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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第4章  最後の戦い
37/45

第36話  霊  核

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらにリナが中心になり、誘拐された江浜の娘・あんずも救出する。江浜はリナ達を逃がすため、身代わりに捕まってしまう。


敵とコンタクトをとった慎吾は、江浜とひき替えに徳川埋蔵金を差し出すと交渉。リナは埋蔵金のありかを示した銅板の謎を解き明かし、3人は銅板の示す場所へ向かった。


リナは大学の授業にいた大男が黒幕と突きとめる。埋蔵金を見つけられぬまま、慎吾達は・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第36話  霊  核


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

午前2時半・・・


ギキィ!!


黒い車が2台、慎吾達の目の前に止まった。


慎吾「・・・ ・・・」


あんず「・・・ ・・・」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾らがじっと見つめる視線の先・・・先頭の車のドアが開く。月明かりに照らされ、大きな男が降りてきた。


夜にも関わらず黒いサングラスをかけ、白いスーツに白いズボン。サングラス以外、白で身を固め・・・身長2mはゆうに越えているであろう大男だ。


鳳巧おおとりたくみと、時任マリオの名を持つ男。そしてまた、糸見小太郎という名の男であった。


小太郎「・・・ ・・・」


サングラスの奥の視線は、慎吾とその守護霊を捉える。男の右手は、腰に差した日本刀のつかを握っていた。


小太郎「ふふ・・・ ようやくこの日がきたか。

     この高揚感・・・ 何年ぶりだろう・・・」


慎吾は小太郎を睨み付け・・・口を開く。


慎吾「あなた・・・糸見さんの息子さんですね?」


小太郎「・・・ ・・・」


一瞬、無表情になった小太郎だが・・・すぐまた余裕の笑みを浮かべた。


小太郎「ほう・・・ そこまで突き止めるとは。

     思っていた以上に利口だな。


     まぁ、そうでなくては・・・

     埋蔵金には、ありつけない・・・ってわけだ」


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾の頬を汗がつたう。


リナ「・・・ ・・・」


あんず「・・・ ・・・」


慎吾の後ろにいるリナとあんず。すでに彼との戦闘を経験し、その圧倒的戦闘力を知っている。


慎吾からは、自分達を皆殺しにする気だと聞かされた。


リナ「・・・ ・・・」


緊張の表情のまま事態を見守っている。


慎吾「江浜さんは・・・?」


小太郎は後ろの車を指さす。


小太郎「安心しろ。ちゃんと生きている」


慎吾「・・・」


小太郎「埋蔵金さえ渡せば・・・ 解放してやるさ・・・」


(慎吾「・・・ 嘘だ・・・」)


相手の嘘を確信していたが、信じているフリをする慎吾。


慎吾「わかりました・・・」


小太郎「で? 埋蔵金は?」


慎吾「あそこから・・・ 赤城山の火口へ・・・」


慎吾は2人の武士の霊が守る、表の入り口を指さした。


小太郎「ふん・・・ そこに埋蔵金が・・・?」


慎吾「・・・ ・・・」


無言で頷く慎吾。


小太郎「いいだろう。では先を歩け。そこまで案内しろ」


直後小太郎は、リナとあんずの方を睨み付ける。


小太郎「お前ら2人も案内役だ。

     意外と戦闘力はあるようだが?


     ここに残って、人質を逃がす・・・

     そんなつもりはないよな?」


リナ「・・・ ・・・」


あんず「・・・ ・・・」


リナとあんずは、作戦を見透かされた事で苦い表情をする。



・・・ ・・・。


江浜「・・・ ・・・」


2台目の車、後部座席の真ん中に江浜はいた。両サイド、銃を持った男に挟まれた状態で。さらに運転手の男も銃を持っている。小太郎におわされたケガの状態はあまりよくなく、息を乱した状態だった。


あんずと慎吾に【声】を送りたかったが・・・


小太郎もまた非常に強い霊力を持っているため


(江浜「ヤツにも【声】をキャッチされてしまう・・・」)


江浜は誰ともコンタクトをとれないまま・・・銃を持った3人の男に囲まれるしかなかった。



・・・ ・・・。


あんず「・・・ ・・・」


あんずは父の容態を気にしながらも、慎吾の後ろをリナと共についていった。


慎吾「・・・ ・・・」


3人は鍾乳洞へ通じる物置小屋の前まで来る。


ギィィイイーーー・・・


夕方の時と同じ、勝手にその扉は奥の方から開く。


ガタン!


そして、2人の武士の霊が中から出てきた。


リナはゴクリと息をのむ。初めて彼らを見た時は、ただのコスプレマニアかと思ったが・・・それが霊だと知らされた。


(リナ「こんなに、はっきりと見えるのに・・・ 霊なの?」)


その時!


後ろを歩いていた小太郎が鞘から刀を取り出し


小太郎「ふん! ふん!!」


2度振りかざした。


慎吾「!?」


あんず「!?」


ブーメランの形をした青白い塊が、もの凄い勢いで前を行く3人の隙間を通り抜けていく。


ズバァ!!


そして扉の前の2人の武士を切り裂いた。瞬間2人の武士は・・・炎が消えるように青白い光を一瞬だけ放つ。やがて砂埃のような竜巻が渦を巻き・・・天へと登っていった。


慎吾「な・・・」


リナ「何!?」


あんず「・・・ ・・・」


3人が後ろを振り返ると、小太郎がニヤリと笑った。


小太郎「邪魔者は消すだけだ。さぁ、中へ入れ。

     そして埋蔵金の元まで案内しろ・・・」


小太郎は刀をさやに収め、刀をポンと肩に置く。


慎吾「・・・ ・・・」


3人は無言で前を向き・・・ 守護する霊のいなくなった扉をくぐる。地下へと続く階段を下り、鳥居の扉もくぐっていった。


そして鍾乳洞へと続く道へと・・・を進めていく。ポツリポツリと、鍾乳石から雫が落ちていく中を、一行は奥へ奥へと歩いて行った。


小太郎「ほう・・・ まさか、こんな道が存在するとはな。

     いかにも・・・


     徳川家が、御用金を隠しそうな場所だ。くっくっく・・・」


鍾乳洞や石筍せきじゅんに視線をやりながら、小太郎がつぶやく。


慎吾は小太郎に聞こえぬようあんずに声をかけた。


慎吾「あの・・・2人の武士はどうなったんですか?」


あんずも小さな声で応える。


あんず「天に召されたんです。彼によって無理矢理・・・」


リナ「元々死んでるんでしょ?」


会話にリナもくわわる。


あんず「えぇ、でも彼等はここを守護する霊として・・・

     自ら地縛霊になったと思います」


慎吾「地縛霊・・・」


あんず「地縛霊は強い念があって・・・その地へとどまる霊です。

     だから・・・無念のまま、その魂は天に召されたでしょう」


慎吾「しかしどうやって? 霊を天に返す事が?」


あんず「霊核れいかくと呼ばれるものが、どの霊にも存在します。

     霊核を失った霊は・・・この世にとどまる事が出来ないんです」


リナ「つまり、霊核を破壊した・・・みたいな?」


あんず「その通りです。本来それは悪霊を倒す最終手段に使われます。

     西洋では神の言葉によって除霊をするように・・・


     日本でも般若心経や各家に伝わるきょうをよむ事で・・・

     霊を追い払うのが一般的です」

  

慎吾「なるほど・・・霊核をしとめるのは、強硬手段ってわけか・・・」


あんず「ただ、霊自身、霊核の存在を知ってますので・・・

     普通はそれを守るのに必死に抵抗するのですが・・・」


リナ「あいつの攻撃力が有無を言わさなかった・・・

    ハンパないって事なわけね・・・」


ふと慎吾は2年前遭遇した事件を思い出す。


(慎吾「そっか・・・あの青年が言ってた【真なる魂】って・・・

     【霊核】の事だったんだ・・・」)


しばらくの沈黙の後、慎吾が口を開いた。


慎吾「あの男の後ろには・・・強力な霊がついています」


あんず「えぇ・・・」


リナ「まぁ、あんな攻撃見せられたら・・・

    絶対人間業じゃないのはわかるし。


    その霊がすごいんでしょ?」


慎吾「えぇ・・・」


あんずの方を見やる慎吾。


慎吾「その霊の正体を?」


あんず「白装束で大男というのが見えますが・・正体はわかりません」


リナ「私は見えすらしないし・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


チラリと後ろを見る。3人の後ろにはただ1人・・・小太郎がいるだけだ。


リナ「・・・ ・・・」


いつものリナなら、後ろの男をぶっ倒して・・・そう考えるところだが・・・


(リナ「あんな化け物・・・ 勝てるわけがない・・・」)


その戦闘力を知っているリナは、ただ前に進むしかない。


リナ「で? その・・・白装束のなんちゃらって・・・誰なの?」


慎吾「彼についている霊は・・・

    16世紀、小田原おだわら北條家ほうじょうけの元で暗躍した忍者・・・」


リナ「忍者? 忍者って、リアルな存在なの?」


慎吾「もちろんです。16世紀に活躍し・・・

    その戦術と忍術で相手を震え上がらせた忍者集団・・・


    風魔一族・・・」


リナ「どっかで聞いた事ある名前ね・・・風魔って」


慎吾「男に憑いている霊は・・・ その風魔の頭領・・・」


あんず「風魔の・・・?」


慎吾「風魔・・・小太郎という男です」


  

             (第37話へ続く)

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次回予告


糸見小太郎・・・彼の肉体を操っているのは風魔小太郎の霊だった。

慎吾達は鍾乳洞の中を、行ける所まで歩いて行く。


しかし行き着く先に・・・埋蔵金はない。

事態を悟った小太郎は、部下に電話をして江浜の殺害を指示した。


そして、腰にさした日本刀をスラリと抜き差し・・・


次回 「 第37話  江浜の危機  」

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