太郎の霊は、ユラユラとその体を揺らめかせながら・・・目の前の3人を凝視する。


小太郎「・・・ ・・・」


村正を前に差しだすその形相は、殺気すら見えるようだった。


小太郎「今度は容赦せぬ。

     一人残らず・・・ 息の根を止めてやる」


慎吾「・・・ ・・・」



              (第39話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


糸見小太郎の肉体から、風魔小太郎の霊を切り離すことに成功した3人。

しかし、霊の小太郎に攻撃を与える事が出来ずに苦戦を強いられた。


追い詰められていく中、何とか敵を倒す解決策を見いだそうとするが・・・?


次回 「 第39話  絶体絶命  」

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