表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第2章  動き出す影
23/45

第22話  作  戦

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


何とか慎吾とコンタクトを取る事に成功したリナは、TV局に侵入し、慎吾を救出。江浜は自身の娘を助けるべく、行動を別にしようとするが・・・


結局、慎吾とリナもついてくる事になった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第22話  作  戦


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

江浜「・・・ ゴホツ・・・」


後部座席、リナの横に座っている慎吾。咳払いをした運転手の江浜に・・・


慎吾「江浜さん、1つ聞いていいですか?」


声をかけた。


江浜「何かな?」


慎吾「江浜さんの・・・

    あの、かけ声と共に手から何かを流すみたいなヤツ・・・


    あれって【霊能力】の1つですか?」


江浜は軽く笑う。


江浜「ふっ。あれは気功だよ、霊能力なんかじゃぁない。

    修行をすれば、誰だってある程度は扱えるようになる」


慎吾「気功・・・? って事は江浜さん・・・修行したって事ですよね?」


江浜「もちろん。私の家系は代々・・・

    悪霊などのトラブルから人を救う仕事をしている。


    仕事を遂行するには、心・技・体・・・全て必要だ。

    修行も仕事の一環さ」


慎吾「代々この仕事を?」


江浜「あぁ。世間は我々の事を、霊媒師だとか陰陽師などと呼んだりする。

    今はスピリチュアル・カウンセラーだがね。


    時代によって呼び方は様々・・・」


リナ「・・・ ・・・」


リナも江浜の話を聞いてはいるが・・・【霊】の存在や【霊能力】とやらには、否定的な見解を持っていた。



もっとも・・・ 


すぐにそれを認める事が起きるのだが・・・。



江浜「強靱な肉体に強靱な魂は宿る。私も若い頃はかなり鍛えたもんさ」


慎吾「では・・・直接僕の頭に話しかけてきたのは・・・?

    あれも気功の一種・・・?」


江浜は軽く首を横に振った。


江浜「いや。あれは私の魂で語りかけたんだ。

    そうだな・・・君らのいう幽体離脱に近い形かな。


    【霊能力】という言い方はあまり好きではないが・・・

     まぁ、そんなところだ」


慎吾「魂・・・ですか・・・」


江浜「・・・ ・・・」


ふと、江浜は慎吾を見つめた。


江浜「君は霊の姿を見たり、声を聞くことが出来るだろ?」


慎吾「え? あ・・・はい・・・」


見抜かれている。


慎吾「さすがです・・・ね・・・」


江浜「あぁ、こういう仕事してるからね。

    能力のある人間はすぐにわかるものさ。


    だから君は・・・私の声を、すんなり聞き取る事が出来たんだ」


慎吾「・・・ そうでしたか・・・。すいません。

    頭の中が処理しきれないほど・・・


    内容が多すぎて・・・」


江浜「そうだな・・・時間がある時にまた色々教えてあげよう」


そう言うと江浜は車を路肩につける。


慎吾「着いたんですか・・・?」


江浜「あぁ・・・」


車の右手・・・江浜は道路の向こう側にある建物を見つめた。


リナはパソコンをいじりながら確認する。


リナ「間違いない・・・ あの建物です。

    江浜さんが見た・・・電話番号の発信源は」


3人の視線の先には・・・


2階建ての事務所があった。外からは全く様子がわからない。



リナ「どうやって娘さんを・・・」


江浜は人差し指を一本たてて、リナの前にさしだした。


リナ「 ? 」


静かにという合図である。すると江浜は建物を睨み付け、集中力を高める。


江浜「この程度の距離なら・・・ 娘と直接会話できるんだ」


(慎吾「さっきの・・・ 魂で語るってヤツ・・・?」)


江浜は目を閉じ、集中力をさらに高めた。


慎吾「・・・ ・・・」


リナ「・・・ ・・・」


慎吾とリナはそれを静かに見守る。



(江浜「あんず・・・ 聞こえるか?」)




・・・ ・・・。



江浜あんず。


スピリチュアル・カウンセラー江浜の娘は、事務所の2階にいた。


右手を手錠につながれ、手錠の反対側は部屋の隅を縦に通る水道管につながれている。


2日前。


帰宅途中、とある男に誘拐されたあんず。


あんず「・・・ ・・・」


食事や睡眠は与えられたものの、精神疲労による衰弱の色は隠せない。


部屋の中にいる見張りは2人。1人は携帯をいじり、もう1人は小さなTVを見ながら笑っている。


(「あんず・・・ 聞こえるか?」)


ふとあんずは脳に直接語りかける声をキャッチした。男2人を一瞥した後、静かに目を閉じ集中する。


(あんず「お父さん・・・」)



誘拐から2日・・・あんずは見張りに気づかれぬよう、会話を始めた。


(江浜「居場所は突き止めた。今、事務所の外だ。道路の反対側にいる。

     お前が2階にいるのはわかるが・・・


     くわしい状況を教えてくれ」)


(あんず「2階の奥の部屋。男2人が見張ってる・・・」)



江浜「娘は2階の奥。見張り役は2人」


江浜は、慎吾とリナに情報を伝える。


慎吾「1階には何人いるか聞いてください」


(江浜「1階にいる人間の数はわかるか?」)


(あんず「わからない・・・でも3人以上はいると思う。

      時々、声が聞こえるの」)


江浜「1階には3人以上で、くわしい数はわからないそうだ」


慎吾「ここ最近の状況で、気づいた事を聞いてください」


積極的に江浜に声をかける慎吾。リナが横から口を出す。


リナ「ちょっとあんた・・・何であんたが仕切ってんのよ?」


慎吾は真剣な表情で応えた。


慎吾「誘拐された人物を連れ戻すケースは基本3つ。

    1つは身代金。


    もう1つは、相手側の要求する別の人質との交換とか。

    いわゆる、人質に替わるものとの取引です」


リナ「今回の場合、それはありえないわね・・・」


慎吾「だとすると3つめ。中に侵入して助ける・・・です」


リナ「・・・ 簡単に出来るとは思えないわ・・・」


慎吾「強行突破は・・・武器に乏しいので却下。

    だとしたら・・・


    電気技師とかを装って、中に侵入ってのが妥当です・・・」


リナは怪訝な顔をして慎吾に聞く。


リナ「なんで、あんたそういうの知ってるの?」


慎吾「アガサクリスティとか、イアン・フレミングとかが好きで・・・」


リナ「アガサクリスティは聞いた事あるけど・・・

    誰? イアン何とかって?」


慎吾「007の作者ですよ。世界一、有名なスパイ小説の」


リナ「・・・ ・・・」


若干、リナの表情が曇った。


慎吾「それに、吾郎先生・・・高校の時の担任が色々教えてくれて・・・

    数学の先生ですが、そういうのくわしいんです」


リナ「・・・ あんたが数学できない理由・・・

    わかった気がするわ・・・」


リナのあきれ顔をよそに、慎吾は真剣に江浜を通じて中の情報を探ろうとする。


慎吾「トイレや食事など、どうするかも聞いてください」


江浜は慎吾の指示通り・・・娘から中の情報を聞き出していった。



・・・ ・・・。


江浜「状況はこうだ。

    娘は事務所の2階奥の部屋にいて、手錠でつながれている。


    部屋の見張りは2人。

    1階にの人数は定かではないが、3人以上はいる」


運転席の江浜は、2人に説明を始めた。


リナ「・・・ ・・・」


半信半疑のリナ。


江浜「トイレに行くときは、手錠をはずし・・・見張りと1階のトイレへ。

    食事は基本出前だそうだ。


    20分ほど前にデリバリーピザを頼んでいる」


慎吾「なるほど・・・トイレの場所は?」


江浜「・・・ 1階の玄関から見ると、右奥だそうだ」


慎吾「わかりました・・・」


慎吾は軽くため息をついて目を閉じ・・・車の天井に顔を向け、何かを考える。


(慎吾「吾郎先生なら・・・? ジェームズボンドなら・・・?」)


かっと慎吾は目を見開いた。


慎吾「作戦があります・・・」



・・・ ・・・。


午後1時過ぎ。


楽屋のソファーで横になっていた糸見が目を覚ました。


時間を確認しながら、小さなあくびをする。


(糸見「少しばかり、寝過ぎたか・・・」)


糸見は携帯電話を手にし、第5スタジオの見張りの男に電話をかけた。


トゥルルル・・・  トゥルルル・・・  トゥルルル・・・


糸見「 ? 」


第5スタジオの小道具部屋では・・・


江浜にのされた見張り役の男3人が、気を失ったままだ。


糸見「・・・ ・・・」


誰も携帯を取らない事を不審に思い、すぐに楽屋を後にして第5スタジオへ向かった。



・・・ ・・・。


リナ「・・・ ・・・」


江浜の娘あんずが監禁されている事務所の前を歩いていたのは・・・リナ。慎吾のたてた作戦を実行するためだ。


慎吾「顔、われてないの・・・リナ先輩だけですから・・・」


男2人が裏方に回るのは、解せないものがあるが・・・


(リナ「確かに私が動く方が・・・

     江浜氏の娘を助ける確率は高くなる」)


自分が先陣を切る事には納得していた。


リナ「ふん・・・ 上等よ!」


ただ1つ・・・。この作戦に不安な点がある。


(リナ「本当に・・・ 江浜氏は、娘と会話したのかしら・・・」)


江浜が娘と会話した事に対しては、懐疑的だった。


リナ「・・・ ・・・」


でも今はそれを信じて動くしか道はないと判断し・・・ 事務所の前で立ち止まる。




しばらくするとデリバリーピザの配達員がバイクでやってきた。


バイクは事務所の手前の道路で止まり、どう見てもバイトであろう若い男がピザを取り出そうとする。


慎吾「来ましたね・・・」


江浜「あぁ・・・」


2人は、事務所の横にあるビルの物陰に隠れていた。


慎吾「リナ先輩・・・ 頼みます・・・」



ピザをバイクの後ろから降ろした配達員にリナは声をかける。


リナ「ちょっとー。ピザ遅いじゃない!」


さえない顔をした配達員の男は、いきなり声をかけられ、驚いた表情を見せた。


配達員「え!? あ、あぁ・・・ すいません・・・。

     で、でも・・・ 時間通りですよ・・・?」


弱気に応える配達員を見て、リナは強気になる。


リナ「世の中タイムイズマネー! 代金、いくらだっけ?」


配達員「えっと・・2630円です」


リナ「はい、3000円! おつり370円!早く!!

    タイムイズマネー!!」


配達員はリナの迫力におされて、あわてておつりを取り出した。


リナ「はい、お疲れ! 次はもう少し早く配達してね!!」


配達員の背中を力強く叩くと・・・そのまま男は、リナから逃げるように去っていく。


リナ「・・・ ふん。まずは1つクリア・・・」


ピザを手にしたリナ。事務所の方へ向きを変えると・・・入り口へ向けてて歩いて行った。


リナ「・・・ ・・・」


銃を持っているであろう男が数人いる事務所に近づくにつれ、心臓の動悸が明らかに早くなっていく。


ここに来て少し後悔の念を抱き始めたが・・・


(リナ「えぇい! 迷いは禁物! 絶対助けてやる!!」)



リナは事務所の玄関に手をそえた。深く深呼吸をして・・・


リナ「・・・ ・・・」


扉を開き、事務所の中へ入っていく。





その頃・・・


糸見は第5スタジオの扉のドアに手をかけていた。






               (第23話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


ピザ配達員を装って、事務所の中に侵入したリナ。

監禁されていたあんずと合流する事に成功する。


その頃糸見は、第5スタジオに入り、江浜と慎吾が脱出した事を知った。

慌てて、あんずを監禁してる事務所に連絡する。


そしてリナとあんずは・・・窮地に立たされた。


次回 「 第23話  想定外  」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ