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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第3章  かけひき
36/45

第35話  5人の同一人物

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらにリナが中心になり、誘拐された江浜の娘・あんずも救出する。江浜はリナ達を逃がすため、身代わりに捕まってしまう。


敵とコンタクトをとった慎吾は、江浜とひき替えに徳川埋蔵金を差し出すと交渉。リナは埋蔵金のありかを示した銅板の謎を解き明かし、3人は銅板の示す場所へ向かった。


結局、埋蔵金は見つけられぬまま・・・


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   第35話  5人の同一人物


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慎吾「・・・ ・・・」


江浜からもらったパワーストーンを握りしめる慎吾は、横にいたあんずに声をかけた。


慎吾「あの・・・ このパワーストーンの使い方を・・・

    教えてくれませんか?」


あんず「え・・・?」


少し驚いた表情を見せた後・・・あんずは優しい笑顔で頷く。


あんず「まず最初に。霊力とよばれるものは・・・

     基本的には生命エネルギーを扱う事になります」


あんずは自らの持つパワーストーンを慎吾に見せながら、説明を始めた。


慎吾「あ・・・ イマイチ、よくわからない・・・」


あんず「生命エネルギーは、無尽蔵なパワーではなく・・・

     限りがあるって事です。命のエネルギーですから。


     だからやみくもに使うのではなく、バランスを考えて使わなければ・・・

     ヘタすれば自分を死においやる事にもなるんです」


慎吾「なるほど・・・」


あんず「ただ、修行を重ねれば・・・

     自然界にあるエネルギーも利用できるようになります。


     しかし自然のエネルギーを使えるようになるには・・・

     それなりの【修行】・・・それこそ何年にもわたる修行が必要です」


慎吾「わ、わかりました。僕はまだ修行なんて・・・

    そんなレベルじゃないから。


    仮にこのパワーストーンを使うとしたら・・・

    僕自身の命を使うって事ですね・・・」


あんず「はい。霊力を使う時、必ず最初にその事を注意するんです。

     例えば柔道習う人は、必ず最初に受け身を学びますよね?


     それと同じ。

     むやみに生命エネルギーを使用してはならない事を覚えて下さい」


慎吾「うん・・・」


あんず「そして霊力とよばれるものは・・・

     心と体が密接につながっている事も忘れないで下さい。


     心が乱れると、霊力も乱れますから」


慎吾「わ、わかった」


あんず「では・・・」


あんずは目を閉じ、深呼吸をする。


慎吾「・・・?」


あんず「天、頭、心をつなげるつもりで・・・

    ヘソの少し下に意識を集中します。


    ヘソの下のあたりに丹田とよばれる場所があり・・・

    そこに【気】・・・すなわち【氣】を溜めることを意識してください」


深く息を吐き出したあんず。自分のパワーストーンを前に出し、強く握りしめた。


あんず「そうすれば、エネルギーを感じる事ができます。

     そのエネルギーを・・・自分の体を通して・・・


     パワーストーンまで送りこみます」


パワーストーンが、心なしか青白く光り始める。


慎吾「・・・ ・・・」


あんず「後はそのエネルギーを、どういう形にするかイメージするだけ・・・」


するとあんずのパワーストーンから光の輪が現れた。直径20cm程度の小さな光の輪。


慎吾「す、すごい・・・」


目を開いたあんずは、天空を見上げ・・・


あんず「唵!!」


その光の輪を勢いよく投げ放つ。光の輪は、星空に向かって勢いよく飛んでいき、やがて見えなくなった。


慎吾「・・・ ・・・」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾の後ろで、一部始終を見ていたリナ。口を開いたまま、呆然とした表情を浮かべる。


リナ「うわ・・ やっぱり目の錯覚じゃないんだ・・・

    マジ、霊能力ってあるんだ・・・」


あんずは慎吾に視線を移した。


あんず「慎吾さんも、やってみてください」


慎吾「う、うん・・・」


江浜から譲り受けたパワーストンをぎゅっと握りしめる。


慎吾「・・・ ・・・」


深呼吸をして目を閉じ、意識を集中した。言われた通り、天・頭・心をつなげたつもりになる。


慎吾「・・・ ・・・」


エネルギーは・・・ 感じてるのか感じてないのかよくわからない。ヘソの下に意識を集中し、握ったパワーストーンに


慎吾「お・・・ おん!!」


あんずのかけ声を真似して、エネルギーを送りこむイメージをした。


するとパワーストーンから・・・青白い細い光が上下に伸び始める。


あんず「・・・ ・・・」


それを見たあんずは驚いた。


あんず「すごい・・・ 初めてでここまで、パワーストーンを扱えるなんて・・・」


慎吾「お・・・おん!!」


その細い光は・・・1m程の槍の形になる。慎吾は目を閉じたまま大きく深呼吸をする。しばらくすると光の槍は消えた。


慎吾「ふ~・・・」


額から大粒の汗が流れ落ちる。


慎吾「ふ~・・・ ふ~・・・

    何となくわかった・・・ 気がします。


    でも・・・  かなり疲れる・・・」


あんず「えぇ、初めてだと効率よく力は使えないはず。

     でも・・・これだけ出来るなら・・・


     ちょっと訓練すれば、すぐにイメージ通り・・・

     パワーストーンを扱えます。慎吾さんなら・・・」


リナは、スタスタと慎吾の元へ近寄ったかと思うと、不意に慎吾のパワーストーンを取り上げた。


慎吾「リ、リナ先輩・・・?」


リナは目を閉じ、深呼吸をして何やら集中を始める。


リナ「おん!!」


そして力強くパワーストーンを握りしめた。薄目をあけて石を見るが・・・何の変化もない。


リナ「ふんん!!!」


さらに気合いを入れ、力強く石を握るが・・・


何も起こらない。


しばらく石を見つめていたリナだが・・・


リナ「・・・ ・・・」


大きなため息をつき、あきらめたように慎吾に石を返した。


リナ「とりあえずあちらがくるまで、あんた・・・

    あんずちゃんに訓練されときなさい。


    ヘタしたら、ドンパチあるかもしれないからさ」


慎吾「ド・・・ ドンパチ・・・ですか?」


リナ「私は今までの情報を整理しておく。

    何か・・・ こちらが有利になるような物でも探すわ。


    はい、これ」


パワーストーンを返すリナ。


慎吾「わ、わかりました・・・」


パワーストーンを受け取った慎吾は大きく頷く。


あんず「じゃぁ、今度はもっと霊力を・・・

     バランスよく使う使い方を教えます」


あんずの方を振り返った慎吾は、頭を下げた。


慎吾「お・・・お願いします」



・・・ ・・・。


リナ「・・・ ・・・」


パソコンを起動しながら2人を見つめるリナ。


(リナ「まぁ・・・ 私は、私が出来る事をするか・・・」)


リナはキーボードを高速で叩き始めた。

この1週間、自分が関わった人物の名前を表計算ソフトに打ち込む。


「慎吾 松浦順 江浜 糸見 時任マリオ あんず 鳳巧」


あんずが言うに、電話の男・おおとりは・・・下の名前をたくみと言うらしい。


リナ「う~ん・・・」


【Aritou Tomoki】【Tokumoto Airi】


慎吾が見ていたサイトで、埋蔵金の賛否を議論していた2人のハンドルネーム。


(リナ「ま、この名前も・・・とりあえず入れておくか・・・」)


直接出会ったり、名前を目にした日付・・・あるいはおおまかな時刻、さらには記憶にある電話番号や車のナンバーなどのDATAを打ち込み、それらをじっと見つめる。


(リナ「何か・・・ ありそうな気もするんだけど・・・」)


タン,タンと人差し指でキーボードを叩いていたその瞬間・・・


リナ「 ん? 」


何かに気づいた。


リナ「・・・ ・・・」


打ち込んだDATAを睨み付ける。


(リナ「ちょっと待ってよ・・・」)


カタカタカタカタ・・・リナは再び高速でキーボードを叩き始める。


(リナ「こ、こいつら・・・ まさか・・・ いや、ひょっとして・・・」)


今度はネットで、過去のニュース記事を検索し始めた。


(リナ「1992年・・・」)


頭を抱えるリナ。


(リナ「あと1つ・・・何かあと1つ・・・ 確かどこかで聞いた事が・・・」)


ふとリナは、慎吾とあんずの方向を見る。


(リナ「・・・ ・・・ 確かあいつと出会った時・・・」)


リナの脳裏に慎吾と出会った時の記憶が甦る。慎吾と初めて出会ったのは・・・大学の講義。空気の読めない慎吾に対し、死ねばいいのにと思った。


(リナ「あの時確か・・・」)


再びネットで何かを検索すると・・・ 大学のサーバに侵入した。


(リナ「まさかと思うけど・・・ ここにあいつが・・・」)


そして・・・とうとう、とある名前を見つけた。


(リナ「そうか・・・ こいつ・・・ こいつが黒幕だったんだ!!」)


リナはすぐに慎吾とあんずを呼び出した。大粒の汗をかきながらリナの元へ走っていく慎吾と、後ろからついてくるあんず。


慎吾「な、何か?」


リナ「えぇ・・・ わかったのよ・・・

    あのおおとりってヤツの正体が・・・・」


慎吾「え!? 正体? 僕らが知ってる人なんですか?」


リナ「えぇ・・・」


慎吾「いったい・・・誰ですか!?」


リナ「私達が初めて出会った場所に・・・  いたのよ・・・」


慎吾「えぇ!?」


裏返った声をあげる慎吾。


リナ「これ見て」


リナはパソコンの画面を見せた。


慎吾「・・・ これは・・・」


リナ「【Aritou Tomoki】【Tokumoto Airi】は・・・

    以前、同一人物って言ったわよね?」


慎吾「えぇ・・・」


Aritou Tomoki

Tokumoto Airi


リナ「これに加えて・・・ この男2人・・・・」


時任マリオ = Tokitou Mario

鳳巧 = Ootori Takumi  


リナ「この2人も、アルファベット並べ替えたら・・・

    上の2人と同じになるの!」


慎吾「えぇ!? 時任マリオと鳳巧も・・・

    【ありとうともき】や、【とくもとあいり】と同一人物!?」


リナ「さらにもう1人!!」


今度は1992年のニュース記事を見せた。


リナ「ほら、コレ。

    あのプロデューサー糸見の、長男が産まれた時の記者会見記事。

 

    名前が糸見小太郎ってなってるでしょ?」


慎吾「はい・・・」


糸見小太郎 = Itomi Kotarou


リナ「この長男の名前も同じアルファベットの並べ替えなのよ。

    時任マリオは、糸見の長男・・・糸見小太郎なの!」


慎吾「たまたまアルファベットを並び替えたら同じになる・・・

    その偶然の可能性は・・・?」


リナ「ゼロ!! 今回の件で関わった多くの人物・・・

    そのアルファベットが、並び替えて同じなんてありえない!


    つまり、これら5人は同一人物! 間違いない!」


慎吾「えっと・・・ 時任マリオが、糸見プロデューサーの息子で・・・

    さらに江浜さんを捕らえている人物でもある・・・


    って事ですよね?

    でも僕たちが初めて会った場所にいたってのは・・・?」


リナはまた別のページを開いて見せた。


リナ「ほら、コレ。私達がとってる【マス・メディア】の授業名簿。

    大学のサーバに侵入して確認したの」


名簿の1点を指さしたリナ。慎吾はその名前を声に出す。


慎吾「糸見・・・小太郎・・・」


リナ「そうよ! スタジオで見た時・・・

    何で気づかなかったのかしら!?」


慎吾は初めて大学で受けた授業の記憶を探った。


慎吾「いた・・・ 一番後ろの席に・・・

    2mを越えてる大きな学生が・・・」


リナ「だから大学のパソコンから、あの書き込みもしてたのよ!

    一連の事件の犯人が・・・


    同じ授業受けてた学生だなんて・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


リナの言う通り、その事もショックだったが・・・慎吾にはあと1つひっかかる事がある。


慎吾「あの・・・ もう1度、記者会見の記事を見せてくれますか?」


リナは再び糸見の記者会見の記事ページを開いて見せた。


慎吾「・・・ ・・・」


糸見氏は息子の名前を自分で決めたのではなく、息子本人が決めたと主張。4260gという破格な体型で元気に産まれてきた息子に【小太郎】と名付け、周囲の笑いをとった・・・


慎吾「小太郎・・・?」


眉をひそめる慎吾。


慎吾「小太郎・・・ 箱根・・・ まさか・・・」


慎吾は天を仰いで目を閉じた。


リナ「・・・? 何か知ってるの・・・?」


慎吾は目を閉じたままリナに声をかける。


慎吾「リナ先輩。あの大男が・・・

    日本刀を持ってたって言ってましたよね?」


リナ「えぇ? 一振りするだけですごい衝撃がくるの・・・

    例え数m離れていてもよ!


    恐ろしい刀だわ・・・」


静かに目を開ける慎吾。


慎吾「村正むらまさだ・・・ やっぱり・・・」


リナ「な、何よ? 何かわかったの?」


慎吾はリナを見つめ、悲しそうな表情を浮かべる。


慎吾「えぇ・・・ 彼の真の目的がわかりました・・・」


リナは怪訝な表情を見せた。


リナ「目的って・・・ 埋蔵金でしょ?」


慎吾は首を横にふる。


慎吾「いえ・・・彼は埋蔵金を・・・

    おそらく捨て去るつもりでしょう」


リナ「え!? 何100億円もの価値があるんでしょ!?

    そ、それを捨てる!? 嘘! 絶対ありえない!」


慎吾「彼の目的は・・・ 埋蔵金をこの世から完全に抹消する事。

    そして・・・


    僕たちを皆殺しにする事です・・・」


リナ「な・・・?」


その時、黙って事態を見つめていたあんずが声をかけた。


あんず「・・・ 音が・・・ 車がきます!」


リナと慎吾に緊張がはしる。


慎吾「え!? もう!? まだ1時間ちょっとしか経ってないのに!?」


リナ「別の車じゃないの!?」


あんず「間違いありません・・・ 父を感じます」


リナ「ちょっと待ってよ・・・ 心の準備できてないわよ。

    だってその男・・・


    私達を皆殺しする気なんでしょ?」




                (第36話へ続く)

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次回予告


黒幕である5人の同一人物。糸見小太郎と慎吾は対峙した。


小太郎を連れて鍾乳洞の中を歩いて行くが・・・

その先に、埋蔵金はない事を慎吾達は知っている。


緊張の走るなか、慎吾はリナとあんずに・・・小太郎の背後にいる霊について語り始めた。


次回 「 第36話  霊  核  」

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