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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第2章  動き出す影
22/45

第21話  機 転

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


慎吾の身を心配したリナは、何とか慎吾とコンタクトを取る事に成功。慎吾救出に向け、TV局へと向かった。


男2人をスタンガンで倒し、江浜の協力も得て、何とか慎吾を解放。TV局内から脱出するため、策を練ってあるという。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第21話  機 転


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

リナ「・・・ ・・・」


リナは黒ずくめの男のポケットから携帯を取り出すと、素早く操作し始めた。


江浜「何をしてる?」


リナ「いや、ちょっと・・・」


言いながらも、男の携帯を操作し続ける。


江浜「持ち出しはしないほうがいい。GPSで追跡されるぞ」


リナ「わかってます・・・」


しばらくして、携帯を男のポケットに戻した。

ついさっきまで手を縛られていた慎吾は、初めて目の前の銅板を手にする。


慎吾「・・・ ・・・」


挿絵(By みてみん)


それを見たリナが反応した。


リナ「それ! それよ! 私が見たの!!」


番組収録でチラッと見えた・・・対称図形と文字に間違いないと確信する。


慎吾「えぇ。これはレプリカですが・・・

    おそらく本物も、同じだと思います。


    この図形に、何か意味があると思うのですが・・・」


江浜「今は、ここを脱出するのが先だ。糸見が来る前に・・・」


リナ「ちょ・・・ 糸見!?」


この時リナは、初めて慎吾の拉致に糸見が関わっていると知った。


リナ「あんた拉致したの、あの糸見プロデューサーなの!?」


慎吾「えぇ・・・ 」


銃を向けられた事は黙っておく。


リナ「やっべー・・・。このスタジオ入る時、そいつの名前を使ったのよ。

    まさか、【敵側】の人物だったとは・・・。


    じゃぁ私、めちゃめちゃヤバかったんだ・・・」


江浜「君は運がいい。だがそれも立派な能力。

    君のおかげで我々は窮地を脱したのだから」


リナ「どこに【敵】がいるか・・・わからない世の中ね」


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾は銅板をじっと見ている。


リナ「その銅板の裏も気になるけど・・・まずはここを出るわよ!」


江浜「手をうっていると言ってたが・・・?」


リナは元々、TVの中の江浜は気に入っていた。だが・・・


リナ「・・・ ・・・」


江浜と黒ずくめの男らが慎吾を取り囲んだイメージが払拭できない。それ故、江浜の目を見るのに抵抗があった。


リナ「私は・・・顔われてないから先頭を行く。

    2人は後ろからついてきて・・・」


男2人は無言で頷く。まずスタジオを出たのはリナ。長い廊下の左右を確認し・・・


リナ「大丈夫。出てきて」


慎吾と江浜が、警戒しながら廊下に出た。リナは迷路のように複雑な局内を、迷う事無く右へ左へと2人を誘導する。


リナ「ストップ!」


突如リナは2人を制止させ、柱に身を潜める。


江浜「見張りか?」


リナ「いえ・・・」


リナの視線の先には・・・大好きなイケメンアイドルグループ【山嵐】がいた。顔見知りの松浦の姿も見える。


ホントはすぐにでも握手を求めたいところだが、今は慎吾と江浜をTV局から出すのが先。


リナ「・・・ ・・・」


声をかけたい衝動にかられながらも、【山嵐】がスタジオに入っていくのを見届けた。


慎吾「・・・ ・・・」


そんなリナの様子を見ていた慎吾。リナが私欲を捨てて、男2人を逃がそうとしている。慎吾は自然と言葉が口に出た。


慎吾「リナ先輩・・・本当にありがとうございます」


リナは廊下の先を見つめながら応える。


リナ「それは、無事局を出てから言って」


慎吾「はい・・・」


しばらくして・・・3人は周りを警戒しつつ移動を始めた。


リナ「あのゲートを通れば、外に出られる・・・」


ゲートを見た瞬間


慎吾「あ!」


慎吾が声をあげた。


江浜「どうした?」


最後尾を歩く江浜が声をかける。


慎吾「僕・・・リュックごと糸見さんに取られたから・・・

    入局許可証、持ってないんです・・・」


慎吾が手にしているのは、銅板のレプリカだけだった。


リナ「しまった・・・そこまで想定してなかった・・・」


TV局内各所にゲートが設けられていて、そこを通るには入局許可証が必要である。許可証を持たずにゲートを通ると、警告音が鳴り、近くで待機している警備員がかけよってくるシステムだ。


入局許可証にはICチップが埋め込まれていて、それさえ持っていれば普通にゲートを通り抜けられるのだが・・・


慎吾「どうしよう・・・」


リナ「ゲートにかかったら、警備員だけでなく・・・

    黒ずくめの男までやってくる可能性あるわね・・・


    う~ん・・・」


江浜が胸の内ポケットをまさぐり、自身の入局許可証を取り出した。


江浜「慎吾君、君はこれを」


それを慎吾に渡す。


慎吾「え? でも、江浜さんは・・・?」


江浜「まずは2人でゲートを通るんだ。大丈夫、私もすぐ行くから」


そう言うと江浜はリナと慎吾を先に行かせた。

2人がゲートを通るのを確認した江浜は、10数秒遅れてゲートに向かう。


リリリリリリリリリリ・・・


江浜がゲートを通った瞬間、警告音が派手に鳴り響いた。


すぐ横にいた警備員がよってくる。まずは警告音をSTOPさせ、それを鳴らした本人に尋問をしようとした。


警備員「あ・・・江浜さん! どうしました?」


江浜は携帯電話を耳にあてながら、言葉を返す。


江浜「緊急事態だ。ある政治家に悪霊が取り憑いている。

    早急に私が行かねばならない!


    入局許可証は、マネージャが持っていて・・・」


警備の規定では・・・入局許可証を持たない者は一度事務まで連れて行き、許可証を発行してから通過させる事になっている。


江浜「名前は言えないが、大物政治家だ。一刻を争う! 

    済まないが早急に向かいたいのだが!」


江浜はイライラしているそぶりを見せた。警備員は逡巡した後、江浜に口を開く。


警備員「わかりました。あなたの活躍は誰もが知っています。

     私の責任を持ってゲート通過を認めます」


敬礼のポーズをして江浜を通した。


警備員「是非、その政治家の方を救ってください!」


江浜は軽く笑い


江浜「あぁ、任せろ」


と、一言だけ口にしてゲートを通過。10m先にいるリナ達と合流した。


慎吾「さすがです・・・」


江浜「たいしたことはしてないさ。先を急ごう」


リナ「ここです」


リナが先頭に立ち誘導する。たどり着いた先は・・・エレベーター。


江浜「ここは・・・ 関係者専用の・・・」


慎吾「あ! このエレベーター・・・

    松浦さんのバッグ盗んだ犯人が利用した・・・」


リナ「ご名答・・・」


3日前、松浦のバッグを盗んだ犯人は・・・この関係者専用のエレベーターを利用して、地下駐車場から逃げた。リナはそれと同じルートをたどっている。


慎吾「模倣犯ですね! さすがリナ先輩!」


3人はエレベーターに乗り込んだ。


リナ「ちょっとあんた・・・ 模倣犯はないでしょ! 

    安全にあんたを逃がそうと考えたルートなのよ!」


ちょっとイラッときたリナが声を荒げる。


慎吾「あ、そんなつもりで言ったんじゃ・・・すいません」


慎吾は頭をかきながらリナに頭を下げた。


エレベーターを降りた3人は地下駐車場に出る。リナがスタスタと歩いた先に・・・レンタカーがあった。ここに来る前、新幹線の中でパソコンから車をレンタルする手続きも済ませていたリナ。


TV局の事務局で入局許可証をもらった後、レンタカー店に出向き車を借りる。そして地下駐車場に車を止めておいたのだ。


慎吾「わ・・・完璧に模倣・・・ あ、いや・・・

    完璧な作戦ですね・・・」


リナは慎吾を見て真剣な眼差しをする。


リナ「悪いけどさ・・・

    あんた、TV局の外に出るまでトランクに入ってて。


    出入り口の警備カメラ、写らないようにね」


慎吾「了解です」


文句1つ言わず、即答した。


リナ「・・・ ・・・」


江浜に視線を移すリナ。


リナ「江浜さんは・・・ 顔われるとマズいのよね。どうしよう・・・」


江浜「いや、どうせさっきの警備員に顔を見られている。

    差し支えなければ私が運転しよう。


    出口の警備員も、私を見ればすぐ通すはずだ」


リナ「・・・ ・・・」


逡巡したが・・・


リナ「わかりました」


リナは江浜に車のキーを渡した。キーを受け取った江浜は、運転席に座る。

慎吾はトランクに入れられ、リナは助手席に座った。


江浜は勢いよく車を出すが・・・車は出口の警備員に止められる。


江浜「急な仕事でね。助手と共に向かうところだ」


その警備員に、笑顔を見せた。


警備員「そうですか。活躍、期待しています」


警備員はすぐに遮断バーを上げ、車を通す。



こうして3人は・・・


黒ずくめの男に見つかる事無く、無事TV局の外へと脱出した。



・・・ ・・・。


江浜「あぁ。そうだ・・・

    彼は先月から、暴力団の資金援助を受けている。


    おかげで、例の埋蔵金発掘を再開したというわけさ」


運転しながら江浜はリナの質問に応えていた。


リナ「まさか、あの糸見プロデューサーが・・・ 慎吾を拉致ったなんて。

    あの黒ずくめの男に【糸見】の着信があったわけだわ。


    でもどうして慎吾を・・・?」


江浜はリナを一瞥する。そして静かに首を2度横に振った。


江浜「糸見の後ろで・・・さらに糸をひいてる人物がいるのも確か」


リナ「なんだか複雑・・・埋蔵金みたいな莫大なお金が絡むと・・・

    怪しい人が出てきたり・・・


    人が変わったりするものなのね・・・」


リナは小さな声でつぶやいた。



・・・ ・・・。


TV局から1km近く離れたコンビニ・・・江浜はその駐車場で車を止めた。

トランクをあけ、慎吾に手を差し出す。


江浜「ありがとう。あの窮地を脱せたのは君のおかげだ」


慎吾の右手を握り、トランクから慎吾の体を持ち上げた。


慎吾「いえ・・・ どうも・・・」


慎吾を外に出した江浜、次はリナに握手を求める。


江浜「何よりも君がいなければ・・・ 

    今頃どうなっていたか・・・ 感謝している」


リナ「・・・ ・・・」


リナは目線を合わさず握手に応じた。


江浜「君たちとはここでお別れだ。私は娘を救出に向かう」


慎吾が声をかける。


慎吾「ど、どうやって・・・ 娘さんを・・・?」


江浜「糸見が娘の声を聞かせてくれた時・・・

    彼の携帯電話に表示された番号を覚えた。


    幸い携帯ではなく、【03】から始まる固定電話だったからね」


慎吾「なるほど。電話番号を調べて・・・

    その電話のある場所を突き止めるわけですね」


そう言うと慎吾はリナの方を向いた。


慎吾「リナ先輩、ここまでありがとうございます!」


リナに向け、深くお辞儀する。


慎吾「僕は江浜さんにも助けられました。だから今度は僕が・・・

    江浜さんの娘さんを救出する、その手助けをしたいと思います」


江浜「いや、これ以上君たちに迷惑をかけるわけにはいかない。私1人で行く」


慎吾「でも、江浜さん・・・」


リナ「・・・ ・・・」


男2人のやりとりをよそに、リナは自分のパソコンを取り出していた。

すぐに起動すると、とあるページを検索し始める。


リナ「江浜さん。その番号を言ってください」


江浜「え?」


リナ「03の次、お願いします」


面食らった表情の江浜。リナの真剣な眼差しに口を開いた。


江浜「えっと・・・03-12** ・・・」


リナは高速でキーボード上でその番号を入力する。     


リナ「娘さんのいるところ、わかりましたよ」


キーボード操作から約1分の出来事だった。


慎吾「え!?」


リナはパソコンの画面を見せ、映し出された地図上・・・その1箇所を指さす。


リナ「NTT東日本のページから情報を得ました。

    ここは関東エリアの固定電話を全て扱っています。

  

    そのDATAベースに侵入し、江浜さんが見た番号を検索。

    その電話がある所、つまり娘さんがいる所は・・・四谷です」


江浜「・・・ ・・・」


しばし呆然とする江浜。


江浜「き・・君はいったい・・・?」


慎吾「リナ先輩は、すごい能力を持ってるんです。早速向かいましょう!

    リナ先輩は先にうちへ帰って・・・」


リナ「ふん。私も行くわよ」


慎吾「え?」


リナ「私、家族を誘拐して脅迫するって・・・絶対に許せないの!」


何かを思い出しながら・・・リナは語っていた。


リナ「悪いけど・・・私も行かせてもらうわ」


江浜「ダメだ。相手は銃を持った暴力団だぞ。危険すぎる」


リナは江浜の目を睨み付ける。


リナ「私は・・・黒ずくめの男の携帯に入っていた番号を全て覚えています。

    糸見の番号はもちろん・・・


    あの中に今回の拉致事件の首謀者の番号もあるはず。

    私がいれば絶対に役にたちます」


江浜も慎吾も・・・リナの迫力に気圧けおされた。


リナ「私が1分で娘さんの居所を見つけたんです。

    助けるなら早い方がいいし、私なら必ず役に立ちます!」


慎吾はずっとリナを巻き込みたくないと思っていたが・・・


慎吾「・・・ ・・・」


バッグ盗難事件の犯人をそく突きとめただけでなく、スタジオに閉じ込められた男2人を手際よく脱出させた。


(慎吾「リナ先輩なら・・・」)


これらの実績を考えれば、リナはかなりの戦力になると思い始める。


慎吾「江浜さん。1人より2人。2人より3人の方が・・・

    娘さんを助け出す確率が高くなると思います。


    ここは僕たちも・・・一緒に連れて行くべきです!」


江浜はしばらく悩んだ表情を見せた。


江浜「・・・ ・・・」


電話番号を聞いてから、わずか1分で娘の居所を割り出した。


(江浜「その能力は、非常にかっている・・・ だが・・・」)


迷う時間ももったいない。


江浜「わかった・・・。ただ危険と思ったら、とにかく逃げるんだ。

    相手は銃を持っている。絶対に無茶はするな!」


とりあえずだが、この2人を同行させる事を決めた。


リナ「わかりました」


慎吾「はい!」



3人は再び車に乗り込む。

江浜はそのまま運転席に、慎吾とリナは後部座席に座った。


江浜「四谷なら・・・ ここからすぐだ」


車はリナが指定した住所に向けて走り出す。


慎吾「・・・ ・・・」


銅板を手にしている慎吾。





その銅板の中から・・・微弱な光が漏れていた。


定期的に点滅しているその光は・・・ 電気信号を発信している。


慎吾「・・・ ・・・」


この銅板に追跡装置がついている・・・


それに気づくのは、もう少し後だった。





               (第22話へ続く)

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次回予告


江浜の娘が監禁されている事務所に到着した一行。


慎吾が救出作戦をたてる。顔のわれている慎吾と江浜は待機。

またしてもリナが救出に向かうのだが・・・?


次回 「 第22話  作  戦 」

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