表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第1章  慎吾とリナ
14/45

第13話  魔方陣

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TV局へと向かった2人だが・・・


アイドルのバッグ盗難事件に遭遇。リナの持つ特殊能力により、犯人を捕まえるに至った。バッグを盗まれたアイドル・松浦から、2人は特別番組【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として招待を受ける。


番組収録では、スピリチュアルカウンセラーの江浜がスペシャルゲストとして招かれていた。お笑い芸人の時任ときとうマリオは、徳川埋蔵金のありかを記しているという銅板を持って現れた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


   第13話  魔方陣


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その銅板は・・・時任ときとうマリオの手によって、高々と持ち上げられた。

ボクシングのラウンドガールがごとく、マリオはその銅板の角度を変えていく。


慎吾「・・・ ・・・」


そしてそれは・・・慎吾を始め、スタジオ内の全ての人物の目に触れた。


スポットライトはその銅板にまぶしいほどの光を与え、TVカメラはアップでとらえる。スタジオ内の大型TVにそれは映し出された。


30cm四方といった大きさぐらいか。

多少の傷やはげた部分もあるものの、140年の眠りから覚めた割には遠目で見ても「何かが書いてある」と判断ぐらいはできる。


ただ光の反射が強すぎて、書かれてある詳細までは判別できない。


ようやくここで会場が明るくなった。


女子アナ「今の銅板は先ほど糸見氏がおっしゃられた通り・・・」


TVSの看板アナウンサーが、説明を始める。


女子アナ「黄金の徳川家康像が見つかった源治郎の井戸。

      その付近にある横穴から、新たに発掘されました。


      4日前、金沢大学のO教授に銅板の鑑定を依頼。

      1860年代のものという鑑定結果が出ました」


観客「お~!」


観客席の慎吾達・・・意識したわけではないが、自然と大げさな声が出た。


女子アナ「では、この銅板を発見したマリオさんに話を聞いてみます。

      マリオさん、発見当初の状況をお聞かせください」


ステージの大男は、ゆっくりと口を開く。


マリオ「そうですね・・・今からちょうど1週間前、激しい雨が降る中。 

     スタッフとこの日の発掘を中止にしようかと、検討していました。


     でも、こういう日こそ何か発見できそうな気がして・・・」


女子アナ「何かそういう・・・予感がしたって事ですか?」


マリオ「えぇ。だからスタッフに無理を言って・・・」


観客席にいるリナがぼそっとつぶやいた。


リナ「どうでもいいわよね、あの会話」


慎吾「まぁ・・・TV見てる人にわかるようにって・・・

    番組的な事ですから、仕方ないです」


リナ「あの銅板・・・ライト反射して、何なのかわからなかったなー」


慎吾「あれ? リナ先輩、興味あるんですか?」


リナ「いや・・・一瞬見えたのがね・・・

    なんか頭にさーっと入ってきてね」


慎吾「まぁ、しばらく待ちましょう。絶対また出ますって」


リナ「うん・・・」


リナは一瞬だけ見えた銅板の情報が、頭の中に数字として入ってきていた。

ただ見えない部分があり、それが何を意味するかはわからなかった。


しばらく銅板発見者のマリオと女子アナ、そしてスタジオ内のゲストらの会話が続く。


そして・・・


女子アナ「この銅板は、地図・・・という事ですね?」


マリオ「えぇ、間違いありません。いくつかの情報と地図が混在したものです。

     地図は赤城山周辺のもので間違いありません。


     はっきり言いましょう・・・」


TVカメラが、マリオのアップを捉える。


マリオ「これこそ・・・徳川埋蔵金のありかを示した地図です!」


観客「おーー!!!」


女子「何と埋蔵金のありかを示した地図!

    ただ劣化が激しいところがあり、見づらい部分もあります。


    そこでスタッフが銅板に書かれた地図と同じ尺度の航空図を用意。

    銅板の地図と完全に重ねたものが・・・コレです!」


スタジオ内の大きなスクリーンに、それが映し出された。



挿絵(By みてみん)



赤城山周辺の地図が9分割にされている。そして各部分に妙な線の羅列と漢字が書かれてあった。


慎吾「あ!」


スクリーンの画面を見た瞬間、慎吾が声をあげる。


リナ「・・・。一応聞くけど、何、その反応?

    まさか、埋蔵金の場所わかった?」


とりあえず慎吾の声に反応するリナ。


慎吾「いや・・・あの文字とか線の書かれた図・・・

    八卦はっけですよ」


リナ「は? はっけ? 【当たるもはっけ、当たらぬもはっけ】の?」


慎吾「そうです!」


リナ「え・・・マジ? ボケたつもりなんだけど・・・」


慎吾「古代中国の【陰陽思想】を表したもので、【易経】における・・・」


リナ「あー・・・ちょっちょっちょっと・・・ 私、歴史とかダメなのよ!」


慎吾「五経ごきょうの話ですよ・・・ 歴史で学びましたよね?

    儒教の教典! 易経は五経の1つだし、徳川の将軍も・・・」


リナ「わかった! わかったから黙ってて! あんたの話長くなりそうだし・・・」


歴史に全く興味のないリナは、慎吾の歴史オタクトークを制止した。


リナ「ただ、あの【-】とか【- -】は数学的な意味がありそうね・・・

    2進法に近いものが・・・」


それを聞いた慎吾が、再び反応する。


慎吾「そう! それ! さすがリナ先輩! 数字【は】強い!」


リナ「・・・。 なんか、あんた・・・ムカつくんだけど・・・」


慎吾「確かにあの記号は数字に対応するって・・・

    ライプニッツって人が、解読したと聞いた事があります」


リナ「ライプニッツ・・・。高校の時数学の授業で出たわね、その名前。

    ニュートンと並んで【微分積分、やな気分】の発見者よ」

    

慎吾「び・・・微分積分・・・

    その言葉聞くだけで僕、確かにやな気分でした・・・」


そんな2人の会話をよそに、女子アナが銅板に書かれた図の説明を始めた。


これらの記号が易経で使われる八卦の記号である事。【-】【--】の記号が2進数に対応する事などを説明する。


リナ「うん・・・ わかった・・・」


慎吾「え!? 埋蔵金のありかが!?」


リナ「まさか・・・あんたが歴史ヲタクだって事がわかったって話よ。

    あんたの言った事が、今説明してる事と同じだもん」


そういうと、リナは携帯を取り出し何かを操作し始めた。


慎吾「何やってるんですか?」


リナ「いや、携帯のあんたの名前を【歴ヲタ】に変えてるの。

    一発であんただとわかるし」


慎吾「え~。何だか微妙な名前ですね・・・。

    でもちょっとカッコいいかも・・・」


リナ「・・・」


リナは無言で携帯を操作し終える。


銅板に使われた図は・・・八卦で使われる歸藏きぞう図と呼ばれる図であり、各所に対応する数字を当てはめ・・・



挿絵(By みてみん)



そして真ん中に【5】を入れると



挿絵(By みてみん)



魔方陣になる事を女子アナが説明した。


リナ「魔方陣か・・・」


慎吾「歸藏図が魔方陣になるってのは、けっこう有名な話なんですよ」


リナ「財宝を隠すために、魔方陣使う・・・っていうのはアリなの?」


慎吾「えぇ、ありますよ。日本の場合、財宝秘宝を隠す手がかりとして・・・

    高度な暗号や数値記号を使い、そのありかを示した例はいくつもあります」


リナ「ふ~ん・・・そっかぁ・・・」


リナはスタジオの巨大スクリーンをじっと見つめている。


6|1|8

_ _ _

7|5|3

_ _ _

2|9|4


魔方陣とは・・・縦・横・斜めの数字3つを足すと、全て同じ和になる数字配置の事である。今回の魔方陣は全ての和が15となる。



リナ「でも・・・」


ふとリナが口を開いた。


リナ「私が見たのは・・・銅板の裏。

    あの裏にまだ何か書かれてあったのよね~」


確かに見た。一瞬だけだったが・・・銅板の裏に何かの対称的な図形と、文字が書かれてあるのを。


慎吾「あの一瞬で見えたんですか?」


リナ「メガネかけてはいるけどさ。動体視力はいいもんよ。

    それに一瞬で覚えるのが得意なのは・・・あんたも知ってるでしょ?


    あの裏に書かれてあるのも・・・見たいな-・・・」


慎吾「何で見せないんでしょう?」


リナ「決まってるでしょ!

    裏には埋蔵金のありかを示す【確信的な何か】があるのよ! 」


慎吾「確信的な・・・何か・・・?」


リナ「私達が埋蔵金を獲らないように、秘密にしてるんじゃないの?

    くそー・・・ あの裏、見たいな・・・ちぇっ!」



この後・・・



スタジオ内では、銅板をめぐるディスカッションが行われた。


埋蔵金否定派は「どうせ、またガセ」「見つけてから大口を叩け」の姿勢を崩さない。


肯定派は「ならば見つけてみせよう」と強気の姿勢。



しばしの時が流れた後・・・



マリオ「1週間!」


いつの間にか、肯定派の席に着いていた時任ときとうマリオが高らかに宣言した。


マリオ「1週間で埋蔵金が見つからない場合・・・

     あなたがた、否定派の勝ちを認めましょう!」


女子アナ「おぉ! 強気な発言が出ました!」


マリオ「我々はこの後・・・

     銅板に示された地図を手がかりに、発掘作業へと戻ります。


     今ここで宣言します!

     1週間以内に我々は徳川埋蔵金を見つけます!」


TVカメラがマリオのアップを捉える。観客席の慎吾らは、ADの指示に従って大きな拍手で会場を盛り上げた。


拍手の音が静まった頃、カメラは女子アナのアップに切り替わる。


女子アナ「本当に徳川埋蔵金は出るのか!?

      いよいよ来週・・・


      お茶の間の皆様に、衝撃映像をお届けします!!」



・・・ ・・・。


こうしてこの日の収録が終わった。


慎吾ら観客は、ADの指示に従ってスタジオの出口へと歩いて行く。


リナ「え? 何? この番組、2段階構えなの!?

    来週に続くって・・・」


慎吾「さっきADの方が言ってましたけど・・・

    次の収録は10日後ですって・・・」


リナ「くぁー! 2週にまたがって引っ張るつもりね!

    てか、マジで埋蔵金1週間以内に発掘するって事?」


慎吾「どうやら発掘に相当の自信があるみたいですね・・・

    あのマリオって人」


リナ「でも今日の収録、つまんなかったー!

    【山嵐】いなかったら、絶対こんなTV見ないわね!」


慎吾「だからですよ・・・

    視聴率取るためにアイドル呼んだって事ですね」


リナ「ま、いーわ。どうせ次の収録なんて見学しないし!

    さ~、サインもらいに行くわよ!サイン!!」


慎吾「はい!」


2人にとって・・・徳川埋蔵金は、すでに対岸の火事だった。




5分後。



ポーン・・・


2人は松浦の楽屋のある6階でエレベーターを降りる。

松浦に【山嵐】のメンバーを紹介してもらうとあらば、リナの機嫌も最高潮に達するしかない。



だが・・・。


エレベーターを降りた瞬間だった・・・。



**「***、***********」


慎吾「え?」


突然慎吾が右手でコメカミを押さえた。


リナ「何?」


周りに変わった様子はない。


**「******、******* ・・・」


慎吾「な・・・?」


**「********、************ ・・・」


慎吾「・・・・」


慎吾の様子が変だ。


リナ「ちょっとあんた・・・大丈夫? 気分悪くなるならせめて・・・

    【山嵐】メンバー、全員のサインもらってからにしてよ!!」


様子のおかしい慎吾の肩に手をおいてゆするリナ。


慎吾「・・・ ・・・」


突然慎吾は、真剣な目でリナを見た。


リナ「な・・・ 何よ?」


慎吾「リナ先輩! 好きな言葉は!?」


唐突に慎吾はリナに変な質問をぶつける。


リナ「は!?」


慎吾「急いで! 好きな言葉ありますか!?」


リナ「う~ん・・・【イケメン】かな」


慎吾のは迫力に押され、正直に応えた。


慎吾「わかりました! いいですか、よく聞くいてください!」


ものすごく焦った表情で喋る慎吾に、どう対応していいかわからないリナ。


慎吾「僕からのメールは、必ず最初に【イケメン】と書きますから!」


リナ「は? 何言ってんの、あんた?」


慎吾「それ以外のメールは絶対返さないでください! いいですね!!」


リナ「言ってる意味、わらかないっつーの!!!」


慎吾の不自然な行動にイライラし始める。


突然・・・


慎吾が不愉快そうな表情を浮かべ、信じられない事を口にする。


慎吾「黙ってましたけど僕・・・

    リナ先輩の自己中にウンザリしてたんです!」


リナ「!?」


慎吾の言葉が頭に入ってくるのに、しばしの時間を要した。


リナ「は~!? あんた何言ったの? マジ言ってんの!?」


思いっきり眉毛をつり上げたリナが、大声で返す。


慎吾「もちろんですよ。僕が嘘ついた事ありますか?」


慎吾は挑戦的な態度をとる。


リナ「あんた、言ってる事がしっちゃかめっちゃかよ!」


慎吾の言葉と態度に、リナの怒りの度合いが加速する。


慎吾「ホントは、松浦さんの楽屋も3階なんですよ。

    6階まで来て騙されましたね!」


赤メガネの向こうの瞳が大きく見開いた。


プチッ。


そして何かが切れた。


瞬間、慎吾の顔面右頬に・・・リナの右ストレートが炸裂していた。



もんどりうって、フロアに倒れる慎吾。

その慎吾に背を向けてエレベーターに向かうリナ。


イライラしながら、エレベーターの「↓」ボタンを連打する。


リナ「ちょっと優しくしたら・・・全く、だから男ってヤツは・・・」


ようやく開いたエレベーター。


リナ「おっと・・・」


イライラしながら乗り込もうとするが、エレベーターの中から降りる人物がいた。

黒いスーツ、黒いズボン、黒いサングラス・・・黒ずくめの男が3名、降りてくる。


怒り心頭のリナは男らをかわし、すぐにエレベーターに乗ろうとした。


一人の男とすれ違った瞬間・・・


リナ「・・・ ・・・」


男のスーツが一瞬めくれた際、【それ】がリナの視界に入る。


ズボンとメタボなお腹の間にある・・・



拳銃を。




そして黒ずくめの男3人は・・・


慎吾を取り囲んだ。




              (第14話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


銃を持った黒ずくめの男3人に取り囲まれた慎吾。

直後江浜も現れ、慎吾に相対する。


エレベーターの中からその様子を見ていたリナ。

ただ事でない雰囲気を察し、慎吾の元へ向かおうとする。


その時、江浜は慎吾に向けて強烈な攻撃をくわえた。

そして慎吾は・・・  リナは・・・



次回 「 第14話  拉  致  」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ