表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第2章  動き出す影
16/45

第15話  時任マリオ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TV局へと向かった2人だが・・・


アイドルのバッグ盗難事件に遭遇。リナの持つ特殊能力により、犯人を捕まえるに至った。バッグを盗まれたアイドル・松浦から、2人は特別番組【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として招待を受ける。


番組収録後、突然慎吾がリナに暴言を吐き・・・直後、黒ずくめの男等に慎吾は包囲された。さらに江浜も現れ、慎吾に攻撃。そして慎吾は、連中に拉致された。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第15話  時任マリオ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

慎吾が拉致される20分前。



TVS特番【徳川埋蔵金の謎を追え!】収録直後・・・



番組の出演者でありプロデューサーでもある糸見は、出演者らと握手を交わしている。徳川埋蔵金存在否定派の教授陣にも、笑顔で握手を求めた。


糸見「十日後の収録も・・・ お願いします・・・」


1週間以内に徳川埋蔵金を確実に発掘する・・・糸見の笑顔は、その自信の表れでもある。ただ一人だけ糸見の握手を拒否した男がいた。


スピリチュアル・カウンセラー江浜・・・


握手を求めた糸見に対し、江浜はポケットの中に手を入れたまま。


江浜「・・・ ・・・」


鋭い視線で糸見を睨みつけ、その手を外に出すことはない。


「わかったよ」という表情を見せ手を引っ込める糸見。そして小さな声で江浜に声をかけた。


糸見「まだ、大丈夫さ。後はお前次第・・・」


不適な笑みを浮かべた糸見は【山嵐】のメンバーに握手を求めるため、その場を離れる。


江浜「・・・ ゴホッ・・・」


1つ咳をした江浜は・・・とある場所へと向かった。


糸見「・・・ ・・・」


その江浜をチラリと見つめる糸見。


糸見「・・・ ふっ・・・」


今回新たに発見した銅板。それに加え、糸見には・・・


埋蔵金を発見するための、もう1つの切り札があった。



・・・ ・・・。


出演者と一通り握手を終えた糸見は、自分の楽屋に戻って来る。


ガチャッ


楽屋のドアを開けると・・・中に一人の男がいた。


白ずくめの大男・・・ お笑い芸人、そして銅版発見者である時任マリオである。


マリオの顔を確認した糸見は、右手を差しだし握手を求めた。

彼は迷わずその右手を力強く握りしめる。


マリオ「あれでよかった?」


糸見「あぁもちろん! すばらしい演出だった!

    あの【一週間!】は、まるで映画のワンシーン。最高さ!」


握手を解いた2人。マリオは小さな椅子に、糸見は大きなソファーに座った。


糸見「今日は完璧。

    とうとう、埋蔵金を見つける時が来たな・・・」


マリオ「あぁ。でもあの銅版の解読は?」


糸見「任せろ。専門家に頼んである。もうすぐ結果が出るはずだ。

    それに・・・もう一人強力な助っ人がいる」


マリオ「助っ人?」


糸見「あぁ・・・いずれお前にも会わせる。

    何も知らなさそうな青年だがな。


    ある霊能者が言ってたよ・・・

    彼は埋蔵金のありかをよく知る人物だ・・・ってね」


マリオ「・・・ ・・・」


マリオは2~3度、うなずくしぐさを見せる。

ある霊能者が誰かと聞くことはない。マリオ自身、よく知っているからだ。


マリオ「そうか・・・ ありかを知ってる男なんだね。

     でも彼が、埋蔵金について情報を口にするのかな?」


糸見はこぶしを握る。


糸見「青年については任せろ。そこは心配しなくていい。

    銅版の解析結果によらず、喋らせる手はずは整えている。


    どんな事があっても、必ず埋蔵金は手にするさ」


その言葉を聞いたマリオは小さく笑った。


マリオ「わかった。じゃぁ俺は、発掘に専念する・・・」


糸見「あぁ。お前の宣言通り1週間以内に埋蔵金は見つかる!

    そして10日後の収録では・・・


    否定派連中の鼻をあかす事になる!」


嬉しそうに語る糸見に対し、マリオは無表情になる。


マリオ「あぁ・・・ 楽しみだね」


感情のこもらない返事を返した。マリオの素っ気ない表情を【本当に見つかるのか】という不安だと解釈した糸見。笑いながら彼の肩を叩く。


糸見「安心しろ! 絶対見つかるから! 心配は一切無用!

    次の収録のサブタイトルはこうさ・・・


    【徳川埋蔵金! 親子2代で、ついに発見!!】」


そう。この2人は・・・


マリオ「タイトルは好きにするといい。父さんの長年の夢だったしね」


親子である。


糸見「何言ってる!? 元々埋蔵金発掘の企画は、お前だっただろう?」


マリオ「まぁ・・・ そうだけど・・・」


糸見「お笑い芸人になると聞いた時は、正直驚いたが・・・

    1週間後には、誰もが知っている歴史の謎を解く事になる。


    お前は芸能界で一躍名が知れ渡るどころか・・・

    歴史に名を刻む事になるんだ!!」


マリオ「あんまり興味がないけどね・・・埋蔵金以外は」


糸見「何だと~? うだつの上がらない芸人は・・・

    親として、認めるわけにはいかないぞ!」


そういう糸見は笑顔であった。もはや埋蔵金は、我が手中といった感じである。


マリオ「ま・・・俺は発掘に専念する。それだけさ」


糸見「あぁ。私の年齢では、体力的に現場は無理だからな。頼むぞ」


マリオ「わかった。じゃぁ早速俺は行くかな・・・

     まずは源治郎の井戸だ。


     何かわかったらすぐに携帯に連絡して。

     こちらも何か見つけたら連絡する」


糸見「もちろん! 私は解析と、例の青年からの情報を確認する」


マリオは席を立ち、楽屋の出口へ向かった。


マリオ「・・・ ・・・」


出口の前で立ち止まり、ふと父親に視線をやる。


マリオ「父さんは・・・ 埋蔵金を見つけた後は、どうするの?」


糸見は笑いながら応える。


糸見「まずは、次の収録に全てをかける。ゴールデンで40は取るぞ!

    その後は・・・本でも書くさ。タイトルはもう決まってるんだ。


    【ある事はわかっていた】

    どうだ? コピーライターらしいタイトルだろ?」


マリオは小さく笑って頷いた。


マリオ「そうだね・・・。じゃあ、お互いの仕事を・・・」


そう言うとマリオは父に背を向けドアノブを回す。


糸見「あぁ、またな。小太郎」


マリオ「・・・ ・・・」


ドアを開けた手を一瞬止めるマリオ。そして父に背を向けたまま口を開く。


マリオ「父さん・・・。

     TV局では、名前で呼ぶの・・・ヤメてくれよ」


そう言うと、マリオは楽屋を後にした。


糸見「・・・ ・・・」


閉まるドアを見て、糸見は目を細めている。


糸見「ふ・・・ お前は、いつまでも俺にとっちゃ息子さ・・・

    小太郎・・・」



芸名【時任マリオ】、本名【糸見小太郎】。


彼が楽屋を出てわずか3分後・・・。

黒ずくめの男が、周りを警戒した様子で、糸見の楽屋に入ってきた。


ソファーでタバコをふかす糸見の横に立ち


男「確保しました。第5スタジオ・小道具部屋です」


そう告げる。


糸見「・・・ ・・・」


男の方に視線を移すことはない糸見。正面の鏡を見つめたまま「ふ~」と煙を吐き出した。


糸見「わかった。5分後に行く」


黒ずくめの男は一礼をし、また警戒しながら楽屋を出て行った。


糸見「・・・ ・・・」


しばらくタバコを吹かしていた糸見。やがて、タバコを灰皿に押しつけ・・・


糸見「よし!」


と立ち上がる。その表情は目がギラギラし、これから獲物を真剣に狩りに行くといった表情である。


楽屋を出て向かった所は・・・



・・・ ・・・。


第5スタジオ。


さりげなく周りを警戒しながら、糸見はドアを開け中に入った。


30m四方の広いスタジオだ。


中に入ると・・・ドアの側に、先ほどの黒ずくめの男が立っている。

男は無言で、スタジオの右奥にある小さめの部屋を指さした。


頷いた糸見は、そこへを進める。部屋の前にはさらに2人の男がいた。

黒ずくめの男、そしてスピリチュアル・カウンセラーの江浜である。


江浜「・・・ ・・・」


糸見「・・・ ・・・」


視線は合わせど、言葉を交わすことはなかった。糸見は2人を一瞥した後、部屋の中に入っていく。


江浜「・・・ コホッ・・・」


1つ咳をした江浜。糸見が部屋に入るのを、ただ睨み付けるだけだった。



第5スタジオ・小道具部屋。


部屋は6畳程度の薄暗い小さな部屋。四方には棚があり、ドラマやバラエティで使う小道具がたくさん並べられている。


部屋に入ると、さらにもう一人黒ずくめの男が立っていた。

そして部屋の真ん中に、イスに縛られた一人の青年がいる。


黒ずくめの男は、糸見に小さな声で語った。


男「ちょうど今、目覚めたところです」


糸見は小さく頷き、部屋の横にあったパイプイスをその青年の前に置く。そして静かに青年と向き合うように座った。


糸見「・・・ ・・・」


目の前にいる具合の悪そうな青年をしばらく見つめた後、口を開いた。


糸見「やぁ・・・ お目覚めかい?」


青年が目の前の男を確認する。


「あ・・・ あなたは・・・」





               (第16話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


糸見は椅子に縛られた慎吾に銃口を向けた。


糸見「「ここは小道具部屋だ。本物かどうか試してみるか?」


銃口から目を背け、歯を食いしばる事しかできない慎吾。


そして・・・慎吾の悲鳴が部屋に鳴り響いた・・・。



次回 「 第16話  撃鉄げきてつ  」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ