第24話 銃 撃
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慎吾のスピリチュアル事件簿 First season
「徳川埋蔵金の謎」
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前回までのあらすじ
2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。
収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。
リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。江浜は自身の娘を助けるべく、行動を別にしようとするが、慎吾とリナもついてくる。
江浜の娘・あんずが監禁された事務所に辿り着いた3人。
慎吾の立てた作戦で、リナが事務所に侵入。あんずを連れ、トイレの窓から脱出を試みようとするが・・・その窓には鉄格子がかかっていた。
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第24話 銃 撃
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慎吾「ちょっと遅いですね・・・」
江浜「あぁ・・・」
事務所の隣のビルで身を隠している慎吾と江浜。リナとあんずの2人が出てくるのを待っていた。
慎吾の作戦はこうだ。
あんずの監禁されている事務所にデリバリーされるピザを、リナが横取りする。そして配達員を装ったリナが事務所に入り、トイレを借りる。
江浜は娘とコンタクトを取り、トイレに向かわせる。
小さな建物のトイレは、その構造上、外へ通じる窓がある。トイレでリナとあんずが合流し、トイレの窓から外へ脱出する。
だが・・・
リナ「・・・ や・・・ ヤバい・・・」
第1の誤算は・・・あんずの見張り役の男がトイレの中、個室の前にまで来てしまった事。これは、リナがその男をスタンガンで撃退する事で突破。
第2の誤算は、逃げる予定の窓に鉄格子がかかっていた事。両手で鉄格子を前後に揺さぶるも微動だにしない。
そしてリナ達が気づいていない第3の誤算は・・・糸見から事務所へ連絡が入ってしまった事。連絡を受けた黒ずくめの男達は、トイレに向かっていた。
リナ「ど・・・ どうする・・・?」
あんずは個室の前で足をガクガクし、ただ立ち尽くしている。それを横目で見たリナ。
リナ「・・・ アテにならないってわけね・・・」
リナは一直線にトイレの出入り口に向かう。スタンガンのスイッチをONにすると、迷わずドアノブに押しつけた。
男「ぐぁ!?」
反対側からトイレのドアを開けようとした男が、ドアノブを通して感電する。
ドアノブを必死に離そうとするが・・・筋肉が硬直して意志とは反対にドアノブを強く握ってしまう。
男「ぐぐぐぐ・・・」
数秒後、男は失神した。この日リナが倒した4人目の男である。
しかしすぐに・・・事務所の奥から、糸見の連絡を受けた数名の男達がかけよってくる。
リナ「ちょっと、あんた!!」
ドアの向こうの足音を確認したリナは、大きな声であんずに声をかけた。
あんず「は・・・はぃ・・」
小さな声で応えるあんず。だがその両手足は、恐怖で小刻みに震えている。
リナ「そこに掃除用具があるでしょ!
洗浄剤とかあるはずだから取って! 渡して!」
言いながらリナは、目の前にあったバケツを手にした。それを持って、手洗い場まで走っていき・・・蛇口をひねると、バケツに水を入れる。
あんず「あ・・・」
リナ「早く!! マジやばい状況だから!!」
あんず「は、はい・・・」
リナにせかされたあんず。奥にあるトイレの清掃用具入れから、ボトルに入った洗浄剤を見つけた。すぐにリナの元へ走っていき、それを渡す。
リナ「・・・ ・・・」
ボトルを渡されたリナはラベルを確認した。
リナ「ナトリウム・・・よし!!」
容器のキャップを開けると、リナはバケツの水に洗浄剤を混ぜる。手早く作業しながらも、あんずに声をかけた。
リナ「あんたお父さんと話せるんでしょ!
早く【外に出られない!】って伝えて!!
【すぐに助けにこい】って!!」
あんず「あ・・・は、はい」
小さな声で返事をすると、あんずは目を閉じ・・・意識を集中する。
(あんず「お父さん・・・ お父さん!!」)
・・・ ・・・。
娘の声を受け取った江浜はすぐに言葉を返す。
(江浜「どうした!?」)
(あんず「窓から出られない・・・鉄格子があって・・・」)
(江浜「わかった! すぐに行く!」)
慎吾「どうかしました!?」
江浜の様子に気づいた慎吾が声をかける。
江浜「トラブルだ・・・ 事務所の裏に行くぞ!
見つからないよう気をつけろ!」
慎吾「わ、わかりました!!」
・・・ ・・・。
リナは洗浄剤を混ぜたバケツの水を、入り口の扉の下から反対側へとぶちまける。
リナ「・・・ ・・・」
扉の向こうから複数の足音が聞こえてきた。リナはスタンガンをONにして、ドアノブにそれを押しつける。
・・・ ・・・。
事務所の1階にいた4人の男。糸見の指示を受け、トイレに駆けつけると・・・トイレのドアの前で、一人の男が倒れていた。江浜の娘を見張っていた男だ。
男「やろう・・・。さっきのピザ屋だな!!!」
先頭の男がトイレの中にいる人物の正体を突き止め、真っ先にドアノブに手をかける。
バチバチッ!
瞬間、冬場の静電気とは比較にならない程強烈な電気が流れた。
男「ぐぉ!?」
男は反射的に手をひっこめ、尻餅をつく。
・・・ ・・・。
バチバチッ!!
ドアノブの音を確認したリナ。すぐさま地面にスタンガンを突き刺した。
電気はさきほどぶちまけたバケツの水を伝わり、反対側にいる男を感電させる。
男「ぐぁあああ!!!」
扉の向こう側から、悲鳴が聞こえた。
リナ「まだ何人かいる・・・ 1分も持つか・・・」
この時、扉の向こうの男が・・・ 銃を取り出している事に、リナは気づかない。
・・・ ・・・。
慎吾と江浜は事務所の裏にたどり着いた。壁1枚を隔てて、向こう側にはリナとあんずのいるトイレだ。
慎吾「鉄格子・・・」
(江浜「あんず! 中の状況は!?」)
(あんず「リナさんが、扉の向こうの相手をせき止めているところ・・・
でも、もうす・・・」)
パーン! パーン!!!
トイレの内外にいる全てに、銃声が聞こえる。
リナ「ちょ・・・」
2発の銃弾が、扉を突き抜けリナの横の壁にめり込んだ。
リナ「いよいよヤバいわね・・・」
リナはすぐにヘアピンをはずし、ポニーテールを止めているシュシュもはずす。
スタンガンのスイッチをヘアピンで固定し、常にON状態にすると・・・ 横にあったモップの先にスタンガンをシュシュでくくりつけた。
そして扉の横に身を隠し、銃弾を避けつつドアノブと地面の水に電気を流す。扉を死守しながら、あんずに大声をかけた。
リナ「こっちはもう限界!! お父さんに何とかしてもらって!!」
(慎吾「残るは強行突破しかない・・・」)
横を見ると、江浜が壁に向けて拳を垂直にあてている。
(慎吾「気功・・・?」)
江浜「・・・ ふ~ ・・・ 」
呼吸を整え、壁に添えた拳に意識を集中する。
江浜「唵!!」
かけ声と共に、手のひらからエネルギーを流し込んだ。
しかし・・・
江浜「・・・ ・・・」
壁の表面が少しくぼんだ程度。
江浜「この壁の厚さでは・・・
うち破るには10分かかる・・・」
パーン、パーン!!!!
さらに銃声が聞こえた。
(あんず「もうすぐ侵入されそう!!」)
江浜は一瞬悩んだ後、娘に言葉を送る。
(江浜「あんず、壁に胸の高さで手のひらをあてろ! 急げ!!」)
あんずは言われた通り、壁に手のひらをあてた。
江浜は意識を集中し、娘と反対側から壁に拳をあてる。
そして調節するように・・・左下へと拳を移動させた。
慎吾「な、何を・・・?」
江浜「娘も鍛えてある!」
(江浜「あんず、1,2の3で発勁だ!」)
(あんず「わ、わかった・・・」)
江浜親子は静かに目を閉じる。
(江浜「1、2の・・・ 3!!」)
江浜「唵!!!」
あんず「唵!!!」
2人は同時に気合いのこもった声をあげた。体内で練った氣を、あんずは手のひらを通し・・・江浜は拳を通し、エネルギーとして一気に放出する。
ビキビキビキ・・・
瞬間、壁に無数のヒビがはしった。
慎吾「な!?」
江浜「慎吾君、目を閉じておけ。次で壁が砕け散る!」
慎吾に指示すると、江浜はすぐまた娘に言葉を送る。
(江浜「あと1回! いくぞ! 1,2の・・・3!!」)
江浜「唵!!!!」
あんず「唵!!!!」
ドッッッッッゴン!!! ガラガラガララ・・・
瞬間、鈍い音と同時に・・・2人を隔てた壁が一気に粉砕した。
あたりを多くの粉塵が舞い散る。
慎吾「す・・・すごい・・・」
左腕で顔をかばいながら、慎吾が砕けた壁を見た。
そこには人一人が余裕で通れる壁穴が開いていた。
・・・ ・・・。
リナ「・・・ ・・・」
抜け穴を確認したリナ。すぐにあんずに声をかける。
リナ「あんた先行って! すぐ私も行くから!」
言われたあんずは、壁穴を通り抜け・・・ 外で待機していた父と抱き合った。
あんず「お父さん!!」
江浜「あんず!!」
強い抱擁をかわした後、江浜はすぐに娘の両肩を握る。
江浜「まずはここを逃げてからだ」
あんずが無言で頷いた直後、リナも壁穴を通ってきた。
慎吾「・・・ ・・・」
リナの後ろに、銃を持った数人の男も見える。
リナ「車どっち!?」
再会を味わう余裕もなく、慎吾に声をかけた。
慎吾「こ・・・ こっちです!」
いつものポニーテールとは違うリナの髪型・・・とまどいながらも、慎吾が応える。
江浜「急げ!!」
合流した4人はすぐに事務所から離れるべく、走っていった。
リナ「・・・ ・・・」
去り際にリナは、ON状態のスタンガンをトイレに投げ入れる。
男「ぐわぁあ!!」
男「ぐぅう!!」
数名の男の悲鳴が聞こえた。
慎吾「な、何が!?」
走りながら慎吾がリナに聞く。
リナ「壁抜ける前に、洗浄剤混ぜた水を床にも壁にもぶちまけてきたのよ!
あのヌルヌル状態、靴以外に体が触れたら高圧電流の餌食よ!」
慎吾「あ! 水は電気を通すってヤツ!?」
リナ「バカ!! 水は電気通さないわよ!!」
慎吾「え!? じゃぁ・・・」
パーン、パーーン!!
慎吾「わ!!」
トイレを抜け出した1人の男が発砲してきた。
江浜「こっちだ!」
ビルの裏に隠れるように止めておいた車・・・すでにエンジンはかかっている。
駆け込むように4人が乗り込むと・・・運転席に座った江浜は、迷わず車のアクセルを踏み込み急発進した。
数発の銃弾を逃れた車は、大通りに出る。
リナ「はぁ、はぁ・・・ 何とか・・・」
慎吾「はぁ・・・ はぁ・・・」
あんず「・・・ ・・・」
江浜「・・・ ・・・」
安堵のため息をつく4人。
しかし・・・
銅板の追跡装置が作動している事に・・・
気づく者はいなかった。
(第25話へ続く)
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次回予告
あんずの救出に成功した一行は、江浜の仕事場に移動し態勢を整える。
しかし、銅板に仕組まれた追跡装置により追っ手の影が迫っていた。
再び追っ手から逃げるため、動き出す4人だが・・・
その時、江浜は慎吾に・・・慎吾の運命を変える物を手渡す。
次回 「 第25話 パワーストーン 」
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