第27話 霊能バトル
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慎吾のスピリチュアル事件簿 First season
「徳川埋蔵金の謎」
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前回までのあらすじ
2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。
収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。
リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらにリナが中心になり、誘拐された江浜の娘・あんずも救出する。ところが、慎吾の持っていた銅板に追跡装置がついており、銃を持った連中がまたしても追ってきた。
リナと江浜の前に、謎の大男が立ちはだかり・・・
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第27話 霊能バトル
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リナはただ、江浜の背中から吹き出す大量の出血を・・・
リナ「・・・ ・・・」
呆然と見ている事しかできなかった。
江浜「・・・ ・・・」
江浜は青白い表情を浮かべながらリナを抱きしめている。脂汗を流しながら、必死に口を開いた。
江浜「君は・・・早く逃げるんだ。ここは私に任せろ・・・」
そう言うと江浜はリナを突き放した。そして歯を食いしばり、男に相対する。
江浜「唵!!」
両拳を力の限り握りしめ、気合いの声を発した。すると背中の出血が少しずつ止まり始める。
江浜「・・・ ・・・」
そして目の前の男を睨み付けた。
男「・・・ ・・・」
睨まれた男は右手に持った日本刀をポンと肩におき、瀕死の江浜に声をかける。
男「死を覚悟したか?」
江浜はニヤリと笑い応えた。
江浜「ふ・・・。日本最高の霊能力者と言われている。
普段の除霊では、もの足りなかったところさ・・・」
そう言うと江浜は・・・ポケットから拳大の石を取り出し、前に突き出す。
江浜「唵!!」
気合いのかけ声を入れると、石の左右から青白い光が棒状に伸び出した。そしてその光は剣の形をなす。
リナ「・・・ ・・・」
江浜が何をしたのか理解できないが、リナには光の剣が見えていた。
江浜「・・・ ・・・」
光の剣を自分の前に水平にして構えをとった江浜は、小さな声で後ろにいるリナに声をかける。
江浜「君の手におえる相手ではない。早く逃げるんだ・・・」
リナ「・・・ ・・・」
リナは江浜の後ろでただ立ち尽くしていた。江浜が身を挺して、男と自分の間に入ってくれなければ・・・
(リナ「死んでいたかも・・・」)
リナはここまでTV局、あんずの監禁されていた事務所、そして今と・・・逃げてきた。
また逃げなければいけないかと思うと、腹がたってくる。
リナ「・・・ ・・・」
ただ男の得体の知れない攻撃には、どう対応すればいいのか全くわからない。相手の攻撃を受ければ、死ぬ可能性も十分ある。
逃げたくない・・・ でも死ぬかも知れない・・・
葛藤の中で動けないまま、ただ立ち尽くしていた。
リナの気配を背後に感じた江浜が言う。
江浜「君は足手まといだ。君がいると、2人とも死ぬ事になる」
リナ「く・・・」
江浜の言葉は自分を逃がすためというのはわかる。でも、江浜だけ残して逃げる事など出来ない。
リナは腹をくくり、ワイヤー型スタンガンの銃口を男に向けた。
それを見た男は小さく笑う。
男「ほう・・・ 今度は本気で行くぞ?」
リナへの視界を遮るように、江浜が割って入った。
江浜「上等・・・結界の外で待ってた事、後悔させてやるさ」
江浜の額から、脂汗が流れる。
男は2,3歩進んだかと思うと突然・・・上空3m近い跳躍を見せた。
リナ「な・・・!?」
もはや人間業ではない男の所業に、驚く事しかできないリナ。
太陽を背にした男は5m先の江浜とリナに向け、届くはずのない日本刀を勢いよく振る。
江浜「ふん!!」
江浜は後ろにジャンプしつつ、リナを抱きしめた。
直後2人が立っていた地面は大きな衝撃を受け止め、アスファルトにヒビが入る。江浜とリナが、小さな揺れを感じる程の衝撃だった。
江浜「言ったろ・・君は逃げろ」
江浜はリナをかばうようにして、背中越しにリナに声をかける。
リナ「で、でも一人で太刀打ち出来る相手では・・・」
男「無駄話はそこまでだ!」
男はさらに刀を振った。
江浜「唵!!」
ガキィーィィン!!
江浜は光の剣は、見えない衝撃を受け止める。しかし完全に受け止められず・・・
江浜「くぅ・・・」
リナ「・・・ ・・・」
2人は3m後方に吹っ飛ばされた。
男「ほう。よく受けたものだ。一瞬でも遅れたら・・・
2人とも死んでたぞ」
地面にひれ伏した江浜とリナに、男はゆっくりと歩みを進めていく。
江浜「はぁ・・・はぁ・・・」
先ほど激しい出血をした江浜の呼吸が乱れている。
リナ「・・・ ・・・」
江浜がかばってくれたおかげでリナは無傷だが、これ以上の攻撃を受け止める事が出来るとは到底思えない。
(リナ「ど・・・どうすれば・・・?」)
倒れた2人に、さらにゆっくりと歩を進める男。
男「ふ・・・ ここまでだ。その体では、後ろに飛べまい」
そういうと大きく日本刀を振りかぶった。
リナ「し・・・ 」
リナの顔が恐怖の表情を見せる。
ヒュン・・・
突然リナの背後から、金属の物体が飛んできた。その物体は高速で男の太ももに向かっているが・・・
男は振り上げた刀をすぐに降ろして、その物体をはじく。
キン! キン!!
刀と物体が高音を響かせた。
男「もう1人いたか・・・」
男の視線の先・・・
リナ「・・・ ・・・」
江浜「はぁ・・・ はぁ・・・」
江浜とリナのさらに背後に・・・
あんずがいた。
あんず「・・・ ・・・」
父親同様、拳大の石を握りしめている。
男「ふん・・・」
あんずを睨み付けた男が、口を開いた。
男「性懲りもなく・・・今度は、生け捕りではすまないぞ?」
あんず「・・・ ・・・」
2日前、自分を拉致した男の姿を確認する。不意を突かれたとはいえ、圧倒的な力の前に反撃すら出来ず捕まった相手だ。
あんず「・・・ ・・・」
緊張した表情で男への視線を外さず・・・手に握った石に力が入る。
男「なるほど・・・」
男は、はじいた金属の物体を拾った。それは直径10cm程度の円盤状の金属板。ギザギザの金属歯がついている。
男「この私に手裏剣など、笑止千万!」
言うが早いか、男は2枚の金属手裏剣をあんずに投げ返した。
反射的に横によけたあんず。
あんず「っく・・・」
左頬と左太ももに手裏剣がかすり、一閃の血がほとばしる。
江浜「あんず!!」
あんず「大丈夫! かすっただけ!!」
親子は態勢を立て直し、男に向け石を向けた。江浜のそれは、すでに光の剣が現れている。
男「・・・ ・・・」
しばらく辺りを見渡した男は
男「肝心な男がいないな・・・」
ぼそっとつぶやいた。そして3人との間合いを詰めてゆく。
男「まぁ・・・ 楽しみは後にとっておくか・・・」
手にした日本刀を、肩にぽんと置いた。
リナ「く・・・くる・・・」
男のさらなる日本刀の攻撃を察知したリナ。
男「3人まとめて・・・・ 死ねい!!」
手にした日本刀を思いっきり振り下ろそうとした。
江浜「隙あり!」
タイミングを見計らっていた江浜が、刀を振り落とす直前・・・手にした光の剣を投げつけた。
男「こざかしい!!」
男は振り下ろそうとした日本刀を止め、光の剣をはじき返す。
江浜「唵!!」
はじき返された光の剣に、江浜は手の平からエネルギーのようなものを送るしぐさをした。するとはじき返されたはずの光の剣は、意志を持ったかごとく反転し・・・
男の太ももを突き刺す。
男「ぬ!?」
物理に反する剣の動きを目の当たりにした直後、江浜の声が聞こえてきた。
江浜「どこを見ている!?」
太ももから正面に視線を移すと、江浜が飛びかかってきている。
その左手には2個目の石が握られ、2本目の光の剣が男を襲おうとしていた。
男「っく!」
反射的に刀で、江浜の光の剣を受け止める。
男「ぬぅ・・・」
男の額から、初めて汗が流れた。江浜は左手1本で、光の剣を押し込み・・・男の太ももに刺さった光の剣を右手で握った。
男「ぐぉ!!」
太ももから剣を引き抜くと・・・
男「っく・・・」
2本の光の剣をクロスして男の日本刀をさらに押し込む。
江浜「・・・ ・・・」
力の限り剣を押し込もうとする江浜だが・・・
男「ふむ・・・現世でお主のような男と出会えるとはな・・・」
江浜の目を見つめながら、男は力で江浜の2本の光の剣を振り払う。
キィン・・・
甲高い音が鳴り響くと・・・2人は間合いを取りつつ、にらみ合った。
江浜は男に意識を集中しつつも、あんずに言葉を送る。
(江浜「リナ君を連れ、この場を去るんだ」)
頬の傷を抑えながらあんずが応えた。
(あんず「でも1人では・・・」)
(江浜「師の命令は絶対だ・・・」)
(あんず「・・・はい・・」)
男「戦場で集中力を欠くと死ぬぞ!!」
突然男が壁際に飛んだかと思うと、三角飛びで江浜に襲ってきた。二刀流の江浜は、男の日本刀を十字受けするが・・・
江浜「くはぁ!!」
力で差し込まれる。
江浜「・・・ くぅ・・・」
渾身の力を絞り出し・・・日本刀は、江浜の眼前で止まった。
男「よく受け止めた。だが・・・」
男は、力に任せて日本刀を振り下ろそうとする。
江浜「・・・ っく・・・ ぐくっ・・・」
日本刀と、光の剣による力比べが始まった。
・・・ ・・・。
あんず「お願い! お父さんだけなら何とかなるの!
私たちがいると、かえって危険なの!!」
あんずは必死にリナを説得している。
リナ「でも・・・ 私たちが加勢しないと・・・」
なかなかその場を動こうとしないリナ。
あんず「お父さんのために!! お願い!!」
リナ「・・・ ・・・」
・・・ ・・・。
江浜「・・・ ・・・」
ブロロロロ・・・
江浜は、背後でバイクが過ぎ去る音を確認する。
男が日本刀越しに声をかけた。
男「女2人は去った。満足か?」
魂胆を見抜いていた男に対し、江浜はニヤリと笑う。
江浜「あぁ・・・。これでお互い・・・」
キィィィィン!!
日本刀と光の剣が激しく音を立てた。
江浜「遠慮無く仕合えるというもの・・・」
そして2人の男は対峙する。
江浜「・・・ ・・・」
大量の出血により、意識が薄れてかけている江浜。
男「ふ・・・ 体調が悪いようだ。
万全の時に、戦いたかったぞ・・・」
大きく刀を振りかぶった男は・・・
男「ふん!!」
江浜「!?」
大きな跳躍の後、日本刀を振り下ろした。
(第28話に続く)
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次回予告
あんずとリナは、江浜を置き去りにして逃げ去った。慎吾も含め、3人は遠くへと逃げる。途方に暮れるあんずに対し、慎吾は状況を整理した。
そして・・・鳳という名の人物に辿り着く。
次回 「 第28話 交 渉 」
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