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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第3章  かけひき
33/45

第32話  行くべき場所

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらにリナが中心になり、誘拐された江浜の娘・あんずも救出する。


逃走するリナと江浜の前に、謎の大男が立ちはだかった。江浜はリナ達を逃す代わり、身代わりに捕まってしまう。


敵とコンタクトをとった慎吾は、江浜とひき替えに徳川埋蔵金を差し出すと言った。


リナは埋蔵金のありかを示したという銅板の謎を解き明かす。3人は銅板の示す場所へ向かった。


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   第32話  行くべき場所


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5月7日。午後4時・・・



3人は上野駅から東武線に乗り換え、赤城駅に降り立つ。


ベンチに座ったリナは、パソコンの画面を見ながら慎吾とあんずに言った。


リナ「ここから近いわよ、埋蔵金がある場所。

    353号線を東に行けばすぐ着く」


慎吾は駅にある周辺地図を見ながら、行き方を模索する。


慎吾「えっと・・・」


リナ「時間が気になる。タクシーで行きましょう」


慎吾「そうですね。タイムリミットを考えると・・・

    稼げる時間は稼いでいた方がいいですし」


あんずに気を遣って、リナと慎吾は目的地まで最速で行く方法をとった。あんずは黙って2人についていく。


この時江浜がおおとりに拉致されて24時間が経過。人質と埋蔵金を交換するという2度目の交渉まで、セーフティラインは48時間と設定した慎吾。


(慎吾「あと24時間以内に・・・埋蔵金をみつけないと・・・」)



数10分後。


3人はタクシーを降りる。見渡すと木々が生いしげる雑木林の区画と、綺麗に刈り入れられた整地とがあり、民家がまばらに見えた。


リナ「えっと・・・あっちの方角ね」


ある方向を指さす。


リナ「ここから北に15分ほど歩けば、目的地周辺だわ」


慎吾「・・・ 行きましょう・・・」


一行は目的地に向かって歩いて行った。


ふと一番後ろを歩いていたあんずが、リュックの中から例の拳大こぶしだいの石を取り出した。


それに気づいたリナが声をかける。


リナ「あんずちゃん・・・ 何か悪いものがいるの?」


あんずは首を横にふった。


あんず「ここらへんには、たくさんの霊がいます。

     けして悪い霊ではないのですが・・・

     

     万が一何かあった時、すぐに対応できるようにと思って」


あんずは右手の石を握りしめる。


慎吾「・・・ ・・・」


それを見た慎吾は、江浜にもらった石をポケットから取り出した。そしてあんずに石を見せる。


慎吾「これ、君のお父さんからもらったんだけど・・・

    何故、僕に渡したんだろう?」


あんず「これはパワーストーンです。

     霊力を持った人間は、この石を媒介して・・・


     そのエネルギーを具現化する事が出来るんです」


慎吾は首を横にかしげる。


リナ「あー・・・私、見た。あんずちゃんのお父さんが・・・

    その石から、光の剣のようなもの出しているのを・・・」


あんず「強い霊力を持ってる人間は・・・」


あんずは目の前の高さで石を握って見せた。


慎吾「 ? 」


あんず「パワーストーンに意識を集中させるだけで・・・

     武器や防具を作り出せるんです・・・ 


     唵!!!」


かけ声と共に・・・あんずのパワーストーンから左右に光の棒が伸びた。


慎吾「わ!?」


リナ「・・・ ・・・」


長さ50cm程度の光の棒を軽く振り回すあんず。


あんず「・・・ ・・・」


意識を落ち着けると、その光は消えた。


慎吾「す・・・ すごい・・・」


リナ「お父さんはもっとすごかったわよ・・・」


慎吾「え、江浜さん・・・もっとすごい武器を?」


あんず「私の師匠ですから・・・」


寂しそうに笑うあんず。


リナ「し、しかし・・・ う~ん・・・ 理解しがたい・・・

    いったい、どういう理屈なんだろう・・・?


    エネルギーをどこから持ってきてるのかしら・・・?」


あんず「この自然界、果ては宇宙にまで・・・

     エネルギーで満ちあふれています。それを利用しているだけです」


リナ「そうは言っても・・・ わっからないな~」


あんず「父が言うには・・・

     量子力学を学べば、霊魂や霊力の正体にも近づけるって・・・」


リナ「へ~・・・霊だの霊魂だのって話も、現代科学で説明できるの?」


(慎吾「りょうし・・・りきがく?」)


あんず「らしいです。だから私・・・

     今、大学の物理を専攻して基本的な勉強を・・・」


リナ「え!?」


慎吾「え!?」


リナと慎吾は同時に驚きの声をあげた。


リナ「あ、あんずちゃんって・・・大学生だったの!?」


2人の驚く表情に対して驚くあんず。


あんず「え? えぇ・・・そうです。今年からですが・・・」


慎吾「と、飛び級ってヤツですか?」


あんずは首を横にふる。


あんず「いえ・・・普通にです・・・けど?」


リナ「じゃ、じゃあ・・・あんずちゃんって年、いくつなの!?」


目を丸くしたあんずは応える。


あんず「え? じゅ、18です・・・?」


慎吾「えーー!!」


リナ「えーーー!!」


またしても驚く2人。


慎吾「最初は中学生かなと。でもバイク乗ってたから高校生かと・・・」


リナ「私も・・・絶対3つは年下だと思ってた・・・」


あんずはニコッと笑った。


あんず「よく言われます。

     私、背も低いし・・・よく中学生に間違えられるんです」


慎吾「まさか僕と同級生とは・・・」


リナ「まさか私の1個下とは・・・」


今まで【年上目線】で語っていた慎吾、そして【かなり年上目線】で語っていたリナ。2人とも、後頭部をポリポリとかいた。


あんず「・・・ っぷ・・・」


その2人のシンクロした様子を見て、あんずが小さく笑う。


リナ「そっかぁ・・・私は19歳だから、あんずちゃんの1個上。

    改めてよろしくね」


リナは右手を差し出した。握手に応えたあんずは笑顔を見せる。


あんず「えぇ、リナ先輩。よろしくです」


リナ「ちょっと、先輩はヤメて。そう呼ぶのは1人で十分だからさ」


あんず「じゃぁ、リナさん」


笑顔で応えるあんずの表情の美しさに、再び後頭部をかくリナ。


リナ「こんなに可愛い笑顔で言われたら・・・まいっちゃうわね」


2人の女性の後ろを歩く慎吾。


(慎吾「こんな可愛い・・・同い年の女の子・・・

     どう接すればいいんだろう・・・?」)


パワーストーンを握りながら、勝手に一人で悩んでいた。


(慎吾「あ、後でこの石の使い方を聞こう・・・かな・・・?」)


あんず「よろしく。慎吾さん・・・」


笑顔のあんずが、慎吾に握手を求める。


慎吾「え? あ・・・ よ、よろしく・・・ あんずさん・・・」


白い右手を握る慎吾。


あんず「そんな・・・さんづけなんて・・・ あんずでよろしいです・・・」


慎吾「は、はい・・・ あんずさん・・・」


そんな慎吾を見て、あんずは三度みたび小さく笑った。



・・・ ・・・。


しばらく歩いていると、先頭のリナが立ち止まる。そして360度あたりをぐるっと見回した。


リナ「着いたわ・・・ ここよ」


あんずも慎吾も周りを見渡す。雑木林と畑、そしてまばらに民家が見える平地に3人は立っている。


リナ「へ~、山周辺なのに携帯の電波も通ってるんだ」


携帯を見ながら、電波が通っている事を確認する。


慎吾「ここの近くに・・・ 埋蔵金が・・・?」


リナ「銅板の格子点の大きさから言えば・・・

    今いる所の半径100m以内に埋蔵金がある・・・


    って事になるんだけど・・・?」


3人とも辺りを見渡し、埋蔵金のありそうな場所を探そうとする。


慎吾「・・・ ・・・」


ふと慎吾が雑木林の向こうに視線を移した。


リナ「・・・?」


リナが見る限り、視線の先に何かがある様子はない。しかし慎吾は、そこに向かって歩き出した。


慎吾「・・・ ・・・」


リナ「ちょっと・・・」


慎吾の肩に手をかけるリナ。


リナ「ちょっとあんた、どこ行くつもり!?」


慎吾は振り返って自信に満ちた笑顔を見せた。


慎吾「行くべき場所です」


リナ「・・・ ・・・」


あまりにも自信満々で言ってのけたので、リナの方が面食らう。


リナ「・・・ ・・・」


リナはあんずの方を見やる。


あんず「慎吾さんの後に・・・ 付いていきましょう」



・・・ ・・・。


何故かはわからないが、慎吾には自信があった。


(慎吾「今、僕達が行くべき所は・・・ この方向だ・・・」)


50mほど歩いて林を抜けるとまた平地に出る。さらに30mほど歩くと、倉庫というか民家の物置小屋のような建物がポツンと1つ建っていた。


慎吾「・・・ ・・・」


入り口の前で慎吾は立ち止まり、その建物を見る。その後ろに続くリナとあんず。


リナ「ま、まさか・・・ ここなの!? ここに埋蔵金があるの!?」


慎吾は首を横にふった。


リナ「そ、そうよね。こんな誰にでも・・・

    簡単に行けそうな場所に、あるわけないわよね・・・」


リナに対し、慎吾が笑顔を見せる。


慎吾「でもここは・・・多分入り口です・・・」


リナ「え!? 入り口?」


慎吾は無言で頷いた。


リナ「埋蔵金に通じる入り口って事!? なんでわかんのよ?」


慎吾「えー・・・あー、何となく?」


リナ「は~!? そんな【何となく】が根拠!? ありえない!!」


あんずが割って入る。


あんず「リナさん。とりあえず確かめてみましょう。

     ダメならまた次探せばいいですし・・・」


リナは小さなため息をついた。


リナ「ま、まぁ・・・

    確かめるぐらいならいいけど、どうせ何も・・・」



ギィィイイーーー・・・



突然、建物の扉が・・・



ガタン!



内側から開いた。



                 (第33話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


3人は建物の中に入っていく。

その地下からは、鍾乳洞に通じる道があった。


そして歩いて行った先で・・・


慎吾達は・・・?


次回 「 第33話  鍾乳洞  」

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