第37話 江浜の危機
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慎吾のスピリチュアル事件簿 First season
「徳川埋蔵金の謎」
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前回までのあらすじ
2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。
収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。
リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらにリナが中心になり、誘拐された江浜の娘・あんずも救出する。江浜はリナ達を逃がすため、身代わりに捕まってしまう。
敵とコンタクトをとった慎吾は、江浜とひき替えに徳川埋蔵金を差し出すと交渉。リナは埋蔵金のありかを示した銅板の謎を解き明かし、3人は銅板の示す場所へ向かった。
リナは大学の授業にいた大男が黒幕と突きとめる。埋蔵金を見つけられぬまま、慎吾達は、大男を赤城山へと案内する。
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第37話 江浜の危機
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忍者集団、風魔一族。
後北条氏勃興時に姿を現した忍者集団、風魔一族。彼等は北条家に仕え、各大名に雇われていた伊賀者、甲賀者と戦いを繰り広げてきた。
風魔一族の頭領は代々、風魔小太郎と名乗る。風魔は小田原の西の風間谷(風間村)に住みつき、その本拠地は箱根道の要衝であった。
最も華々しい活躍をしたのが、5代目・風魔小太郎。
残された記録に寄れば、背丈は七尺二寸(216cm)。1580年武田勝頼との黄瀬川の戦いで目覚しい戦果を挙げている。
北条家に仕えること約100年・・・。
豊臣秀吉の小田原征伐により北条氏は滅亡。徳川家康が天下を取った後、風魔一族は盗賊として江戸の町を騒がせる事になった。
家康は懸賞金をかけ、盗賊の長である五代目・風魔小太郎を捕らえ・・・処刑した。頭領を失った風魔一族は一気に衰退。これにより風魔一族は滅亡したと伝えられる。
・・・ ・・・。
慎吾を先頭に、リナとあんずは鍾乳洞の奥へと歩みを進めていった。さらにその後ろを小太郎が歩いていく。
やがて一行は、この鍾乳洞のゴール地点にあたる岩の広間に出た。広間の先には10個のアーチ型の穴がある。そこから先は足場がなく、下は30m、上は50m近い赤城山の火口へとつながっていた。
慎吾「・・・ ・・・」
これ以上先には行けないため、3人は立ち止まる。 小太郎は歩けるギリギリの所まで行った。アーチ型の穴の前で立ち止まり、その先を見る。
小太郎「・・・ ・・・」
下には岩盤と一部細長い石筍が見えるだけで、落ちたら即死であろう。上を見ると岩壁で覆われているが、一部の隙間からは赤城山周辺の星空を見ることが出来た。
小太郎は足下の石ころを蹴り飛ばす。
カラーンコローン・・・
アーチを抜け、約30m下まで落ちていく。その音は、静かに空間内に鳴り響いた。
リナ「・・・ ・・・」
リナは背負っていたリュックの中に手をかける。小太郎は火口を見つめながら声を出した。
小太郎「ふ・・・ 確かに私を・・・ 突き落とすチャンスだな」
リナ「・・・ ・・・」
リナは手にしていた、ワイヤー型スタンガンをリュックの中に戻す。
小太郎「さて・・・」
3人と対峙した小太郎。
小太郎「で? 埋蔵金は・・・ どこかな?」
慎吾「・・・ ・・・」
ゴクリと唾を飲み込んだ慎吾が応える。
慎吾「この先。赤城山の火口にそれはあります・・・」
小太郎は今一度火口に視線を送る。
小太郎「このだだっ広い火口の・・・ どこかにあると?
もっと具体的に、どこだと言ってくれないとな」
慎吾「ここから先は重機が必要です。それはあなた方の仕事では?」
小太郎「ふん・・・」
小さく笑った後、小太郎は口を開いた。
小太郎「まだ見つけてはいない・・・って事だな?」
慎吾「この火口のどこかにあるのは間違いないです。
それは・・・ 保証します・・・」
小太郎の口元がきゅっと引き締まる。
小太郎「確か・・・ 埋蔵金と江浜を交換・・・
そういう約束だったよな・・・?」
リナ「だ、だから火口のどこかに・・・ 埋蔵金が・・・」
小太郎「君たちは埋蔵金を差し出せない。
ならばこちらも江浜を差し出せない。
道理が通っていると思うが・・・?」
そういうと小太郎は携帯電話を取りだした。
小太郎「ほう・・・ 電波が通っているのか・・・」
携帯を操作し、電話をかける。
慎吾「ちょ、ちょっと待って下さい・・・ どこに!?」
小太郎は日本刀をスラリと抜き、青白い光沢を放つ刀身を慎吾に向けた。
小太郎「動くな」
その刀身で、リナやあんずも牽制する。
小太郎の電話がつながった。
小太郎「私だ。やれ」
わずか2秒で電話を切った。
あんず「まさか・・・・」
・・・ ・・・。
江浜「・・・ ・・・」
江浜は車の後部座席の真ん中で、両手に手錠をかけられている。車の中には、さらに3人の黒ずくめの男がいた。運転手、そして江浜の両サイド。いずれも銃を持っている。
江浜「・・・ ・・・」
江浜は目を閉じ、車の天井に顔を向けている。ふと運転手の男の携帯が鳴った。
運転手「はい・・・」
江浜「・・・ ・・・」
小太郎「私だ。やれ」
運転手の男は後部座席の男に合図を送る。
運転手「車内を汚すな。外に出せ」
ガチャリ。
江浜の右にいた男が車のドアを開け、外へ出た。
江浜「・・・ ・・・」
男は江浜の右腕をとり、外へ連れ出そうとする。しかし目を閉じている江浜は座ったまま、体を右に倒した。頭だけが車の外に出た状態だ。
男「っち!」
男はすぐに銃を取り出し、江浜の頭に銃口を向けた。それを見た運転手が大声をかける。
運転手「おい! 車を汚すなっていったろ!!」
男は運転手を睨み付けたが、銃をしまった。仕方ない表情を浮かべ、江浜の体を引きずり・・・肩に乗せ外へ連れ出そうとする。
江浜の体が男の肩にのった瞬間・・・江浜の目がカッと見開いた。
江浜「唵!!」
手錠をかけられた両手は男の腹部にめがけて拳をあて、かけ声と共に発勁を繰り出す。
男「ぐふっ!」
瞬間、男は膝から崩れ落ちた。異変に気づいた後部座席のもう1人の男と運転手は、即座に銃を取り出す。
江浜は両手の自由が利かない状態で、車の上にめがけてジャンプし背中で着地する。そのままぐるりと反対側まで体を回転させ、後部座席の左側へと移動した。
ドアを開けて外に出ようとする男に対し、江浜は力の限りそのドアを外側からタックルで閉じる。
男「ぐあ!!」
後部座席の男は真っ先に出ようとしたその左足をドアに挟まれ、悲痛な叫び声をあげた。
運転手「っく・・・」
運転手は銃口を江浜に向けようとするが、仲間の男が間に入り邪魔をする。
男の叫び声を聞いた江浜はすぐに後部座席のドアを開け、中の男の胸ぐらを掴み外に放り出した。と、同時に男の銃も奪っていた。
運転手「やろう!!」
運転手はドアを開いて外に出る。
江浜「そこまでだ!!」
出た瞬間、銃を奪った江浜が運転手の顔面に銃口を向けていた。
運転手「う・・・」
江浜「はー・・・ はー・・・」
小太郎に受けた背中の傷口が開いて、意識が遠くなりかける。それでも娘のあんずを脳裏に浮かべ気力を振り絞った。
江浜「笑顔を見せる余裕はない。鳳に電話をかけるんだ。
嫌なら、迷わず・・・ 引き金を弾く」
運転手「・・・ ・・・」
運転手は言われた通りにする。
江浜「一言だけ伝えろ」
江浜の握った銃は、運転手の顔面を狙ったままだった。
・・・ ・・・。
小太郎「私だ。やれ」
1分後、小太郎の携帯が鳴る。
運転手「済みました・・・」
小太郎「そうか、ご苦労」
小太郎は3人に聞こえるように大声で言い放ち、またしても2秒で電話を切った。
リナ「ま・・・ まさか・・・」
慎吾「・・・ ・・・」
恐る恐るあんずを見る慎吾。
あんず「・・・ ・・・」
あんずの表情は冷静なまま、小太郎を見つめている。
(慎吾「・・・うん。江浜さんは・・・ 無事だ・・・」)
あんずは万が一父が死んでしまった時は、それがわかると言っていた。彼女の冷静な表情は江浜が無事である事を物語っている・・・慎吾はそう理解した。
小太郎「さて、次は・・・」
右手に握られた刀は、3人の間をゆらゆらと動いてる。
小太郎「これから何が起こるか・・・ わかるだろう?」
3人は同時にゴクリと唾を飲み込んだ。
小太郎「最初は・・・ お前だ」
刀の先は・・・
リナ「・・・ ・・・」
リナの前でピタリと止まった。
(第38話へ続く)
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次回予告
小太郎と3人の・・・壮絶なバトルが始まった。
慎吾とあんずは、パワーストーンを握り小太郎の攻撃に対抗する。
リナはその洞察力で攻撃にうってでるが・・・?
次回 「 第38話 ラストバトル 」
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