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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第3章  かけひき
30/45

第29話  銅板の謎

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらにリナが中心になり、誘拐された江浜の娘・あんずも救出する。逃走するリナと江浜の前に、謎の大男が立ちはだかった。


江浜はリナ達を逃す代わり、身代わりに捕まってしまう。リナが記憶していたおおとりという人物の電話番号に電話をかけ、コンタクトをとった慎吾。江浜とひき替えに、徳川埋蔵金を差し出すと言った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第29話  銅板の謎


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


おおとり「・・・・・・」


電話の向こうの声は、沈黙を保っている。


リナ「あと10秒!」


逆探知されるタイムリミットを、リナが口にした。


慎吾「交渉成立ですね?」


鳳「本気か?」


パソコンの前の3人は、相手がくいついてきた事を確信する。


慎吾「もちろん。48時間以内に、また連絡します!」


そう言うと慎吾はリナに合図を送る。リナはすぐにIP電話の回線を切断した。


リナ「・・・ ふ~ ・・・」


額の汗をぬぐったリナが口を開く。


リナ「ギリギリよ、ギリギリ! 2秒切ってたし・・・

    ヤバかったわ・・・」


3人は安堵のため息をついた。


あんず「でも・・・」


あんずの言いたいことをリナが奪う。


リナ「でもあんた・・・ホントに埋蔵金を差し出すっての!?」


慎吾は2度頷いた。


慎吾「えぇ。相手は執拗なまでに埋蔵金にこだわってます。

    江浜さんを助けるには、それしかないと思って・・・」


あんず「・・・・・・」


不安そうなあんずの表情を察した慎吾が声をかける。


慎吾「必ず・・・ 必ず江浜さんは助けます!」


あんず「・・・ ・・・」


あんずは黙って深く頷いた。


リナ「でも、48時間以内って・・・ 結構すぐよ?

    せめて1週間とか、10日って言えばよかったのに・・・」


慎吾「逆算です」


リナ「逆算?」


慎吾「えぇ。今日は6日の日曜日。

    確か【徳川埋蔵金を追え!】の次の収録が、12日の土曜日。


    連中はそれまでには埋蔵金を見つけたいと思っているはずです」


あんず「・・・ ・・・」


慎吾「発掘後の映像編集を考えると・・・

    その2~3日前までに発掘は終えたいでしょう。


    仮に埋蔵金の眠る場所を特定したとしても・・・

    発掘にはさらに時間がかかりますからね」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾「だとしたら、8日の火曜日あたりがリミット。

    すなわち今から・・・


    48時間以内がセーフティラインだと思ったんです」


リナ「ふむ・・・。何も考えてないかと思ったけど・・・

    相手の立場も踏まえて、結構考えてるわね。あんた・・・」


慎吾「まぁ・・・推理小説の名探偵なら・・・

    こう考えるかなって・・・」


リナ「・・・ ・・・」


あんず「・・・ ・・・」


女性2人は言葉に詰まった。


リナ「ま、まぁ・・・ ひっかかるものはあるけど・・・

    今回は結果オーライね。


    そうとなれば・・・」


リナはパソコンのウィンドウを開き、慎吾とあんずに見せる。



挿絵(By みてみん)



リナ「これが例の銅板を写メったヤツ。

    とにかく表の地図上のどこかに・・・


    埋蔵金があるってわけでしょ?」


慎吾「それで間違いないと思います・・・」


慎吾は深く頷いた。


リナ「で、この銅板の裏・・・そう! これよ、私が見たの!!」



挿絵(By みてみん)



リナは銅板の裏の写メもパソコンの画面上に映し出す。


慎吾「おそらく裏の情報を元にして・・・

    表にある地図のどこかを指してるかと思います。


    表の・・・9分割されたうちのどこか1箇所を・・・」


あんず「・・・ ・・・」


あんずも、じっとパソコンの画面を見ている。


慎吾「あんずさん・・・何か気づいた事でも?」


眉をひそめるあんずに、慎吾は質問した。


あんず「あ・・・いえ・・・」


リナ「何か気づいた事や、気になる事あるならすぐに言って!

    今は少しでも情報を集めたいところなの。


    あなたのお父さんを救う・・・最後のカギなんだから!」


あんずはちょっと迷った後、口を開く。


あんず「思ったんですが、慎吾さん・・・

     9分割のどこかを指してるって・・・言いましたよね?」


慎吾「うん」


あんず「この表の地図・・・

     縦・横は、実際はどれぐらいの長さなのでしょう?」


慎吾「えっと・・・」


慎吾が迷うに、リナはネット地図を開いて銅板の地図と照合した。


リナ「地図は・・・ 全体で、およそ4km四方ね」


あんず「例えばもし・・・

     埋蔵金が9分割のうち、左上の四角の中にあるとした場合・・・


     それでも1.3km四方ですよね?」


慎吾「えぇ、そうなります」


リナ「あ! そうか!!」


リナは慎吾の言う仮説の矛盾に気づく。


慎吾「な、何か?」


リナ「だってさ・・・

    1.3km四方のどこかに埋蔵金があるとして・・・


    広すぎるでしょ!?

    どこを掘れば出てくるの? 埋蔵金?」


慎吾「あ・・・ そうか・・・」


慎吾は右手の平を、おでこあてた。リナの言う通り、例え9分割のどこか1つを特定できたとしても・・・


いざ発掘しようとしたらあまりにも広すぎる。


慎吾「振り出しに戻った・・・」


大きな溜息をつく慎吾。


リナ「諦めちゃダメよ。時間はまだある!

    この銅板が埋蔵金のありかを示してるなら・・・


    その場所を見つけるだけよ!」


慎吾「そうだ・・・ 江浜さんの命もかかってる・・・

    諦めるわけにはいかない・・・」



それから・・・


3人はパソコンの画面とにらめっこを始める。



・・・ ・・・。


鳳への電話を切って、5時間が経過した。


慎吾「・・・ ・・・」


あんず「・・・ ・・・」


リナ「・・・ ・・・」


しかし、3人は全く手がかりをつかめない。


リナ「・・・ ・・・」


リナは銅板の裏の対称的な図形に・・・何かが見えそうで見えない状況だった。



挿絵(By みてみん)



リナ「慎吾。あんたの知ってる事、もう1度最初から話してみて」


慎吾「えぇ、まず表の地図の図形は八卦で使われる記号。

    この配列は歸藏きぞう図と呼ばれています」



挿絵(By みてみん)



リナ「この記号が数字に対応してるのよね?」


慎吾「えぇ。特に歸藏図に出てくる数字の配列は・・・

    3×3の魔方陣になる事で有名です」



挿絵(By みてみん)



あんず「魔方陣?」


リナ「縦、横、斜め、どの3つの数字を足しても同じになるって事」


あんずは対応した数字を頭の中で足してみる。


あんず「ホントだ・・・」


どのラインの和も15になる事を確認した。


慎吾「表の地図でわかるのは、それぐらいです」


リナ「じゃぁ裏に書かれてる事を・・・もう1度」


慎吾「【宣言】の【宣】は・・・

    6代将軍の家宣を表してる可能性があるかなと・・・思いました。


    彼は、前代の5代将軍綱吉が作った【生類憐れみの令】という・・・

    悪法を真っ先に廃止した事で知られます」


あんず「生類憐れみの令・・・歴史で聞いた事あります」


リナ「私は聞いた事すらないけど・・・」


慎吾「【光明】の【光】は、3代将軍家光を表してるかなと。

    彼の祖父は、初代徳川将軍の家康・・・


    そして父は2代将軍秀忠。家光は、純粋な将軍の血筋です。

    幼名は竹千代で、これは家康・秀忠の幼名とも同じ・・・」


リナ「・・・ ・・・」


歴史に興味のないリナは、頭をポリポリとかく。


リナ「ふ~ん・・・ とにかく6と3ね・・・大事なのは」


慎吾「15代将軍の慶喜が埋蔵金を隠したのなら・・・

    新将軍は16代将軍の事。


    新将軍ノ元というなら・・・16にちなんだどこか・・・かなと」


あんず「でも、銅板の表には1から9までの対応しかない・・・」


リナ「6と3と・・・16か・・・」


しばし3人に沈黙の時が流れる。


リナ「表には地図と魔方陣・・・ 裏には対称図形と文字。

    そして6,3,16・・・


    何か見えそうなんだけど・・・」


あんず「あの・・・」


何かに気づいたような声をあげたあんず。


あんず「あの・・・今まで図形と文字を別べつに考えてましたが・・・

     ひょっとして、同時に考えるのではないでしょうか?」


慎吾「と、言うと?」


あんず「はい。この【宣】の横に、図形の点がありますよね。

     この点は6代将軍の6を表しているんじゃないかなと・・・


     だから【光】の横の点は・・・

     3代将軍の3を表していると思ったのですが・・・」


慎吾「文字の横の点がその数字に対応してる・・・って事ですね?」


あんず「えぇ・・・」



挿絵(By みてみん)



慎吾「そうか・・・だとしたら残り6点にも・・・数字が?」


リナ「8個の点に8個の数字・・・右上が6で右下が3・・・」


リナの脳に、あらゆる数字のパターンが入ってくる。


慎吾「残り6つの点に・・・ 何かの数字が・・・?

    でも16は・・・?」


パニック気味になりつつある慎吾。


リナ「あと1つ・・・あと1つ何かあれば・・・

    全て見えそうなのに・・・」


慎吾「3人よれば文殊もんじゅの知恵!

    もう少しです。頑張りましょう!」


3人はさらに知恵を振り絞った。



・・・ ・・・。



・・・ ・・・。



ふと慎吾は目を覚ました。


慎吾「あ、あれ? 僕、寝てた・・・?」


ベッドの横の床下。慎吾は体を起こし、部屋の時計を確認する。


慎吾「え!? 8時!? いつの間にか・・・

    1時間寝てしまったんだ・・・」


リナ「バカね・・・」


ふとリナの声が聞こえた。ベッドの上にリナとあんずがいる。あんずはスヤスヤと寝ていた。


リナ「あんたさぁ・・・ 13時間寝てたのよ。

    まぁ徹夜であれだけ動き回ったんだから、仕方ないかもね」


あんずの横で座りながら、リナはパソコンをじっと見つめている。


慎吾「え!? じゃ、じゃぁ今は月曜日の午前8時!?」


リナ「そうよ・・・」


慎吾「ヤバい! 13時間も無駄にするなんて!!

    早く埋蔵金のありかを特定しないと!!!」


リナは慎吾に視線を移し、小さくほほえんだ。


リナ「わかったわよ」


慎吾「え?」


リナ「だから埋蔵金がある場所・・・

    この銅板が、どこを示したいのか・・・


    わかったってば」


慎吾「えぇぇ!? 本当に!?」


裏返った声をあげる慎吾。


リナ「私を誰だと思ってるの?」


そう言うと、リナは慎吾にパソコンに移っている銅板の地図を見せた。



挿絵(By みてみん)



リナ「いい? 徳川埋蔵金が眠っている場所は・・・

    間違いなくココよ!」


リナは地図上の1点を人差し指でさした。



             (第30話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


銅板の謎を解こうと頑張っていた慎吾とあんずは・・・いつの間にか眠りに落ちていた。リナは1人で銅板の謎の解読に挑むが、あと1つ何かが足りない。


ふとこの日1日の出来事を思い浮かべてみた・・・その時!


リナの脳裏に最後のカギが浮かんだ。



次回 「 第30話  解  読  」

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