第30話 解 読
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慎吾のスピリチュアル事件簿 First season
「徳川埋蔵金の謎」
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前回までのあらすじ
2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。
収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。
リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらにリナが中心になり、誘拐された江浜の娘・あんずも救出する。逃走するリナと江浜の前に、謎の大男が立ちはだかった。
江浜はリナ達を逃す代わり、身代わりに捕まってしまう。リナが記憶していた鳳という人物の電話番号に電話をかけ、コンタクトをとった慎吾。江浜とひき替えに、徳川埋蔵金を差し出すと言った。
埋蔵金のありかを示したという銅板の謎に挑むのだが・・・?
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第30話 解 読
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5月7日月曜日、午前4時。箱根大学近く、とあるビジネスホテルの一室。
リナ「・・・ ・・・」
ベッドの上であぐらをかいているリナは、パソコンの画面とにらめっこしていた。
リナの横には、あんずがスースーと寝息をたてて寝ている。
そしてベッドの下では、慎吾も深い眠りについていた。
(リナ「まぁ、2人とも・・・長い間、監禁されていたからね・・・」)
赤い眼鏡の奥、優しい目で2人を見つめる。視線をパソコンの画面に移すと、また真剣な表情を浮かべた。
リナ「・・・ ・・・」
リナ自身、どうしてもこの銅板の謎を解き明かす必要を感じている。
この日リナは・・・朝、TV局から慎吾と江浜を監禁場所から救いだし、昼過ぎにはあんずをも助けた。なのに、ずっと逃げ回るだけの自分が嫌で・・・あの大男に立ち向かおうとした。
(リナ「・・・ あんなの・・・ ありえない・・・」)
しかしその男は圧倒的な戦闘能力を有していて、これまでリナが撃退した連中とは全く異質な存在だった。
そして江浜はリナをかばって大けがを負う。
(リナ「・・・ 私の・・・ せい・・・」)
今は鳳という人物に拉致されている。
慎吾、リナ、あんず、江浜・・・年齢だけでなく、精神面やその特殊能力の高さから考えても間違いなく江浜は頼れる存在だ。
しかし今は・・・
未成年の3人で対処しなければならない。
あの時、江浜の言う通り逃げる事だけに集中していれば・・・4人ともここまで追い込まれる事はなかったのかもしれない。
強い責任感を感じているリナ。
(リナ「何とか・・・ 銅板の謎を解き明かしたい・・・」)
それが江浜を救い出す事につながると信じて・・・
リナ「・・・ ・・・」
なのに・・・
銅板の表と裏を何度見ても糸口が見つからない。
長時間パソコンの画面を見つめていたリナの目は、疲労でかすみ始める。
リナ「ふ~・・・」
大きなため息をついたリナは、トレードマークの赤いメガネをとってベッドの上に横になった。横を見ると、かわいらしい寝顔のあんずがいる。ふとリナの目から、意識とは裏腹に涙がこぼれた。
(リナ「あれ・・・?」)
何故、涙がこぼれたのかわからない。
リナ「・・・ ・・・」
右手で涙を拭う。
(リナ「私も・・・ 疲れてるかな・・・?」)
目を閉じて大きく深呼吸した。
(リナ「このまま眠ったら・・・ 気持ちいいだろうな~・・・」)
目を開くと、天井を見つめ・・・1日を振り返る。
TVSの第5スタジオに監禁されている慎吾を見事に救出した。
(リナ「スタンガン・・・ 使ったの、何年ぶりかしら・・・」)
スタンガンで2人の男を倒し、敵と思っていた江浜と合流する。
そして江浜の娘・あんずをも救出した。
(リナ「まさかトイレの窓に鉄格子があるとはね・・・」)
慎吾の立てた作戦では・・・すんなりトイレの窓から脱出するはずだったが・・・
(リナ「あれは、マジヤバだったわ・・・」)
その時のピンチを振り返る。
リナ「・・・ あれ・・・?」
その時、リナの脳裏に何かがひっかかった。
リナ「・・・ ・・・」
今一度、トイレの状況を思い出す。
リナ「・・・ 鉄・・・格子・・・?」
ふと視線の先、ベッドの上の天井を注意深く見つめた。天井は縦と横に線が入った、素っ気ないデザインである。
リナ「・・・ ・・・」
そのまま1分弱天井を見つめた後、リナは赤いメガネを再びかける。そしてパソコンの画面を見つめながら、画像編集ソフトを立ち上げた。
(リナ「そうか・・今まで表と裏を別々に見てたから・・・
重ねてみれば・・・」)
素早いキータッチで、写メった銅板の表と裏の画像を重ねる。
(リナ「やっぱり・・・」)
表の縦線と横線の交わる点。そして裏に書かれた8つの点。これらはぴったりと重なった。
点をはっきりと強調させるため、ペイントソフトで加工する。
(リナ「・・・ 見えてきた・・・」)
この新発見は、リナの眠気を吹き飛ばした。表と裏の情報は、別々の情報ではない。
(リナ「同時に考えなきゃいけなかったんだ・・・」)
銅板の表には・・・正方形が9個あるが、大事なのはそこではない。
(リナ「埋蔵金のありかを示しているのは・・・正方形じゃない!
点が示してるんだわ!
これならあんずちゃんの言ってた疑問も・・・
問題無し! 後は・・・」)
あんずは言っていた。仮に正方形の1つが、埋蔵金のありかを示していたとしても・・・その正方形のどこに埋蔵金があるのかはわからない。
しかし正方形ではなく、点が埋蔵金のありかを示しているなら・・・ピンポイントで埋蔵金の場所を特定できる。
点は・・・全部で16個。
(リナ「慎吾の仮説によれば右上の点が【6】・・・
右下の点は【3】を表している・・・」)
(リナ「ならば16個の点は、1から16の数字が対応するはず・・・」)
雑然としていた情報が、リナの脳裏で1つ1つ有効な情報へと結びつけられる。
(リナ「えっと・・・徳川家って15代将軍までよね。
16個の点に、1から15まで対応させる事が出来れば・・・
必然的に、残った1点が16・・・そこが埋蔵金のある場所ね!!」)
さらに図形を見ると、【3】の点から【6】の点の間に2つの点がある。そこで、その間の2点に【4】と【5】を対応させてみた。
さらに線で結ばれている点を一筆書きを描く要領で【1】から【8】まで対応させてみる。
(リナ「1から8までの対応点はわかった・・・
あとは、9から15・・・。
この対応さえわかれば・・・
埋蔵金のありかがわかる!!」)
対称図形の謎は解けた。何てことはない、表の正方形の頂点を結ぶ図形だった。各点には数字が対応してる事までつきとめた。
残ったのは数字の謎だけ。
(リナ「ここは私の専門分野・・・
ランダムだと8の階乗で4万320通り・・・
絶対・・・ 何かこの数字の配列に法則があるはず・・・」)
もう少しで全ての謎が解けると確信したリナはじっとパソコンの画面を見つめる。
・・・ ・・・
時計が午前7時を示した頃・・・
(リナ「歸藏図は魔方陣・・・」)
慎吾が言ってた情報が、頭の中をかけめぐる。
(リナ「・・・ 待ってよ・・・ そうか・・・
そうか!!!」 )
何かに気づいた。
(リナ「魔方陣だ・・・ しかもただの魔方陣じゃない・・・
この魔方陣は・・・」)
リナの頭脳が高速で数値の計算を始める。
リナ「・・・ ・・・」
そして、とうとう・・・
(リナ「見えた!!!」)
答にたどり着いた。
大きなため息と共に・・・ 達成感からか笑顔がこぼれる。
リナ「これで・・・ 江浜さんを助けられる・・・」
リナは横で眠っているあんずの笑顔を、優しい目で見つめた。
・・・ ・・・。
ふと慎吾は目を覚ました。
慎吾「あ、あれ? 僕、寝てた・・・?」
ベッドの横の床下。慎吾は体を起こし、部屋の時計を確認する。
慎吾「え!? 8時!? いつの間にか・・・
1時間寝てしまったんだ・・・」
リナ「バカね・・・」
ふとリナの声が聞こえた。ベッドの上にリナとあんずがいる。あんずはスヤスヤと寝ていた。
リナ「あんたさぁ・・・ 13時間寝てたのよ。
まぁ徹夜であれだけ動き回ったんだから、仕方ないかもね」
あんずの横で座りながら、リナはパソコンをじっと見つめている。
慎吾「え!? じゃ、じゃぁ今は月曜日の午前8時!?」
リナ「そうよ・・・」
慎吾「ヤバい! 13時間も無駄にするなんて!!
早く埋蔵金のありかを特定しないと!!!」
リナは慎吾に視線を移し、小さくほほえんだ。
リナ「わかったわよ」
慎吾「え?」
リナ「だから埋蔵金がある場所・・・
この銅板が、どこを示したいのか・・・
わかったってば」
慎吾「えぇぇ!? 本当に!?」
裏返った声をあげる慎吾。
リナ「私を誰だと思ってるの?」
そう言うと、リナは慎吾にパソコンに移っている銅板の地図を見せた。
リナ「いい? 徳川埋蔵金が眠っている場所は・・・
間違いなくココよ!」
リナは地図上の1点を人差し指でさした。
(第31話へ続く)
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次回予告
銅板の表と裏を同時に見た時・・・
そこには、3×3ではなく4×4の魔方陣が浮かび上がった。
そしてとうとう銅板に書かれた地図の1点、埋蔵金が眠っているであろう場所を・・・
リナは突きとめた!
次回 「 第31話 完全魔方陣 」
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