第0話 始まり
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慎吾のスピリチュアル事件簿 First season
「徳川埋蔵金の謎」
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第0話 始まり
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20年前……。
「糸見さん! 第一子である息子さんのご生誕! おめでとうございます!」
TVSのとある一室。TVリポーターや芸能リポーター、新聞記者、TVカメラマン……20数名の報道陣が一人の男を囲んでいる。
糸見
「あぁ、ありがとうございます!」
報道陣の中心…晴れやかな笑顔でインタビューに応じる男。当時の日本を代表するコピーライター、そして作家でもある糸見だ。
TVカメラがアップで糸見の顔を捉える。
糸見
「おかげさまで昨日の夜。息子を授かりました。
ついに僕もパパとなりました! ありがとうございます!」
短髪で端正な顔立ち。特徴である細目はたれ目になり、終始口元のゴムが緩んだがごとくニヤニヤとしている。
「結婚からちょうど1年。
産まれたばかりの息子さんのご様子をお聞かせください!」
一人の芸能リポーターが糸見のニヤけた口元にマイクを近づけた。
糸見
「えぇっと……。そうですね。
妻の陣痛から出産までわずか2時間という超安産でした。
息子は……そうですねぇ、口元は妻に似てかわいらしいんですけど。
まぁ、正直顔は……猿でした」
報道陣がどっと笑う。
「出産時の息子さんの体重はいくつでしたか?」
今度は別のベテラン女性リポーターが糸見にマイクを向けた。
糸見「4260gです」
報道陣から「おーっ」という深い歓声が沸き起こる。
「これはもう、産まれた時から元気なお子さんという感じですね」
糸見
「えぇ。僕と違って、大物になりそうな予感がしますねぇ」
その言葉に報道陣はまたしてもどっと笑った。
「息子さんのお名前はもうお決まりになりました?」
3人目のリポーターが糸見にマイクを向けた。
糸見
「えぇ。産まれる前はね、日本男児らしく【太郎】にしよう!って決めてたんですが……」
「違うお名前に?」
糸見
「息子がね。その名前では『イヤだ』ってはっきり言うんですよ」
3度目の笑いが報道陣を襲う。
「赤ん坊の息子さんが、太郎という名前を拒否した?」
糸見
「えぇ。あ、信じてないでしょ!ホントなんですよ!
太郎って呼んだら、すぐ大泣きするんです」
「では、まだお名前は思案中という事ですか?」
糸見
「いや。決めました。実は色々な名前で息子を呼んでみたら……
1つだけ、息子が笑顔になる名前がありましてね」
「なるほど。反応したその名前を、息子さんに名付けたわけですね?」
糸見
「えぇ、その通りです」
「では……是非、息子さんの名前を!」
今まで以上に多くのリポーターが糸見にマイクを近づける。
糸見
「えぇっと。ほら、ちょっと大きめに産まれてきた子ですからね。名前は……」
カメラを確認した糸見。そしてカメラマンも糸見をアップにしたその瞬間……
会見を放映していたTVSのワイドショーがCMを流し始めた。
TVではよくある、重大発表前のCMである。
1分半ほどのCMが明けると、先ほどの会見の続きが放送された。
「是非、息子さんの名前を!」
今まで以上にリポーターがマイクを糸見に近づける。
糸見
「えぇっと。ほら、ちょっと大きめに産まれてきた子ですからね。名前は……」
全ての始まりは……
ここからだった……。
(第1話へ続く)
順番が前後しますが、【アマデウスの謎】の前作になります。【アマデウスの謎】を読んだ後で、こちらを読むと・・・色々な接点があり、楽しめるかと思います。ちなみに50話足らずで終了する予定なので。