第29話 銅板の謎
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慎吾のスピリチュアル事件簿 First season
「徳川埋蔵金の謎」
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前回までのあらすじ
2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。
収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。
リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらにリナが中心になり、誘拐された江浜の娘・あんずも救出する。逃走するリナと江浜の前に、謎の大男が立ちはだかった。
江浜はリナ達を逃す代わり、身代わりに捕まってしまう。リナが記憶していた鳳という人物の電話番号に電話をかけ、コンタクトをとった慎吾。江浜とひき替えに、徳川埋蔵金を差し出すと言った。
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第29話 銅板の謎
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鳳「・・・・・・」
電話の向こうの声は、沈黙を保っている。
リナ「あと10秒!」
逆探知されるタイムリミットを、リナが口にした。
慎吾「交渉成立ですね?」
鳳「本気か?」
パソコンの前の3人は、相手がくいついてきた事を確信する。
慎吾「もちろん。48時間以内に、また連絡します!」
そう言うと慎吾はリナに合図を送る。リナはすぐにIP電話の回線を切断した。
リナ「・・・ ふ~ ・・・」
額の汗をぬぐったリナが口を開く。
リナ「ギリギリよ、ギリギリ! 2秒切ってたし・・・
ヤバかったわ・・・」
3人は安堵のため息をついた。
あんず「でも・・・」
あんずの言いたいことをリナが奪う。
リナ「でもあんた・・・ホントに埋蔵金を差し出すっての!?」
慎吾は2度頷いた。
慎吾「えぇ。相手は執拗なまでに埋蔵金にこだわってます。
江浜さんを助けるには、それしかないと思って・・・」
あんず「・・・・・・」
不安そうなあんずの表情を察した慎吾が声をかける。
慎吾「必ず・・・ 必ず江浜さんは助けます!」
あんず「・・・ ・・・」
あんずは黙って深く頷いた。
リナ「でも、48時間以内って・・・ 結構すぐよ?
せめて1週間とか、10日って言えばよかったのに・・・」
慎吾「逆算です」
リナ「逆算?」
慎吾「えぇ。今日は6日の日曜日。
確か【徳川埋蔵金を追え!】の次の収録が、12日の土曜日。
連中はそれまでには埋蔵金を見つけたいと思っているはずです」
あんず「・・・ ・・・」
慎吾「発掘後の映像編集を考えると・・・
その2~3日前までに発掘は終えたいでしょう。
仮に埋蔵金の眠る場所を特定したとしても・・・
発掘にはさらに時間がかかりますからね」
リナ「・・・ ・・・」
慎吾「だとしたら、8日の火曜日あたりがリミット。
すなわち今から・・・
48時間以内がセーフティラインだと思ったんです」
リナ「ふむ・・・。何も考えてないかと思ったけど・・・
相手の立場も踏まえて、結構考えてるわね。あんた・・・」
慎吾「まぁ・・・推理小説の名探偵なら・・・
こう考えるかなって・・・」
リナ「・・・ ・・・」
あんず「・・・ ・・・」
女性2人は言葉に詰まった。
リナ「ま、まぁ・・・ ひっかかるものはあるけど・・・
今回は結果オーライね。
そうとなれば・・・」
リナはパソコンのウィンドウを開き、慎吾とあんずに見せる。
リナ「これが例の銅板を写メったヤツ。
とにかく表の地図上のどこかに・・・
埋蔵金があるってわけでしょ?」
慎吾「それで間違いないと思います・・・」
慎吾は深く頷いた。
リナ「で、この銅板の裏・・・そう! これよ、私が見たの!!」
リナは銅板の裏の写メもパソコンの画面上に映し出す。
慎吾「おそらく裏の情報を元にして・・・
表にある地図のどこかを指してるかと思います。
表の・・・9分割されたうちのどこか1箇所を・・・」
あんず「・・・ ・・・」
あんずも、じっとパソコンの画面を見ている。
慎吾「あんずさん・・・何か気づいた事でも?」
眉をひそめるあんずに、慎吾は質問した。
あんず「あ・・・いえ・・・」
リナ「何か気づいた事や、気になる事あるならすぐに言って!
今は少しでも情報を集めたいところなの。
あなたのお父さんを救う・・・最後のカギなんだから!」
あんずはちょっと迷った後、口を開く。
あんず「思ったんですが、慎吾さん・・・
9分割のどこかを指してるって・・・言いましたよね?」
慎吾「うん」
あんず「この表の地図・・・
縦・横は、実際はどれぐらいの長さなのでしょう?」
慎吾「えっと・・・」
慎吾が迷う間に、リナはネット地図を開いて銅板の地図と照合した。
リナ「地図は・・・ 全体で、およそ4km四方ね」
あんず「例えばもし・・・
埋蔵金が9分割のうち、左上の四角の中にあるとした場合・・・
それでも1.3km四方ですよね?」
慎吾「えぇ、そうなります」
リナ「あ! そうか!!」
リナは慎吾の言う仮説の矛盾に気づく。
慎吾「な、何か?」
リナ「だってさ・・・
1.3km四方のどこかに埋蔵金があるとして・・・
広すぎるでしょ!?
どこを掘れば出てくるの? 埋蔵金?」
慎吾「あ・・・ そうか・・・」
慎吾は右手の平を、おでこあてた。リナの言う通り、例え9分割のどこか1つを特定できたとしても・・・
いざ発掘しようとしたらあまりにも広すぎる。
慎吾「振り出しに戻った・・・」
大きな溜息をつく慎吾。
リナ「諦めちゃダメよ。時間はまだある!
この銅板が埋蔵金のありかを示してるなら・・・
その場所を見つけるだけよ!」
慎吾「そうだ・・・ 江浜さんの命もかかってる・・・
諦めるわけにはいかない・・・」
それから・・・
3人はパソコンの画面とにらめっこを始める。
・・・ ・・・。
鳳への電話を切って、5時間が経過した。
慎吾「・・・ ・・・」
あんず「・・・ ・・・」
リナ「・・・ ・・・」
しかし、3人は全く手がかりをつかめない。
リナ「・・・ ・・・」
リナは銅板の裏の対称的な図形に・・・何かが見えそうで見えない状況だった。
リナ「慎吾。あんたの知ってる事、もう1度最初から話してみて」
慎吾「えぇ、まず表の地図の図形は八卦で使われる記号。
この配列は歸藏図と呼ばれています」
リナ「この記号が数字に対応してるのよね?」
慎吾「えぇ。特に歸藏図に出てくる数字の配列は・・・
3×3の魔方陣になる事で有名です」
あんず「魔方陣?」
リナ「縦、横、斜め、どの3つの数字を足しても同じになるって事」
あんずは対応した数字を頭の中で足してみる。
あんず「ホントだ・・・」
どのラインの和も15になる事を確認した。
慎吾「表の地図でわかるのは、それぐらいです」
リナ「じゃぁ裏に書かれてる事を・・・もう1度」
慎吾「【宣言】の【宣】は・・・
6代将軍の家宣を表してる可能性があるかなと・・・思いました。
彼は、前代の5代将軍綱吉が作った【生類憐れみの令】という・・・
悪法を真っ先に廃止した事で知られます」
あんず「生類憐れみの令・・・歴史で聞いた事あります」
リナ「私は聞いた事すらないけど・・・」
慎吾「【光明】の【光】は、3代将軍家光を表してるかなと。
彼の祖父は、初代徳川将軍の家康・・・
そして父は2代将軍秀忠。家光は、純粋な将軍の血筋です。
幼名は竹千代で、これは家康・秀忠の幼名とも同じ・・・」
リナ「・・・ ・・・」
歴史に興味のないリナは、頭をポリポリとかく。
リナ「ふ~ん・・・ とにかく6と3ね・・・大事なのは」
慎吾「15代将軍の慶喜が埋蔵金を隠したのなら・・・
新将軍は16代将軍の事。
新将軍ノ元というなら・・・16にちなんだどこか・・・かなと」
あんず「でも、銅板の表には1から9までの対応しかない・・・」
リナ「6と3と・・・16か・・・」
しばし3人に沈黙の時が流れる。
リナ「表には地図と魔方陣・・・ 裏には対称図形と文字。
そして6,3,16・・・
何か見えそうなんだけど・・・」
あんず「あの・・・」
何かに気づいたような声をあげたあんず。
あんず「あの・・・今まで図形と文字を別べつに考えてましたが・・・
ひょっとして、同時に考えるのではないでしょうか?」
慎吾「と、言うと?」
あんず「はい。この【宣】の横に、図形の点がありますよね。
この点は6代将軍の6を表しているんじゃないかなと・・・
だから【光】の横の点は・・・
3代将軍の3を表していると思ったのですが・・・」
慎吾「文字の横の点がその数字に対応してる・・・って事ですね?」
あんず「えぇ・・・」
慎吾「そうか・・・だとしたら残り6点にも・・・数字が?」
リナ「8個の点に8個の数字・・・右上が6で右下が3・・・」
リナの脳に、あらゆる数字のパターンが入ってくる。
慎吾「残り6つの点に・・・ 何かの数字が・・・?
でも16は・・・?」
パニック気味になりつつある慎吾。
リナ「あと1つ・・・あと1つ何かあれば・・・
全て見えそうなのに・・・」
慎吾「3人よれば文殊の知恵!
もう少しです。頑張りましょう!」
3人はさらに知恵を振り絞った。
・・・ ・・・。
・・・ ・・・。
ふと慎吾は目を覚ました。
慎吾「あ、あれ? 僕、寝てた・・・?」
ベッドの横の床下。慎吾は体を起こし、部屋の時計を確認する。
慎吾「え!? 8時!? いつの間にか・・・
1時間寝てしまったんだ・・・」
リナ「バカね・・・」
ふとリナの声が聞こえた。ベッドの上にリナとあんずがいる。あんずはスヤスヤと寝ていた。
リナ「あんたさぁ・・・ 13時間寝てたのよ。
まぁ徹夜であれだけ動き回ったんだから、仕方ないかもね」
あんずの横で座りながら、リナはパソコンをじっと見つめている。
慎吾「え!? じゃ、じゃぁ今は月曜日の午前8時!?」
リナ「そうよ・・・」
慎吾「ヤバい! 13時間も無駄にするなんて!!
早く埋蔵金のありかを特定しないと!!!」
リナは慎吾に視線を移し、小さくほほえんだ。
リナ「わかったわよ」
慎吾「え?」
リナ「だから埋蔵金がある場所・・・
この銅板が、どこを示したいのか・・・
わかったってば」
慎吾「えぇぇ!? 本当に!?」
裏返った声をあげる慎吾。
リナ「私を誰だと思ってるの?」
そう言うと、リナは慎吾にパソコンに移っている銅板の地図を見せた。
リナ「いい? 徳川埋蔵金が眠っている場所は・・・
間違いなくココよ!」
リナは地図上の1点を人差し指でさした。
(第30話へ続く)
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次回予告
銅板の謎を解こうと頑張っていた慎吾とあんずは・・・いつの間にか眠りに落ちていた。リナは1人で銅板の謎の解読に挑むが、あと1つ何かが足りない。
ふとこの日1日の出来事を思い浮かべてみた・・・その時!
リナの脳裏に最後のカギが浮かんだ。
次回 「 第30話 解 読 」
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