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徳川埋蔵金の謎  作者: 伊吹 由
第1章  慎吾とリナ
11/45

第10話  謎の同一人物

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 First season


      「徳川埋蔵金の謎」 


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前回までのあらすじ


2012年4月。大学生となった慎吾は、大学の講義で1つ上の先輩リナと出会う。課題のため、TV局へと向かった2人だが・・・


アイドルのバッグ盗難事件に遭遇。リナの持つ特殊能力により、犯人を捕まえるに至った。バッグを盗まれたアイドル・松浦から、2人は特別番組【徳川埋蔵金の謎を追え!】の観客として招待を受ける。


慎吾はリナに、徳川埋蔵金のありかを示すヒントは、【かごめかごめ】の歌にあると語った。


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   第10話  謎の同一人物


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【TVS 徳川埋蔵金の謎を追え!】


ネットで検索していると、必ず一人の男が現れる。

この番組のプロデューサーである・・・糸見という男だ。


1990年代に活躍した、日本を代表するコピーライターであり・・・作家でもある。


彼の発案した【徳川埋蔵金の謎を追え!】の企画が通り、番組として大々的に放送される事になったのが1999年。


第1回放送では、徳川埋蔵金にまつわる史実を歴史研究家やタレントを交えて放送。見事高視聴率をとり、国民の話題をかっさらった。


半年後の第2回放送からは、大型重機を使って赤城山周辺を発掘。番組中、江戸幕府に関する出土品が数点発掘されたものの・・・その歴史的価値は低く、徳川埋蔵金につながる事はなかった。


地中50mもの大規模な発掘作業の際、いくつかの不自然な横穴を発見するが・・・こちらも徳川埋蔵金につながるものではなかった。


番組自体は数度の特番が組まれるも、視聴者を惹きつけるような結果を出す事が出来ず・・・視聴率の降下と共に2002年、同企画は打ち切りとなる。



あれから10年・・・・



番組改編期のこの時期に・・・特番で【徳川埋蔵金の謎を追え!】が放送される事が決まった。


何故10年の時を経て、この番組が再度登場したのか・・・


徳川埋蔵金のありかを示す信憑性の高い「何か」が、新しく発掘されたのだろうというのが大方の見方である。


5月5日・・・すなわち明日、その番組収録がある。


プロデューサーでもあり、発掘の陣頭指揮をとっている糸見。もちろん番組の主要な出演者の1人だ。他にも歴史学の権威や、考古学の教授、タレントサイドからは人気絶頂アイドルグループ【山嵐】の出演も決まっていた。


TVSのページで同番組をチェックすると、スペシャルゲストも来るという。


慎吾「・・・ ・・・」


この番組について調べている慎吾だが・・・10年ぶりの復活となった理由は、どのサイトにも記されてない。番組を見てのお楽しみといった所であろう。


慎吾「・・・ ・・・」


日本最大の巨大掲示板【5ちゃんねる】では、この番組に関するスレッドが賑わいを見せていた。埋蔵金は発見できないであろうという「否定派」の書き込みが圧倒的に多い。


「10年前はマジ騙された。今度もダマされるのがオチ」


「どうせまた、世界一の土木番組になるって」


「だいたい埋蔵金の存在自体が怪しい話」


「え? まだ懲りてないの? この不況時、制作費無駄遣いナンバー1」


「何か出ても、ヤラセとしか思えないし」


「夢見るオヤジじゃいられないってか?」


「ま、宝くじと同じ。夢見る番組って事でいーんじゃね?」


多くの否定派に混じって、ポツリポツリと肯定派の書き込みもある。


「何故、10年越しに番組再開したか考えろよ。あるって事だろ?」


「なけりゃ番組再開する意味ねーじゃん」


「無血開城の際に、蔵が空っぽだったんだぜ? 絶対持ち逃げしてるって」


「黄金の家康像見つかってる! 絶対どこかにあるだろ!」


注意深く読んでいくと、深い知識で肯定する人間もいた。


慎吾「・・・ ・・・」


さらに1つ1つの書き込みを丁寧に目を通していく。


ふと、腕組みをしたまま眠っていたリナが目をさました。


リナ「う、う~ん・・・」


大きな伸びをした後、メガネをかけ直す。


リナ「あ、あれ? 私、何で寝てんの?

    あ、ヤベ! 麻雀の途中だったんだ! 


    ラスのまま放置してるし・・・」


慎吾がリナの方を振り返り、ニコッと笑う。


慎吾「おはようございます」


リナはいったん麻雀サイトからログアウトする。


リナ「えーっと・・かごめかごめの話してたような・・・

    あまりにつまらなくて寝てたわ・・・


    私、歴史とか興味ない話聞くと、すぐ眠くなるのよね」


慎吾はくすっと笑いながら声をかける。


慎吾「なのに、明日の番組収録は行くんですよね?

    徳川の話がメインの番組ですよ?」


リナ「もちろん行くわよ! レポートあんた書いてくれるでしょ?

    私は【山嵐】のサインをもらうって使命があるしね~」


慎吾「・・・ ・・・」


リナ「あら? 何、あんた? 番組の予習でもしてんの?」


リナは慎吾のパソコン画面を覗き込む。


慎吾「えぇ。とりあえず過去、この番組がどんな進行だったのかとか・・・

    どんな発見があったのかとか・・・色々調べてるんです」


リナ「は~、あんた真面目よね~。

    ま、私のレポートのためにも頑張ってね・・・・


    あら?」


リナが何かに気づいた表情をした。


慎吾「何か?」


リナ「・・・」


じっと慎吾のパソコン画面を凝視するリナ。


リナ「うん。これ・・・そしてコレ」


リナは慎吾のパソコン画面の2ヶ所を指さした。そこには、ハンドルネーム


【Aritou Tomoki】【Tokumoto Airi】


の書き込みがあった。


慎吾「?」


リナ「この2人、同一人物ね」


慎吾「え?」


慎吾はスレッドを確認する。


【Aritou Tomoki】が、徳川埋蔵金の存在を肯定する書き込みに対し・・・

【Tokumoto Airi】は、それを否定する立場をとっている。


慎吾「どう見ても同じ人に見えませんが・・・」


リナ「こういう掲示板ではよくあるのよ、自作自演ってヤツが。

    自分の意見を通したかったり、周りを盛り上げるためにね。


    反対の立場とってるのは、同一人物と思わせない偽装よ、偽装!」


慎吾「いや、だから何故・・・同一人物だってわかるんですか?」


リナ「見えるのよね~、こういうの。意識しなくてもさ」


そう言うとリナは、自分のパソコンでワープロソフトを開いて説明し始めた。


 【Aritou Tomoki】 = A R I T O U T O M O K I


 【Tokumoto Airi】 = T O K U M O T O A I R I


リナ「わかる? 片方のアルファベット並び替えたらさ・・・

    もう片方の名前が出来るの?」


慎吾はゆっくりと、1文字1文字確認する。


慎吾「ほんとだ・・・アナグラムってヤツですね。

    でも、ただの偶然って可能性も・・・」


リナは慎吾の目の前で、右手を左右に振る。


リナ「ないない。たかだか数10人が書き込んでるスレッドなのよ。

    こんな長い適当なハンドルネーム2つが、ローマ字並び替えて・・・


    一致する確率、0.1%以下よ。こんな偶然ないって」


慎吾「でも性別も言葉遣いも違うし・・・

    やっぱり違う人にしか見えないな~。


    0.1%の方じゃないですか?」


リナ「あんたさぁ。0.1%を知らないでしょ?

    数学の世界では、起こりえないって意味よ。

 

    それにネット世界で、どれだけ性別偽ってるヤシがいる事か・・・」


慎吾「そ・・・そうですか? う~ん・・・ でも・・・」


それでも納得できない慎吾。リナは小さいため息をついた後、


リナ「しゃーない、見てて」


と声をかける。


カタカタカタカタ・・・


画面を見ながら、ブラインドタッチでキーボードを高速で打ち始めた。


リナ「別パソコン使って自作自演しても、IPアドレスを調べれば一発よ・・・」


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾は黙って、リナの作業を見ている。


リナ「あら・・・?」


眉をひそめるリナを見て、慎吾が少し勝ち誇ったように


慎吾「ほら~、やっぱ別人だったでしょう?」


と言った。


リナ「・・・ ・・・」


眉をひそめたままのリナは、自分のパソコン画面を確認している。


リナ「いや・・・同一人物なんだけどさ・・・」


慎吾「あれ? そうなんですか? 何かおかしい事でも?」


リナ「うん・・・ IPアドレスからはプロバイダと・・・

    使用者がどこにいるかってのが、だいたいわかるんだけど・・・


    会社とか組織単位なら、書き込んだ住所まで特定できるのよ・・・」


慎吾「え? じゃぁ、書き込んだ場所までわかっちゃったとか?」


リナ「うん。この同一人物が書き込んだ場所・・・

    何度も確認したけど・・・間違いないわね、うん」


自分を納得させるようにつぶやき、意外な一言を口にした。


リナ「この部屋よ。絶対間違いない」


慎吾「えぇ!?」


驚きの声をあげる慎吾。


リナ「何度も確認したけど・・・ 絶対この部屋から。間違いない!」


リナはパソコンのIPアドレスを指さしているが、慎吾にはただの数字と英字の羅列にしか見えない。


慎吾「この部屋から・・・」


しばらく自分のいるパソコン室を見渡す。今、この部屋にいるのは慎吾とリナの2人だけだ。


慎吾「・・・ ・・・」


慎吾は再度【徳川埋蔵金の謎に迫る!】専用スレッドを読み直した。


【Aritou Tomoki】 書き込み日時 5月3日 16:07

俺は、明後日の収録に参加する。とっても楽しみだ!


【Tokumoto Airi】 書き込み日時 5月3日 16:11

埋蔵金なんて見つからないわよ。ある意味、またやっちゃいそうで楽しみだけど


【Aritou Tomoki】 書き込み日時 5月3日 16:13

スタジオには埋蔵金のありかを知ってる人がくるんだってよ!


【Tokumoto Airi】 書き込み日時 5月3日 16:16

今までもありかを知るって人が出てたけどダメだったじゃん!

どうせ今度の人間だって、期待ハズレよ



慎吾「・・・ ・・・」


リナの言う事が正しいなら・・・

この2人は前日の午後4~5時の間で、このパソコン室で自作自演をしている事になる。ちょうど松浦順のバッグ盗難事件を解決している頃だ。


慎吾「この人、明日の収録に参加するんだ・・・」


リナ「みたいね」


リナは全く興味なさそうだ。


慎吾「この部屋で書き込んで・・・

    ひょっとしたら・・・マスメディアのレポートを書くために?」


リナ「さすがの私でも、そこまではわからないわ。

    まぁ明日スタジオに行けばわかるんじゃない?


    講義で見た顔がいればそうだし、いなければ関係無し!」


慎吾「えぇ・・・」


元気のない返事をする慎吾。


今なお埋蔵金を発見したという情報は見つけられない。新たな情報が出ない限り、埋蔵金発見へは遠い道のりに思えた。


(慎吾「それよりも・・・」)


何故、この人物はこの部屋から自作自演を演じたのか・・・


そして・・・慎吾にはどうしても気になる1つの書き込みがあった。



【Aritou Tomoki】 書き込み日時 5月3日 16:13

スタジオには埋蔵金のありかを知ってる人がくるんだってよ!



埋蔵金のありかを知る人物とは・・・


(慎吾「いったい・・・?」)


多くの謎を抱えた慎吾。この後も、ずっと番組に関するサイトを閲覧していた。




             (第11話へ続く)

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次回予告


5月5日。リナと慎吾は再度TVSに訪れる。

松浦との挨拶を済ませ、いよいよ番組収録に参加。


最初、前説のお笑い芸人のネタ見せから始まった。

その後、ニュースでよく見る女子アナやプロデューサーの糸見が姿を現し・・・


スペシャルゲストの【山嵐】に加え、スピリチュアル・カウンセラーの江浜も姿を見せた。


慎吾は、このスタジオで・・・

これから巻き込まれる大事件の黒幕と遭遇する。


次回 「 第11話  ファースト・コンタクト 」

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