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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第2章  動き出す影
21/45

第20話  救 出

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


慎吾の身を心配したリナは、何とか慎吾とコンタクトを取る事に成功。慎吾救出に向け、TV局へと向かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第20話  救 出


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2012年5月6日、日曜日。午前9時半。


ゴールデンウィーク最終日ゆえ、乗車率100%を越えるJR新幹線【こだま638号】。

混み合う電車内にも関わらず、ノートパソコンを拡げるリナがいる。


リナ「・・・ ・・・」


TVSのページを真剣な目で見ていた。周りを気にしつつ、そのページのあるサーバに侵入し・・・素早くキーボードを叩く。


リナ「・・・ ・・・」


チラリと周りを見渡し、Enterキーを押した。


(リナ「よし・・・ 」)


さらにもう1つ、とあるページに侵入する。


リナ「・・・ ・・・」


そして、とあるDATAを勝手に書き換えた。


リナ「・・・ ・・・」


しばらくPCの画面を見つめた後、ゆっくりと電源を切る。


(リナ「後は・・・ ヤバい状況じゃない事を祈るだけね・・・」)


ポケットから携帯を取り出すと、慎吾からのメールを今一度確認した。


【受信 歴ヲタ】

【タイトル イケメンには会えました?】


【内容】

【まだレポート仕上がってなくて・・・。

 だいたいは出来ているんですけど。


 今、マックで仕上げに入ってます!

 誤解しないで、浮気はないです!


 すぐに戻ってきますから!

 多分夕方にはレポート仕上がってます。


 時間は7時までに、戻ってきます。

 お詫びにケーキ買っていきますね。


 でもホントにホントに・・・

 すいませんでした!】


メールを見た瞬間、すぐに慎吾からのメッセージを受け取った。


【タイトル 【イ】ケメンには会えました?】


【内容】

【【ま】だレポート仕上がってなくて・・・。

 【だ】いたいは出来ているんですけど。


 【い】ま、マックで仕上げに入ってます!

 【ご】解しないで、浮気はないです!


 【す】ぐに戻ってきますから!

 【た】分夕方にはレポート仕上がってます。


 【じ】間は7時までに、戻ってきます。

 【お】詫びにケーキ買っていきますね。


 【で】もホントにホントに・・・

 【す】いませんでした!】


頭文字だけ読めば【イまだいごすたじおです】→【今、第5スタジオです】となる。慎吾が拉致された時の状況を考えると・・・そこに監禁されていると考えるのが妥当だ。


(リナ「第5スタジオ・・・ 銃持ったヤツも・・・

     いるんでしょうね・・・」)


不安な気持ちを抑えつつ、何とか慎吾を救出すべく・・・今一度、作戦を練り直した。



・・・ ・・・。


第5スタジオ・小道具部屋。


【受信 リナ先輩】

【タイトル イケメン、会えるわけねーだろ!】


【内容】

【マジ信じられない!!

 帰らないってありえないっしょ!


 来週でしょ、レポートの締め切りは!!

 いいから早く帰って来い!


 くだらん言い訳はするな!

 わかった!?】


慎吾は確かにこのメールを確認した。


【受信 リナ先輩】

【タイトル 【イ】ケメン、会えるわけねーだろ!】


【内容】

【【マ】ジ信じられない!!

 【か】えらないってありえないっしょ!


 【ら】い週でしょ、レポートの締め切りは!!

 【い】いから早く帰って来い!


 【く】だらん言い訳はするな!

 【わ】かった!?】


自分が送信したメッセージと同じ・・・頭文字だけ読めば


【イマからいくわ】→【今から行くわ】


このメッセージを受け取った。


リナを巻き込みたくなかった慎吾だったが・・・このままでは自分だけでなく目の前の江浜、そして彼の娘も非常に危険な状況になる。


(慎吾「リナ先輩に・・・ かけるしかない・・・」)


同じ部屋にいる江浜は、慎吾の連れが来る事だけは直接聞いた。


江浜「・・・ ・・・」


しかしそれ以外の会話は、見張りのいる状況では出来ない。


とにかく何らかの事態が少しでも動いた時・・・まずは目の前の慎吾、そしてその連れを無事に逃がしてやることを第一に考え、様々な状況を頭の中でシミュレートしていた。



・・・ ・・・。


午前11時前。


リナはTVSの事務局で、入局許可証を受け取る。

あらかじめTVSのページに侵入し、この日の局の見学予定リストに自分の名前を書き加えておいたのだ。


入局許可証を受け取ったリナは、すぐにそれをリュックに押し込む。


(リナ「さて・・・」)


TVS1階の広いロビーの中を歩いて行き、局内の見取り図の前で立ち止まった。


リナ「・・・ ・・・」


4階奥に、第5スタジオがある事を確認。

そして見取り図の上を指でなぞりながら・・・「ある場所」を探し出した。


(リナ「ここが第5スタジオ・・・。奥に小道具部屋がある・・・

     そしてここが・・・あのエレベーターか・・・」)


リナは複雑な局内の見取り図を全て暗記する。


さりげなくロビー内を見渡すと・・・


リナ「・・・ ・・・」


黒いサングラス、黒いスーツ、黒いズボンの男が入り口付近に2人、その他の場所にも、同様の格好の男がチラホラと歩いているのが見えた。


(リナ「黒ずくめって・・・暴力団か何かの制服? 目立つわね・・・」)


リナの脳はそれらの男を【敵】としてインプットする。


リナ「ふ~・・・」


一呼吸したリナは・・・ TVSを一度出て行った。



・・・ ・・・。


15分後。


リナは第5スタジオに向かい、局内の廊下を歩いていた。

一度入り口の前を通り過ぎ、扉の前に誰もいない事を確認する。


(リナ「この中、どうなっているのか・・・」)


全くわからない状況だ。何度も入り口の前を往復する。


(リナ「え~い! 迷ってもしょうがない!!」)


意を決して、リナは第5スタジオの扉を開いた。



・・・ ・・・。


その頃。


楽屋の中で糸見は、おおとりたくみという男からの電話に応じていた。


糸見「えぇ。どうやら【宣】と【光】は将軍の名前を表してるようで・・・

    はい。はい、そうです。


    今、早急にあらゆるパターンを解析させています」


電話の向こうから重低音の声が響き渡る。


鳳「そうか・・・。もう少し・・・と、信じていいのだな?」


糸見「もちろんです!!」


鳳「我々が莫大な発掘の資金援助し、困難な発掘許可を得た・・・

   その恩義をしっかり返してくれるな?」


糸見「えぇ。息子も昼夜問わず、発掘作業にいそしんでいますので。

    必ず数日以内に結果を出します!」


鳳「期待している。埋蔵金の・・・

   場所がわかったら、真っ先に私に連絡するように・・・」


糸見「承知してます」


鳳「万が一、何も出なかった時は・・・」


糸見「そ、それも承知しています!

    必ず埋蔵金を発掘してみせますので!」


電話を切った後、糸見は大きなため息をついた。


(糸見「絶対に・・・見つけてやる・・・

     どんな手を使ってでも・・・」)


腕時計で時間を確認する。


(糸見「1時間、仮眠をとるか・・・

     その後は、また第5スタジオだな・・・」)


そういうと、楽屋にある大きなソファーに横になった。


糸見「・・・ ・・・」


鳳、そして慎吾と江浜の間に挟まれ・・・疲弊仕切っている糸見。


糸見「・・・ ・・・」


眠りに落ちるまで、1分とかからなかった。



・・・ ・・・。


バタン!!


勢いをつけて第5スタジオの扉を開け、1,2歩と中に入っていくリナ。


男「おい!!」


右手から大声が聞こえた。振り向くと・・・


リナ「・・・ ・・・」


例の黒ずくめの男がサングラスの向こうから睨み付けている。 それどころか、男は右手を不自然に腰の後ろに回していた。


(リナ「・・・。絶対、銃を握ってる!!」)


そのさまを見て、一気に緊張が全身を駆け巡る。


リナ「あ。あー・・・ えっと・・・ すいません。間違えたようです」


そう言うとリナはすぐにスタジオの外へ出て行った。

男が追っかけてくる事がないのを確認したリナは、胸をなで下ろす。


リナ「・・・ ・・・」


スタジオから20m離れたところ、廊下の角を曲がり、深呼吸をするリナ。


(リナ「やっべーーって! 絶対あれ、やっべーーーって!!」)


このまま何も見なかった事にして・・・


(リナ「帰りたい気持ちで、いっぱいだわ・・・」)


しかしそれが出来ない事を、リナ自身わかっている。


(リナ「あいつ・・・ まだ生きてるわよね・・・」)


左手の拳を額に打ち付けた。


リナ「・・・ ・・・」


深呼吸した後


(リナ「第5スタジオ・・・扉から入って、ちょっと見渡した限りでは・・・

     慎吾の姿は見えなかった・・・」


冷静に状況を振り返る。


(リナ「って事は・・・ 奥の小道具部屋に・・・ いる・・・?」)


だとしたら、スタジオの奥まで入っていかなければならない。


リナ「・・・ ・・・」


しばらく深呼吸をし続けたリナは・・・


リナ「よし!!」


気合いを入れた後、意を決する。



そして再び・・・ 第5スタジオへ向かった。



・・・ ・・・。


慎吾と江浜は、誰かがスタジオの扉を開ける音を聞き取った。小道具部屋からは、誰が入ってきたのかはわからない。


2人とも前日から一睡もしていない。体の疲労は限界に近い状況だ。それでも助けが来たかもしれないと、来るべき事態に備えて気を引き締めた。



男「おい! お前、さっきもここに入ってきたな! 

   ここはもうすぐ撮影に入る。


   関係者以外立ち入り禁止だぞ!」


相変わらず黒サングラスの男は、右手を不自然に後ろに回している。


リナ「・・・ ・・・」


おくせずリナは、とぼけた声を出した。


リナ「あー・・・でも、第5スタジオだって、プロデューサーが・・・

    小道具部屋から、必要な物を取って来いって・・・」


緊張を見せまいと意識すればするほど・・・声が緊張する。


男「ふん、ADか・・・。何かの間違いだ。さっさと出て行け!」


リナ「えー!! また私【P】に怒られちゃう!

    あんたのせいって言うわよ! 責任とってよ!!」


男「・・・ ・・・」


あっさり部屋を出て行くと予想していた男は、一瞬ひるんだ。


男「・・・ ・・・」


しばらくリナを見つめた後、口を開いた。


男「そのプロデューサーとやらは・・・誰だ?」


リナ「え・・・?」


まさかの返しに、今度はリナがひるむ。


リナ「あー・・ 糸見! 糸見プロデューサーですよ!

    わかるでしょ! あの埋蔵金の糸見プロデューサーです!」


緊張のあまり【糸見】を連呼するリナ。


とっさにうかんだ口から出任せでだが・・・


それが功を奏する。


男「・・・ ・・・」


糸見の名を聞いた男は、首をかしげた。


男「ちょっと待ってろ」


男は携帯を取り出し、電話をかけた。


(リナ「え・・・まさか、直接【糸見】に電話してんの!? 

     何で銃を持ったおっさんが・・・


     彼の番号知ってんのよ?」


男はしばらく携帯を耳にあて、相手が出るのを待っている。


(リナ「私・・・ヤバくね?」)


拉致事件に糸見が関わってる事など、リナは全く知らない。


リナ「・・・ ・・・」


チラリと後ろの扉に視線をとばす。嘘がバレた時、すぐ逃げるために・・・。



・・・ ・・・。


糸見の携帯が鳴っている。

しかし前日から蓄積された疲労と、極度の緊張は・・・


彼を目覚めさせる事は無かった。



・・・ ・・・。


男は携帯電話を耳にあてながら、糸見が出るのを待っていたが・・・


男「っち!」


電話が通じることはなかった。逡巡した後、男はリナを睨み付ける。


男「ついてこい!」


(リナ「た・・・助かった・・・」)


リナの両手は、汗でびっしょりだった。



男はスタジオ右奥の小道具部屋へ向かい、リナはその後ろを付いていく。小道具部屋の近くに、また一人別の黒ずくめの男がパイプ椅子に座っていた。


(リナ「2人か・・・ 昨日は、3人プラス江浜氏だったけど・・・」)


男は小道具部屋の入り口の前で止まり、パイプイスに座る男をよぶ。


男「こいつは絶対中にいれるなよ」


と小声で伝えた後 、リナの方を振り返った。


男「おい、AD。どんな小道具だ?」


リナ「え!?」


焦りながらもリナは


リナ「あー・・・ えっと、こういうヤツです!」


両手で長方形を作るしぐさをした。


男「何だ、それは?」


男は怪訝な表情を受かべる。


リナ「あっと・・・スタ・・スタンガン!

    そう! スタンガンの小道具!


    ここにあるって、糸見プロデューサーが・・・」


その場しのぎの嘘を突き通す・・・リナの心臓はバクバクで、今にも破裂しそうだ。


男「ふん。しばらく待っていろ」


そう言うと男は小道具部屋をノックし、入っていく。


リナ「・・・ ・・・」


リナはもう1人の男に、背後から肩を掴まれていた。


男「ふぁ・・・」


男は眠そうにアクビをしている。


(リナ「絶対・・・ 私を、ただのADだと思ってる・・・」)


緊張で、心臓の鼓動が早くなっていくリナ。


(リナ「今なら男1人・・・ ここしかない!!」)


千載一遇のチャンスとみたリナ。肩を掴まれたまま、自分のリュックを手前に持ってきた。


男「・・・ ・・・」


男は特に気にとめる様子もない。


リナ「・・・ ・・・」


リュックの中をあさくり、【それ】を取り出した。


リナ「あら・・・スタンガン、私、持ってたわ」


男「 ? 」


リナは本物のスタンガンを右手に持っている。


男「・・・ ・・・」


小道具だと、信じて疑わない男に・・・リナは顔だけ男に向け、一瞬笑顔を見せた。


スタンガンのスイッチを入れると、体ごと振り返り、男の腹部にスタンガンを突き刺す。


瞬間


男「ぐ!!!」


リナ「きゃ!!」


2人に高圧電流が流れ、反射的にスタンガンのスイッチから指が離れた。2人ともその場に倒れ、全身がしびれた感覚に襲われる。


人に掴まれた状態で、その人に電流を流せば・・・ 掴まれた本人にも電流が流れる。


リナ「人は伝導体だった・・・初歩的なミスを・・・」


男に視線を移すと・・・錯乱気味で後ろの腰辺りに、手を回していた。


リナ「や、ヤバ・・・」


すぐにスタンガンのスイッチを入れ、思いっきり男の腹部に突き刺す。


ジジジジ・・・


男「ぐぐぐ・・・」


高圧電流により、全身の筋肉が極度に緊張し・・・大声を出すことすら出来ない。


男「く・・・ ぐ・・・」


数秒後、男は気を失った。


リナ「はぁ、はぁ・・・」


倒れた男を確認し


リナ「まず一人・・・」


予断を許さない状況で、気合いを入れ直す。


リナ「次は・・・」


そして、小道具部屋の入り口に視線を移した。



・・・ ・・・。


この時、小道具部屋にいた男は4人。慎吾、江浜、見張りの男、そして・・・


リナに言われた小道具を探す男。


江浜「・・・ ・・・」


部屋の外の異常に気づいていたのは・・・江浜だけ。すかさず慎吾に言葉を送る。


(江浜「来たぞ・・・」)


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾は瞬きを1つした。


スタンガンの小道具を探していた男は、すぐにそれを見つける。それを持って、部屋の扉を開けた。


開けた瞬間、リナが目の前に立っていて・・・その右手にスタンガンが見える。


男「 ? 」


思わずリナのスタンガンと、小道具のそれを見比べた。


リナ「・・・ ・・・」


スタンガンの電源をオンにしたリナは・・・迷わず男に突き刺す。


男「ぐぐぐぐ・・・」


先ほどの男同様・・・大声を出せず、全身の筋肉が緊張を始めた。


男「・・・ っく・・・ っく・・・」


数秒後気を失い、その場で崩れ落ちる。


リナ「これでふた・・・」


男が倒れた直後・・・リナの開けた視界には、銃を向けている3人目の男がいた。

銃口はリナの顔面を、寸分違わずとらえている。


リナ「!?」


男の右手は、今まさに引き金を引こうとしていた。


リナ「ちょ・・・」



江浜「唵!!」


3人目の男が銃の引き金をひくよりも早く、江浜の大声が部屋に鳴り響く。と、同時に銃を構えていた男が、真横に吹っ飛んだ。


男「ぐぉあ!!」


男は壁に全身を強打。すかさず江浜は男に近寄り、男の胸に拳を軽く当てたあと


江浜「唵!」


かけ声と共に、拳の先から何かを男に流し込む。


男「ぐく・・・!?」


そして男は・・・気を失った。


リナ「・・・ ・・・」


呆然とするリナ。銃を向けられ、その男が勝手に吹っ飛び、江浜が男にとどめをさした。

リナの脳は何が起こってるかを理解出来ない。


(リナ「江浜氏・・・敵・・・ 敵!?」)


【江浜=敵】とインプットしていた脳が、リナを正気に戻させる。


リナ「・・・ ・・・」


スタンガンをONにすると、それを江浜に向け戦闘態勢をとった。


すかさず慎吾が声をかける。


慎吾「リナ先輩!! 江浜さんは味方です!! 」


リナ「・・・ ・・・」


リナの視線が・・・部屋の奥、椅子に縛られた慎吾を確認する。


慎吾「江浜さん・・・ 味方なんです!」


リナ「・・・ ・・・」


江浜への警戒と、慎吾が生きている安堵が交錯した。


慎吾「江浜さんは、娘さんを誘拐されて仕方なく・・・

    それに昨日、リナ先輩を逃がしたのは・・・江浜さんなんです!!」


リナ「・・・ ・・・」


リナは前日の事を思い出す。確かに見えない力でエレベーターに閉じ込められ、慎吾の拉致事件に直接巻き込まれる事はなかった・・・。


江浜「・・・ ・・・」


江浜は手のひらを見せ、戦闘意志がない事を示している。


リナ「・・・ OK・・・」


ようやくリナはスタンガンのスイッチを切った。そして椅子に縛られている慎吾にかけより・・・無言で抱きしめた。


リナ「よかった・・・」


慎吾「あ・・・」


突然の抱擁・・・疲労を忘れ、動揺する慎吾。


(慎吾「いい匂い・・・」)


女性に抱きしめられた経験など1度もない慎吾は、頬を赤らめた。


慎吾「あ・・・あの・・・リナ先輩・・・」


少しのぼせ気味で声を出す。


慎吾「あの・・・ おっぱいあたってますけど・・・?」


瞬間、リナが正気に戻った。


リナ「・・・ ・・・」


慎吾から離れ、じっと目を見つめる。


リナ「ふん・・・ 相変わらず空気よめないわね。

    まぁ、無事って事ね・・・」


そう言うとリナは、慎吾を縛っているロープを解き始めた。


江浜「リナ君・・・だね? 彼から君が助けに来ると聞いていた。

    私からもお礼を言わせてくれ。ありがとう・・・」


リナ「・・・ ・・・」


江浜が慎吾を追い詰めたシーンが頭から離れないリナ。


リナ「・・・ ・・・」


江浜にどんな態度で接すればいいかわからなかった。その様子を察した慎吾が再度声をかける。


慎吾「江浜さんがいなければ・・・僕はもっと危険でした」


リナは慎吾の目を見つめた。


リナ「わかった・・・」


そう言うと、リナと江浜は握手を交わす。


江浜「改めて・・・ ありがとう」


江浜は部屋の外に倒れている男2人を部屋の中に入れる。男の胸に拳をあてると、先ほどのように拳から何かを流し込む動作をした。


江浜「これで3人とも・・・3時間は目が覚めない」


慎吾「・・・ ・・・」


リナ「・・・ ・・・」


江浜が何をしたのかわからないが・・・それが江浜の【霊能力】とやらなのだろうと、2人は理解する。



部屋にいる敵を小道具部屋に押し込み・・・部屋の外に出た3人は、一息ついた。


江浜「落ち着いている暇はない。まずはここを出なければ」


慎吾「でも、局内には見張りが何人もいるって・・・」


リナは不敵な笑みを浮かべる。


リナ「任せて。手はうってある」


慎吾「え・・・?」


そう言うとリナは、先頭を切って歩き出した。



               (第21話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


リナが用意した逃走ルート・・・

それはかつて慎吾が見つけたルートだった。


しかし、またしてもトラブルが発生する。

江浜は機転をきかせて脱出を試みるが・・・?


次回 「 第21話  機 転 」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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