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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第2章  動き出す影
24/45

第23話  想定外

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


リナはTV局に侵入し、慎吾を救出。江浜は自身の娘を助けるべく、行動を別にしようとするが、慎吾とリナもついてくる。


江浜の娘・あんずが監禁された事務所に辿り着いた3人。

慎吾の立てた作戦は・・・ リナをそこへ送り込むことだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第23話  想定外


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

リナは事務所の中に堂々と入っていった。右手には、先ほど配達員から受け取ったピザを持っている。


リナ「・・・ ・・・」


中に入ると、目の前には真っ直ぐな廊下。左右に2部屋ずつあるのが見えた。

部屋の配置を記憶しながら、リナは元気な声を出す。


リナ「ちわーっす!! ピザーリです!

    マルゲリータ、お持ちしました-!!」


待つこと数秒・・・左奥の部屋から、いかつい黒ずくめの男が出てきた。


(リナ「絶対この暴力団、みんな黒ずくめよね・・・

     まぁ、敵がわかりやすくていいけど・・・」)



・・・ ・・・。


リナが事務所の中に入るのを確認した慎吾は、江浜に合図を出す。


慎吾「今です・・・」


江浜「了解」


江浜は神経を集中して、再び娘に声を送る。


(江浜「いいか、あんず。

     トイレに行きたいと、見張り役の男に言うんだ。


     その部屋を出たら、合図をくれ」)


(あんず「わかった・・」)


深呼吸したあんずは、見張りの男1人に声をかけた。


あんず「あの・・・ おトイレ・・ お願いします・・・」


恥ずかしそうに懇願する。携帯をいじっていた男がめんどくさそうにため息をつき、手錠のカギをポケットから取り出した。


あんず「・・・ ・・・」



・・・ ・・・。


リナ「3000円です!」


男「高くないか?」


リナ「原材料の高騰ってヤツでして。ピザ業界も不況なんですよ!」


男は怪訝な顔でリナを見ながら・・・財布から取り出した3000円をリナに渡す。


男「ところでお前・・・ さっきから気になっていたんだが・・・」


リナ「・・・ ・・・」


ゴクリと唾を飲み込んだリナ。


男「なんでお前、私服なんだ? いつもの制服はどうした?」


リナ「あ、えーっと。日曜日はノー制服DAYなんですよー」


口から出任せを言うリナ。


リナ「仕事をきっちりすれば文句ないでしょ!!」


男「ま、それもそうだな」


ピザを受け取った男は、部屋に戻ろうとした。


リナ「あ、ちょっと!!!」


男は振り返る。


男「なんだ? ドリンクサービスでもあったか?」


リナ「いえ・・・すいませんけど・・・

    トイレ、貸してもらえます?」


男は玄関の外に向かって指さした。


男「外出て右に30m歩けば、コンビニがある。そこ行きな」


(リナ「ちょっと・・・トイレぐらい貸しなさいよ!!」)


このままでは、作戦が頓挫してしまう。


リナ「あーん! 漏れちゃいそうなの! お願い! 1分だけ!!」


必死に「らしからぬ」セリフを言った。


(リナ「あとで慎吾・・・ どついてやる!!」)


男は頭をかきながら、


男「っち!」


廊下の奥を親指で指さす。


男「廊下の右奥だ。さっさと済ませて帰れよ」


リナ「は~い!」


リナはさっと廊下の右奥に消えていった。


江浜の情報通り、1階右奥にトイレがある。


(リナ「・・・。ホントにあの親子、会話してた・・・?」)


霊能力に懐疑的だったリナだが、少しずつ・・・全否定から、半信半疑になりつつあった。


リナ「・・・ ・・・」


トイレの扉を開け、中に入ると・・・


(リナ「誰も・・・ いないわね・・・」)


トイレの中が無人である事を確認する。男性用の白長の縦置き便器が3つ。奥に個室が3つ見えた。


リナ「・・・ ・・・」


そしてさらに奥には・・・


(リナ「よかった。あったわ・・・」)


リナはこの作戦に必要な【ある物】を確認し、一番奥の個室に入り込む。カギをかけ、心臓の鼓動をおさえつつ・・・その時を待った。



・・・ ・・・。


糸見「・・・ ・・・」


第5スタジオに到着した糸見は、違和感を覚えた。


入り口に見張りの男がいない。あわてて小道具部屋に走っていく。

部屋の前にいるはずの見張りもいない・・・。


糸見「・・・ な、何が・・・」


小道具部屋に入ると愕然とした。3人の見張り全てが気絶し、横になっている。


糸見「あいつら・・・」


糸見はすぐに携帯電話を取りだし、電話をかけた。



・・・ ・・・。


リナ「・・・ ・・・」


個室の中で待機するリナ。


ガチャッ


トイレの扉を開く音が聞こえた。


(リナ「きた・・・」)


足音が個室へと向かっていき、リナの隣の個室へと入っていく。そして・・・


トントン


リナの個室に【合図】が伝えられた。


あんずはトイレに向かう途中、父から【声】の指示を受けている。指示された通り、奥から2番目の個室へ入り・・・隣の個室へ合図をしたのだ。


(リナ「さて・・・ こっから勝負! 行くわよ!!」)


バタン!!


リナは思い切って個室の扉を開けた。


リナ「!?」


瞬間ギョッとする。隣の個室の前に、黒ずくめの男が立っていて・・・目が合った。


リナ「あ・・・ トイレ借りてます。許可はとってます・・・」


黒ずくめの男はサングラスの奥からリナを凝視する。


男「・・・ ・・・」


言葉を発することはない。


(リナ「ちょっと・・・なんで、男がいるのよ!」)


予定では、見張りはトイレの中までは来ないはずだった。


リナ「・・・ ・・・」


出鼻をくじかれたリナ。とりあえず男の前を通り・・・入り口近くの手洗い場で、水を出す。


(リナ「女性のいる個室の前に立つなんて・・・最低な男ね・・・」)


手を洗いながら、リナは次の一手を考えた。


リナ「ちょっとー・・・!」


見張りの男に声をかけると・・・ 男は無言でリナの方に顔を向ける。


リナ「ちょっと、この手ぇ乾かすヤツ・・・

    温風器? 変な音すんだけど?」


男「・・・ ・・・」


男はリナを無視して、個室に視線を戻す。しかしリナも負けない。


リナ「ちょっとあんた・・・

    この機械、何とかしてくんない!? 


    絶対、壊れてるって!」


男はリナの方を向くことなく、完全無視を続けている。


(リナ「・・・ あの野郎・・・」)


バン!! ガコン!!! バンバン!!


突然リナは、温風器を力いっぱいたたき始めた。


リナ「絶対この温風器、おかしいって・・・」


ガシャン! バキッ!! 


力任せに温風器を叩くリナを見て、さすがに男も黙っていない。リナの所に近寄ってきた。


男「おい、こら! ここをどこだと思って・・・」


男がリナの肩に手をかけようとした瞬間、リナはそれをかわし・・・すでに電源をONにしてたスタンガンを、男の腹部に容赦無しに押しつけた。


男「ぐ!!? ぐぐ・・・ ぐぐぐ・・・」


男は全身の筋肉が緊張して、大きな声を出せない。しばらくして男は・・・気絶した。



・・・ ・・・。


糸見「江浜の娘は!?」


糸見は大きな声で、事務所にいる男に声をかけた。


男「あー・・・1分ほど前、トイレに行きましたが・・・」


糸見「急いで確保しろ!! 江浜が近くにいるかもしれん!

    必要なら、そこにいる連中全てで対応しろ!!」


携帯に向かって、大声で怒鳴る。


男「え? あ! はい! すぐに!!」


携帯を切った糸見は・・・


糸見「絶対、許さん・・・」


すぐに地下駐車場へと向かった。



・・・ ・・・。


カチャリ。


トイレの入り口のドアに鍵をかけたリナ。奥から2番目の個室に向かい、静かにノックした。個室からおそるおそる出てきた女性を見て・・・


リナ「・・・ ・・・」


ハッとする。


胸元まで伸びた黒くサラサラのストレートヘア。大きな黒い瞳に、小さな唇。化粧はしてないのに、自然と美しいオーラがにじみ出ている。


清楚な雰囲気とは対照的に、白いブラウスと赤いスカートは汚れが目立つ。2日間の監禁生活でのつらさが伝わってきた。


固まっていたリナが我に戻る。


(リナ「いけね・・・ 女に見とれるなんて・・・

     さすがイケメン江浜氏の娘ね」)


あんずを見つめた後・・・


リナ「私、リナ。ここを脱出するわよ」


目の前の美少女に、手を差し出した。


あんず「は、はい・・・」


あんずはか細い声で、リナの右手を握る。

リナはその小刻みに震える冷たい手を握り・・・ トイレの一番奥に連れて行った。


リナ「さ・・・ この窓から逃げるわよ」


自分の頭より、若干高い位置にある窓を開ける。


リナ「な・・・」


瞬間、リナの目が大きく見開いた。


リナ「て・・・ 鉄格子!?」


視線の先、窓のすぐ外には・・・わずか10cm間隔の鉄格子が縦に並んでいる。両手で鉄格子を握り、前後に力強く動かそうとするがびくともしない。


その時・・・


ガチャガチャ!!


トイレの扉を何者かが、ぶっきらぼうに開けようとしていた。


男「おい、こら!! カギかけやがって!! ここを開けろ!!」


ドアの向こうから大声で叫ぶ男の声が聞こえてくる。


リナ「・・・ や・・・ ヤバい・・・」


あんず「・・・ ・・・」


2人の少女は・・・


トイレの奥で、窮地に立たされた。



               (第24話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


トイレの窓から逃げる作戦は失敗。

そしてトイレの扉の向こうには男が・・・。


絶体絶命の中、リナは銃を持った男らに応戦する。

リナ達のピンチを察した江浜と慎吾。トイレの窓の反対側に駆けつけるが・・・


江浜の気功技を持ってしても、壁を打ち破る事は出来ない。

窮地の中、脱出するために・・・!?


次回 「 第24話  銃  撃  」

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