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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第2章  動き出す影
20/45

第19話  コンタクト

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TVSへ訪れた2人は【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として番組収録に参加した。


収録後、慎吾は黒ずくめの男等に誘拐される。誘拐を指示したのは、番組プロデューサーの糸見。さらに娘を人質に取られた霊能力者・江浜も糸見側につき、慎吾の前に現れた。


慎吾の身を心配したリナは、何とか慎吾とコンタクトを取ろうとするが・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第19話  コンタクト


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5月5日、土曜日。午後7時過ぎ。


第5スタジオ・・・奥にある小道具部屋。


慎吾はじっと銅板を見つめていた。



挿絵(By みてみん)



慎吾の真正面には、腕組みをした江浜が座っている。そしてもう一人、見張り役の黒ずくめの男が部屋の出入り口に立っていた。


江浜はその霊能力で、慎吾に言葉を伝えられる。見張の男に気づかれず・・・テレパシーのように、直接言葉を伝える事が出来るのだ。


しかし、慎吾からの言葉を受け取ることはできない・・・一方通行の能力だった。見張り役のスキを見て、江浜は時々慎吾に言葉を送っている。


糸見は、先月からある暴力団の資金援助を受け、埋蔵金の発掘を再開した事。

その暴力団に娘を誘拐され、仕方なく慎吾の拉致に協力した事。

何とか慎吾をここから安全に出したい事。

万が一の場合、最終手段がある事。


何故、慎吾が拉致されたのか・・・その理由は2人ともわかっていた。

それは・・・ 慎吾の守護霊だ。徳川埋蔵金と深く関わっている。


(江浜「黒幕がいる・・・ 慎吾君の守護霊を知る者が・・・」)


しかし誰が慎吾の守護霊を見抜いたのかは・・・江浜にもわからない。


(江浜「糸見の後ろで・・・誰かが糸をひいているのは間違いない」)


その意外な黒幕の正体を江浜が知るのは・・・翌日だった。


慎吾は江浜からのメッセージを受け取る度に「わかりました」の合図である、まばたきを1つする。


江浜には【心配するな】と言われている慎吾だが・・・正直、不安で仕方がない。


仮に徳川埋蔵金のありかにたどり着いた場合・・・果たして解放されるのだろうか?


埋蔵金にありつけなかった場合は?


この先の事を考えると、どうしても「明るい未来」が想像できない。


慎吾「・・・ ・・・」


ただ、不安になっているだけでは何も進展しない。ならば、少しでも銅板が示す事実に近づきたいと思っていた。


それに銅板を見て、頭を働かせるだけでも恐怖が追い出されていく。ならば今は、銅板にある謎を解こうと・・・自分に言い聞かせた。


何度も何度も銅板を見つめる。時々深呼吸し、目を閉じては・・・また銅板を見つめる。



挿絵(By みてみん)



文字の部分に関しては、いくつかの仮説が立てられた。ただ、対称図形の意味がよくわからない。


この図形の意味するものと、文字の部分とが論理的にマッチした時・・・


(慎吾「埋蔵金のありかが示される・・・」)


そう感じていた。


(慎吾「リナ先輩がいたら・・・解けるかもしれない・・・」)


携帯はおろか、全ての持ち物を糸見に取られている。リナに連絡を取るすべなどない。




銅板を見つめ、江浜の声に耳を傾けるしかできない慎吾。


娘を人質に取られて、糸見の言うとおり動くしかない江浜。


誘拐されている江浜の娘・あんず。



時間が過ぎていく度・・・


この3人の運命は確実に【死】へと近づいていた。





その運命を変える人物がいる・・・





5月6日、日曜日・・・ 午前8時過ぎ。


糸見は自分の楽屋で横になっている。ゴールデンウィーク期間中、第5スタジオと楽屋を借り切っている糸見は、その楽屋を生活の拠点としていた。


ヴーン、ヴーン、ヴーン・・・


携帯電話の振動音で目が覚める。テーブルの上・・・雑に置いていた慎吾の携帯だった。


糸見は無言でその携帯を開く。


糸見「・・・ ・・・」


電話でなくメールだ。


【受信 リナ先輩】

【タイトル 浮気相手に告ぐ!】


【内容】

【あんた、昨日スタジオにいた金髪の子でしょ!?

 あんたが彼氏の携帯使ってメールしたの、バレバレだから!


 言っとくけど、私は彼と同棲してるの!

 あんたの出る幕無いっつーの!!


 今、あたしの彼氏といるんでしょ!?

 いい!? 彼氏と話をさせて!!


 1時間以内に、彼氏から連絡ない時は・・・

 迷わず警察に通報する! 


 TVSの防犯VTRであんた探してやるから!】


メールを見て・・・糸見は眠気の中、頭を抱えた。


糸見「・・・ ったく・・・」


昨日から今日にかけ、思い通り事が進まずイライラがつのる。


適当にメールを返そうかと思ったが・・・

慎吾本人でないのがバレたら、TVSに警察を送り込まれる可能性がある。


江浜といい、慎吾の彼女といい・・・


糸見「っち!!」 


舌打ちをする。5分ほど悩んだ後、慎吾の携帯を持って三度みたび第5スタジオへ向かった。



・・・ ・・・。


第5スタジオに入り、入り口にいる見張り役の男には目もくれず奥の小道具部屋に早足で行く。


小道具部屋の前にまた1人、部屋に入ってまた1人の見張り役がいた。


そして慎吾と江浜がいる。2人とも一睡もせず、例の銅板を中心に向かい合って座っていた。


糸見は江浜を立たせ、その椅子に座る。そして、携帯を広げて見せた。


糸見「お前の彼女からだ」


慎吾「・・・ ・・・」


見せられたメールを見る。


糸見「大学入学してすぐに同棲か・・・いいな~大学生は」


糸見は睨み付けたまま皮肉を言った。


慎吾「・・・ ・・・」


肉体疲労はピークなれど、頭は回る慎吾。


(慎吾「リナ先輩が、僕とコンタクトを取ろうとしている・・・」)


糸見「このままだと、TVSに警察が来るかもしれなくてな。

    どうすれば彼女は黙ってくれるかな?」


ちょっと考えた後、慎吾は口を開く。


慎吾「電話を・・・かけさせて下さい・・・」


糸見「それはダメだ」


糸見は即答した。


糸見「下手な事を口走られると困るんでな」


慎吾「・・・ じゃぁ・・・ メールを・・・」


糸見はしばらく悩むがそれを了承する。


糸見「いいだろう。だがお前に携帯は渡せない。メールの内容を言え」


慎吾「・・・ わかりました・・・」


慎吾の頭の中では、


「リナ先輩を巻き込みたくない」


「このままでは自分も、江浜さんも、その娘さんも危ない・・・

 リナ先輩にかけるしかない」


この2つの思いが、何度も交錯していた。



慎吾が選んだのは・・・



後者だ。



慎吾「じゃぁ、僕が言う通り・・・メールをうってください・・・」


糸見「・・・ ・・・」



糸見は慎吾の言葉をそのままメールにした。

特に変わった内容ではなかったので、そのまま送信する・・・。


その様子を見ていた慎吾。


(慎吾「リナ先輩ならきっと・・・」)



・・・ ・・・。


その頃、リナは自宅のマンションで慎吾からのメールを待っていた。


(リナ「メールがこなかったら・・・死んでるかも・・・」)


そう思うと不安でどうしようもない。


(リナ「頼むわよ・・・来てよ! 慎吾!!」)


8時半過ぎ・・・ メールが返ってきた。


【受信 歴ヲタ】

【タイトル イケメンには会えました?】


リナ「き、きた!! 慎吾からだ!!」


合い言葉の【イケメン】が、最初に書かれてあるのを確認。慎吾が生きている事を確信したリナは、安堵のため息をつく。


【内容】

【まだレポート仕上がってなくて・・・。

 だいたいは出来ているんですけど。


 今、マックで仕上げに入ってます!

 誤解しないで、浮気はないです!


 すぐに戻ってきますから!

 多分夕方にはレポート仕上がってます。


 時間は7時までに、戻ってきます。

 お詫びにケーキ買っていきますね。


 でもホントにホントに・・・

 すいませんでした!】


リナ「・・・ ・・・」


じっとメールを読んだ。


リナの脳は、慎吾の隠されたメッセージを余裕で読み取る。


(リナ「第5スタジオ・・・」)


慎吾の居場所はわかった。ならばと、次の行動を悩む。


(リナ「銃を持ってるとなれば・・・警察はまずいかも・・・」)


現時点で、慎吾を誘拐した連中の正体は不明。警察沙汰はかえってマズいかもと判断した。


(リナ「仕方ない・・・。 世話のやける歴ヲタを・・・

     助けに行くか・・・ そうとなれば・・・」)


慎吾のメールに対し、返信メールを打ち始める。


(リナ「【今から行くわ】・・・送信っと!」


慎吾を救出する決意をし、早速準備を開始した。


(リナ「・・・ 久々だわ、コレ使うの・・・」)


クローゼットの引き出しから、ある物を取り出す。


リナ「・・・ ・・・」


過去・・・これを使った事がある。


(リナ「今は・・・ 慎吾の事に集中・・・」)


首を横に振る事で、過去も振り払う。


今回は【敵】がいる。そう思ったリナは、リュックに荷物を入れた。


(リナ「全く・・・リュックが動きやすいとはいえ・・・

     私まで、ヲタク風の格好しなきゃならないとは・・・」)


メール受信からわずか10分。リュックを背負ったリナは、慎吾救出へと向かった。



・・・ ・・・。


ヴーン、ヴーン、ヴーン・・・。


小道具部屋で待機していた糸見は、【リナ先輩】からの返信メールを確認した。


バイブの音に反応した慎吾が、糸見に視線を向ける。


慎吾「リナ先輩からですか?」


糸見「あぁ・・・」


糸見がそのまま携帯を閉じるのを見て、慎吾が即座に声をかけた。


慎吾「メール見せてください! 

    彼女、冷静なフリして・・・


    平気で、ひどい行動に出る時ありますから!!」


糸見は不満そうな表情を見せたが、返信メールを慎吾に見せる。


糸見「どうだ?」


【受信 リナ先輩】

【タイトル イケメン、会えるわけねーだろ!】


【内容】

【マジ信じられない!!

 帰らないってありえないっしょ!


 来週でしょ、レポートの締め切りは!!

 いいから早く帰って来い!


 くだらん言い訳はするな!

 わかった!?】


慎吾「・・・ ・・・」


リナからのメッセージを、しっかりと受け取った。


慎吾「大丈夫です・・・。警察に言ったりはないと思います」


糸見「あぁ、そうか。よかったよ。

    じゃぁ、昨日から今までの成果を聞かせろ。


    銅板について何かわかったか?」


慎吾「はい・・・」


ここで何か進展のある答えを出さないと危険かもしれないと感じた慎吾。

徹夜で出した仮説を口にした。



挿絵(By みてみん)



慎吾「文字の一番上、【宣】は6代将軍【家宣】を。

    一番下【光】は、3代将軍【家光】を指してる可能性があります。


    新将軍が16代将軍とすれば・・・

    上から【6】【16】【3】という数字を示している事になります」


糸見は銅板を見直す。確かに【宣】と【光】が、歴代将軍の名前にちなんでいる可能性はある。


糸見「なるほど・・・。他には?」


慎吾「その数字の何らかの組合せで・・・

    表の枠の1つをさしてるとか・・・」



挿絵(By みてみん)



挿絵(By みてみん)



慎吾「あるいは対称的な図形ですが、点が8個。

    表には魔方陣を示す枠が9つ。つまり表は裏より1つ多い」


糸見「・・・ ・・・」


慎吾「ひょっとしたら数字の組合せで、8つの数を割り出し・・・

    残った1つに、埋蔵金の場所が示されているのかも・・・」


糸見「ふむ・・・ 8つの数字の出し方は?」


慎吾「例えば・・・ 【-6+16-3】とか。

    四則演算か何か・・・ あるいは割った余りとか・・・


    僕は暗算は苦手です。コンピュータで計算パターンを調べれば・・・」


糸見「・・・ なるほど・・・」


予想以上に慎吾が深く考えている事に驚いた。


糸見「ふん・・・。他には?」


慎吾「あの広大な地図の範囲全てを発掘出来ない。


    間違いなく、どこかの1箇所を示す何かがあると・・・」


糸見「・・・ ・・・」


慎吾「今はまだわからないけど・・・

    もう少し時間があれば・・・」

       

慎吾はさらなる時間の要求をしてきた。


糸見「・・・ ・・・」


現在午前8時半過ぎ。


(糸見「確かに・・・もう少し彼に考えさせれば・・・」)


もっと何かが出るかも知れない・・・そう思った糸見は、慎吾の口車に乗る。


糸見「いいだろう。今しばらく時間をやる」


そう言うと携帯を取り出し、どこかに電話をかけた。


糸見「いいか! 【宣】を【6】、【光】を【3】として・・・

    計算パターンをいくつか試せ!


    特定の1箇所を見つけるつもりでな!!」


銅板の解析を任せているであろう、何者かと話しているようだ。


糸見「また昼過ぎに来る。

    その前にありかがわかれば、すぐあいつに連絡しろ」


見張り役の男を指さす。そして今度は江浜に視線を移した。


糸見「お前も協力しろよ。午後5時までだぞ」


江浜「・・・ ・・・」


江浜は無言のまま立っている。


糸見は部屋を出て行く際、見張り役の男に一言「とにかく何かあればすぐ伝えろ」と指示した。


糸見が黒ずくめの男に話した瞬間・・・



その隙をついて、慎吾は江浜に小声で伝える。



慎吾「今から、助けが来ます」




              (第20話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


江浜と黒ずくめの男に慎吾は拉致された。

その慎吾が第5スタジオにいると突きとめたリナは、救出作戦を練る。


度胸と行動力で黒ずくめの男らを翻弄するが・・・


リナは一人の男に銃口を向けられてしまった。


次回 「 第20話  救 出 」

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