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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第3章  かけひき
28/45

第27話  霊能バトル

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらにリナが中心になり、誘拐された江浜の娘・あんずも救出する。ところが、慎吾の持っていた銅板に追跡装置がついており、銃を持った連中がまたしても追ってきた。


リナと江浜の前に、謎の大男が立ちはだかり・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第27話  霊能バトル


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リナはただ、江浜の背中から吹き出す大量の出血を・・・


リナ「・・・ ・・・」


呆然と見ている事しかできなかった。


江浜「・・・ ・・・」


江浜は青白い表情を浮かべながらリナを抱きしめている。脂汗を流しながら、必死に口を開いた。


江浜「君は・・・早く逃げるんだ。ここは私に任せろ・・・」


そう言うと江浜はリナを突き放した。そして歯を食いしばり、男に相対あいたいする。


江浜「唵!!」


両拳を力の限り握りしめ、気合いの声を発した。すると背中の出血が少しずつ止まり始める。


江浜「・・・ ・・・」


そして目の前の男を睨み付けた。


男「・・・ ・・・」


睨まれた男は右手に持った日本刀をポンと肩におき、瀕死の江浜に声をかける。


男「死を覚悟したか?」


江浜はニヤリと笑い応えた。


江浜「ふ・・・。日本最高の霊能力者と言われている。

    普段の除霊では、もの足りなかったところさ・・・」


そう言うと江浜は・・・ポケットから拳大の石を取り出し、前に突き出す。


江浜「唵!!」


気合いのかけ声を入れると、石の左右から青白い光が棒状に伸び出した。そしてその光は剣の形をなす。


リナ「・・・ ・・・」


江浜が何をしたのか理解できないが、リナには光の剣が見えていた。


江浜「・・・ ・・・」


光の剣を自分の前に水平にして構えをとった江浜は、小さな声で後ろにいるリナに声をかける。


江浜「君の手におえる相手ではない。早く逃げるんだ・・・」


リナ「・・・ ・・・」


リナは江浜の後ろでただ立ち尽くしていた。江浜が身をていして、男と自分の間に入ってくれなければ・・・


(リナ「死んでいたかも・・・」)


リナはここまでTV局、あんずの監禁されていた事務所、そして今と・・・逃げてきた。


また逃げなければいけないかと思うと、腹がたってくる。


リナ「・・・ ・・・」


ただ男の得体の知れない攻撃には、どう対応すればいいのか全くわからない。相手の攻撃を受ければ、死ぬ可能性も十分ある。


逃げたくない・・・  でも死ぬかも知れない・・・


葛藤の中で動けないまま、ただ立ち尽くしていた。

リナの気配を背後に感じた江浜が言う。


江浜「君は足手まといだ。君がいると、2人とも死ぬ事になる」


リナ「く・・・」


江浜の言葉は自分を逃がすためというのはわかる。でも、江浜だけ残して逃げる事など出来ない。


リナは腹をくくり、ワイヤー型スタンガンの銃口を男に向けた。

それを見た男は小さく笑う。


男「ほう・・・ 今度は本気で行くぞ?」


リナへの視界をさえぎるように、江浜が割って入った。


江浜「上等・・・結界の外で待ってた事、後悔させてやるさ」


江浜の額から、脂汗が流れる。


男は2,3歩進んだかと思うと突然・・・上空3m近い跳躍を見せた。


リナ「な・・・!?」


もはや人間業ではない男の所業に、驚く事しかできないリナ。

太陽を背にした男は5m先の江浜とリナに向け、届くはずのない日本刀を勢いよく振る。


江浜「ふん!!」


江浜は後ろにジャンプしつつ、リナを抱きしめた。


直後2人が立っていた地面は大きな衝撃を受け止め、アスファルトにヒビが入る。江浜とリナが、小さな揺れを感じる程の衝撃だった。


江浜「言ったろ・・君は逃げろ」


江浜はリナをかばうようにして、背中越しにリナに声をかける。


リナ「で、でも一人で太刀打ち出来る相手では・・・」


男「無駄話はそこまでだ!」


男はさらに刀を振った。


江浜「唵!!」


ガキィーィィン!!


江浜は光の剣は、見えない衝撃を受け止める。しかし完全に受け止められず・・・


江浜「くぅ・・・」


リナ「・・・ ・・・」


2人は3m後方に吹っ飛ばされた。


男「ほう。よく受けたものだ。一瞬でも遅れたら・・・

   2人とも死んでたぞ」


地面にひれ伏した江浜とリナに、男はゆっくりと歩みを進めていく。


江浜「はぁ・・・はぁ・・・」


先ほど激しい出血をした江浜の呼吸が乱れている。


リナ「・・・ ・・・」


江浜がかばってくれたおかげでリナは無傷だが、これ以上の攻撃を受け止める事が出来るとは到底思えない。


(リナ「ど・・・どうすれば・・・?」)


倒れた2人に、さらにゆっくりとを進める男。


男「ふ・・・ ここまでだ。そのていでは、後ろに飛べまい」


そういうと大きく日本刀を振りかぶった。


リナ「し・・・ 」


リナの顔が恐怖の表情を見せる。



ヒュン・・・



突然リナの背後から、金属の物体が飛んできた。その物体は高速で男の太ももに向かっているが・・・


男は振り上げた刀をすぐに降ろして、その物体をはじく。


キン! キン!!


刀と物体が高音を響かせた。


男「もう1人いたか・・・」


男の視線の先・・・


リナ「・・・ ・・・」


江浜「はぁ・・・ はぁ・・・」


江浜とリナのさらに背後に・・・


あんずがいた。


あんず「・・・ ・・・」


父親同様、拳大の石を握りしめている。


男「ふん・・・」


あんずを睨み付けた男が、口を開いた。


男「性懲りもなく・・・今度は、生け捕りではすまないぞ?」


あんず「・・・ ・・・」


2日前、自分を拉致した男の姿を確認する。不意を突かれたとはいえ、圧倒的な力の前に反撃すら出来ず捕まった相手だ。


あんず「・・・ ・・・」


緊張した表情で男への視線を外さず・・・手に握った石に力が入る。


男「なるほど・・・」


男は、はじいた金属の物体を拾った。それは直径10cm程度の円盤状の金属板。ギザギザの金属歯がついている。


男「この私に手裏剣など、笑止千万!」


言うが早いか、男は2枚の金属手裏剣をあんずに投げ返した。

反射的に横によけたあんず。


あんず「っく・・・」


左頬と左太ももに手裏剣がかすり、一閃の血がほとばしる。


江浜「あんず!!」


あんず「大丈夫! かすっただけ!!」


親子は態勢を立て直し、男に向け石を向けた。江浜のそれは、すでに光の剣が現れている。


男「・・・ ・・・」


しばらく辺りを見渡した男は


男「肝心な男がいないな・・・」


ぼそっとつぶやいた。そして3人との間合いを詰めてゆく。


男「まぁ・・・ 楽しみは後にとっておくか・・・」


手にした日本刀を、肩にぽんと置いた。




リナ「く・・・くる・・・」


男のさらなる日本刀の攻撃を察知したリナ。


男「3人まとめて・・・・ 死ねい!!」


手にした日本刀を思いっきり振り下ろそうとした。



江浜「隙あり!」


タイミングを見計らっていた江浜が、刀を振り落とす直前・・・手にした光の剣を投げつけた。


男「こざかしい!!」


男は振り下ろそうとした日本刀を止め、光の剣をはじき返す。


江浜「唵!!」


はじき返された光の剣に、江浜は手の平からエネルギーのようなものを送るしぐさをした。するとはじき返されたはずの光の剣は、意志を持ったかごとく反転し・・・


男の太ももを突き刺す。


男「ぬ!?」


物理に反する剣の動きを目の当たりにした直後、江浜の声が聞こえてきた。


江浜「どこを見ている!?」


太ももから正面に視線を移すと、江浜が飛びかかってきている。


その左手には2個目の石が握られ、2本目の光の剣が男を襲おうとしていた。


男「っく!」


反射的に刀で、江浜の光の剣を受け止める。


男「ぬぅ・・・」


男の額から、初めて汗が流れた。江浜は左手1本で、光の剣を押し込み・・・男の太ももに刺さった光の剣を右手で握った。


男「ぐぉ!!」


太ももから剣を引き抜くと・・・


男「っく・・・」


2本の光の剣をクロスして男の日本刀をさらに押し込む。


江浜「・・・ ・・・」


力の限り剣を押し込もうとする江浜だが・・・


男「ふむ・・・現世でお主のような男と出会えるとはな・・・」


江浜の目を見つめながら、男は力で江浜の2本の光の剣を振り払う。


キィン・・・


甲高い音が鳴り響くと・・・2人は間合いを取りつつ、にらみ合った。



江浜は男に意識を集中しつつも、あんずに言葉を送る。


(江浜「リナ君を連れ、この場を去るんだ」)


頬の傷を抑えながらあんずが応えた。


(あんず「でも1人では・・・」)


(江浜「師の命令は絶対だ・・・」)


(あんず「・・・はい・・」)


男「戦場で集中力を欠くと死ぬぞ!!」


突然男が壁際に飛んだかと思うと、三角飛びで江浜に襲ってきた。二刀流の江浜は、男の日本刀を十字受けするが・・・


江浜「くはぁ!!」


力で差し込まれる。


江浜「・・・ くぅ・・・」


渾身の力を絞り出し・・・日本刀は、江浜の眼前で止まった。


男「よく受け止めた。だが・・・」


男は、力に任せて日本刀を振り下ろそうとする。


江浜「・・・ っく・・・ ぐくっ・・・」


日本刀と、光の剣による力比べが始まった。



・・・ ・・・。


あんず「お願い! お父さんだけなら何とかなるの!

     私たちがいると、かえって危険なの!!」


あんずは必死にリナを説得している。


リナ「でも・・・ 私たちが加勢しないと・・・」


なかなかその場を動こうとしないリナ。


あんず「お父さんのために!! お願い!!」


リナ「・・・ ・・・」



・・・ ・・・。


江浜「・・・ ・・・」


ブロロロロ・・・


江浜は、背後でバイクが過ぎ去る音を確認する。


男が日本刀越しに声をかけた。


男「女2人は去った。満足か?」


魂胆を見抜いていた男に対し、江浜はニヤリと笑う。


江浜「あぁ・・・。これでお互い・・・」


キィィィィン!!


日本刀と光の剣が激しく音を立てた。


江浜「遠慮無く仕合しあえるというもの・・・」


そして2人の男は対峙する。


江浜「・・・ ・・・」

 

大量の出血により、意識が薄れてかけている江浜。


男「ふ・・・ 体調が悪いようだ。

   万全の時に、戦いたかったぞ・・・」


大きく刀を振りかぶった男は・・・


男「ふん!!」


江浜「!?」


大きな跳躍の後、日本刀を振り下ろした。



             (第28話に続く)

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次回予告


あんずとリナは、江浜を置き去りにして逃げ去った。慎吾も含め、3人は遠くへと逃げる。途方に暮れるあんずに対し、慎吾は状況を整理した。


そして・・・おおとりという名の人物に辿り着く。



次回 「 第28話  交  渉  」

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