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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第2章  動き出す影
26/45

第25話  パワーストーン

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。さらにリナが中心になり、誘拐された江浜の娘・あんずも救出した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第25話  パワーストーン


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慎吾「え!? 水って電気を通すんじゃないんですか!?」


江浜の娘・あんずの救出に成功した一行は、江浜の運転する車で高速道路を走っていた。


リナ「バカね・・・正確には水に含まれている不純物が電気を通すのよ。

    ナトリウムは水に溶けるとイオンが発生する電解質。


    それが電気を通しやすくするの。高校の化学で習ったでしょ!?」


慎吾「あ・・・ 僕、文系だし、地学しか・・・」


リナ「でも、江浜さんとあんずちゃんの気功・・・?

    あれがなかったら、正直ヤバかったわ・・・」


運転手の江浜が口を開く。


江浜「あれは発勁はっけいと言ってね。

    昔から中国武術で使われる気功技の1つなんだ」


慎吾「娘さんも気功使えるなんてすごいです。

    壁の表裏から同時に衝撃を与える・・・


    力2倍で壁を破壊するなんて、素晴らしい発想です!」


横にいたリナがため息をついた。


リナ「2倍じゃなくて4倍だけどね。どうせ物理も知らないわよね・・・」


軽く笑った江浜が声をかける。


江浜「とにかくリナ君のおかげで、私も娘も助かった。ありがとう」


リナ「いえ・・・ たいした事は・・・」


そういうリナは少しニヤニヤしていた。


江浜「ほら、あんずも・・・」


助手席に座っている娘の肩をポンと叩く。


脱出直後、銃声を聞いて震えていたあんずだが・・・ようやく落ち着きを取り戻し始めていた。リナの方を向いて小さな声で


あんず「ありがとう」


と、照れた声を出す。


リナ「どういたしまして! でも、あなた・・・

    江浜さんの娘なら、もっと堂々としなきゃね!」


慎吾「ちょっと・・・お父さんの前ですよ・・・」


慎吾がリナの腕を軽くつついた。


江浜「リナ君の言うとおり。まだ修行中の身とはいえ・・・

    もっと鍛えなければと思ってる」


慎吾はあんずに笑顔を見せ、声をかける。


慎吾「えっと・・初めまして! 

    慎吾っていいます。よろしく」


この時慎吾は、初めてあんずと目を合わせた。


あんず「あ・・・はぃ・・・ よろしく・・・」


あんずは恥ずかしそうに目線をそらし・・・小さな返事を返すと、すぐに前を向く。


慎吾「わ・・・」


初めてあんずの顔を直視した慎吾は、一瞬小さな声をあげた。


胸元まで伸びた綺麗な黒髪に大きな瞳、うす紅色の頬と小さな唇。ついつい助手席に座るあんずの黒髪に見とれてしまう。


江浜「娘は、人見知りが激しくてね」


軽く笑う江浜。


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾は心ここにあらずといった表情を浮かべている。その不審な表情に気づいたリナが声をかけた。


リナ「ちょっとあんた・・・ どうしたの?」


慎吾「あ・・・江浜さんの娘さん・・・可愛い・・・」


小さな声で・・・素直に思っている事を口にする。


リナ「・・・ ・・・」


あきれた表情を浮かべるリナ。


リナ「まぁでも・・・ 確かにね。

    女の私でも・・・初めて見た時、一瞬見とれたし。


    イケメンの娘イコール美少女。ありうる方程式だわ」


慎吾「リナ先輩・・・」


リナ「 ? 」


慎吾「僕、ああいう可愛いすぎる女の人・・・

    どう接していいかわからないんです・・・


    どうすればいいんですかね?」


リナ「はぁ!? なにそれ? あたしに失礼じゃない!? 

    そんなの、私も知らないっつーの!!」


慎吾「ふぁ~・・・」


緊張の場面を脱した安堵感は、あんずの美しさをさらに引き立てる。見とれる慎吾は抜け殻のようになっていた。


リナ「ふん!!」


窓の外の景色に視線を移すリナ。


(リナ「死ねばいいのに・・・」)


そう、心の中で呟いていた。



・・・ ・・・。


しばらく高速を走っていた車は一般道路へ降りる。


リナ「どこへ?」


リナが運転手に声をかけた。


江浜「あぁ・・・行く場所は決まっている」


言いながらハンドルをきる。その表情には、やや緊張した様子がうかがえた。



・・・ ・・・。


30分後、江浜はとある一軒家の車庫に車を止めた。


小さな庭がある古ぼけた民家。江浜は慎吾達に、家の中に入るよううながす。


慎吾「自宅・・・ですか?」


江浜「いや、ここは仕事場みたいな所さ。

    風水的に、悪い【気の流れ】はよってこない場所だ。


    それに周辺にも結界をはってある。悪い霊がよりつく事もない」


慎吾「へぇ~・・・」


慎吾が関心を寄せる。


リナ「風水ね・・・」


リナは特に興味がないようだ。


家の中に入ると・・・リナと慎吾は、綺麗なリビングに招かれる。


リナ「あの・・・ この後は?」


江浜「あぁ・・・ 今は、お互い自宅に戻るのはマズい。

    組織の人間が貼り付いてる可能性がある」


慎吾「確かに・・・」


江浜「私と娘で・・・ 糸見の裏にいる人物を調べてこようと思う」


リナ「ならば私も! 絶対役に立ちます!」


江浜はリナにSTOPのしぐさをする。


江浜「悪いが今回はダメだ。君には非常に感謝しているが・・・

    糸見の後ろには、ある危険な霊能者がいる。


    霊関係は我々の専門。君は部外者だ」


江浜は毅然と言い放ち、リビングの奥へと姿を消した。


リナ「・・・ ・・・」


リナはへの字口をして、おもしろくない表情を浮かべる。江浜と慎吾に加え、あんずまで救出したのは間違いなくリナのおかげだ。


リナには結果を出したという自負がある。今なら糸見だろうがその裏にいる霊能者だろうが、負ける気はしない。


慎吾「・・・ ・・・」


察した慎吾が声をかける。


慎吾「今は・・・江浜さんに任せましょう・・・」


リナは慎吾を睨み付けた。


リナ「あんたさぁ・・男のくせに何よ!

    ただ捕まって、私に助けられて・・・

 

    あんずちゃんの救出でも、あんた・・・

    作戦たてただけで、何も動いてないでしょ!」


途中で言いすぎたと思ったリナだが、慎吾への不満は止まらない。


リナ「挙げ句、あんずちゃんに見とれて・・・

    もうちょっと男らしくできないの!? 情けないわ!!」


慎吾「・・・ ・・・」


リナの言葉は深く慎吾の心を突き刺す。


慎吾「・・・」


何も言い返せなまま、暗い顔をした。


慎吾「すいません。僕が情けないばかりに・・・」


リナ「全くよ!!」


意地を張り通したリナは、腕組みをしたまま慎吾に背を向ける。


慎吾「・・・ ・・・」


2人の間に、重たい空気が流れた。



・・・ ・・・。


しばらくすると江浜が現れる。黒のレーシングスーツのような物を身にまとっていた。


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾の視線に気づいた江浜が声をかける。


江浜「仕事着さ。動きやすくてね」


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾の視線は、江浜の後ろから現れたあんずに移った。彼女もまた、父親と同じ仕事着を着ている。体にぴったりまとわりつくその出で立ちは、あんずの美しいボディラインを際だたせていた。


見とれていた慎吾だが、あんずが振り向いた際反射的に顔をそらし顔を赤らめる。


リナ「・・・ ・・・」


その様子を見ていたリナは、さらにへの字口をとがらせた。


親子2人はリュックを背負い襟を整える。



その時だった。



江浜「・・・ ・・」


江浜が何かに反応するように窓の外を見た。


あんず「・・・ ・・・」


あんずもすぐに窓の外を見る。


江浜「・・・ ・・・」


あんず「・・・ ・・・」


親子は緊張の表情を見せた。


慎吾「ど、どうかしました?」


親子の視線の先を見ながら、慎吾が質問する。


江浜「・・・ 囲まれている・・・ 」


そう言うと部屋中のカーテンを閉め始めた。


リナ「え!? 悪霊は入ってこれないんでしょ!?」


あんず「霊じゃなく・・・ 人間に・・・囲まれている・・・」


あんずが小さな声で応える。


リナ「じゃ、じゃぁ・・・

    銃を持った連中が、追いかけてきたっての!?」


江浜「この場所は悟られてないはず・・・何故!?」


慎吾「・・・ ・・・」


今日を振り返る慎吾。


(慎吾「確か・・・ あんずさんは手ぶらだったし、僕は・・・」)


はっと何かに気づいた表情をする。


(慎吾「あのレプリカの銅板・・・?」)


スタジオから手にしていた銅板を見返す慎吾。


慎吾「・・・ ・・・」


銅板の真横に小さな穴を発見した。


その小さな穴を覗くと・・・穴の向こうで、赤い小さなランプらしきものが点滅している。


慎吾「ど、銅板に・・・ 多分、追跡装置らしきものが・・・」


真っ先にリナが反応した。


リナ「全く!! あんたどこまでドジなの!?

    ホントあんた・・・」


リナの言葉を制し、江浜が割ってはいる。


江浜「言い争う暇はない! 地下に抜け道がある!

    銅板は置いて逃げるぞ!」


慎吾「でも、この銅板には埋蔵金のありかが・・・」


リナ「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!!

    もう! 世話がやけるったらありゃしない!!」


携帯を取り出したリナは、銅板の表と裏を素早く携帯写メで撮った。


リナ「ほら!これで満足!? 銅板置いて、すぐ逃げるわよ!」


イライラの絶頂に達しているリナ。それでも銅板の写メを撮ったのは・・・少なからず慎吾の事を思っての行動だった。




ズキューン、ズキューン!!


玄関先から銃声が聞こえた。



江浜「ここだ! 急げ!」


江浜は地下へと通じる階段に皆を誘導する。


(リナ「また・・・ 逃げるの・・・?」)


TV局から逃げ、あんずのいた事務所から逃げ・・・そして今また、逃げようとしている。


リナ「・・・ ・・・」


不満を感じながら、階段を降りるリナ。



慎吾が江浜の横を通り過ぎようとした時だった。


江浜「慎吾君、これを」


江浜は、拳大こぶしだいの丸い石を慎吾に渡す。


慎吾「これは?」


江浜「パワーストーン。だが、説明は後。まずは逃げてから」


4人は地下へと降りていくと、そこはガレージに通じていた。すでに外への扉が開いており、光が差し込んでいる。


江浜「よし。ここに追っ手はいないな・・・」


ガレージ中央、年代物の車が1台あった。リナはそれに乗り込もうとする。

それを見た江浜がすぐに声をかけた。


江浜「それじゃない! ここだ!」


江浜は車の横に置いてある、2台のバイクを指さす。


リナ「バ・・・・バイク?」


江浜「リナ君は私の後ろ、慎吾君はあんずの後ろだ!」


リナ「な・・・?」


江浜「ここは二手ふたてに分かれるのがセオリー。さぁ乗って!!」


そう言うと江浜は慎吾とリナにヘルメットを渡した。

江浜は左のバイク、あんずは右のバイクに乗り込む。


言われた通りリナは江浜の後ろに乗り、メットをかぶった。


リナ「・・・ ・・・」


ふと横を見ると・・・申し訳なさそうに、あんずの後ろに乗る慎吾が視界に入る。

あんずの腰におそるおそる手を回す慎吾の表情は、ヘルメットのせいでわからない。


リナ「・・・ ・・・」


モヤモヤした感情を抑えつつ、リナは江浜の腰に手を回す。


江浜「先にいくぞ!」


江浜とリナを乗せたバイクは、ガレージの扉を勢いよく駆け抜けた。



あんず「もう少し強く握ってください」


小さな声であんずが慎吾に声をかける。


慎吾「う、うん・・・」


慎吾はあんずの後ろから腰に手を回し、お腹の方でぎゅっと手を握った。


瞬間、あんずはアクセルを全開で踏み込み・・・父のバイクに追いつかんと急発進する。



パン! パーン!!



直後、数発の銃声が鳴り響いた・・・。




             (第26話へ続く)

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次回予告


またしても銃を持った連中から逃げる事になる4人。

リナは持っていた防犯道具で追っ手に応戦。


あんずと慎吾のバイクには、糸見が迫る。

追っ手を振り切ったと思った2つのバイクだが・・・


今回の黒幕である、霊能者が立ちはだかる。


次回 「 第26話  黒  幕  」

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